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今季の安藤美姫は、フリーは全6大会ノーミスで1位と、確実性が評価されてきた。早々と5月のサンクトペテルブルク(ロシア)のアイスパレスでやる東日本大震災の被災地に送る義援金を活動の慈善公演にも参加を表明するなど、美姫らしい選択だと感心させられた。しかし知る人ぞ知る、練習嫌い。いつも練習量は他の選手と比べて少ない。それも自分のペースか? 果たして、世界選手権と言う大きな大会で通用するかが見ものだった。ジャンプの天才は、大人の女性らしさを出しながら、3つのジャンプの要素を確実にこなし、得意とするところをプログラムの中でいかんなく発揮し、完成されつつある演技を見せ2位発進した。
フリーはピアノ曲。きれいなイメージを求めて彼女は氷上で舞う、女性らしさも出てきて大人の演技になって来た。時々、気持ちの“アップダウン”は周囲を不安にさせるものの、氷上ではスポーツウーマンとしての姿がふさわしいような感じもする。終盤の5連続のジャンプに観客&ジャッジは期待。最初のコンビネーションジャンプを成功。次のヤマ場の3回ルッツ―3回転ループの「3+3」を期待したのではないだろうか? しかしここもニコライ・モロゾフ・コーチの安全策が見えた。グリーク作曲「ピアノ協奏曲イ単調」に乗り滑った。スピードは少し控えめ、確実なジャンプを跳ぶ為だろうか? ダブルアクセル―3回転トーループの連続ジャンプの2つ目が2回転になり、ステップアウトしての減点だけ。終盤の5連続ジャンプはいつもより迫力には欠けたが、やり抜いたことは立派だった。4分間のフリーが3分間位に短く感じるのは、この5連続ジャンプのせいなのか? それだけ全ての面で充実していると言うことなのか? 今シーズンはGPファイナルを除き、各大会で優勝出来た事が、五輪金メダリストの金妍兒(キム・ヨナ、韓国)に勝った理由だろう。「2回目の世界選手権金メダル。おめでとう」と言いたい。
ヨナは今季から練習拠点を米ロサンゼルスに移し、コーチもミシェル・クワン(米国)の義兄にあたるピーター・オペガード氏に変更し、新しいスタートを切った。バンクーバー五輪以降、公式大会には全く出ず、さらにショーやエキシビションにも参加せず、今回の世界選手権が初めての公式大会となった。SPは大事な試合の一歩、絶対負けられない勝負だった。ひとけり、ひとけりが大きい滑り出しだが、過去の滑りよりスピードがないのは初戦だからだろうか? 最初の要素の3回転ルッツ―3回転トーループのコンビネーションジャンプで最初のジャンプがステップアウトとなり減点。第2ジャンプを付けられなかった為に、続く3回転フリップに2回転トーループを付けてコンビネーションジャンプにしてリカバー。しかし後ろに付けたジャンプは2回転。ヨナらしい迫力には欠けていたが、スピンはいつものヨナに戻っていた。レイバックスピンとコンビネーションスピンは早い回転とポジショニングが素晴らしかった。SP1位と、7つの要素を何とかクリアして、幸運なスタートを切った。
ジャンプ1つのミスだけで何とか切り抜け、SP1位発進したが、今季経験を積んでない分、フリーはきついはずだ。コーチも初めて、ヨナも初めて、初めてづくしがどう結果を出すのか―。五輪の金メダリストの意地がこの大会で発揮できるのか? ヨナを見つめた。“圧巻ヨナ”を表すトレードマークの最初の3回転ルッツ―3回転トーループを成功。しかし、3回転サルコウ―2回転トーループの第2ジャンプが1回転になり、続く3回転フリップがすっぽ抜け1回転扱い。続けてのミスで彼女のジャンプの確実性がでてこない形だった。全体を通じて、要素の加点がいつものようにはもらえなかった。また、迫力あるスピードが見られずじまいだった。SPの「ジゼル」はともかく、フリーの「アリラン」は曲としても世界的になじみが薄い事も大いに影響していた感じがする。五輪金メダリストは失速し安藤に逆転を許してしまい、銀メダルに沈んでしまった。シーズン通じての経験と検証と対策が必要だったように思えた。
カロリーナ・コストナー(イタリア)はいつもの通り、SPとフリーの2本そろえない状態を抜け出せなかった。紺色のレースが入った品の良いコスチュームに、頭には赤い飾りを付けフラメンコを氷上で舞った。華やな中にも少し不安げで、引き気味な感じが漂う。最初の3回転トーループ―3回転トーループジャンプはやや詰まった感じがして、いつものスケートの伸びとスピードに覇気がないように感じ、少しスケートが粗いようにも思えた。3つ目のジャンプの要素の3回転フリップで転倒。コンビネーションスピンの軸の流れなど、7つの要素の確実性を求められるSPで6位と出遅れた。
フリーでは女子選手の中で一番スピードがあり、上質のスケーティングで、フィギュアスケートの真髄を演技しているように感じた。ジャンプも形が良く、そして高さ、飛距離、回転の速さは申し分のないお手本のジャンプを堪能させてくれた。スピンも早く、ポジションにもオリジナリティがあり、「牧神の午後への前奏曲」に反映する振り付けは、真昼の眠りから覚めた牧神の行動、女神の美の夢想に微睡(まどろ)みながら再び眠りへと落ちる感じが上手く表現出来き、プログラムが映え、とても素敵だ。女性がこの曲を選んでやるのも珍しい。2つのジャンプミスはあったが、スケート好きにはたまらない魅力を今大会で我々に与えてくれた。シーズンオフに膝を手術し、シーズン初めには難しいジャンプは競技会で跳べなかった。だが、きっちりとシーズン最後の大会に合わせてきて銅メダルを得ることが出来、シーズン中盤までのつらい時期を払しょくする事が出来た。いつも控えめで礼儀正しく好感が持てる選手。そんな“格”のある選手がメダルを獲得する事は、フィギュアと言う名を汚さない証ともいえる。(続く)
(2011年5月17日17時09分 スポーツ報知)
1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。
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