2011年05月18日 (水)

チェルノブイリ医師の思い・菅谷医師の講演全文掲載です

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25年前のチェルノブイリ原発事故の後、ベラルーシに渡り、5年半、現地で甲状腺がんの子供の治療にあたった外科医の菅谷昭さん(すげのや・あきら/現・長野県松本市長)。

18日のニュースウオッチ9で放送した特集の中で、時間の都合でお伝えできなかった菅谷さんの講演内容を全文掲載します。

 

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「テーマ:子供たちを被ばくからどう守るのか」

2011年5月14日午後1時半から1時間程度 福島市の保育園にて

講師:長野県松本市長/医師 菅谷昭(すげのや・あきら)
   ベラルーシの小児科医 アナスタシア・タルカチョア
   長野県立こども病院副院長 中村友彦(なかむら・ともひこ)

 

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【菅谷医師】
今回、こういう形で、まさか私が保育園のお母さん、お父さん方とお話しするとはゆめゆめ思っておりませんでした。私は元々が外科の医者でありまして、なおかつ私の専門とする領域が甲状腺ということで、私自身1996年から5年半、チェルノブイリの原発事故の後の子供たちの甲状腺がんの手術をしてまいりまして、そんな関係で、ちょうど2001年の6月に日本に帰ってきたわけです。

私が全く考えてもいなかった日本での原発の事故。しかもそれがこの福島県の第一原発ということで、さぞかし、皆さん方が自分のことはさておいて、お子さんたちのことで、大変心配されていらっしゃることは、よくわかりますし、私自身が、5年半現地におりまして、子供の手術をしたり、あるいは、また、手術の終わった後の子供たち、まあ、汚染地からみんな来るわけですけれども。(子供たちを)往診したり、そしてまたお父さんお母さん、あるいは、おじいちゃん、おばあちゃんたちの色んな悲しみ苦しみなどをよくわかっているものですから、私も今回は、ぜひとも日本の子供たちをチェルノブイリと同じようにしてはいけないんだということで、色々お話してきたわけですけれども、ただ、最初に申し上げたいのは、チェルノブイリの原発の事故と今回の福島の事故とは、基本的には大きな違いがありますから、そこで、皆さんがチェルノブイリの話をイコールすぐ福島とは、決して思わないでください。ここを私、まず申し上げておきます。

向こうのドクターに研修してもらうために、長野県の県立こども病院で研修してもらっておりまして、ちょうどそこにいる女医さん(タルカチョアさん)ですけれども彼女、小児科医なんですけれども、ゴメリという一番、汚染された地域の病院でお勤めなんですけれども、その病院で、ことしの一月に3人目なんですけれども、おいでになってそして今研修中、長野県の安曇野市の今、テレビの「おひさま」ありますけれども、あの安曇野市です。

チェルノブイリのことと比較しながら、説明をさせてもらいますので、その辺ご了承願いたいと思っております。ただ、まあ、チェルノブイリで、こういう事実がありますよってことだけは、知っておいても良いですけど、それをイコールすぐ福島、それは決して思わないでください。これを前もってお願いしておきます。

 


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【出席者の男性】
はじめまして、今、2人の子供をこちらの保育園で預かってもらっております。最初に今、お話があった福島の事故とチェルノブイリの事故は根本的に違うということだったんですけれども、この違いというのをご説明いただけますでしょうか。


【菅谷医師】
実は、私単なる外科の医者でございまして、研究者でもなんでもないし、放射線の専門家でもないことをお断りしておきますけれども、で、チェルノブイリの原発の事故と今回の福島の事故の大きな違いというのはですね、チェルノブイリの事故の場合というのは、今まさに原子力発電所が核分裂反応をずっと継続しているときに起こっています。
いいですね、で、原発事故が起こったときに、大事なことは3つあって、最初はまず核分裂反応をストップすることですね。2つ目は、その冷やすこと。冷却、今非常に問題になっていますよね、今福島で。冷却。それからもう1つは、その原子力発電所の中にある、核分裂によって起こった放射性物質、例えば放射性ヨードとか、放射性セシウムとか、あるいは放射性のストロンチウムとか、あるいはまた、プルトニウムとか、その他一杯、核分裂のときにゴミが出るんです。それが放射性物質なんです。で、そういうものが溜まって、結局は、3つ目は、そういう放射性物質を閉じ込めて出さないという状況にあります。で、実はチェルノブイリは、まさに核分裂反応を起こしているときに継続中に起こった事故ですから、結局ものすごい大量の放射性物質が空中に舞い上がったと。

