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[27838] 無色のグニパヘリル ~What a beautiful miracle~【魔法少女まどか☆マギカ×多重クロス】
Name: 大紫◆5a79fb22 ID:fa8b2d0d
Date: 2011/05/19 03:07
この作品は魔法少女まどか☆マギカのストーリーを軸に、PCゲーム、特撮系との複数クロスです。

クロス元はPCゲーム『Dies irae~Acta est Fabula~』『紫影のソナーニル』と
『スーパー戦隊シリーズ』(主に天装戦隊ゴセイジャー)の三作品となります。

注意点としては、文章力が微妙だったり、オリキャラ(敵)が大量に出たり、オリジナル設定が大量にあったり、
一部キャラが崩壊してたり原作よりも悲惨な目にあったりするキャラがいるところでしょうか。

あと、偶に奇跡が起きたりします。

それでも構わないという方、試しに読んでみようという方。
どうぞよろしくお願いします。



[27838] 第一話 『諦めないわ、絶対に、絶対に』
Name: 大紫◆5a79fb22 ID:fa8b2d0d
Date: 2011/05/17 19:30
「……そんな」


――きゃはははははは



天高く響き渡る嘲笑に、暁美ほむらは呆然として視線を向けていた。
既に肢体は動かせず、魔力も底を尽きかけている。
視界の隅には、ソウルジェムを砕かれ二度と動くことのない三人の少女の亡骸が。

美樹さやか、巴マミ、佐倉杏子、三人の魔法少女をワルプルギスの夜まで存命させ、
なお且つ一応の同盟状態を築きあげた。無論のこと、まどかは契約させていない。

幾百幾千繰り返し、押し寄せる絶望を振り払い、そうして辿り着いた。
ただ一人の少女のため、必死になって駆け抜けた末に手にした奇跡。

接近戦を得意とする美樹さやかと佐倉杏子の両名を前衛とし、巴マミは遠距離からの支援砲撃に徹させる。
さらに自分の用意した数多の軍事兵器と時間停止能力でそれらを援護。
考えられる限りの、完璧な布陣。

――勝てる、今度こそ。

絶望の夜を超え、希望溢れる明日へ、失われた未来へと進む。

勝利を確信したその瞬間。



最高の“奇跡”は、最悪の“現実”によって砕かれた。



――きゃはははははは

くるり、と。
反転したのだ、魔女が――ワルプルギスの夜が。


そこからは彼女の一人舞台、喜劇のような惨劇の幕開けであった。
ワルプルギスの夜は暴風となって荒れ狂い、一瞬にして都市を、魔法少女たちを蹴散らした。

嘲り笑うワルプルギスの夜。
そこに至って、ようやく暁美ほむらは理解した。

ワルプルギスの夜は、最初から手加減していたのだ。

何故か?

それは、無力なる者どもを嘲笑うため。
それは、思い上がった愚者を断罪するため。

最強の魔女が本気を出せば、人類の文明など、魔法少女など、塵芥でしかないことを。
この絶望・事実を、幾千のループにして、ようやく暁美ほむらは知った。
この町の魔法少女を集めても、ワルプルギスの夜には勝てないことを。
知らされた、思い知らされた。ワルプルギスの真の力を。

――あはははははは

魔女が笑う。笑い狂う、踊り狂う。
少女の無力を嗤う、回り続ける愚者を嗤う。
それはまるで神のように、それはまるで月のように。

残された手は、ない。



「……まだ、よ」



否、一つだけある。
それは彼女にのみ許された、真実最後の手段。

既に勝敗の決したゲーム、逆転するには、さて、どうすればよいか。
簡単なこと、チェス盤を引っ繰り返せばいい。


かちり、と時計が音を立てる。


「諦めて、たまるもんですか」
ほむらは一筋の涙を流し、遥か高みにて踊る怨敵を見据える。

「いつか、いつの日にか、必ずお前を」

たとえ何百何千何万何億、繰り返すことになろうとも。

「斃して、みせる」


この悪夢から目覚めるため。
この牢獄を超越するため。



――きゃはははははは


魔女は笑う、見下して笑うだけ。
最後に残った哀れな地蟲に、とどめを刺すこともなく。
既に壊れて遊べなくなった玩具など、用済みだといわんばかりに。


――あはははははは

視界に映る最後の一瞬まで、魔女は笑っていた、笑うだけ。
足掻くのは止めろと笑いながら、何をしても無駄だと笑いながら。

戦い続ける少女に神の如き嘲笑を餞別として、手向けとして送るかのように。

――きゃはははははは









こうして、少女は未来を諦め、現在を棄て、過去に縋る。
こうして、少女は未来を求め、現在を越え、過去に遡る。



こうして、一つの物語の幕は閉じた。
誰も彼もが救われぬ、滑稽なまでに悲劇的な物語の幕が。

少女の努力も、祈りも、誓いも、その何もかもが。

すべて、そう、すべて。
あらゆるものは、意味を持たなかった。 
 
終わってしまったものに、およそ意味など存在しないのだから。 
   
チクタク・チク・タク。
チクタク・チク・タク。

耳障りな時計の音が、時空を超えて響いて。




「――チク・タク、チク・タク」











 
「……ん」  
目を覚ませば、そこは病院の一室。

暁美ほむら――これが彼女の魔法少女としての能力。
時間操作・並行世界の横断。


「……諦めないわ、絶対に、絶対に」

涙の痕を拭い、ほむらはベッドから素早く起き上がる。
既に新たな戦いの幕は上がっている、一分一秒足りとて無駄にはできない。
そう、全ては交わした約束を忘れないため。


「……まどか」






見滝原町――某改装中のビルの屋上。
時刻は夕暮れ時、一人の少女が結界の中で異形の存在と戦っていた。

「はあああああッ!」

それは黄金色に煌めく魔法少女。
虚空からマスケット銃を召喚し、一斉掃射。
使い捨てたそれを手に、踊るようにして回転、群がる異形――使い魔たちを寄せ付けない。

「……巴マミ」

その華麗な戦いを、ほむらはやや遠方の鉄塔から冷やかに見つめていた。
相手はただ回転するだけのマネキン、使い魔の中でも最弱クラスに分類される。
主たる魔女の姿もない、この戦いで巴マミが命を落とすようなことはないだろう。

けれども。

「……無駄な戦いだわ」

使い魔はグリーフシード、魔力の源となるソレを落さない。
損得などまるで考えない、無関係の人間が襲われる可能性があるから戦う。
なるほど、TVアニメや少女漫画に出てくる、夢や希望に満ち溢れた理想の魔法少女とはそういうものだろう。

「夢、希望、か……滑稽ね」

所詮、彼女はピエロでしかない。
輝かしくも愚かしい使命感に駆られ、悪魔の掌で踊る哀れな操り人形。
けれど、最初は己もそうであったことを思い出し、ほむらは自虐の笑みをこぼした。


「ティロ・フィナーレ!!」

最後に残った一際大きなマネキンの使い魔に、巴マミは彼女の渾身の一撃を放つ。
巨大な大砲ほどもあるマスケット銃を召喚、巨大使い魔は塵一つ残さず砕け散った。

「これで打ち止め、みたいね」
結界が崩れてゆく、使い魔が逃げた気配もない。

ほう、と息を吐き、巴マミはどこからともなく紅茶を一杯。

夕日に照らされ、勝利の余韻に浸る彼女。
その姿の、なんと気高く美しいことか。
まるで夢のよう、同性でも思わず見惚れ、憧れを抱いてしまうことだろう。


(――クラスの皆には、内緒だよ!)

「……ああ」

そうだ、彼女は魔法少女という美しい夢に全力で酔っている。
その酔いを、まどかに移させるわけにはいかない。


「だから」


「だからね、巴さん」



「私は、あなたを救わない」

――巴マミは、いらない。

今回、ほむらは見滝原町以外の魔法少女を連れてワルプルギスの夜に立ち向かうことを計画していた。
前回の時間枠、絶望的な敗北にも意味はあった。
ワルプルギスの夜、その真の力を知ることができたのだから。
真の力――即ち全力、それ以上はもうない、はずだ。
最低でも三十人、それも世界各地で名を馳せる強力な魔法少女を連れてくれば、万に一つの勝ち目があるかもしれない。

(容易なことではないわね……不可能に、近い)

過去、別の時間枠でほむらはこの計画を実行しようとして、即座に挫折した苦い経験がある。
まず第一に、現存する魔法少女の大半は己の欲望、利害に沿ってのみ動くということ。
これは今までの時間枠で蓄えた大量のグリーフシードを餌にして釣ることもできるが、
そんな話にほいほいと乗ってくるような者は一人で満足に魔女退治もできない運だけで
生き延びてきた弱小の魔法少女だけだ。

第二に、ワルプルギスという名に立ち向かう気概のある魔法少女が皆無に等しいこと。
勇気と無謀を履き違えた愚か者は最初から役に立たない。
実力はあれど用心深い者は、決して安易に危険な橋を渡ろうとはしない。

何十年と生きながらえてきた歴戦の魔法少女は決まって現実主義者ばかりだ。
そういった連中は損得で結びついた小グループを作り、ちまちまと生まれたての弱い魔女ばかり狙って
グリーフシードを手に入れる。
縄張り意識も強く、見ず知らずのほむらが単独乗り込めば拒絶され危害を加えられかねない。

なにより最大の問題は、自分がいないことであの“悪魔”がまどかと契約を結んでしまうこと。
僅か一ヶ月程度での時間では、この計画は実現不可能なのだ。

けれども。
その難問を容易ならざるも解いてしまう回答が、彼女にはある。


(今回の時間枠を、捨て石にすれば)

