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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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GPシリーズの行方  強く、輝いて、跳んで~(その4)

 第5戦のロシア杯(モスクワ)SPでは、ベテランが強かった。スケートの質、スピード、なめらかさ、教科書に出てくるような滑りを見せつけてくれた。トマシュ・ベルネル(チェコ)、ジェレミー・アボット(米国)、パトリック・チャン(カナダ)たちが大人の演技力で上位を占めた。「雨に歌えば」の曲を演じた、3位のベルネルには、カート・ブラウニン(カナダ)をほうふつさせられたし、2位のアボットは曲想に合った「ブエノスアイレス」のプログラム。オリジナリティがあり、流れの中での音とのタイミングはとても素晴らしかった。彼本来の資質が再び蘇り、更にうまさを感じる。チャンはトリプルアクセルの転倒はあったものの、4回転―3回転のコンビネーションジャンプをただ一人成功させ、クリーンなスケーティングと足さばき、種々のターン&ステップを複雑に組み合わせ、チャンならではの演技で1位発進した。

 翌日のフリー、気が付いてみればトップ3人は本番に弱い選手ばかり。誰がトップにきてもおかしくない状況の中、やはりどの選手もスムーズにはいかなかった。アボットは2回のジャンプ転倒をはじめ、ミスの多い演技。振付師をディビット・ウイルソンに変え、プログラム構成には進歩が見られたが、まだまだの完成度という感じ。本来は音との調和に定評がある選手だけに、ピタリと決まった時の演技が待ち遠しい。総合3位。

 チャンの、昨年に続く「オペラ座の怪人」は、とても素敵に組まれているプログラムだ。上手さが群を抜くステップシークエンス、つなぎのステップ、流れるようなエッジワークで音との表現力も優れている。しかし残念なことに3回のジャンプ転倒によってプログラムは断裂された。必要なものはジャンプの前のスピードだろう。総合2位。

 そして本物のフィギュアスケーターは彼、と思えるほど才能にあふれるベルネルは曲の使い方が旨い。楽な動作、スケーティングの質、スピード、リズムと何拍子も揃っているし、よどみなく滑る姿は大人のスケートを感じさせる。青い手袋を片手にはめ、マイケル・ジャクソンのメドレーに乗ったプログラムは新しい振付師、パスカーレ・カメレンゴだった。キャラクターを生かすのも上手だ。そして彼の軸の通ったジャンプも久々に見ることが出来た。4回転トーループを抜いたことの効果だろうか? すべての技の質が高く評価され、総合1位。久しぶりの優勝姿を見ることが出来た。

 一方、日本のホープ羽生結弦はSPで自己ベストを出したが6位。フリーでは余計な要素のジャンプを跳び、そのため1つ分が無得点。それが影響し順位を1つ下げ、7位でシニアのGPを終えた。

 女子SP。アシュリー・ワグナー(米国)は3回転フリップ―3回転のトーループのジャンプコンビネーションを入れ、多少減点があったものの、しなやかなで優雅なスケートティングと伸び伸びとした演技で3位。アグネス・ザワツキー(米国)は3回転トーループー3回転トーループのジャンプコンビネーションとすべてのスピンがレベル4で、2位と好発進。

 鈴木明子は無駄のないソフトな滑りと流れの中で確実に要素をこなし、緩急をつけての演技「ジェラシー」は彼女をなお一層、大人に仕上げて1位。期待の安藤美姫は、練習中に起きた他の選手と激突するアクシデントが響いたのか、3回転フリップの回転不足で減点。ギクシャクな動き、音と身体の一体感がなくプログラムが途切れたように見え、ジャッジ、観客に訴えるものがないように思えた。ジャッジはどう判断するのか、と注目したが、5位と出遅れた。

 続くフリーではワグナー(米国)がのびやかなスケート、プラス確実なジャンプで得点を重ね3位。コーチをプリシラ・ヒルに変更後、安定感が備わったようだ。鈴木は「屋根の上のバイオリン弾き」の曲に乗り、多少ジャンプのミスはあったが流れの中で曲想を反映した演技が光った。ステップシークエンスでは評価が最も高く、曲によく調和していたと思う。また、スケートの旨さも再確認した。演技構成点は全選手中トップ。本人はSPで6点台が並んでいたことを気に病んでいたようだが、フリーでは初めて5項目全部で7点台をそろえた。

 そしてSP5位の安藤。ケガの痛みはなかったというが、身体をコントロールしきれず苦しんでいたらしい。その状態で、冒頭の3回転―3回転ジャンプは回避したものの、後半に入れた5連続ジャンプの成功は圧巻だった。スピンも昨年に比べ工夫されていて、レベル4を2つ獲得。ポジション変化を上手く取り入れ、高いレベルを取りやすくなったようだ。しかし気になるのは、トランジション、つなぎのステップが不足気味であること。彼女の場合、ジャンプを跳ぶための動作が少々単調であるため、もう少しステップの流れの中で跳ぶことが、現在のフィギュアスケートでは要求されている。その点が改善されれば、安藤は常にトップを維持できる選手だろう。

 結果、女子は中国と同じく日本勢のワンツーフィニッシュ。安藤と鈴木のGPファイナル進出が決まった。村上佳菜子もすでにファイナル行きを決めており、現時点で日本勢3人がそろう楽しみな戦いとなりそうだ。(続く)

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(2010年11月23日16時26分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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