◆高橋成美とマーヴィン・トラン（下）　あきらめかけていた高橋の元へ、リチャード・ゴルチエ氏から「アジア系の良い選手が見つかった」と一本の電話が入った。早速、モントリオール（カナダ）へ、東南アジア系カナダ人のマービン・トランとのトライアウトの為、再び海を渡った。思いのほか相性がピッタリだった。今しか出来ないスケートに賭けたかった思い、語学の件でも外国暮らしの多い家族たちには問題はなかった。母親と一緒にモントリオールに移り、現地の高校へも通いながら、大好きなペアを出来ることがうれしかった。ペアとしてのユニゾンを得るまでは多少時間はかかるが、いつも明るく前向きな高橋にペアをやれるという、一つの念願が叶う事になった。

　０７～０８年シーズンからＧＰジュニア参戦となる。翌年の０８～０９年はゴルチエ・コーチの過大な導きもあって、ジュニアＧＰの表彰台を確保し、ＧＰファイナルへの進出を果たした。先シーズンはジュニアＧＰでの優勝、ジュニアＧＰファイナルでは２位、世界ジュニア選手権では銀メダルと、ぐんぐんと成績を上げて行った。１０～１１年シーズンになると、ずいぶんリフトやスロージャンプも息が合ったところを見せて来た。その結果が、ジュニアＧＰでは連続２位、ＧＰシリーズのＮＨＫ杯とロシア杯で初めての表彰台、ジュニアＧＰファイナルでは日本人として初めて優勝を果たした。

　今後は、さらなる息の合ったポジションと身体ラインの一致が必要だろう。大学生になったとはいえ、愛くるしい顔立ち、明るい性格はカップル向きだ。そして、戦うことが好きな彼女と彼。今度は、個性ある演技が求められてくるだろう。体に秘めた思いを氷上で表していく、その情緒あるスケートが出来た時、完成された大人の演技力のあるカップルに育っていくだろう。なぜなら、五輪の金メダリストを育てたゴルチエ・コーチの教えがあるから…。期待度も大きい。

　そして今後、国別対抗戦（男女シングル、ペア、アイスダンスの４カテゴリーの総合）という新種目が五輪に加わるかもしれない。ソチ大会に向けパートナーの国籍問題もあり、連盟も本人たちも悩みを抱えているだろう。今は、技術の向上、音楽との調和、緩急のあるプログラムと演技力、どれだけ観客、ジャッジに感銘を与える事が出来るか？　それを考えるべきだが、国籍問題は大きな課題だろう。

　今シーズン、本格的にシニアの世界に踊り出た、“新米”のシニアカップル。欧州選手権優勝者のアリオナ・サフチェンコ＆ロビン・ゾルコーヴィ（ドイツ）組になぜか似ているように思う。そのカップルを超える成美たちになれるように…。大きな夢に向かって強くなれ、そして「成美＆マービン組」しか出来ない演技、「個性豊かなペア」に上昇していって欲しい。（この項終わり）

（ ）

（ ）

ソーシャルブックマークに登録

（2011年2月15日14時19分  スポーツ報知）