自分にはほぼ無限の時間がある。
今回だけでなく、数千回はこの計画一本に集中して繰り返せば。
世界中の魔法少女と出会い、その性格や能力を調べ、自分に協力するように誘導することも可能であるはず。

気の合う友人を装い、哀願し、臆病を煽る。
心の弱さを突き、心にもない言葉で慰める。
人心を掌握する術を研究し、彼女たちを従え、ワルプルギスにぶつけさせる。


(そう、最初から諦めて、見捨ててしまえば)
瞬間、堪え切れない吐き気と、心胆を震わせる寒気がほむらを襲う。


今回の時間枠を捨て石に――それは、今現在の時間枠のまどかを見捨てることと同義だ。

何度も何度も繰り返してきた。
しかし、最初からまどかの生存を諦めたことは一度もない。

巴マミを見捨て、美樹さやかを見捨て、佐倉杏子を見捨て。
ついには、己の歩む理由すら見捨てるというのか。

(ああ、私、最低、だ)

けれど、やるしかない。
この町の魔法少女だけでは、ワルプルギスの夜を越えられないのだから。
己一人の力では、何をも為すことができないのだから。

どれだけの嘘を重ねようと、どれだけの偽りを紡ごうと。
その過程で、たとえ全てを失おうとも。
最後に、たった一人の親友に、未来を渡せるのなら、それでいい。


(ごめんなさい、まどか)
彼女に会っていこうとは思わない。そんな資格は己にはない。
血が滲むまでに強く唇を噛み締め、ほむらはこの町から去ろうとして――





突如響いた絶叫に、歩みを止める。

(……悲鳴?)

まさか、別の魔女か、もしくは使い魔が現れたのか。
けれど、ソウルジェムには何のも反応はない。
それとも、事故でも起こったのか?

ほむらは鉄塔から眼下のショッピングモールを見下ろして。


「……なっ」
瞬間、言葉を失った。

恐怖に顔を歪め、逃げ惑う人々。
それを追い立て、狩る者たち。


煉瓦敷きの歩道から。
排水溝の下から。


日常に溢れた、ありとあらゆる隙間から、無数の異形が溢れ出す。


「ナー、ナー、シー」
「ナー、ナー、シー」

無数の異形――頭部には眼も鼻なく、大きな口が張り付くのみ。
手にした刀で人々を切り捨て、踏み躙り、嬲る。
まさしく阿鼻叫喚の地獄絵図。



「くははははッ、苦しめ苦しめ、人間どもォッ!」


その醜悪な群れの中、一際目立ち高笑う者が一人。
古風でありながらも派手に装飾された装束を身に纏い、地面まで伸びる乱れた長髪を引き摺る。
悪趣味なまでに結われた大量のカンザシが、じゃらじゃらと耳障りな音を立てて。

「オラァ!」

先端が八叉に分かれた槍――というよりは鍬のような武具を振り回し、逃げ遅れた人々を
纏めて打ちのめす。


「ひひいいっ」
「た、助けてくれえ」


「おおう、おうッ、お前ら、死にたくないのか?」

「は、はい、そうですっ」
「死にたくない、死にたくないっ!」


必死に命乞いをする人々に、異形は口元を歪めて。

「そうか、そうか――ああ、いいだろう」


異形の長髪がさらに伸び、人々の身体に巻き付き、信じられないことに空中に持ち上げる。


「ひ、や、やめて、おろし、て」
「た、すけ、あ、あああ、あ……」

巻きつかれ、絞られる顔からは見る間に生気が失われて黒ずんでいく。


「おおゥ、潤う、潤うぜェ、貴様ら感謝しろよォ?『スグには』殺してやらねえからよォ」
「じわじわと吸って、俺様の美髪の養分にしてやらァよォ」

汚らしい笑い声を上げ、異形は髪を振りかざす。
その時、乱れる髪に隠されるようにしていたその顔が露わになる。
黒い皮膚、茶色の隈取、獣のように尖った牙、そして二本角。
その貌は、昔話にでてくる鬼そのものだった。



(なんなの、いったい、何が起きてるの……!)

戸惑うほむらは、鉄塔から動けずにいた。
繰り返される時間枠にも、微細な変化は起こる。
彼女は理性的な分、迂闊な行動はとるまいとして咄嗟の行動に遅れが生じてしまう。




故に、ここで彼女が動くのは必然のことであった。

「逃げて!」

銃弾が異形の髪を穿ち、人々を解放する。
解放された人々は、言われるまでもなく必至の様相で散り散りに逃げていく。
それと同時に、他の人々を襲っていた異形たちにも銃弾が放たれる。

「ナ、ナー、シィー」

軽々と打ち倒されていく異形の群れ、残るのはただ一人、いや、一鬼と呼ぶべきか?


「……なんだァ、どこのどいつだァ、この俺様の美髪を汚す野郎ァよゥ?」


怒気を含んだ声で、乱れ髪の異形は視線を動かす。
空中に列をなすようにして浮かぶマスケット銃。それを指揮する少女を睨む。

少女――巴マミは人々を庇うようにして未知の異形の前に立つ。
後先を考えず咄嗟の判断で飛び出したのだろうが、その結果として大勢の人が救われた。

「……あなたは、魔女なの?」

銃口を向けながらも、マミは発砲をせず異形に対して語りかけた。
それも当然だろう。通常の魔女は結界の内部に隠れ潜むはず、しかし目の前の化け物は
こうして平然と街中で活動しており、さらには言葉まで通じているのだから。



「マジョヲォ?なんだそりゃァ?」
問われた異形は首を傾げて。

「おォレ様はァ、外道衆一の美丈夫、あッ、ミダレガキ様よォ!」
その名の通り乱れた髪を役者のように大仰に振り回して見せ、高らかに己の名を告げる。

「……外道衆?ミダレガキ?」

なんだ、何を言っている。
マミも、様子を窺っていたほむらにも、何一つとして理解できない。


「おうよっ、御大将――否、煩わしいドウコクの野郎は消えたッ、あァ、ならばならばァ、俺様の天下よォ!」

理解できるのは、この異形の群れが魔女ではない、何か別の存在ということ。
そしてもうひとつ。


「……あなたが魔女であろうとなかろうと、そんなのは些細なことよね」
「私は魔法少女として、人々を襲う悪しき存在を許さない!」


「だからマジョじゃねェ、外道衆一の美丈夫、ミダレガキ様だァ!」
怒号とともに、長髪が巴マミを絡め取ろうと伸びる。
蛇のように分かれ左右上下から襲い来るそれを、マミはまるでダンスのステップのように華麗に避けながら
マスケット銃を召喚して反撃する。

「はっ、豆鉄砲なんざ効くかよォ!」
ミダレガキは手にした獲物を奮い、銃弾を弾き落とす。


ここに外道と魔法少女、異能の存在同士の闘いが幕を開ける。


「はっ!」
マミはリボンを足場にして縦横無尽に空を跳躍し、一つ所に留まらず素早く移動、銃弾を放つ。

「おらァッ!」
それを長髪と槍で防ぎ、反撃するミダレガキ。
端から見れば、勝負は拮抗しているようにも見えるが。


(くそがァ、ハエみてえに飛び回りやがってェッ)
追い詰められているのは、外道のほうであった。

ミダレガキの得意とするのは中・近距離。髪は際限なく伸ばすことはできるが、
離れれば離れるほど細かな操作ができなくなる。
自慢の髪で動きを止めて生気を奪い、得意武具たる槍で貫く、それがミダレガキの必勝の形。

それに対して相手は遠距離からの射撃を得意とし、単純にミダレガキより動きが早い。
伸ばす髪は悉く撃ち砕かれる、予備のナナシ連中を出しても効果は薄いだろう。
ミダレガキは内心の焦りを隠せず、次第に動きが粗くなっていく。
これでは防戦一方、否、こちらが次第に押されてきている。

「あら、偉そうなことを言ったくせに、この程度なのかしら、美丈夫さん?」
「ちいいッ!」

焦りから、何か突破口はないかとミダレガキは迂闊にも敵から視線を外して周囲を見回し。

「……んんっ?」
本来ならそれは愚の骨頂、ではあるが。
注意深く見れば、視界の右端、瓦礫に隠れるように息を殺して蹲る子供がいた。
恐怖で足が竦み、逃げるに逃げらないのだろう。


「……くひひゃひゃひひゃ」

ミダレガキは、嗤う。
彼は外道衆の一員。読んで字の如く、そこに属するものは一人の例外もなく性根の腐りきった外道なのである。
そして、彼は多少知恵も回り、人間という生物のことも僅かながら“理解”していた。

「おらあッ!」
逃げ遅れた子供に、長髪を伸ばす。
意図的に速度は落とした、死なれては餌にならないからだ。
その代償として幾らかの銃弾を喰らうが、致命傷となる威力ではない。


「え?……っッ!」

突然明後日の方向に攻撃をする異形にマミが訝しんだのは一瞬、
その先に生存者がいることに気がついた彼女は、迷うことをしなかった。

マスケット銃はミダレガキから銃口を逸らし、少年を狙う髪の先端を撃つ。
間一髪、少年は死の運命から逃れられた、が、しかし――。

「馬鹿がァッ!」
そう、人間というのはいつもこれだ、無関係な他人を守るために時として命を投げ出す、愚かしい、まったく愚かしい。
まったくもって理解できないが、そういうモノだということは“理解”していた。

