陸自放水ヘリ部隊が状況語る 原発上空「不安よぎった」放水活動のデモンストレーションをする陸上自衛隊のヘリ=19日午後、千葉県の陸上自衛隊木更津駐屯地 福島第1原発3号機に水を投下した陸上自衛隊第1ヘリコプター団の飛行隊長らが20日までに、共同通信などの取材に初めて応じ、当時の状況を語った。放射線への恐怖心はなかったとしながらも「原発上空では不安がよぎった」「全員に異常がなくほっとした」との心情も吐露。隊長らの話から“決死の任務”を再現した。 取材に応じたのは、CH47ヘリ2機による水投下を指揮した第104飛行隊隊長の加藤憲司2佐(39)、ヘリの機長を務めた伊藤輝紀3佐(40)、前原敬徳1尉(37)ら。3号機の使用済み燃料プール冷却のため、3月17日午前、4回にわたり計約30トンの水を投下した。 第104飛行隊に「命令」が出たのは放水当日の早朝。加藤隊長は隊員らに「何か不具合があれば無線で連絡をくれ。しっかりやろう」と伝え、自らもヘリの1番機に乗り込んだ。 健康診断を済ませた隊員は、ヨウ素剤を服用して搭乗。1番機の伊藤機長は「恐怖はなかったが、防護マスクに防護衣、鉛のスーツも着て動きづらく、しっかり放水できるのか不安はあった」。 ヘリ2機が霞目駐屯地(仙台市)を離陸したのは午前8時56分。約80キロ南の3号機は折れ曲がった建屋の鉄骨をさらけ出していたが、2番機の前原機長は「建屋から煙が見えても動揺はなかった」。 ヘリ2機は高さ100メートル弱、時速約37キロで3号機に近づく。整備員がヘリ底部のハッチに取り付けたアクリル板越しに水の投下位置を確認する。9時48分。「放水用意―。放水」。伊藤機長の指示で別の整備員がボタンを押し、3号機に向けて水を浴びせた。 前原機長は「達成感でいっぱいだが、あまり思い返したくない。原発上空で実際に(水を)まくところまで行くと、少し不安がよぎった」と語った。 午前10時に放水4回を終え、除染後にヘリ2機が霞目駐屯地に戻ったのは午後2時9分。加藤隊長は「全員に異常がなかったのを確認して初めてほっとした」と振り返った。 【共同通信】
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