リビア:仏戦闘機がカダフィ政権軍攻撃 戦車破壊か

2011年3月20日 2時20分 更新:3月20日 3時24分

 【カイロ樋口直樹、パリ福原直樹】フランス国防省は19日午後(日本時間20日未明)、リビア上空を飛行中のフランス軍の戦闘機がカダフィ政権軍の軍用車両数台を攻撃して破壊したことを明らかにした。北東部の反体制派本拠地ベンガジなどへの政府軍の攻勢が強まる中、国連安保理は17日、武力行使を認める決議を採択。19日には仏英独首脳やクリントン米国務長官らがパリで会合を開き、カダフィ政権が決議の「即時停戦」要求に違反していると認定、武力行使を決めていた。

 AFP通信などによると、フランス軍の偵察機や戦闘機など計20機がリビア上空を飛行中、ベンガジ付近でカダフィ政権軍が住民に危害を加えようとしているのを発見したため攻撃したという。中東の衛星テレビ・アルジャジーラは、フランス軍機が戦車4台を破壊したと伝えた。フランス軍の空母「シャルル・ドゴール」は20日、リビア近海に向けて出港する予定で、近く大規模な空爆が始まる可能性もある。

 中東地域で安保理決議に基づき多国籍軍が空爆を行うのは91年の湾岸戦争以来、20年ぶりとなる。

 空爆は安保理決議が求める「飛行禁止空域」の設定に向け、リビア空軍の拠点や防空・レーダー施設などを標的にするといわれている。空域設定にはアラブ連盟(22カ国・機構)加盟のアラブ首長国連邦(UAE)とカタールも加わる見通し。

 ロイター通信によると、仏政府は19日、ラファール、ミラージュ戦闘機、空中警戒管制機など5機をリビア上空に飛ばし、反体制派への「空爆を阻止する」(サルコジ大統領)軍事行動を行った。サルコジ大統領は市民に発砲している戦車なども標的にすることを明らかにしていた。

 飛行禁止空域は、湾岸戦争後の91年に米英主導でイラク北部と南部に設定されたほか、ボスニア・ヘルツェゴビナでも90年代前半に適用された。しかし、広大なリビア上空のすべてを監視することは難しく、飛行禁止空域設定の実効性を疑問視する声もある。

 さらに、欧米主導のリビア空爆が、アラブ世界の対欧米感情を一層悪化させる可能性もある。欧米は安保理決議採択の条件として、アラブ連盟から支持を取り付けたが、実際の軍事行動にはアラブ諸国内からも消極論が出ていた。

 反体制派は先の武装蜂起後、序盤戦で地中海沿岸の多くの都市を支配下に収めたが、今月に入ってから唯一の空軍力や豊富な重火器を有する政府軍に大きく押し戻された。「ベンガジ陥落」の危機を救うため、欧米主導で安保理決議を採択。カダフィ政権は翌18日に決議受諾と即時停戦を宣言したが、その後も反体制派支配地への攻撃を続けていた。

 安保理決議には、安保理の15理事国のうち、英仏米など10カ国が賛成。中露独、インド、ブラジルが棄権。中露による拒否権の発動は見送られたが、ドイツの棄権で西側諸国内の亀裂も明確になった。

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