猛烈な勢いで、ミダレガキは巴マミに自慢の乱れ髪を放つ。
拘束も生気吸収も考えない、ただ打撃を目的とした一撃。
故に、疾い。

「っ、しまっ……」

本来なら、辛うじてだが避けることのできた一撃。
けれど、この状況を読んでいた差は致命的だった。


「きゃああああッ」

ミダレガキの髪はマミを弾き飛ばし、ビルの外壁に打ち付ける。

「く、くううっ」

「くひゃひゃひゃひゃ、流石は俺様ミダレガキ様、いよっ、外道衆一の美丈夫よォ!」
悪鬼は勝利を確信し、嗤い、嗤う。
体勢を立て直そうとするマミに向け、容赦なく乱れ髪が伸ばされる。


――このままでは、巴マミは死ぬ、殺される。


「……っ!」
それまで傍観していたほむらが反射的に時間を止めようとした、その時。





「――そこまでだ、外道衆」

声が、響いた。
それとともに、赤い閃光が悪鬼の身体に炸裂する。

「ぐギィッ!?」
予期していない攻撃に汚い悲鳴を上げ、ミダレガキは無様に転倒する。

「か、顔がァ、外道衆一の美丈夫である、この俺の顔に、傷がああああッ!?」
顔を抑え、髪を傷つけられた比ではなくうろたえるミダレガキ。

響く金属音、足音。
夕日を背にして、何者かがやってくる。
不浄の闇を風のごとくに掃い、荘厳な気配を纏った、何者かが。


「ななな、なんだァっ、誰だ手前はァ!?」


「あ、あなたは」
「いったい……?」

外道は怯み、少女たちは息を飲む。

沈む夕日の最後の光に照らされ、悠然と歩むシルエット。
次第に、その姿が露わとなっていく。


「――星を清める宿命の騎士」


正義を体現するかのような、それは、鋼の雄姿。
額に輝く護星のエンブレム。胸には猛々しい獅子の意匠。


「ゴセイナイト!!」

宿命に導かれた白銀の鉄騎士が、ここに降臨した。


「ご、ゴセイナイトだァ? 何を俺より目立っていやがるゥ!!」
逆上したミダレガキは得物を振い白銀の騎士に襲いかかる。
鈍い金属音、ミダレガキの槍をゴセイナイトは小型の銃器、レオンレイザーを盾にして軽々と受け止める。


「なッ、なんだとォ!?」
「外道衆、お前たちは地球汚染源ではない、しかし」


「この星を、人々を苦しめる悪しき魂を、私は許しはしない!」
「ぐ、ぐうっ、なにをゥ」
その気迫に押されるようにして、ミダレガキは僅か後退して。


「レオンレイザーソード!」
掛け声とともに瞬く間に銃器が変形し、赤い刀身も眩い一振りの剣となる。
一閃、ゴセイナイトは剣を縦に振り下ろす。

「が、ぎヒいいッ」
それを防ごうとしたミダレガキの槍は真っ二つに折れ、地面に転がり落ちる。


「な、ナナシ連中、出会えィい!」
ミダレガキの声に呼応して地面の隙間から血の色が吹き出し、そこから無数の異形たち――ナナシ連中
が現れ、ゴセイナイトに集団で襲いかかる。

「ナー、ナー、シー」
「ナー、ナー、シー」

数では圧倒的に不利。
けれど、白銀の騎士は揺るがない。

「ナイトメタリック!!」
「ナ、ナシー!?」
瞬くのは五芒の星、凄まじい勢いで強烈な斬撃が飛びナナシ連中を一瞬で全滅させる。

「は、馬鹿がァッ!」
「むっ」
炎上したナナシ連中、その奥からミダレガキの髪が伸び、ゴセイナイトの肢体に絡み付き、身動きを封じる。


「そいつらは囮よォ、さあて、この美丈夫の顔を傷つけた罪は重いぜェ?じわじわと吸い殺してやらあッ!」
今度こそ勝利を確信したミダレガキは、鬼の貌を邪悪に歪めて。


「――何か勘違いをしているようだな」
しかし、護星の騎士は揺るがない。
微塵たりとも、だ。

「そ、そんな馬鹿な、あ、ありえないッ」
ミダレガキは、その表情を先ほどまでとは真逆の感情に歪める。
己の自慢の髪、強靭かつ柔軟なその縛りが。


「貴様のターンなど、最早ありはしない」
力任せに、破られるなど。


「はあああッ!!」
「ひ、ひいいいいいいいッ!?」
溢れる闘気、ナイティックパワーが外道の戒めを解き、燃やし尽くす。

そして。
驚愕し恐怖するミダレガキに、ゴセイナイトは終わりを告げる。



「ここからが、私のターンだ」



「ち、ちくしょおおおおッ!!」
破れかぶれとなったミダレガキは、髪を振り乱して無策でゴセイナイトに突撃する。

――gotcha
響く電子音声は、彼のターン(勝利)を告げる音。

「レオンセルラー・セット」
ゴセイナイトは腰に掲げた携帯電話型のパワー開放器、レオンセルラーを手にし、展開。
続けてガンモード状態のレオンレイザーにレオンセルラーを合体させる。

「バルカンヘッダーカード!」
一枚のカードを取り出し、レオンセルラーにセット。

――Summon Vulcan Headder
カードの絵柄に刻まれたそれがそのまま実体化・召喚され、ゴセイナイトは流れるような動作で
レオンレイザーの先端にバルカンヘッダーをセットする。

レオンレイザー、レオンセルラー、そしてバルカンヘッダー。
この三つが合体した時、ゴセイナイトの必殺武器、ダイナミックレオンレイザーが完成するのだ。


「ナイトダイナミックカード!!」
最後のピース、騎士のエンブレムカードをセット。



「断罪のナイティックパワー……」



――Knight Dynamic



「パニッシュ!!!」
高速回転するバルカンヘッダー、そこから無数のエネルギー弾が青い光の軌跡を描いて放たれる。



「が、ガアアァッ」
吸い込まれるようにしてその直撃を受けたミダレガキは、痺れたように一瞬硬直して。

「……こ、この、美丈夫がァ、ミダレガキ様がァ、こ、こんなところでェェ!?」
爆発、炎上。
塵一つ残さず、この世から消滅した。







「……」

暁美ほむらは、唖然としてその場に立ち尽くす。
なんだ、これは。

(私は、夢でも見ているの?)


頭の中を駆け巡り、反芻される単語、言葉。
外道衆、ゴセイナイト、私のターン。
それら全てをどうにか理性的に噛み締めて、ほむらは。

「待って」
意を決して、白銀の騎士の前に立つ。





「……」


巴マミは唖然としてその場に立ち尽くす。
なんだ、これは。
(私は、夢でも見ているの?)

頭の中を駆け巡り、反芻される単語、言葉。
外道衆、ゴセイナイト、私のターン。
断罪のナイティックパワー。パニッシュ。必殺技。
それら全てを噛み締め、マミは。


「……か」




「かかかかかっ、かっこよすぎるッ!!!」

目をキラキラと輝かせ、巴マミは熱の籠った視線を白銀の騎士に送る。
それはまるで、ヒーローショーで憧れのヒーローを目にした幼い子供のようだった。


「外道衆、撃破確認」




「ご、ゴセイナイトさんっ!!」
「ほむうっ!?」
どこへともなく去ろうとするゴセイナイトの前に、マミはとてつもないスピードで立ち塞がる。
途中で誰か撥ね退けた様な気もするが、たぶん気のせいだろう。


「む?」
「あああ、あのっ、どうか、私の家にいらしては頂けないでしょうか、お茶とケーキぐらいしか
お出しできませんがっ!」
あなたは何者なの?外道衆とは?頭の片隅に幾らかの些細な疑問も浮かんだが、そんなことは後回しだ。


「うむ」
ゴセイナイトは、奇抜な服装をした黄色い少女を上から下まで眺めて。


「構わないが」
「ハピネスッ!」
マミさん、思わずガッツポーズ。
喜色満面、お花畑全開ルンルンスキップでゴセイナイトを自宅に案内しようとして。


「あら?」
ふと、道端に転がる黒髪の少女と視線が合った。


「……あなた、魔法少女?」
「……そうよ」

「……ええと」
「……ほむう」

何か、気まずい空気が流れて。

「あなたも、来る?」
ついでだと言わんばかりに、マミはほむらのことも誘い。


「そうね、お邪魔しようかしら」
長い黒髪をクールにかき上げ、ほむらは久方ぶりにマミの自宅にお呼ばれされた。













あとがき


――外道衆

 ミダレガキ  

 【身長】一の目・198cm
 【体重】一の目・86kg

【得意武具】 搦討八忌捌槍(からめとうはっきはつそう)

乱れた長髪のような、歌舞伎者のような、アヤカシである。
とにかくも派手な言動を好み、自身を外道衆一の美丈夫と言って憚らない。
自慢の髪は人間の生命力を吸い取り、それによって潤いが保たれているの
だという。さらにミダレガキの髪は自由自在に伸び縮みし、また斬られよう
ともすぐに再生するという。強靭さと柔軟性を併せ持ったこの長髪こそが
ミダレガキ最大の武器である。
現代の伝承で『髪鬼』という妖怪がいるとされている。髪鬼は、髪を際限
なく伸ばす化け物らしい。おそらくはミダレガキが髪を振り乱して
暴れる姿が、『髪鬼』伝承のルーツであろう。







クロスオーバー第一弾、天装戦隊ゴセイジャー。

まどか☆マギカワールドに護星の騎士ことゴセイナイトさん参戦。


いやー、自分が実際会ったら、ほんとにマミさんみたいなことしちゃうかもしれません。
それぐらい本編でこの人格好いいです。
その本編は全50話と敷居が高いですが、挿入歌「ゴセイナイトは許さない」は最高に熱い曲なので
是非ともこれだけでも聞いてほしいです。
侍戦隊シンケンジャーは映画でゴセイとクロスしているので、外道衆だけですが今後も
ちびっと登場予定があります。
アラタ以下ゴセイジャーの5人の皆さんは、残念ながら登場予定はありません。
登場人物が多くなると作者の力量的に話を纏められなくなる可能性が大なので。






……あと、ゴセイジャーのwikipediaで敵組織の項目、特にブレドラなんとかさンのことを読んでおくと、
今後楽しんでいただけるかもしれません、はい。










[27838] 第二話 『もう、何も怖くない!』
Name: 大紫◆5a79fb22 ID:fa8b2d0d
Date: 2011/05/19 07:59
「どうぞ、粗茶ですが」
(いや、紅茶でしょこれ?)
冷静を装ってはいるが、巴マミは小刻みに震えている。

マミのマンション。
初めに自己紹介を済ませた三人は、何故か頑なに座ろうとしない白銀の騎士を除き三角テーブルを囲む。


「どどどうぞ粗茶ですが」
(なんで二回言うの?)

