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スポーツ報知>コラム>城田憲子の「フィギュアの世界」

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エキシビション&ショー 魅せる為に、強くなるために(その3)

 真壁(株式会社CIC社長)「そう、だから僕はスケート連盟さんにも事あるごとに言っています。僕らは『エキシビション』と『ショー』を完全に分けて考えています、と。本来のエキシビションは、試合の最終日にあるものですよね?

 城田(本紙評論家)「ガラ、とも呼ばれているものですね」

 真壁「だから本来ならば、それほど演出の必要はないものです。日本代表のエキシビションは、ソルトレークシティー前の『GET A CHANCE 2002』からスタートして、その年の12月に『メダリストオンアイス』が始まり、2004年に6月の『ドリームオンアイス』が始まりました。ドリームオンアイスは試合の後のガラではないけれど、『日本代表エキシビション』と銘打ってる以上、第一に強化目的でやるべきだ、と僕は考えているんです。だから四大陸でも世界ジュニアでも、代表になった選手にはみんなに出てもらうのがひとつの意義。それでこそ『エキシビション』です。いいとこどりで人気の高い選手だけを呼ぶとしたら、それは『ショー』になってしまう。でもドリームオンアイスやメダリストオンアイスは、そのシーズンの主な国際大会の代表になった選手をぜんぶ呼ぶ。それが一番の強化になるのでは、と思うんです」

 ―選手たちも、ドリームやメダリストに出られるからがんばるわけですね。逆にどんなに名の知られた選手でも、成績がなければ出られない…。

 城田「選手たちも全日本より、メダリストオンアイスの方に出たい、なんて言ってましたよ。全日本選手権には独特の怖さあるけれど、そのあとで待ってるエキシビションに出たいから頑張るんだ、って。ずっと出ていた選手がある年にはいい成績が出せなくて、メダリストに出られないことが何よりショックで…なんて話も聞きます」

 真壁「手前味噌になってしまうけれど、今年のドリームオンアイス。あの盛り上がりはすごかったでしょう? 客席が近い新横浜のリンク、その会場の良さもあるけれど、なかなかあそこまでの盛り上がりはないんじゃないかな」

 城田「それは真壁さんたちのプロデュースがいいから!そして選手たちも成長したと思います。ひとりひとりが、エキシビションであっても、スケーターとしての自覚を持って滑るようになったから。やはりこれだけ盛り上がると、お客さんの反応も見ながら滑らなきゃいけない。そして前に滑ったライバルがすごくいいものを見せたら、自分もそれに負けずに滑らなくちゃ!なんて気持ちになる。そんな気持ちが、試合にも生きていくんですよ」

 真壁「やはりトップ選手だけを集めることで、エキシビションであってもお互いに負けたくない気持ちは芽生えますよね。さらに最近は、お客さんもしっかり見てくれてる。人気のある選手だって失敗すればスタンディングオベーションは少ないし、それほど知名度のない選手でも、良かったらみんなが立ちあがってくれる」

 城田「お客さんも、最初のころは拍手がほしいところでなかなか盛り上がってくれない…なんてこともあったけれど、今はだいぶ変わりましたね。選手たちも最初はもう、スポットライトを浴びるなんて照れて照れて大変!なんて感じだったけれど、今やみんな大胆に見せようとしてきます。あのころが懐かしいって思うくらい(笑)。もうちょっと慎み深くしなさいよ、なんて思っちゃうくらいです。そうなることをずっと望んできたけれど、いざそのときがくると、なかなか複雑(笑)」

 真壁「それはわかります。今はとにかく強化選手たちに、揃ってもらうことが大変になったから」

 城田「前はみんなが、『出られてうれしい、ありがとうございます!』なんて言って喜んで出ていたのに、最近はプログラムを作りに行くとか、スケジュールがいっぱいとか言って、休みたがる選手も多い…」

 真壁「特にドリームオンアイスは、演出以前に人を集めることが大変です。日本代表と呼ばれる選手は何が何でも出てもらいたいから、こちらは必死ですよ。しかも今年は、いつも同時期に行われているスケート連盟の表彰式が4月に済んでいたから、選手たちも集まらないんじゃないか、と。放映権を持ってるフジテレビさんも「大丈夫ですかね、みんな出てくれますか?」と心配していました。今は極端な話、外国人選手よりも日本人を集める方が大変なんですよ! ステファン・ランビエールなんて毎年必ず来てくれるのに」

 城田「最初は海外の選手の中に日本人が混ぜてもらっていたのに、それが逆転!」

 ―選手を集めるために真壁さんは海外の練習拠点にまで出向かれたりもしますよね

 真壁「出てもらいたいスケーターに、出てもらう。ショーでもエキシビションでも、そのための労力は惜しみません。とにかく見に行って、会って、話をして…。かつてニコライ・モロゾフコーチなどはエキシビションのためにわざわざ選手を日本に帰らせることを渋っていたけれど、きちんと会って話をしたら、今はむしろ協力的になってくれました。今年もショーをやるといえば真っ先に安藤美姫選手が出てくれるようになった。でもそんな大変さはあるけれど、ドリームオンアイスは特に、なくしたくないエキシビションです。テレビでも、試合に付随しないショー、エキシビションとしては唯一、全国放送されてるのがドリームオンアイスなんです。メダリストオンアイスは全日本にくっついてるから、その流れで見てもらえて、視聴率もまあまあ取れる。でもドリームは、前に試合がないから結構厳しい。おまけにシーズンオフでみんなスケートのことを忘れてるとき…」(続く)

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(2010年10月12日16時52分  スポーツ報知)

著者略歴 城田 憲子(しろた・のりこ)

 1946年7月4日、東京都生まれ。立大卒。選手時代はシングルとアイスダンスで活躍し、全日本選手権ダンス部門2連覇。現役引退後は日本スケート連盟で選手強化を手掛け、長野五輪からトリノ五輪までフィギュア強化部長を歴任。また、国際審判員とレフェリー資格を持ち、五輪をはじめ多くの国際試合でレフェリー&ジャッジも務める。

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