◆高橋成美とマーヴィン・トラン（上）　５歳頃からスケートを始め、８歳を過ぎたら５種類の３回転ジャンプが跳べるようになるほど、チビッコ選手の高橋は有望だった。その後、父親の中国転勤に伴い北京に在住することになった。ＧＰ中国杯の時、その高橋親子に出逢った。愛くるしい目を持ち、明るくハキハキとした女の子は、北京で練習しているという。中国語で会話している姿は、中国の子？　と思えるようだった。

　そんな彼女が「ペアをやりたい」と言うことで、中国連盟のホンゴウ・レン副会長に頼んで中国でパートナーを探してもらった。２００３～０４年シーズンには、中国ナショナルチームのメンバーになれる程、高橋とパートナーの高璃は成長してきた。ジュニアでトップの成績を収める彼らたちを中国連盟としては抱えたくなり、本格的な中国連盟所属の提案がなされた。本人と家族は日本連盟に所属を残したかった。

　折しもちょうどその頃、父親の日本への転勤が決まり、帰国したある日、家族たちが私の元にやってきて、相談があると言う。ペアは続けたいが「中国に残るのは無理と言うのだ。色々と制約が発生すると…」ペア種目に優れた、どこかほかの国で本格的に練習したいと…。ロシアかカナダのどちらかが良いと思うと答えたが、カナダの方が良いのではないかと思った。

　あるペアのセミナーの時での事。リチャード・ゴルチエ氏が陸上での講義中、リフトの形を説明する事になった時、私が小さいので上げやすいと思ったらしく、私をパートナーに選んだ。それ以来、「日本に僕のパートナーがいる」と言っていたらしい。ジャンニセバスチャン・フェクトーとペアを組み、同コーチの元でＧＰ３位、４大陸２位と活躍した若松詩子が以前、言っていた事があった。誰かと思ったら、私の事だったと…。ペアをやった事のない私でもスィ～と、持ち上げてしまうタイミングの良さ、こんなコーチに習ったら良いかなぁーと推薦した。

　もっとも、ソルトレークシティー五輪金メダリストのサレー＆ペルティエを育てたコーチだから申し分ないだろう。みんなの気持ちが膨らむ話し合いがされた。まずは日本をベースに考えてみようと、日本のパートナー探しを始めた。日本の男子選手たちはシングルを好むため、ペアとしての練習環境は非常に難しい状況にあったが、探しあてたのが、田中孔明だ。

　彼と０６年シーズンにペアを組む事になり練習が始まったが、ペアとしてのリンクの貸し切りの不足と費用が高額のため、続けるには無理があった。大好きなペアを捨てたくない思いが高橋にはあり、リチャード氏の住むモントリオール（カナダ）に乗りこんだ。そこでも中々パートナーは見つからなかった。がっかりの気持ちを抱え、母親と一緒に日本に戻った。そして、カナダにはパートナーがいないのか、他を探さなくてはならないのか？　と諦めかけていた時、リチャード氏から一本の電話が入った。「アジア系の良い選手が見つかった」と…。（続く）

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（2011年2月8日15時39分  スポーツ報知）