ほむらは心の中でツッコミを入れながら白銀の騎士ことゴセイナイトを注視する。
全身を鋼の装甲で覆う騎士然とした風体。
目元は赤いサングラスのようなもので覆われており、前胸部と顔周り、額に輝くエンブレムには黄金色の装飾が為されている。
見れば見れるほど不思議な人物だ、いや、そもそも人間なのだろうか。


紅茶を進められ、沈黙していたゴセイナイトは一言。

「私はヘッダーだ」

「え」
「え」

ヘッダー?なにそれ?疑問符を浮かべる少女二人。

「私はゴセイパワーをエネルギーとして動いている、人間のように食物摂取を必要としていない」
「そ、そうなんですか……」
シュンとして肩を落とすマミ。
よくはわからないが紅茶は飲んでくれそうにない。


(まあ、なんとなくそんな気はしてたんだけど)
だって口がないし。
だって口がないし。
至極残念そうな彼女を尻目に、ほむらは茶色の液体を口に含み。



「だが、口にできない、というわけではいない」
(ほぶっ!?)
そう言って、ゴセイナイトがティーカップに手を伸ばして啜るものだから、危うく吹き出しそうになった。


(……ゴセイナイトさん)
その優しさに、マミは瞳を潤ませる。

(どこに口があるの!?)
その奇妙さに、ほむらは目を見開く。


「それよりも」
確かめる間もなくティーカップは元の位置に置かれ、ゴセイナイトはマミを見据える。


「巴マミ、お前は何者だ、外道衆と互角以上に戦っていたが」
それこそが、白銀の騎士がここに来た理由。
普通の人間が外道衆――三途の川に生息する異形と、対等以上に渡り合えるはずがない。
護星の戦士ではありえず、過去に一度共闘した侍たちでもないように見える。



問われたマミは微笑んで、仄かに輝く卵のような人工物を取り出す。

「私は――いえ、私たちは魔法少女」
「魔女と闘うことを運命(さだめ)られた、選ばれし者たちよ」

そうして、巴マミは語り始める。
絶望や呪いから生まれた邪悪な異形、世界の陰に隠れ潜み人々を襲う魔女。
魔法の使者『キュゥべえ』と願いを対価に異能を与えられた少女たち。


「……そのような悪しき存在が跋扈していたとは」
マミが語ったその内容を、ゴセイナイトは噛みしめるようにして一、二度頷く。
一切変わらぬ鉄の貌からは、彼の心情を察することはできない。

(頃合いね)
ほむらは、そう判断して口を開く。
「ゴセイナイト、今度はこちらの質問に答えてほしいのだけど」

「あなたは、いったい何者なの?」
繰り返す時間枠に、突如として現れた謎の存在。
どこから来たのか?その目的は?聞きたいことは山ほどもある。


「何を言ってるの暁美さん、ゴセイナイトさんはメタルヒーロー、正義の味方に決まっているじゃない」
うっとりとした表情で呟く黄色いのは放っておいて。



「私はゴセイナイト――地球(星)を清める宿命の騎士」
そうして、ゴセイナイトは語り始める。

護星界。護星天使の使命。
己が地球の意志によって超進化した人口生命体『ヘッダー』であること。
ウォースター、幽魔獣、マトリンティス、外道衆。嘗て地球を幾度となく襲った悪しき魂たちの存在。
その戦いの記憶は、人々から消去されてしまったことも。

「……そんな怪物たちがいたなんて」

俄かには信じ難い話だが、語る当人から嘘偽りの気配は微塵も感じられない。


「――こうして、私たちは勝利した」
長い戦いの末、救星主を自称する最後の敵との決戦を終え、見習いであった5人の護星天使たちは
地球に残り学ぶことを選択した。


「私は再度ゴセイパワーを蓄えるべく、長い眠りに就いた、だが」

「地球汚染反応――幽魔獣の存在を感知し、私は再び目を覚ました」

幽魔獣。
闇に生き、闇に潜む醜悪な怪物たちの集団。
地球を毒で汚染された世界にすることを目的とし、遥か一万年の昔より存在している。

「ええと、その組織は、ゴセイナイトさんが壊滅させたんですよね」
「幹部クラスの幽魔獣は残っていないだろう、だが完全に滅ぼしたわけではない」

彼らの寿命は果てしなく、一万年がたかだか一年程度に感じられるのだという。
そのため悠長というか暢気なものが多く、積極的に地球を汚そうと考える者は少ない。
普段は各々の生息地に潜み、数百年に一度、思い出したように暴れてまたすぐに潜伏してしまう。
なので、一部の積極的な行動に出る者を斃してしまえば、あまり害はないのが実情だ。
余談だが、世界各地でその姿を偶々目撃した人々は幽魔獣をUMA(未確認生物)として記録に残している。


「もしかすれば、また表だった行動を開始した幽魔獣がいるかもしれない」
「そう考えた私は、この町を訪れた」

「……それって、つまり」
「そうだ、正確な位置は特定できていないが、地球汚染反応はこの町から発せられている」


(やはり、今回の時間枠は何かがおかしい)
幽魔獣、そんなもの、幾多の時間枠を移動したほむらをして初耳だ。
ゴセイナイトの存在もそうだ、その登場は唐突にすぎる。
考えられる要因としては。


「巴マミ、キュゥべえは?」
いつもなら、この地域管轄の個体はその殆どの時間をマミと一緒に過ごしているのだが。

「キュゥべえ?ああ、あの子ね、最近何か忙しいらしくて、滅多に顔を出さないのよ」

(怪しいわ)
常と違うキュゥべえの行動、これは黒とみて間違いない。
ほむらはありとあらゆる可能性を考慮し、あの悪魔が何を企んでいるのか考えようとして。

(いえ、やめておきましょう)

今はあまりに情報が不足している。憶測だけで不明な部分を分析しようとするのは危険だ。
今は目前の騎士からの情報取得が優先される。


「ごめんなさい、話を中断させてしまって」
「問題ない」

頷いたゴセイナイトは、話を再開させる。
「私はこのことを護星界に伝えようとしたのだが、天の塔との連絡がつかない」

天の塔とは、人間の目には見えない、護星界と地上をつなぐ架け橋。
地球を汚し苦しめる悪しき魂が出現した時、護星の戦士たちはそこを介して地上に降り立つ。
原因は不明だが天の塔、引いては護星界との連絡が付かず、地上に残った護星天使たちとも連絡がつかない状態だ。




「事情は理解したわ、ゴセイナイト」
ほむらは彼から得た情報を整理し、次に率直な疑問を口にする。


「あなたは、巴マミの言うように、本当に正義の味方なの?」
護星の使命とやらを額面通りに受け取るなら、まさにそれなのだが。

「違うな」
けれど、ゴセイナイトはそれを即座に否定し。


「私は護星の使命に従い行動している、地球(ほし)を傷つけ汚す悪しき魂に、護星の使命によって天罰を下す、それだけだ」
「……そう」
成程、それが行動原理ならば。

「その悪しき魂に、魔女は分類されるの?」
「人々を苦しめる存在であるのならば、私は誰とでも闘う」



「それじゃあ、ゴセイナイトさんっ」
これまで中々会話に入り込めず放置されていたマミが、ここぞとばかりに話に割り込んできた。

「魔女がどういった存在で、私たちの戦いがどういうものか、見学してみませんか?」
「うむ、必要なことだろう」


(暁美さん、あなたはどうする?)
魔法少女同士のテレパシー能力で、マミはほむらに尋ねる。
(できれば、あなたとは仲良くしたいのだけれど)

マミは、ゴセイナイトに明かしていない情報がいくつかある。
世のため人のためをお題目にしている魔法少女など、数えるぐらいしかいないこと。
魔法少女同士の縄張り争い、グリーフシードの奪い合い。
当然告げるべきではあるのだが、なんだか身内の恥を晒すようで、どうにも口にするのを躊躇ってしまったのだ。

ほむらはおそらく“普通”の魔法少女だとマミは見当を付けていた。
つまり、白銀の騎士の前で醜い争いをするつもりなら敵対するという意思表示だ。

(……私は)
ここが分岐点だと、ほむらも理解していた。
当初の計画に戻り町を出るか、それとも。

(それとも、この白銀の騎士に賭けるか)


