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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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エキシビション&ショー 魅せる為に、強くなるために(その4)

 真壁(株式会社CIC社長)「そんなドリームオンアイスは、選手の強化を目的としたもの、あくまでも『エキシビション』です。もちろん多少は、ショーの要素を取り入れていますが。しかしこれが『アイスショー』となると、きちんとしたショーとしてのクオリティが必要になります」

 城田(本紙評論家)「アマチュアの選手も出演するとはいえ、プロの世界ですからね。ストーリー性やコンセプトがないと成り立たない」

 真壁「僕らは米国の老舗ショーのひとつ、チャンピオンズオンアイスと提携して、チャンピオンズのメンバーをよく呼んでいた時期がありました」

 城田「チャンピオンズ、という名前からして分かるように、何らかのタイトルを持っているスケーターしか滑れない。有名な選手たちも『このショーになら!』と、出たがるショーでしたよね。Champions on ICEのロゴが入ったジャージを着て、試合に臨むのは誇らしい、と」

 真壁「アマチュアの現役選手もプロも、両方が出ているショーでした。世界選手権が終わったら、その盛り上がりのまま、活躍した選手を集めて1カ月間の公演がある。最高のショーでしたよ」

 城田「チャンピオンズオンアイスは、世界選手権後のISU主催のワールドツアーが前身なんですよね。世界選手権の各種目1~4位の選手がチームを組んで、米国と欧州全土を回ってた。ちょうど伊藤みどりちゃんが活躍していた時期のことです」

 真壁「当時はすごかったですよね。世界の西から東から、全部ツアーで回って」

 城田「みどりちゃんはまだ小さかったし、学校の関係で行ったり来たりしながら参加してね。当時は今みたいに選手にエージェントなどついていなかったから、スケート連盟の人たちが交代で彼女について回ったりもしたんですよ。そこから始まったアイスショーが、チャンピオンズ」

 真壁「ところがそのチャンピオンズオンアイス、2008年になくなってしまったんです。こうなってしまったのは…やはり僕は、ひとりのスターに頼り過ぎてしまったことが大きいと思う。ミッシェル・クワンという米国においては絶対的に人気のあるスケーター。とにかくグレートチャンピオンです。世界選手権で5回優勝して、でも五輪では金をとれなかったことで逆にヒロインになって…。そんなスケーターを専属メンバーにしたまではいい。でもクワンに相当なお金を払い、クワンを引き立てることに注力することで、肝心のショーとしての演出が、エキシビションに毛が生えたようなものになってしまった。最後の方は、『これがあのチャンピオンズか…』と思ってしまうほど。人気が落ち、チケットが売れなくなると、照明などにかける経費を減らすしかない。ピンスポットだけあればいいよ、と。節約できるところを節約しようってことになると、ますます貧相なものになってしまう」

 城田「ピンスポットだけ…。日本スケート連盟が80年代にやっていた手作りのエキシビションみたい。あるいはNHK杯の最初のころのエキシビション」

 真壁「そうしたクオリティを落としてしまったら、お客さんに逃げられてしまいます。それだけはしちゃいけないんだな。僕が最初にショーを始めた時にそう思いました。加えて、どんな大スターでも年月がたてば商品価値は落ちていきます。ミッシェルは今でも人気がありますが、それでも最盛期ほどではない」

 城田「そしてミッシェル人気にぶら下がっていたから、彼女が出ないとなると…」

 真壁「結局、ショー自体が破たんしてしまいました。日本だけでも続けようかと思ったけれど、米国でやっていないのなら意味がない。そんな経緯があって、じゃあ02年に手がけたファンタジーオンアイス、この名前を復活させよう、ということになったんです。03年にいったん封印してましたが、その後いろいろな形でショーを作ってきたけれど、初めて手掛けたころの、この思い入れのある名前を復活させるなら、それなりに内容のあるものとしてやりたかったから」

 城田「エキシビションではなくきちんとしたショーとして」

 真壁「復活させるタイミング、狙っていたんです。自分の納得のいくショーとして、これまで自分がやってきたショーとは格段にちがうものを! そこまでできるのでなければ、戻したくなかった」

 城田「今年はまず新潟と福井で開催。私は新潟を見に行ったけれど、素晴らしかったですよ」

 ―ゴスペラーズとスケーターのコラボレーション、見慣れたスターもこんなに違う一面を見せてくれるんだって、驚きでした。フィギュアスケートってこんな楽しみ方もできるんだって声が大きかったですね。

 真壁「ミュージシャンも、スケーターたちも素晴らしかったからね。プルシェンコはもちろん、ランビエルもプロとして世界中を渡り歩いてるから、磨きがかかってる。そんなスケーターたちが競い合うように素晴らしい演技を、ショーの流れの中で見せてくれた」

 城田「みんな人の目に洗われて、洗練されていきますよね。今回出た選手の中では、ジョニー・ウィアーも。お客さんを大事にする気持ちで、いいものを見せられるようになった。これだけのスケーターと、ミュージシャンがコラボレーションして(新潟公演ではゴスペラーズ、福井公演ではディマ・ビラン、エドウィン・マートンとコラボ)行く形。この先、エキシビションとは違う、本物の日本のショーとして知られるようになったら…。世界に進出していく、なんてことになるかもしれない!」(続く)

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(2010年10月21日13時18分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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