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卓上四季

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起立条例(5月18日)

信州・安曇野の美しい自然と主人公「陽子」を演じる女優井上真央さんのキラキラした笑顔が楽しみで、NHKの連続テレビ小説「おひさま」を毎朝欠かさず見ている▼今週からは、念願の教師になった陽子の奮闘を描く。1941年、時代は戦時色を強め尋常小学校は国民学校になった。きのうの回、陽子先生は校庭の祠(ほこら)の前を素通りしかけ、慌てて戻り一礼した。それは「奉安殿」。教育勅語謄本や天皇・皇后の肖像写真「御真影」を収めていた▼文部省は1891年(明治24年)、祝日大祭日に小学校で御真影に最敬礼、万歳奉祝するよう省令を発した。やがて学校は失態を過剰に恐れるようになり、災害時に御真影を守ろうとして死亡した教職員の殉職は、先の敗戦までに20件以上に及んだ(「続・現代史資料 教育」みすず書房)▼大阪府の橋下徹知事が代表を務める「大阪維新の会」の府議団は府立学校の入学式などで君が代を斉唱する際、教職員に起立を義務づける条例の制定を目指している。なんとも息苦しい。「国旗国歌法」制定に当たって、政府は「強制しない」と言明していたではないか▼ドラマでは、「子どもに生きる喜びを」と抱負を語る陽子先生に向かって、ベテラン教師は将棋駒の歩をつまみ「われわれの仕事はこれを作ることだいね」とうそぶいた▼心をひと色に塗りつぶす危うさは歴史が教えてくれている。

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