「ゴセイナイト、もう一つ質問をさせて」
「なんだ、暁美ほむら」
ほむらは長い黒髪をかき上げて、挑むような視線をゴセイナイトに向ける。


「もしも」

「もしも、この星の大勢の人々を苦しめる存在が現れた時、あなたは戦うの?」
「無論だ」
この問いにもまた、ゴセイナイトは即答した。

「それが、どれだけ強大な相手でも?」
「答えは同じだ」

「そう、わかったわ」
その力強い答えに決意して、ほむらは立ち上がる。
ならば、見極めさせてもらおう。その言葉に嘘偽りはないか。

はたして、魔法少女の真実を告げるに値するか。
はたして、この世界の結末を告げるに値するか。


「巴マミ、お手柔らかにお願いするわ」
「ええ、お互いのためにね」










「そういえば、暁美さん……どうして、あなたは私の名前を知っていたのかしら」
「表札に出ていたわ」
「あ、そうよね、うん」











「それじゃあ、魔法少女見学ツアー、行ってみましょうか」
「ええ」
「問題ない」

昨日いったん解散した三人は、再びマミのマンション前に集まった。
かくして、ゴセイナイトに魔法少女のことをよりよく知ってもらうため、魔法少女見学ツアーが開始される。
さすがにゴセイナイトは目立ちすぎるので、当初の時間帯は人気のない深夜を選ぼうと考えていたのだが。

「問題ない」
ゴセイナイトはそう言うと天装術――カードを使った魔法のような技能を使用し、なんと透明化して見せた。

夕暮れ時の見滝原町を、三人は歩く。
人のひしめく繁華街、やや郊外の工事現場、弱った人間の多い病院施設。


「基本的に魔女探しは足頼み、ソウルジェムが捉える魔女の気配を辿っていくの」

嬉々として語るマミだが、ゴセイナイトが透明化しているせいで端から見れば危ない人だ。
ほむらは二人にやや遅れ、俯き加減で付いていく。

過去の統計から鑑みれば、今日遭遇するのは鳥かごの魔女か芸術家の魔女あたりだろう。
どちらもマミほどの実力があれば余裕で撃退できる、何の問題もない。
今回同行したのは、銀色の騎士の実力を測るため。もしも彼がワルプルギスの夜と対峙した時、どれほどの戦力となるのか。

昨日の戦いぶりを見る限りでは、使い魔や並みの魔女に苦戦するようなことはないだろう。
この町に高確率で現れるお菓子の魔女、或いは暗闇の魔女クラスの強力な魔女を斃すことができれば、十分な戦力と見てもよい。

あるいは、それらを瞬殺できる程の力があれば。

(……いいえ、ダメね)
高望みをしてはいけない、無論過小な評価も駄目だ、見たままを冷静に分析しなくては。
大きな希望を抱くほどに、それが打ち砕かれたときの絶望も大きいことを、己は身をもって知っているのだから。





そして、薄暗い街灯が照らす夜の公園を通りかかった時。


「……きたわ」
マミの手にしたソウルジェムが激しく点滅する。
虚空が歪み、結界の入口が露わとなる。

「行きましょう」


内部に侵入した途端に景色は一変、ここは魔女の心象世界。
不気味な烏の鳴き声、大木に斧をあてる音が、どこからともなく聞こえてくる。
舞台は鬱蒼とした深い森。今にも茂みの奥から怪物が牙を剥いて襲いかかってきそうな雰囲気だ。


「ふふっ、なかなかいい趣味をしてるじゃないの」

けれども、歴戦の魔法少女であるマミは馴れたもの、この程度で動じる様子はなく。
それは傍らに立つゴセイナイトも同様だ。

「この結界はっ……!」
意外なことに普段冷静なほむらだけは息を飲み、見た目にもうろたえていた。


「どうかしたの、暁美さん?」
不思議そうに問いかけるマミに、ほむらは。

「……巴マミ、あなたは」
――あなたは、この結界の主とは戦わないほうがいい。

そう、忠告しようとした瞬間。
木々がざわめき、俄かにひしめき“動きだす”。

「これはっ」
「しまった!」

周囲の森が地形ごと変わっていく。地面から新たな樹木が生えて壁を形成する。
大木が左右から波のように押し寄せては山のように重なり合い、視界が回り、廻る。
巴マミとゴセイナイトの姿は、木々に埋もれるようにして見えなくなってしまう。















「……参ったわね、分断されてしまったわ」


マミはより深く暗くなった異形の森を見回した。
ほむらにテレパシーで語りかけようとしたが通じない、この場にキュゥべえがいれば違ったかもしれないが。


(暁美さん、一人にさせてしまったけど大丈夫かしら)
それほど心配はしていない。魔法少女の直観か、出会った瞬間マミはほむらがそれなりの実力者だと感じていた。
この結界に奇妙な反応を示したのが気になるが、まさか魔法少女に成り立てで臆したというわけでもないだろう。


「さてと、残念ながら魔法少女同士の共闘はお預けね」
立ち止まっていても仕方がない、この悪夢めいた迷宮を抜け出すのに一番簡単な方法は、主たる魔女を狩ること。


「ゴセイナイトさん、私たちは最奥を目指しましょう」
「待て、巴マミ」
歩き出そうとする彼女を、ゴセイナイトは片腕で制した。

「……あら、ようやくお出迎えがきたようね」
僅かばかり遅れて、マミもその気配に気付く。

茂みの奥から、木々の狭間から、こちらを覗く無数の視線。
二人を囲むようにして都合七匹の異形が次々と姿を現す。

「こいつらが使い魔、魔女の僕、たいした力は持たないけど、成長すれば魔女になる厄介な連中よ」

ソウルジェムが強い輝きを放つ。
その光に導かれるようにして、巴マミは魔法少女に変身する。


「はあっ!」
「レオンレイザー!」

赤い閃光と魔法の銃弾は、一分の狂いもなく使い魔たちを打ち貫いた。

「巴マミ、先導は任せた」
「ええ、任されて」

微笑んで、それから彼女は急に思案顔になる




(……レオンレイザー)
自分の通常技にも、技名を付けるべきか否かという難題に。

つけるとしたらドイツ語がいいかもしれない。
いや、必殺技がイタリア語なのだから、統一すべきだろうか。

(迷うわね)
片手間に使い魔たちを蹴散らし、マミとゴセイナイトは最奥を目指す。

















結界内部、どこまでも続く鬱蒼とした深い森。


マミたちと分断されたほむらの前に、七匹の使い魔が現れる。
背丈はほむらの腰のあたり程しかない、白いひげを生やし、色違いの三角帽と服を身につけた、人形たち。

「この結界、この使い魔、間違いない」


ここは、眠り姫の魔女の住処。
幾多のループ、巴マミ死亡回数総合ランキング第8位に位置する強力な魔女だ。
(ちなみに第一位はぶっちぎりでお菓子の魔女)

巴マミが一人で挑んだ場合の勝率は……ゼロ。
それは、彼女の油断と慢心による部分も大きいが、この魔女との遭遇回数が少ないということもある。
眠り姫の魔女が見滝原町に現れる確率は繰り返す時間枠で十回に一回程度なのだ。


それはともかく、ここで巴マミを失うのは得策ではない。
そのためには、彼女よりも早く最奥に到達し、眠り姫の魔女を斃さなくては。


ほむらは魔法少女に変身、小銃を手にし交戦を開始――




「――うふん」


「……え?」

使い魔たちの胴体に大きな穴が空き、黒い塵となって消滅する。
道を塞ぐ大樹を破壊して、ほむらの前に何者かが姿を現す。


「あらァ?なんでこいつらグリーフシード落とさないのよ?」
声は、男のソレ。けれど言葉使いは女のソレ。

「ああっ、使い魔って奴ね!ったくもォ、いやねえ、紛らわしいのよン」
所謂おかま口調、ニューハーフという奴だろうか。


「んン?……あーら可愛いお譲ちゃん、こんばんわ」
見た目は、男どころか人間ですらないが。

馴れ馴れしい調子でほむらに軽い挨拶をする――昆虫。


深い光沢感のある黒い体色、胸を覆う銀色の鎧。全身に付着した螺旋状の工具――ドリル。
それは人間ほどの大きさで、直立二足歩行をする異形の昆虫だった。


(言葉を話す……なら、外道衆?)
昨日の鬼の怪物の仲間か、油断なく銃を構えるほむらに、昆虫は苦笑の気配を滲ませる。

「お譲ちゃん、そんな物騒なもの向けないでよン、別に怪しいもんじゃあないんだから、ねェ」



「ワタシは、宇宙虐滅軍団ウォースターの元幹部」
「準惑星のフィナルーズよ、よろしくねェ、お譲ちゃん?」






「どうやら、ここが最深部のようね」

マミとゴセイナイトは朱色の扉の前に立つ。
二人は使い魔の群れを容易に退け、既に結界の最深部、魔女の部屋前に到達していた。


「暁美さんは、どうやらまだのようね」
念のために周辺を確認するが、やはり彼女の姿はない。


「行きましょう、ゴセイナイトさん」
「暁美ほむらを待たなくてもいいのか」
「大丈夫よ」
今までどんな強力な魔女にだって負けなかったし、それに今は独りじゃないのだから。

「こう見えても、私、結構やるんですから」
はにかむように微笑んで、マミは扉の奥へと進む。





――Zzzz、Zzzz

「寝ているな」
「寝て、いるわね」


木々に囲まれた広い空間、その中心部にはガラスの棺に横たわる巨大な林檎。
林檎は真っ赤に熟れていて、顔もないのに寝息を立てている。



「これが魔女か」
「ええと、そうなんですけど」
林檎の姿をした魔女は一向に目覚める様子はなく、使い魔の姿も見えない。
なんだか拍子抜けしてしまい、マミは落胆のため息をつく。
折角、ゴセイナイトにいいところを見せようと思っていたのに。

(ガッカリさせてくれるわね)

「見ていて、ゴセイナイトさんっ」
マミは空中に十重二十重に浮かべたマスケット銃を連射しながら、棺に向かって滑るように駈け出す。


――Zzzz、Zzzz……Zz?

