2011年3月20日 3時47分 更新:3月20日 6時27分
菅直人首相は19日、自民党の谷垣禎一総裁への入閣要請に踏み切り、東日本大震災という「戦後最大の危機」を乗り切るため、民主、自民両党の「大連立」を狙った。自民党側は震災対策には協力する方針を打ち出しているが、衆院解散・総選挙を求めてきた菅政権への全面協力には抵抗が強い。首相の「直談判」は不発に終わったが、政府・民主党側は自民党に限らず今後も広く野党の協力を取り付けようと政権参加を呼びかけていく構えで、未曽有の国難を巡る与野党の駆け引きが続く。
「これから官邸に来てください」。菅首相は19日昼過ぎ、自民党本部に電話をかけ、谷垣氏を首相官邸に招いた。「電話で言ってください」と官邸訪問を避けようとする谷垣氏に対し、首相は「電話で言うような話ではないから来てほしい」と重ねて求めたが、結局、電話での入閣要請となり、正式な党首会談には持ち込めなかった。
両党の関係者によると、18日に首相側から「秘密裏に会いたい」と水面下の打診があり、19日に電話で連絡を取る段取りになっていた。18日の各党・政府震災対策合同会議では民主党の岡田克也幹事長が閣僚を3人増員する内閣法改正を野党に提案。自民党側は増員には賛意を示したものの、野党から震災復興担当相などに充てる狙いを察知し、入閣は拒否する方針を固めていた。
ただ、党首会談の席で断れば、震災対策の協力を拒んだと国民に受け取られかねない。そう考えた谷垣氏は会談自体に応じず、記者会見で「新しい連立を作る提案だとすれば、政策をどうするかなど前さばきがなければならない。最初からトップダウンでやるのは私の政治手法からすると順序が逆だ」と述べ、連立協議で政策をすりあわせる前に入閣を求めた首相を批判した。
いきなりトップ同士の交渉を仕掛けた首相の手法に対しては、民主党内にも「周辺からしっかり水面下で固めるべきだった」(幹部)との批判もある。だが、自民党側は「こちらが断れば『こんな大変な時に協力しないのか』という雰囲気になる。成功すればもうけものと考えたのだろう」(幹部)と世論の批判が自民党に向かうのを警戒する。
菅首相は19日、公明党の山口那津男代表にも電話し「引き続き震災対策に協力してほしい」と求めたが、同党関係者によると、入閣要請はなかったという。同党も首相の「抱きつき戦略」を警戒しており、山口氏は「入閣要請や連立の打診が仮にあったとしても受けることは考えていない」と明言している。【中田卓二、横田愛】