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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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GPファイナルの外国勢選手たち~

 フランスの新鋭、期待の星、フローラン・アモーディオは、SPでも「Once Upon a time in Mexico」の曲に乗り、彼のキャラクターの特徴を生かして、体全体がリズムに乗り音に合わせ、南米から来た男子と言う感じが十分受け取れた。ブラジルからの養子と聞いたから、さらにそう感じたのだろう。3回転フリップの間違ったエッジの踏切以外では技術の評価点のプラス要素が多く、フリーもアイス・ショー向きな表現力抜群の演技で観客を魅了。競技会がこういうコスチュームや構成で良いのか? と疑問は残すが曲想に乗り、流れ、ビートに合う振り付けで4回転ジャンプなしのニコライ型を取り入れ、ミスのない演技構成を狙い6番目に滑りこんで、初参加だ。

 戻ってきた欧州選手権の王者、世界選手権でもメダルに輝いているトマシュ・ベルネル(チェコ)は素晴らしい質の高いスケーティング、難易度の高いステップは、レベル4に仕上げている。体の大きさ、動きのおおらかさ、全ての技術の質の高さは目を見張る。ロシア杯の演技は本来の才能が目を覚ましたという思いがした。振付師をローリー・ニコルからパスカーレ・カメレンゴに変更、今シーズンに賭ける彼の思いがそこにあった。そして、「雨に唄えば」「マイケル・ジャクソンメロディー」の曲を使い、大人の演技力、スケート、何気ない楽な姿勢で演目を演じ切る動作は、3拍子以上にそろっている。その豊かさが観客、ジャッジを納得させた。久々にみる才能確かなベルネルが氷上にいた。4回転ジャンプなしのプログラム構成で余裕が出たのだろうか? やはり、4回転に挑むリスクと体力は彼自身の負担となる事を避けたかったから…。再び、自信を取り戻すために、ほぼパーフェクトの演技が必要だったのだろう。ファイナルでは4回転が必須だろう。自信を得た彼の4回転が入った演技が見たいし、本番強しという札を張り付けてほしい。そう出来れば表彰台が見えてくるような気がする。

 プログラムの密度の濃さが売り物のパトリック・チャン(カナダ)。技術的には素晴らしいものを持っているし、いつもジャッジ受けする演技ではある。なぜなら、つなぎのステップ、フリースケーティング・ムーブメントが豊富だからだ。氷に吸いつくようなスケーティングと深いエッジの使いには定評がある。今季、フリーのプログラムは昨年のままの演目(オペラ座の怪人)で、新しい挑戦として、4回転ジャンプを入れたSPとフリーに試みている。ルール改正が影響してか、4回転に挑む選手たちが急増、自国のケビン・レイノルズなど4回転サルコーと4回転トーループをSP、フリーとも入れて成功しているし、若手の選手たちが他の種類の4回転を増やしているという事を見越して、トップの選手たちは入れざる得なくなってきている。そして、4回転時代が既に始まっている。彼はコーチを替えて約1年が過ぎるが、その成果も出てきている部分もあるし、コロラド通いのチャレンジ精神には心打たれる。

 4回転トーループを決めたものの、今の彼の演技からは、ジャンプ成功への不安がいつも心をよぎっているようで、その結果、演技からの情熱や幅が感じられない時があるように思うのは考え過ぎだろうか? ジャンプの失敗があっても、転倒が続いても、内容に関係なく、演技構成点が定番のように高く付いているように感じるのは気のせいだろうか? 審判の義務と権限の一部に「常に完全に、公平・中立でなければならない。公衆の喝采や不満に対して完全に無関係でなければならない。滑走された演技のみを採点し、スケーターの評判や過去の演技に影響されてはならない」とある。彼はフィギュアスケートの真髄をフットワーク、そのもので演技を演出、出来る貴重な存在である。ファイナルではパトリック・チャン、「ここにあり」の演技で今年を締めくくって欲しい。

 女子では世界ジュニア選手権2回女王のレイチェル・フラット(米国)は、シニアに移行時期は身体も細くかれんに見え、3回転―3回転ジャンプを武器に気持ち良いスケートを見せてくれたが、今やパワフルさが売り物の力強い選手に変わってきている。そして粘りがある。少女から女性スケーターに一変。彼女がどれだけ米国の意地を見せるかがカギとなる。

 欧州選手権女王3回、世界選手権のメダリストだったカロリーナ・コストナー(イタリア)は久々のファイナル出場だ。コーチをミハエル・フースに戻り、少しずつ本来のコストナーに戻りつつある状態になって来た。5種類の3回転ジャンプをプログラムに入れている。高さ、飛距離、流れ、質の良いジャンプは成功すれば圧巻だ。ステップもレベルが高いし素敵だ。高い身長と長い手足を生かした表現力は品が良く、好感が持てる。男子並みのスピード感のある質の良いスケーティングが持ち味で、そのスキル、伸びやさ、ダイナミックさは世界のトップレベルだ。双へきなのは、キム・ヨナ(韓国)ぐらいだろう。やはりジャンプが元の調子に戻り、3回転―3回転が健在だと言うところを見せる必要はある。

 アリサ・シズニー(米国)は流れるような質の高い優雅なスケーティングと、バレエの基本に乗っ取ったポーズや振り付けは、正統派の米国のフィギュアを意味するように思える演技だ。ジェイソン・ダンジェン、佐藤有香両氏にコーチを替え、なお一層上手くなった。ためるスケーティング、スピンの回転速度が曲に合い、絶妙にプログラムと溶け合い素直さと透明感が何とも素敵だ。手足の長さも上手く利用し、上品さを増していく姿は心が洗われて行く感じがした。ジャンプさえ決まれば彼女の良さが倍増し、2本そろえば表彰台も見えてくる。

 男女6人が日本の選手6人と戦うことになるが「やはりジャンプ、されどジャンプ」で勝敗が決まってくると思う。それぞれ個性豊かな選手たち、プログラムの完成度も有効になってくる。この両方が合致し、力強さが、エレガントさが、熟達した上手さが、うまくコンビネーションされた選手が栄光を勝ち取るだろう。ただ、女子では浅田真央、男子ではジェレミー・アボット(米国)の姿が見えないのが悲しい。(続く)

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(2010年12月7日17時53分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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