「あら、意外と硬いのね!」

前段命中、赤い表面にいくらかの弾痕を作るが、林檎は弾け飛ばない。
一瞬、覚醒するまで待ってみようかと思ったが、さすがにそれは驕りが過ぎる。
林檎をリボンが絡め捕り、空中で拘束。巴マミの必勝の型は完成した。



「ティロ・フィナーレ!!」
大砲ほどもある大きさのマスケット銃が、林檎の中心を打ち貫いた。

「ふふっ、楽勝ね」


それにしても弱すぎる。己の見せ場がなかったのが残念なぐらいに。
自分が対峙してきた中でも今回のは最弱クラスの魔女だ。


「どうかしら、ゴセイナイトさん」
芳しい液体が溢れたティーカップを奇術師のように取り出し、優雅に一口。
マミは憧れのメタルヒーローに感想を求めて。


「マミ、油断するな!」
「え?」
称賛か、あるいはそれに類似する言葉を期待していて。
だから、まさか叱責されるだなんて、思ってもいなくて。


瞬間、世界が揺らいだ。


「なにっ!?」
取り落としたティーカップが、音をたてて割れた。
魔女の部屋が、大地が激しく振動する。
結界の崩壊か、いや、これは違う。



――Zooooo Zoooooo




地の底から響くような、それは恐るべき憤怒の咆哮。
絶え間なく揺れる大地が裂けて、その割れ目から迫り上るのは先程斃したはずの巨大林檎。

「あ、あら、往生際が悪いのね」
マミは動悸を抑え、無理に口元を歪めてマスケット銃を構え。


「……え?」
構えたまま、首だけを動かして。


頂点になるのは熟れた林檎、枯れ木の身体、枯れ枝の肢体、纏うは純白のウエディングドレス。
眠り姫の魔女は招かざる客人に対し、その真の姿を現した。
天を衝くその巨躯は恐るべき威圧を放ち、己の眠りを妨げた小娘を見下ろす。

「……うそ」

その威圧に、巴マミは飲み込まれた。ここまで並はずれて巨大な魔女に彼女は遭遇したことがなかった。
まるで蛇を前にした蛙、脳髄が警報を発しているのに、身体が動かない。


――Zooooo Zoooooo


枯れ枝の腕、その拳が固められ、振り下ろされる。
まるで、目障りなハエでも叩き潰すかのように、無造作に、無慈悲に。


――そして。


「……あ」


















「……宇宙」

今、宇宙、と言ったか?


「宇宙、人?」
「そ、円盤乗って、地球を虐滅しにきたのよ~ン」

宇宙虐滅軍団ウォースター。
かつて地球に飛来した、宇宙(空)からの侵略者たち。
首領及び主要な幹部が護星の戦士に敗北し、すでに壊滅した組織。

「まったく、ちょ~っと休暇を楽しんでる間にモンちゃんは死んじゃうし、
仇打ちに行ったギョーちゃんまでやられるしィ」

ただ一人、たまたま休暇で保養惑星にいた幹部一人を残して。


「まさか」
冗談めかした昆虫の言葉にも、ほむらは一切の反応を示さず。

「まさか、インキュベーターの仲間」
宇宙人と聞いて、ほむらが最初に連想したのはそれだった。
あのおぞましい悪魔の仲間であるというのなら、それ即ち己の敵だ。ほむらは、人型の昆虫に射るような視線を向ける。


「インキュベータァー?」
敵意を示す黒髪の少女に、フィナルーズは不愉快そうに目を細めた。

「ちょっとちょっと失礼ねえあんた、あんな胡散臭い連中と一緒にしないでほしいわよン」
「違うというの?」

「あったり前でしょうが、宇宙人ったって、私から見ればお譲ちゃんも宇宙人よ」
「あれでしょゥ?何十億年後の宇宙の寿命がなんだの、エントロピーがどうだの大袈裟に騒ぎ立てて、種族総出で宇宙を飛び回ってる間抜けな連中」
フィナルーズは口元を手で隠し、さもおかしそうに笑う。


(……こいつは)
宇宙の寿命、エントロピー。
その単語はインキュベーターが実際に語った言葉、連中が地球に来た目的。
この昆虫、直接の関係はないのかもしれないが、何らかの情報は有しているのは間違いない。


「お~じょうちゃ~ん?」
思案顔のほむらに、昆虫ことフィナルーズは馴れ馴れしい調子で語りかける。

「そんなことより、ねえ、私迷子になっちゃって、魔女のとこまで案内してくれないかしらン」
“案内人”はいたのだが、魔女と使い魔を勘違いしてこのざまだ。

「私が案内して、それであなたはどうするの?」
「魔女が落とすグリーフシード、そいつを手に入れて来いって、ボスからの命令で、ねェ」

(……どうする)
ゴセイナイトが語っていた、かつて地球を滅ぼそうとした悪しき魂たち。
彼の言葉を鵜呑みにするつもりはないが、警戒が十分に必要な相手であることは確かか。
なんにせよ、口にする言葉は慎重に選ばなくてはならない。

ほむらは、長い黒髪をかき上げて。

「わかったわ、案内する」
「あらン、意外と物分かりがいいわねェ」

ここは、なるべく相手の意向に従うことにしよう。不用意な言で敵対することは今は避けたい。


「でも、その前に聞きたいことがあるわ」
「あらン、なにかしら?」
できうる限りの情報を引き出すまでは。


と、その時、耳障りな羽音が空に響き、黒い物体がフィナルーズの肩に留まる。
物体――黒い蝙蝠の身体に巨大な眼球がついた不気味な生物は再び飛び立つとほむらの頭上で旋回し始める。


「……ああ、なによ、わざわざ魔女退治なんてしなくてもいいじゃないの」
“案内人”の動きを目にしたフィナルーズは、嬉しそうに手を叩いた。

「あなた持ってるみたいね、グリーフシード、それも大量に、ねェ」
(!どうしてわかったの)
盾の虚空空間に収納している、別の時間枠で手に入れた大量のグリーフシードの存在を。
ほむらは内心で舌打ちをして、頭上を舞う不気味な蝙蝠を凝視してから昆虫に向き直る。

「あなたはグリーフシードを手に入れて何がしたいの、これは魔法少女が持つことでしか意味を成さない」
「知らないわよそんなこと、命令だから手に入れるだけ、使用用途なんて興味ないわ」
だから、早く渡せと催促する昆虫。当然一、二個渡して済むはずもないだろう。

「待って、グリーフシードは渡すわ、でもその前に、私の質問に幾つか答えて……」
ほむらはどうにか会話を長引かせようとして。



「……はあ」
それに対する返答は、溜息。

「話がわかると思いきや、面倒なお譲ちゃんねェ」
フィナルーズは頭部についた房状の触角を、人間でいう首を左右に振る動作のように揺らす。

それが、決裂の合図だった。


「乱・射・弾」
両肩に取り付けられたドリルが高速回転。
そこからカラフルな色をした螺旋状のエネルギー弾が発射される。


「っ!」
出鱈目な軌跡を描いて飛び回るそれらの標的は、黒髪の少女。
ほむらはすばやく身を翻してエネルギー弾を回避した。


「何をするの」
「私、交渉事とか、腹の探り合いとか、面倒事は嫌いなのよ、お譲ちゃん」

「だから、ねえ――ここで死ぬか、私に快くプレゼントしてくれるか、好きなほうを選んで頂戴」
フィナルーズは、黒髪の少女に不快なほど優しい声音で問いかけをして。






「……へえ」

小さくも、確かな驚きの声を上げる。
少女の姿が視界から一瞬にして消え、己の後頭部に冷たい銃口が押し付けられていることに。

「お譲ちゃん、中々やるわねェ?」
けれど、フィナルーズの声からは余裕の色が抜けていない。

(高速移動?催眠術?……いえ、時間停止って線もあるわねェ?)
宇宙には様々な異能を持った種族がいる、この程度は取り立てて騒ぐほどのことではない。


「質問に答えて」
「わーったわよ、降参降参、命ばかりは許してェン」
その冷淡な口調から、フィナルーズは少女を値踏む。
この少女は覚悟ができている側だ。恐らくは顔色一つ変えずに引き金を引くだろう。

「それで、何が聞きたいのかしらン」
「インキュベーターについてあなたが知っている情報、その全てよ」

「全て?」
問い返し、かと思えば、フィナルーズはくつくつと喉を鳴らして笑う。

「何がおかしいの」
「ああ、ごめんなさいね、お譲ちゃん」

成程。
インキュベーターの名を知っており、それに敵意を示す。つまりは、奴らの本当の目的を知っているということ。
まあ、宇宙警察に全銀河指名手配されている連中の目的を知らないなど、こんな辺境の星の住人くらいか。


