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今月の注目記事
  • 【特別企画】日本「復興」への道


    「生命の安全保障」の視点で国のかたちをつくり変える

    船橋洋一(ふなばし・よういち:ジャーナリスト)

     元朝日新聞社主筆であり、日本記者クラブ賞やサントリー学芸賞など、数々の賞を受賞してきたジャーナリストの船橋洋一氏が、かつてない大災害によって見えてきた日本の強さと弱さ、そしてこの戦後最大の危機から日本が立ちあがる道を探る。

     船橋氏は、今回の東日本大震災は、日本の時代精神に大きな変化を引き起こす、歴史の分岐点になるだろうと指摘する。没落への恐怖と再生への希望とが()い交ぜになっている日本の状況の中、『国民一人ひとりが「日本の再生に向かって、自分は何をすべきだろうか」と考え始めているように感じます。国民がここまでの覚悟を胸に抱いたのは(中略)戦後の長い歴史の中でも初めてのことかもしれません』と語る。

     また、「生命の安全保障」という観点から、国のかたち、統治の機能やリーダーシップのあり方を決定していく「生命の安全保障国家」への国家構想を追及すべきと主張する。


     

    ●東北復興へ――『支え合う社会』を築く原動力に

    井上義久(いのうえ・よしひさ:公明党幹事長、衆議院議員)

     震災直後の3月13日未明、公明党幹事長の井上氏は、車で16時間をかけて宮城県仙台市に入っていた。壊滅的被害を受けた仙台市若林区に隣接する宮城野区に自宅を構える井上氏。現場を歩き、田んぼも畑も住宅も根こそぎ流された惨状を目にし、深い衝撃を受けたという。すぐに現地の首長らと会見し、深刻な燃料不足に陥っている悲痛な訴えを聞く。

    早速、国会内で重油やガソリンの確保の要望を出し、燃料を届けるタンクローリーが迅速に通行できるよう緊急車両として認定させるなど、公明党は野党の立場にあっても現場のニーズをくみ取り意味ある仕事をしてきたことを紹介する。「大衆とともに語り、大衆とともに戦い、大衆の中に死んでいく」公明党の立党精神のままに、東日本大震災後の日本に「支え合う社会」を築いていく決意を述べる。


     

    ●住民の意思を尊重した復興の町づくり≠

    山村武彦(やまむら・たけひこ:防災システム研究所所長)

     山村武彦氏は40年以上にわたり、世界各地で災害、事故、事件等150カ所以上の現地調査を実施し、社会の実践的防災・危機管理能力向上に貢献してきた。被災地の復興は、今後どのように進めていくべきなのか。

     山村氏によれば、復興とは「新しい考え方やコンセプトを入れて、前よりもよい町をつくる」ことであり、復興を考えるときに重要なことは「住みやすさや安全性のみならず、産業や経済が発展する余地のある町づくりをすること」なのである。

     復興を成功に導くいくつかのポイントを紹介しながらも、いずれにせよ大切なこととして「住民の意見をヒアリングし、その意見を取り入れること」を挙げる山村氏。本当の復興のためには、住民の意思を尊重した町づくりを行うことが欠かせないという。


     

    ●希望のメッセージ

    鎌田實(かまた・みのる:医師、作家)

    坂東眞理子(ばんどう・まりこ:昭和女子大学学長)

    内館牧子(うちだて・まきこ:脚本家)

    吉岡忍(よしおか・しのぶ:ノンフィクション作家)

    復興に向けて歩み始めた被災地へ、四名の識者から寄せられた「希望のメッセージ」。

    「東北に向かう飛行機の中で、僕は僕を育ててくれた父・岩次郎さんを思いました。(中略)僕は岩次郎さんに拾われなかったら、生きられなかった。東北の岩次郎さんに救われたから、今度は僕が東北に恩返しをしたい」(鎌田實氏)

    「被災地の方々に向かって『がんばって』という言葉は、他人事のようで到底言えるものではありません。皆さんを思い、私たちも今やるべきことをそれぞれの場で精一杯やります。ですから、一緒にがんばりましょう」(坂東眞理子氏)

    被災地の方々へ、日本社会へ、心からの思いが言葉に託されている。


     

     

    【新連載対談@】明日の世界 教育の使命

    ヴィクトル・A・サドーヴニチィ(モスクワ大学総長)

    池田大作(いけだ・だいさく:創価学会インタナショナル会長)

      池田会長とモスクワ大学のサドーヴニチィ総長との新連載対談「明日の世界 教育の使命」。20世紀は、教育の手段視が人間の手段視につながり、多くの悲劇が起こった。21世紀に「生命尊厳」と「人間尊厳」の思潮を高めるために「21世紀の人間を考察する」とのテーマの下、今、再びの語らいが始まる。

     「21世紀の最初の10年の評価」という話題から対話はスタートする。経済至上主義の横行、孤立する個人など、21世紀の現代を取り巻く問題点に言及した上で池田会長はこう語った。

     「現代文明の病理といっても、もともとは人間が生み出したものです。であるならば、どれだけ闇が深かろうと、人間が持っている智慧と力をともに発揮し、勇敢に取り組むなかで、必ずや光明を見つけ、大きく輝かせることができると、私は信じています。これが仏法の考えでもあります」

     また、2011年はモスクワ大学創立者のミハイル・ロモノーソフの生誕300周年の佳節を迎えることから、話題はモスクワ大学と創立者のミハイル・ロモノーソフに及ぶ。

     「モスクワ大学は、決して形式的にロモノーソフの名を冠しているわけではありません。これは、私たちが彼の遺志を受け継いでいくとの決意の表れです」とサドーヴニチィ総長は創立者に対する思いを話した。


     

    【特集】「原発危機」と放射能

    放射能を「正しく恐れる」ことが大事

    山下俊一(やました・しゅんいち:長崎大学教授)

     史上最大級の原発事故となった福島第一原発事故。山下俊一氏は20年にわたり、チェルノブイリ原発事故の被曝者治療に取り組んできた。山下氏にこの未曾有の事態をどう受け止め、行動するべきかを聞いた。

     山下氏は、チェルノブイリ事故と福島第一原発事故を同一視するべきではないと指摘。放射能の危険性について全くアナウンスされなかったチェルノブイリに比べれば、福島は飛散している放射線物質の数値も限定的であり、安全管理は充分なされているという。「放射線は目に見えない。匂いもせず、音も聞こえない。大切なのは、放射線を『正しく恐れる』こと」が大事なのだという。

     また、震災の復興と同時に、原発事故の復興も同じように大切とし、福島の支援センターを作るべきだと主張した。現在の事態を考える上で重要な論考となっているお勧めの一本。


     

    【特集】 手塚治虫『ブッダ』の魅力

     日本マンガ界の巨匠が12年の歳月をかけて完成させた最高傑作。映画公開によせて、二人の識者がその魅力をひもとく。

     国際日本文化研究センター名誉教授の山折哲雄氏は、息子ラーフラとの関係から見たブッダの人物像と現代の日本人との関係性について考察を寄せる。また、映画史家の四方田犬彦氏は、今回の映画化が『ブッダ』への関心をもう一度呼び覚ますことを期待していると話す。さまざまな登場人物たちが織りなす『ブッダ』の世界は、現在社会において読み直されるべき予言的作品であり、この映画が国境を越えて見られることで、世界中の憎悪が軽減されればと期待を寄せる。

     

     

     

     

     

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