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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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「アート・オン・アイス」こぼれ話(上)

「アート・オン・アイス」写真提供 菅原政治氏(Japan Sports)

 16回にも及ぶショーを続けてこられたのは、毎年の違うアイディアと努力、強いやる気のたまものだと思う。その苦労は、開催の成功で吹っ飛んでしまい、やって良かったと言う達成感と自信がもたらされている。ショーの立役者、オリバー・ヘーナー氏のインタビューに立ち会った。そこで感じたこと、彼の思いを載せたいと思う。

 まずはどう組み立てて行くかに興味を持った。始めのうちは試行錯誤もあったろうが、毎年、全面的にプロダクションを新しくすることが大切で、全く違うものを作成する試みで行う。1年前には構想が出来上がり、その原案に基づき70%のスケーターを決める。コンセプトとしてはメダリストにこだわらずショーのコンセプト、ニーズに合っているスケーターを選ぶこと。しかし、実際には看板スケーターは必須だと思うが…。秋までには残り30%のスケーターと契約。このショーの為に振りつけられた作品が条件で、音楽があってその音源に合うスケーターを選ぶようにしているそうだ。

 その年の音楽のコンセプトも非常に大事なことで、この曲でとヘーナー氏が決定し、それを依頼するという方法で進められる。初めのころは名のあるスケーターを集めた。それだけでは大きな会場を埋めつくすのは難しい。そこで彼は音楽に目を向けた。16年間、ショーを続けてきて「アート・オン・アイス」というブランドに毎回、成功と言う名を身につけさせることが出来た。

 他の多くのアイスショーが衰退してきているが、ヘーナー氏が率いる軍団は成功の一途をたどっている。その秘訣とは、フィギュアスケートとライブ演奏だけなら、観客は1度見たらしばらく見なくても良いと感じるかもしれない。「アート・オン・アイス」の大多数の観客は、必ず戻ってきて来てくれる。それは毎年、真新しいバージョンにするからなのだ。

 それでもやはり、数年やっていると、困ったことも数々はあった。プラハのショーの時、エフゲニー・プルシェンコ(ロシア)の出演に関して、トリノ五輪の前だからと、連盟から待ったがかかり、本人はプラハにいるのに出られなかった。選手だけに頼るとリスクが大きすぎる。確か荒川静香がドルトムントでの世界選手権(2004年)で優勝した後、「アート・オン・アイス」から招待されたが、その頃は「チャンピオンズ・オン・アイス 」や「スターズ・オン・アイス」の方がスケーターにとって憧れだった。だから荒川から「えっ、チューリヒへ行くんですか?」と、言われた事を覚えている。

 そんな荒川も、今ではこのショーに必ず出演する常連。現役選手たちと変わらぬ練習をしていて、技術も確かでそのうえ大人の演技力も出来るので、ショースケーターとしても合格点のようだし、今やオリバー・ヘーナー氏のお気に入りの一人になっている。スケーターのいないショーは、元スイス王者の彼としてはあり得ない。だがそんな事もあり、選手たちだけに頼るのは危険な事なのだという経験の下、ショーの筋書きをエキシビションではない本物のショーへとコンセプトを全面に切り替えて行ったのだろう。

 一方で、スケートファンの一部の人たちは、ショーがフィギュアスケート以外のものが多すぎると感じる人がいることを、彼は重々承知している。しかし、このように、生音楽あり、アクロバットありとスケート以外のものを入れて行く必要があったのだ。そうしていかないと、数年で飽きられてしまうからだ。観客に選択肢を与えたいのだとヘーナー氏は言う。

 例えば、出演しているスケーターAのプログラムが特に興味がないとする。その時、観客はステージやスクリーンを見て楽しめる事が出来るのだ。その通りで、今回、私にとって余り興味のないスケーターが滑っていた時、大画面のスクリーンに目を向け、ステージの熱唱を聞き、オーケストラの音色、指揮者の動きなどを見ながら勉強にもなったし、別の楽しみ方が出来た。

 それにしても、今回の公演の舞台は360度全開で、同時にすべてを見切れなかったのが本音だった。そこがまた、来年こそ全部自分のテリトリーに入れようとするから、観客が足を運びたくなる衝動にかられるのかもしれない。(続く)

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(2011年4月12日14時51分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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