ならば、こういうのはどうだ。
「そうねえ」


「私が知ってるのは、奴らの生態とか……ああ、そうね、弱点、とか、それぐらいね」
まあ、当然知るわけもないのだが。


「――知っているの?」
背後から、息を飲む気配が伝わる。
本人はあくまで冷静さを装っているつもりだろうが、丸分かりだ。
この黒髪の少女にとって、それは喉から手が出るほどに欲しい情報なのだろう。

(さーてと)
このまま適当に嘘を吐いて言い包めれば、喜んでこちらに協力してくれるよう誘導もできそうだが。

の、だが。
(面倒くさい)

交渉事、腹の探り合い、まして舌先三寸でうら若き少女を誑かすなど、そんな面倒で卑劣なことはご免だ。
もっと単純明快に、楽しくいこう。

「……なるほどねえ、あなたも騙された口でしょう?」
「あふん、同情するわ、あなたみたいな甘いお譲ちゃんを誑かすなんて、ほんとに奴ら最低よねェ」

「いいから、質問に答えなさい」
本当にインキュベーターに、いくら斃そうと代わりがでてくるあの忌まわしい悪魔に弱点など存在するのか。


「そんなの、直接聞けばいいじゃないの――ねえ、インキュベーター?」
フィナルーズは、眼前の何者かに話しかけるかのように言葉を吐いて。

「ッ!」
一瞬、ほんの一瞬、ほむらはフィナルーズから視線を外し。

「ほうら、甘い」
それを逃さず、フィナルーズは反転、手の甲についたドリルでほむらを貫こうと。







「残念だわ」

腕に装着した砂時計が、カチリと音を立てて開く。
再びの時間停止、フィナルーズは反転したまま動きを止める。

黒髪をかき上げて、ほむらは息を吐く。
インキュベーターの弱点、そんな都合のよいものが本当にあるのか、はっきりいって眉唾ものだ。
おそらくこちらの隙をつくための口からでまかせだろう。

「……さて」

さて、どうするか。
時間をかけて尋問すれば、本当にインキュベーターに対して有効な重要な情報が得られるかもしれないが。
ほむらはほんの一呼吸ほどの間を置いて、結論を下した。


「死んで頂戴」

凍えるように冷たい視線で、凍えるように冷たい言葉を吐いて。
ほむらは時限式の爆弾を盾の虚空空間から取り出し、フィナルーズの周囲に設置。


「あらん?」
再び動き出す時間。
捉えたはずの黒髪の少女は忽然とその姿を消し、代わりに周囲にはなにやら小型の物体が。

「うそん」

当然、避けられるはずもなく。
派手な爆音が魔女の結界に響き渡った。






「……」

爆炎を目にして、ほむらは唇を噛む。
重要な情報源になりえたかもしれない相手を屠ってしまった。
だが、少しの油断が命取りとなるような相手だ、仕様がない。

今は巴マミを生存させ、白銀の騎士の力をその目で確かめなくては。

「急がないと」
呟き、ほむらはその場から離れようとして。







「……あー、痛い、痛い、お譲ちゃん、少しは手加減してよねェ」
(なっ!)


業火の奥から聞こえる平然とした声にほむらはわが耳を疑う。
業火の奥から現れる人型の影にほむらはわが目を疑う。


(効いて、いないの?)
魔女すら斃す近代兵器が、眼前の怪物には大したダメージを与えられていない。


「あのねェ、お譲ちゃん?人間の作った兵器程度で」

フィナルーズは上品に、親しみをこめて笑い。


「――このフィナルーズが殺れるとでも思ってんのかしらァッ」
全身のドリルを回転させ、猛獣のごとき勢いでほむらに襲い掛かる。

さあ、どうする人間。
また能力を使うか、それとも先ほどより高威力の火器を使うか?
前者は大いにあり得るが、後者はおそらくないだろう。
己を仕留め損なったことこそ、その証。

この少女は覚悟ができている。同種族ですら時と場合によれば命を奪うだろう。
なら、見ず知らずの“化け物”に手心を加えるとは思えない。
能力の子細は掴めていないが、それを使われ逃げられたとして、詰らない程度で特に問題もない。

ならば、遊ぼう。
命がけの遊戯だ、せいぜい楽しませてくれ。

「逃げ切れればあなたの勝ち、死んじゃったらあなたの負けねェッ!」

「くっ」

黒髪が散る。
防御など許さない、一撃で屠ろうと迫る敵の攻撃を紙一重で回避し、ほむらは跳躍して後退。


「甘いわねェッ」
その着地の瞬間を狙いフィナルーズは両肩両膝、合計4つのエネルギー弾を放つ。

「くっ」
ほむらは敵の攻撃を限界まで引き付け、今日三度目となる時間停止を使用する。
安全に着地後即座にその場を離れ、グリーフシードを一つ使い魔力を回復。
止まった時間の中でほむらは一筋の汗を流す。逃げているだけではどうしようもない。
敵の戦闘力は未知数、こちらに決定打がない以上、ここは引くしかないだろう。


荒ぶる破壊の奔流は地面を抉るほどの大爆発を起こす。
しかし、狙ったはずの獲物には掠りもしていない。

「あらん、やっぱり当たらなかった、それじゃあ次、行きましょうか?」
それにフィナルーズは動じた様子もなく飄々とした態度で笑う、完全にこの状況を楽しんでいる。


(――まどか)
ほむらは最愛の親友を想う。
彼女のためにも、こんなところで斃れるわけにはいかないのだ。

そうして、四度目の時間停止を。


















「大丈夫か、マミ」
「ご、ゴセイナイト、さん?」


枯れ枝の拳を、その恐るべき一撃を。




白銀の騎士は、片手で受け止めていた。

「ナイトメタリック!」
レオンレイザーソードによる必殺の斬撃、魔女の枯れ枝の掌が切り刻まれ、消失する。

――Zooooo Zooooo

意味不明の狂声を発し、魔女は憤怒も露わに地団太を踏む。
その度に大地が揺れ、木々が恐怖を引き連れてざわめく。

けれど、護星の騎士は一切の揺るぎなく。


「ここからは、私のターンだ」
力強く言い放つ彼は、レオンセルラーを手にして展開。

――Gotcha

「チェンジカード!」

白銀の獅子が描かれたカードをセットする。


「天装ッ!!」


――Change Groundion


「え、ええっ!?」
その時、不思議なことが起こった。
常識外の世界に身を置くマミですら、その神秘に驚嘆し声を出せない。

ゴセイナイトの体が文字どおりに変形し、巨大な獅子の頭部となったのだ。
これこそがゴセイナイトの『ヘッダー』としての姿、グランディオンである。


――グオオオオオン

勇壮に吠え猛る獅子は浮上、薄闇に包まれた空を縦横無尽に飛び交い、眠り姫の魔女に突撃。
腹部を打たれた魔女はよろめき、樹木を薙ぎ倒しながら仰向けに倒れた。

「……すごい」
完全な傍観者となってしまったマミは、ただ棒立ちして魔女と騎士との闘いを食い入る様に眺めて。


それだけにとどまらず、護星の騎士はさらなる力を見せつける。
獅子の雄叫びに呼応してか、魔女の結界を、世界を遮る分厚い壁を砕き、虚空から鋼の車両が現れる。
高さ20メートル、幅30メートルを超すモンスターマシンはそのまま獅子の頭部と接触、一体となって完成した。

鋼の獅子、その名は。



「グランディオン、降臨!!」
眩い白銀と黒のボディ、六輪のタイヤで魔女の結界を踏み鳴らすその姿は、まさに百獣の王に相応しい威容を湛えている。


――Zzzooooo Zzzooooo

切り刻まれた魔女の枯れ腕が脈打ち、完全な形に再生された。
眠り姫の魔女は林檎の顔を限界まで赤くして獅子に突進を仕掛け、それをグランディオンは望むところだと迎え撃つ。
鋼の獅子も確かに巨体ではあるが、魔女はその倍以上はある。

真正面からのぶつかり合い、その軍配は。


――グオオオオオン
――Z、zz、zooooo 

再びの無様な転倒に、熟れた林檎は着色されたかのような青色に変わる。



――Zzooooo Zzooooo

形勢が不利と悟った魔女は力任せの単調な戦法を捨て、今度は搦め手を使いだす。
大地から無数の太い蔓草が伸び、グランディオンの動きを封じ込めようと絡まり付く。
この異空間はすべてが魔女の力によって生み出された世界、このような芸当はできて当然だ。
眠り姫の魔女の行動は正しい、あのまま力比べをしていればグランディオンには勝てなかっただろう。

「これでお前のターンは終了か」
けれど、残念なことに彼女はたった一つの誤算をしていた。




「ならば、ここからが私のターンだ」
この程度の小細工で、白銀の騎士を揺るがすことはできない。
グランディオンは旋回、百万馬力で蔓草を根元から引き抜き、研ぎ澄まされた鋭い爪が魔女の縛めを完全に切り裂く。
林檎は青から黄色、黄色から紫と忙しなく色を変える。冷静さを失った魔女に次のターンは回っては来ない。



「ナイティックパワー・チャージ!」
眩いばかりの粒子がグランディオンに集まってゆく。


「地球(星)を傷つけ汚す輩は、地球と私が許さない!」


――グオオオオオン

獅子が吠える、それは勝利の咆哮。

「グランディオンイレイザー!!」




――Z……ooo……o……


六連ミサイルとともにグランディオンの口から強烈極まりないゴセイエネルギーが放出され、その光は魔女を焼き尽くす。
火花を散らし、跡形も残さず崩れ落ちてゆく眠り姫の魔女。
からんと小さな音がして、黒い宝石、グリーフシードがマミの足元に転がってきた。


「チェンジカード、天装」

――Change goseiknight



「巴マミ」


人間サイズ、ゴセイナイトに戻った白銀の騎士は地面にへたり込んでこちらを見上げる魔法少女に言う。

「どのような敵であろうと侮るな、命取りになるぞ」
「……」

息を整えるように深呼吸してから、マミはふっと笑い。

「……きょ」
「きょ?」


「巨大ロボまで、でるなんて」
なにそれ、超燃える。

マミは安堵したように倒れ、全身を弛緩させて地面に身を預けた。
鼓動が早い、胸が高鳴る。それは魔女に感じた恐怖によるものではなく。

(すごい、すごい、すごいわ!)
幼い日に画面の向こうで繰り広げられたドラマを、本物を、実際この目で見られるなんて。

「ごめんなさい、ゴセイナイトさん、少し、油断してたわ」
「戦士としてあるまじき行為だ」
「ええ、そうね」

マミは立ち上がる、結界が崩壊する前に抜け出さなくては。

「行きましょう、ゴセイナイトさんっ!」
声も明るく巴マミは走りだす。そうしたくてたまらなかったのだ。
身体が軽い、こんな気持ちになるのはいつ以来だろうか。
心の中、燃えたぎる思いのままに少女は叫ぶ。




(もう、何も怖くない!)


















