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2011年5月17日(火)付

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夏の節電―使い方改める契機に

この夏の懸案だった首都圏の電力不足が、大きく改善される見通しとなった。ガスタービンなど緊急電源の増設に加え、震災で被害を受けた大型火力発電所の復旧作業が進み、操業のめどが立ったからだという。[記事全文]

パレスチナ―2派合意を和平の力へ

約4年にわたって、分裂、対立していたパレスチナの主要勢力のファタハとハマスが、対立を解消して、統一政権発足に向けて動くことで合意した。ファタハはパレスチナ解放機構(PL[記事全文]

夏の節電―使い方改める契機に

 この夏の懸案だった首都圏の電力不足が、大きく改善される見通しとなった。ガスタービンなど緊急電源の増設に加え、震災で被害を受けた大型火力発電所の復旧作業が進み、操業のめどが立ったからだという。

 これまで25%とされてきた政府によるピーク時の最大使用電力の削減目標も、15%へと改められた。

 猛暑だった昨夏、冷房のない部屋で熱中症などから亡くなる高齢者が相次いだことを思うと朗報だ。経済活動への影響についても、緩和されるにこしたことはない。

 ただ、供給能力の増強ではかなり無理をしている。廃止予定だったのに慌てて再稼働させた古い設備なども含まれており、支障が出ないとも限らない。

 浜岡原発の停止で、中部電力管内の電力供給にも黄色信号がともっている。これまで余裕があった西日本が、玉突き的に苦しくなる可能性もある。油断は禁物だ。

 家庭や中小企業の節電対策はこれからだが、大企業ではすでに様々な節電対策が打ち出されている。

 蛍光灯の間引きといった細かな工夫から、夏休みの長期取得、輪番操業など大がかりなものもある。働き方や事業態勢そのものの見直しにもつながる動きだ。一過性の対策と考えず、経営の効率化や不断の見直しに役立ててほしい。

 菅政権は、原発事故を契機にこれまでのエネルギー政策を見直す姿勢を見せている。であれば、節電についても中長期的な構造改革を視野に入れた取り組みが望まれる。

 過去に電力自由化をにらんだ新規事業者の参入や電力取引市場の開設などが図られたが、うまく機能していない。もっと発電業者が活発に電力を融通しあえる仕組みを整えるべきだ。

 欧米では、省エネ設備や環境事業を債券化することにより、初期投資の負担を軽減したり、民間資金を活用したりできる金融手法も開発されている。節電を通じた経済活性化を考えるうえで一考に値する。

 今回は、冷房需要で電力使用がピークになる日中をいかにコントロールするかが、知恵の絞りどころだ。やみくもに「我慢」を強制する節電には意味がない。必要以上に夜間照明を落とし、事故を誘発するようなことは避けなければならない。

 原発事故は、電気の大切さと利用者として私たちが負うべき責任の重さを示した。日差しが日々強まるこの季節、限りある資源を賢く使う契機にしたい。

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パレスチナ―2派合意を和平の力へ

 約4年にわたって、分裂、対立していたパレスチナの主要勢力のファタハとハマスが、対立を解消して、統一政権発足に向けて動くことで合意した。

 ファタハはパレスチナ解放機構(PLO)の主流派で、故アラファト議長の後を継いだアッバス議長が率いる。ハマスはPLOには属していないイスラム政治組織である。

 和解は自治区の正常化の第一歩であり、イスラエルとの和平につながるよう期待したい。

 ファタハは長年自治政府を主導してきたが、5年前の自治評議会選挙で、ハマスが勝利し、政権をとったことから対立が始まった。ヨルダン川西岸を支配するファタハとガザを支配するハマスに分裂していた。

 和解が実現した背景に、自治区で起こったパレスチナの統一を求める民衆のデモがあった。

 中東各地で強権体制に民主化を求める民衆の動きは、パレスチナでは民衆不在で対立を続ける両組織への批判となった。

 イスラエルとの和平実現もパレスチナ民衆の願いである。統一政権づくりとともに、中断している和平交渉再開に向けて統一的な立場を詰めて欲しい。

 ファタハはイスラエルを認め、パレスチナ国家との二国共存を支持するが、ハマスはイスラエルの存在を認めていない。イスラエルの占領終結と引き換えに、ハマスがイスラエルの存在を認める必要がある。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、今回の和解を「和平への打撃だ」と非難した。しかし、西岸のファタハとだけ和平を結んでも、ガザのハマスが和平を拒否していては、イスラエルに平和はやってこない。

 一方、米国のクリントン国務長官はハマスがイスラエルの承認や暴力放棄などの条件を認めないかぎり連立政権を支持しないという立場を語っている。

 しかし、パレスチナの強硬派を代表するハマスに、イスラエルの生存権を認めさせ、武装闘争を放棄させるために和平交渉が必要なのではないだろうか。

 PLOがイスラエルを承認したのは、1993年のオスロ合意のときである。イスラエルの強硬派であるネタニヤフ首相がパレスチナ国家を条件付きで認めたのは、2年前に首相に就任した後のことだ。

 ハマスが政権を担うことを拒否するのではなく、国際社会が関与していく必要がある。

 オバマ大統領は昨秋、イスラエルとパレスチナの間で1年以内の和平合意をめざすよう呼びかけた。今回のパレスチナの和解が追い風になってほしい。

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