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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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アイス・ショーの行きつくところ(下)

「アート・オン・アイス」写真提供 菅原政治氏(Japan Sports)

 2部の最初は、サフチェンコ&ゾルコヴィらの朝、目ざまし時計で起きるところから始まり、コーヒーを沸かす音、車で空港へ向かう慌ただしい音…。カメラが追う感じでそれがリアルで迫力があり、効果音に大映像。これからどんなドラマでスケートに結びついてくるのかと目を凝らす。ショーの会場に向かう映像、そして氷上に現れる。音楽は全て、コーラス・グループが効果音として声で表現、彼らのSPの曲、「コブラチカ」をコーラス・グループが、まるで楽器を演奏しているかのような錯覚に陥るほどの音を再現。凝っている演出がここでもみられた。1部の「ピンクパンサー」といい競技会用の演目がショーでモノになっている。そんな彼らの幅と言うか、演技力と言うか、なるほど…と、その場に合った雰囲気を作り出してしまう勘の良さには感心させられた。

 ショーに来ている多くの観客が待ちに待った、ドナ・サマーが登場。米国のポップ・ミュージックシンガーとして、マサチューセッツ州・ボストン出身でディスコ・ミュージックの第一人者として、1970年中盤から活動し「Queen of Disco」といわれ、一世を風靡(ふうび)した。日本でも幾度も公演した事もあり、おなじみのシンガーで、今もなおダンス・チャートのベスト10の常連だ。22曲ほどにもなるヒット曲を飛ばし、2010年のビルボートのダンス・チャートは1位。光り輝き続けるのは声勢、存在感、人を引き付ける魅力とオーラが今も尚あるからだろう。

 ジョアニー・ロシェットが「She works hard for the Monday」でショービジネスの世界にはまりつつあり、また上手さが加わった大人のスケートで存在感を示した。ジェフリー・バトルは「No more tears」で滑り、彼の新しいジャンルを開拓し、幅が広がった思いがした。このあたり、会場はDiscoで盛り上がり、観客はドナ・サマーの世界に入り込んでいた。今までの経験を土台に、確たる声量でみんなを包み込んでしまう強さと、ファンタジックな照明が自由に行き交い、会場に立体感を効果的に見せる舞台、氷上に引き込まれる要因に、聞き慣れた曲で、こちらの方も酔ってしまった。生で聞く歌とリズムと演奏。そして氷上の舞い。「これがショーなのだ!」勝手に納得してしまった。

 終盤はシェン&ザオ組。結婚してさらに円熟味を増してきて、そのユニゾンがとてもいい。曲もドナ・サマーの歌で「バラ色の人生」。まさに曲の題そのもの、今の彼らの幸せ感を表していた。大きな技がピタッと決まってプロ意識もなかなかで見応えがあった。ラストはプルシェンコ。ワン・パターンの演技か? と思いきや、ドナ・サマーの声量のある歌声と氷上の金メダリストは思いのほか協調していて、とても良い組み合わせともいえる演技で盛り上がりを見せた。

 フィナーレは司会役のコメディアンの主導でスケーターたち、歌手たち、コーラス・グループ、バック・ダンサー、フライング・アクロバット・ダンサーなどなど…。全盛期は過ぎたとは言え、ドナ・サマーの声で会場全体をまとめ上げ、一緒に踊り、フィナーレの舞台を華やかにする。世界に誇る大スターだったエンターテイナーの実力と迫力を感じた。そして大スケーターたちの氷上での卓越した演技。こちらも訓練され、一世を世界に轟(とどろかせ)たすごさを感じた。

 キャーキャーと大騒ぎする観客層はなく、22曲ものヒットを飛ばした時代に身を置いた世代の人々で、落ち着いた感じの方たちが大半のようだったのも驚きだ。文化の違いもあるのだろうか? ドナ・サマーがまだ若かったころ、8年間、欧州中心に音楽活動をしていた事も舞台を盛り上げている要因なのだろう。彼女はそのため、ドイツ語が堪能だそうだ。チューリヒはドイツ語圏であることも手伝っているだろう。

 賛美する盛大な拍手の後、会場が静まり返った時、ランビエールのアンコールは「Last・Dance」。ドナ・サマーとのコラボレーションで滑り出した。スイス=スティファン・ランビエール。ここにも心憎いプロデュースの効果が出て、エンディングに向けての演出もいい。観客が「もう終わってしまうのか…」と言う、名残惜しさを持たせる事も大事なことだろう。ドナ・サマーが歌い終わり、ステージから消え、出演者たちが全観客に感謝のお礼に手を振り、「アート・オン・アイス」の幕が閉じた。

 来年はどんな出し物だろうと、また来てみたいという衝動にかられたのが正直な気持ちだった。舞台に気を引かれ、バックスクリーンに気を取られ、氷上にも目を凝らし、オーケストラの演奏にも酔いしれ、そして、コメディアンの司会役がスピリットとして気が利いていてショーを盛り上げた。アクロバット・グループも効果を出した。何と欲張りで贅沢(ぜいたく)な、どこを見ても一流のショーだった。1万1000席、全6回公演が毎回満席なのも納得出来た。仕込みが大変だとは思うが、是非、日本でも公演を試みて欲しいという思いが、私の胸の中を一杯にした。(続く)

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(2011年4月5日15時52分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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