「……どいうことかしらン、これ」


時間停止――それをするまでもなく、フィナルーズはその動きを止めていた。

湧き上がった影がフィナルーズの脚に纏わりつき、その動きを束縛している。
事実ありのまま、そうとしか表現のしようがない。

「しゃらくさいわアンッ」
怒号とともにフィナルーズは全身のドリルを回転、怪力を発して影を振り解く。



「――へえ、私の縛りを解くだなんて、さっすがは自称宇宙人」
「なにそれ、私褒められてんの?」
「ええ、すごいすごーい、あ、拍手もほしい?」

「はンッ」
短く吐き捨て、フィナルーズは突如として現れ己の遊戯に水を差した何者かを睨む。

「あなたは、一体」
ほむらもまた、己の知らない新たな登場人物の出現に戸惑いの色を隠せない。

黒い装束――軍服?――を身に纏った可愛らしい少女。
身長はほむらよりもやや低く、流れるような瑞々しい赤毛が特徴的だ。


「このお譲ちゃんのお仲間ってわけェ?」
「ふふん」
異形の昆虫を前にして、赤毛の少女は不敵な笑みを絶やさずに無い胸を張る。





「そうよ、私は」

「夢と希望に満ち溢れた、純真無垢なうら若き乙女――」







「プリティ☆マジカル、ルサルカちゃんっ」

きらりん。どかーん。
ルサルカちゃんは無意味に一回転して、無意味なポーズを作ってみせる。
背景で、星が爆発した。



「……」
「……」


痛痛しい沈黙が、この空間を支配する。
ややあって。

「あなた、いろんな意味で何者なの?」

「だーかーらー、処女で乙女でプリティ☆マジカルなルサルカちゃん、だっての」
プンスカプンスカ、頬を膨らませた少女はわざとらしく怒ってみせる。


「……まあ、なんでもいいわよ、それで?そこのお譲ちゃんに代わって、あんたが私と遊んでくれるわけェ?」
些か気勢は削がれたものの、未だ戦意を失わないフィナルーズは挑発するように口端を歪める。

「うーん、そうしてあげたいのも山々なんだけど、私にも色々事情があってね」
傍らのほむらにウインクを送り、赤毛の少女もまた口端を歪めて。



「――Yetzirah(形成)」

それは云わば、少女にとっての魔法の呪文。
呟いた瞬間、大人の背丈程もある巨大な鉄製の車輪がフィナルーズの頭上に顕現する。

「まさか」
その恐るべき重量、落下してくる物体に、フィナルーズは。

「これが切り札とは、言わないよわよネェ」
右手についたドリルを掲げ、接触した車輪を粉々に粉砕して見せた。


「あ、そう?それじゃあ、もーっとあげる」
赤毛の少女は右の人差し指をまるで魔法の杖のようにくるくると回す。
すると、先程と同じ鉄車輪が今度は合計八つ、八方から昆虫を轢き殺そうと回転して迫る。

「なっ、なにィ!?」

フィナルーズは驚愕。




「て、まあ、驚くほどじゃあないんだけどねェ」
したふりから一転、両肩、両手、両膝、両肘のドリルを回し、そこから発射されたエネルギー弾で鉄車輪
の群れを微塵に粉砕してしまう。

「……ふん」

巻き上がる粉塵、けれど昆虫は詰まらなそうに顔を顰めた。

「どうやら、私の負けみたいねェ」
赤毛の少女と黒髪の少女、どちらの姿も視界から消えている。
逃げられた、ならば遊戯は己の負けか。




《何を遊んでいるのだ、フィナルーズ》
「あらン?」

その時、我関せずと空を舞っていた蝙蝠から声が響き、フィナルーズは顔を上げた。

この蝙蝠――ビービ虫は一種の通信媒体機能と探知機能を取り付けられている。
先程の黒髪の少女が大量のグリーフシードを所有していたのがわかったのは、こいつの探知機能のおかげだ。

「あら、ボスじゃないの、何か御用かしらン?」
《任務はどうした》

「これからよこれから、ここ、無駄に広くて迷っちゃってねェ」
すっかり忘れていた、などとは口にせず、フィナルーズは与えられた任務を遂行しようと一歩を踏み出して。

「あっら~ン?」
周囲の風景が揺らぎ、崩れていく。これは。

「あらあら、なによ、いつの間にか魔女、やられちゃってるじゃあないの」
三人目の魔法少女がいたということか。これでは任務、グリーフシード入手を果たせない。

――魔女を斃した魔法少女から奪い取るか。


「どうする、ボス?」

《……もうよい、帰還しろ》

「りょーかいよン」
消えゆく木々の隙間、何もない空間に突如として赤い裂け目が現れ、フィナルーズはそこに吸い込まれるようにして姿を消す。

「お譲ちゃんたち、縁があったらまた逢いましょう、ウフン」














「無事だったようね、暁美さん」
「ええ、どうにかね」

結界は完全に消滅し、三人は現実世界、夜の公園へと戻ってきた。
それが示すのは、つまり。

「巴マミ、あなたがこの結界の魔女を倒したの?」
「いいえ、危ないところをゴセイナイトさんの巨大ロボに助けてもらったの」
「巨大ロボではない、グランディオンだ」
「そう」

何か不穏な単語を耳にした気もするが、とりあえず今は聞き流すことにした。
ともかくも、眠り姫の魔女を斃すとはゴセイナイトの実力は相当なようだ。
その戦いぶりを実際目にできなかったのが悔やまれるが。


(……あの娘は、どこ?)
そういえば、姿が見えない。
不可思議な影の魔法を使い、昆虫の動きを止めた赤毛の少女。


「きゃー、ボインボインっ、うっらやましー」
「ひゃあっ!?」
(あ、いた)

もみもみ。もみもみ。
「てへへー」
背後から忍び寄り、赤毛の少女はマミの豊満な胸に不意打ちを仕掛けている最中だった。

「ちょ、なにするのよ、というか誰よあなたっ!」
「にゃははー」
少女は顔を真っ赤にしたマミから猫のようにすばしっこく離れて。


「あなたがこの町の魔法少女、巴マミね、噂は聞いてるわ」
「!……そう」

その言葉にマミは顔を引き締めた。魔法少女を知る存在など限られている。

「あなたも魔法少女なのね?」
「ええ、そうよ」

つまりは、同類。
赤毛の少女は無邪気に微笑み、自分の名を告げる。




「私はルサルカ、ルサルカ・シュヴェーゲリンよ、よろしくね」

その裏側に、邪悪な本性を隠して。

三人は気が付くことはなかった。気が付けるはずもなかった。
結界で暴れる異形の魔女などよりも、もっとやっかいな生粋の“魔女”が現れたことに。















あとがき




 ――魔女図鑑

 Schneewittchen

眠り姫の魔女。その性質は夢想。

いつか訪れるであろう王子様を夢見て、ひたすらに惰眠を貪る魔女。
眠りを邪魔されることを何よりも嫌い、一度暴れ出すと手がつけられない。
そうなれば誰であろうと容赦はしないが、目覚めたときに最初に目にした
のが彼女のお眼鏡に適う“王子様”であれば、途端に大人しくなってしまう。



 Zwerge(Doc、Grumpy、Happy、Sleepy、Bashful、Sneezy、Dopey)

眠り姫の魔女の手下。 その役割は雑用。

常に七人一組で行動する働き者の使い魔たち。
使い魔にしては珍しく一人一人に個性があり名前まであるが、
主である眠り姫からは纏めて“小人”と呼ばれる不憫な使い魔たち。






敬語マミさんて以外と書きにくい。



PCゲームソフト、 Dies irae ~Acta est Fabula~より純愛ロリビッチこと
『魔女の鉄鎚』ルサルカ・シュヴェーゲリン参戦です。

まさしく影のヒロイン、水底から高みを見上げて手を伸ばす報われない地星さん。


準惑星のフィナルーズはオリキャラです。
一応ゴセイジャー序盤の敵、ウォースターの生き残りという設定にしていますが。
強さとしては形成位階のヴィルヘルムと根性補正のない螢を足して二で割ったぐらいでしょうか。
……diesを知らないとわけわかんないですね、すいません。


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