5年前に自殺した高校生の遺族が、「中学時代にいじめを受けた」と訴えた裁判で、名古屋地方裁判所は「悪質ないじめを把握できたはずなのに対応を怠った」と指摘し、学校側に1400万円余りの賠償を命じました。
この裁判は、平成18年に愛知県岩倉市で、高校2年生だった高橋美桜子さん(当時16歳)が自殺したことを巡って、母親が「中学時代に同級生から受けたいじめが原因だ」として、名古屋市の中学校を運営する学校法人の「市邨学園」などに損害賠償を求めたものです。判決で、名古屋地方裁判所の長谷川恭弘裁判長は「同級生から『死ね』と言われたり、靴に画びょうを入れられたりするなど、およそ半年にわたって耐え難い精神的苦痛を受けた」と指摘し、悪質ないじめがあったと認めました。そのうえで「担任の教師が画びょうを入れられたことを本人から聞いており、悪質ないじめが把握できたはずだ。学校側が何の対応もせずに放置した結果、高橋さんは多重人格の症状が現れる病気にかかり、闘病生活の末に自殺した」と述べ、いじめと4年後の自殺の因果関係を認めて市邨学園におよそ1490万円の賠償を命じました。判決のあと、記者会見した母親の高橋典子さんは「いじめを裁判所が認めてくれてうれしいです。娘には『いじめを認めてくれたよ、よかったね』と伝えたい」と話しました。また弁護士は「これまでいじめを受けた生徒が在学中に自殺したことを巡る裁判はあったが、今回のようにいじめを受けてから4年後に自殺したケースで学校の責任が認められたのは珍しいのではないか」と話しています。一方、判決について市邨学園は「詳細な判決文が届いていないので、コメントを差し控えたい」としています。