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「団体」条件で孤立世帯も 仙台市仮設住宅入居申請
 | 仙台市内で建設が進む仮設住宅=18日、仙台市若林区 |
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仙台市が仮設住宅の入居について団体での申請を原則にしていることで、逆に孤立する世帯が一部で生まれている。団体での受け付けは「孤独死」などを防ぐための地域コミュニティーの維持が狙いだが、そこから漏れてしまうケースも生じているようだ。
「誰にも声を掛けられなかった」。若林区の避難所で暮らす看護師の女性(23)は、申請のグループ作りに誘われなかった。同じ避難所では、申請のグループが幾つもできた。「近所の人とは顔を合わせればあいさつをする程度。なぜ誘われなかったのか分からない」と気になった。 障害者や要介護者がいる家庭は、例外的に単独申請が認められる。女性は母親の体が悪く、単独申請に切り替えた。「無理にグループを作っても、いずれうまくいかなくなったかもしれない」。今はそう感じている。 団体申請の採用は、阪神大震災で問題になった仮設住宅内での孤独死を防ぐ狙いがある。コミュニティーを維持し、見知らぬ同士が隣近所にならないための配慮だ。 当初、市は受け付けを10世帯以上の団体に限った。ただ、1次募集では371戸に対し、入居者は72戸にとどまった。「10世帯集めるのは難しい」といった指摘を受け、9〜18日の2次募集では5世帯以上に緩和した。 緩和措置で、親類や仲間同士での申請がしやすくなる一方で、焦りを感じる人もいた。 宮城野区の避難所で生活する会社員の女性(42)は「取り残されるのでは」という思いから、慌ててグループ作りに加わった。しかし、仮設入居後の生活のルールを決める過程で意見が衝突したためグループを抜けた。女性は「人間関係がこじれ、嫌な思いをした。震災前は仲のいい近所同士だったのに」と漏らす。 女性は単独世帯でも申請可能な、仮設住宅扱いの民間アパートの借り上げを受けることにした。「互いに神経質になっていたかもしれない。でも、もう元の地域の人たちと一緒にいたいとは思わない」と話す。 若林区内の町内会の男性役員(70)は、避難所の運営を手伝う中で孤立しそうな世帯があることに気付いた。「『息子が昼から酒を飲んでいる』といった悪い評判が立つとグループへの声掛けはない」のが現実だという。 役員は仲介役になり、孤立しそうだった家族をグループに入れたこともある。「町内会としてやれることはやっているが、今後も同様に孤立する家庭が増えるかもしれない」と語る。 市が2次募集したのは表の通り。宮城野区、若林区の市東部に建つ新規のプレハブ住宅には、例外を除き単独世帯の申請はできない。あすと長町の仮設住宅や公務員住宅は単独でも申し込めるが、市東部の被災者の中には「地元から遠い」といった理由で敬遠する向きもあり、受け皿になりきれない部分もあるようだ。 担当する市保険年金課は「地域の人同士でまとまるものと考えていた。グループ作りが難航する事態は想定できなかった」と説明。応募状況次第で3次募集をするかどうかを決めるが、「さらに募集する場合には、単独世帯の申請についても検討したい」としている。 (佐藤夏樹)
2011年05月19日木曜日
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