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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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GPシリーズの行方  強く、輝いて、跳んで~(その3)

 スケート・アメリカはポートランドで行われ、期待がかかった男子SPの高橋大輔はNHK杯と同じ2位スタートとなった。ラテン系の音楽の旋律に乗り遅れたのかトリプル・アクセルでは回転不足と勢い余ってランディング・ミス。オリジナルなアップライト・スピンのレベルは1、トリプルルッツの着氷はステップアウト、技術点では伸び悩んだが、独特の得意のステップで得点を稼ぎ演技構成点を全て8点台。フリーの逆転優勝に望みを掛けた。

 織田のSP曲、「嵐」。三味線での演奏に乗り、スケートカナダよりもスピード感があるように思えた。ジャンプに伸びがあるし、前後のつなぎのステップも彼なりに研究していた。これでジャンプ前の待ちがスムーズなら評価点が上がって来ると思う。レベルを取るためか、スピンの回転が遅いのが惜しいが1位で通過。

 高橋のフリーは序盤の4回転トーループが3回転、2つのトリプル・アクセルのミス、間違ったエッジ踏切のルッツ・ジャンプなど、ジャンプのミスが目立った。しかし、SP続き、オリジナリティ溢れる2つのステップ・シークエンスと演技構成点で得点を伸ばし織田を抜いた。しかし、まだまだ、プログラムの緩急に演技が付いて行っていないのも事実だろう。

 織田のフリーの始めは、4回転トーループで大きく転倒、ルッツの間違った踏切があったものの、次々とジャンプを成功させた。4回転での転倒のばん回を図り、ジャンプ・コンビネーションの構成を変更したが、余計な4つ目のジャンプ・コンビネーションを跳んでしまった。(連続ジャンプは3つまでが規定)。この余計な連続ジャンプは得点ゼロ、大きなマイナス要因で優勝を逃した。ほぼGPファイナルも確定と思うが、時々「ポカ」をして順位を下げる…。この競技会が終わったら真っ先に、日本に帰りたかっただろう。小さなとても可愛い愛息が待っているから…。

 新鋭アダム・リュポン(米国)。端正な顔つきはフィギュア向き。「ロミオとジュリェットの序曲」古典的なプログラムでは、2つのジャンプでミスがあったものの、3つのレベル4のスピンと、トリプル・ルッツの時の空中の腕のポーズの評価を軸に得点を貰い、3位。フリーでは7位と振るわず、総合4位でファイナルは絶望的となった。

 織田と高橋の一騎打ちは、高橋の勝利。織田が余計なコンビネーション・ジャンプを跳んでしまったためと、高橋の演技構成点が高く評価された。さすが世界チャンピオン。GPファイナルで優勝するためには、ジャンプの確実性が重要だろう。スピンも侮らないことだ。欲を言えば、音を良く取れる高橋だが効果音を上手く利用して、ジャッジや観客の胸打つ演技に期待したい。

 女子SPはベテランのカロリーナ・コストナー(イタリア)が少しミスがあったものの持ち前のスタイル、スピード、素敵なプログラム構成で1位発進。村上佳菜子はめったに失敗しないSPで、フリップの回転不足とダブルアクセルがアクセルとなるなど、2つのジャンプミスがあった。しかし高く、飛距離のある、3回転トーループ―3回転トーループは健在で、スピンは全てレベル4。「ジャンピン・ジャック」の曲に乗り、元気よく、朗らかに演技して2位。

 気になるレイチェル・フラット(米国)は、コンビネーションジャンプの回転不足と単独のジャンプ、3回転フリップで少々のミスありで4位。フリーではフラットが2つのジャンプの回転不足があったものの、5種類の3回転ジャンプを自在にこなし、持ち前のしなやかさと表現力で、力を発揮し1位で総合2位。最終滑走のコストナーは、2回目のアクセルから乱れ、流れの中でのエレメンツが途切れ途切れになり、彼女の良さが半減した。後半に用意した、連続ジャンプも不発に終わり、2本そろわないコストナーを再び見ることになった。フリー6位で総合3位。

 世界ジュニアチャンピォンの村上は最初の得意の3回転トーループ―3回転トーループは素晴らしく、ジャッジ団から高い評価を得た。減点は3回転フリップが1回転になり、3回転ループで手をつき、3連続ジャンプの1つの回転不足だった。それでもスピードは最初から最後まで落ちずに、「マスク・オブ・ゾロ」を演じ切った。堂々としたスポーティフルな高感度のある演技でもあった。フリー2位、総合1位。初めてのシニアGPで優勝し、シニアのGPファイナル初出場が決まった。

 村上が地元名古屋でのGPシリーズ開幕戦のNHK杯で、堂々3位デビュー戦を果たしたが、今後に向け課題をたくさん残したのも事実だった。その後、スケート・アメリカへ出かける前の週末、村上は西日本選手権大会(福岡)の氷上に立っていた。山田コーチの策だったと思う。プレッシャーに強くなる為に、もう一度経験を積ませる試みだったようだ。フリーが目的だったとは思うがSPは完璧、フリーは2つのジャンプ回転不足が有ったが上手くまとめた。試合後、山田満知子コーチから、「今日は佳菜子の16歳の誕生日!」

 「おめでとう!」

 「どうだった?」

 「ちょーど、いいんじゃない。スケート・アメリカに向けて」

 「そう!」

 私は「きつくない?ポートランドへ行くのに」と言おうとしたが、余計なことは言うまいと口をつぐんだ。伊藤みどり以来の仲の山田コーチのやろうとしていることは手に取るように分かる。「今に見ていて、必ずやるから、待っていて…」という言葉が浮かぶ。「やったじゃない先生!」と言うのはまだ早いが、一つの大きな階段を上がったことは確かだ。(続く)

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(2010年11月19日16時53分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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