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(福島は)地震によるときにストップしましたから、ですから核分裂反応はストップした段階で、ただ残念なことにそのあと、要するに緊急の冷却装置が壊れてしまったと、津波でもって。ですから、そのとき予備の電源がきかなかったということ、ですから冷却が十分されていないということで。

空中に放出された放射性物質の量というのは、チェルノブイリというのは、ちょうど広島型の原発の原爆の、500倍か600倍といわれています。今回の福島の場合は、その政府、東電の報告によりますと、量はその1つ下のオーダー、10分1くらいということでいきますと、空中に出ている量というのは、少ないということ。ただ残念なのは、クーリング、冷やすことと、ある意味では、空中にそういう物質を放出している物質を何とかして防がなければいけないということ、で、それが今日の朝のニュースでもやっていますが、一号機の場合には、あそこにカバーをかけるということですね、あの全体に。それは、まさに空中に放射性物質を出さないようにする。もう1つやってもらわないといけないことは、早く十分に冷やしてもらわないといけないということ。(INESの)レベルっていうのは、福島の場合とチェルノブイリを比較すると、(放出された放射性物質の)量としては、もうはるかに今いったようにチェルノブイリが10倍ほど多いということですから、あるレベル以上の場合は、レベル7にするということですから、7ということでございます。 

 

【出席者の女性】
今、妊娠中で、もうすぐ5ヶ月になるのですけれど、今の福島市の放射線の量で、おなかの赤ちゃんにはどれくらいの影響があって、もし影響があるとしたら、どんな影響が赤ちゃんに出るのかなというのが知りたいので、教えてください。

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【菅谷医師】
私自身も産婦人科の医者でないものですから、そこを正しくお伝えすることは難しいかもしれませんが、現在、妊娠中であるということで、福島で出産していいか、このまま継続していいかということでございますけど、少なくとも私は、福島市におきましては、報告されたものを見る限りにおいては、空間線量というのは、今、こういう大気中のですね、汚染されている状況というのは、これは安全だということになっていますから、それはそれでいいと思う。

ただ、問題はですね、被ばくというのは2種類に分けます。1つは外部被ばくということですね。もう1つが内部被ばくということ。外部被ばくというのは、皆さんが一番よくわかるのは、胸部のレントゲン撮影とか、あるいはCTなんかの検査です。あれは、体の外からいわゆる放射線を浴びるということ、これは外部被ばくです。もう1つは内部被ばくというのは、とりあえず放射性物質、細かいこういうところにあるのを体の中に取り込んで、その取り込んだ放射性物質が、組織とか細胞の中に入って、そこでもって今度は、色んなα線、β線とかいろんな種類の放射線を出して、それが細胞レベルで影響を受けるという風に言われております。

で、今回の場合には、いわゆる内部被ばくをしないように注意することは、必要だと思うんです。これは皆さん同じです。大人も子供も、特に子供さんは注意した方が良いだろうと。ですから、それは何をするかというと、内部被ばくの場合に、体の中に放射性物質を取り込む経路は3つございます。1つがこの大気がかなり汚染されたときに、息をしますから、そうするとその息をしたものが鼻とか口から入って、それが気管を通して、肺に入ります。粘膜とか、そういうところからやっぱり、放射性物質が取り込まれて、血液の中に入る。もう1つが一番ご存知の通り、経口的、口からですね、これが、食物とかミルクとか、水とか、その他色んなものがあると思いますが、この3つの経路がありますから、ですから、内部被ばくを防ぐためには、この3つの経路を何とかして皆さん方、入れないようにしてください。

大気の汚染がひどくなったようなときには、外に出るときには、マスクをしてもらう。マスクの場合には、その下に、濡れたガーゼか何かを入れたほうが良いだろう。

雨とか、今は雪はないですけれど、そういう場合は上から落ちてきますから、(放射性物質は)空中に浮遊している。下に落ちてきますから、それを浴びないようにして欲しい。それには傘を差す。それから濡れてしまった場合には、頭を洗うとか帽子をかぶるとか、そういう形で持って経皮的な摂取を防ぐ。

 

この辺、僕が複雑な思いがあるんですが、ここで経口的な摂取ということで、お子さんたちに、これ明らかに汚染されているよっていうできるだけ口にしない方がいいと思う。で、それは妊産婦さんも同じなんです。で、例えば、妊婦さんが、妊娠している方がそういう(放射性物質の濃度が)高いものを食べるとそれが体に入って、そしてそれが胎盤を通して、胎児の方に行ってしまうとそういうことがあるものですから、できるだけ、妊婦さん、赤ちゃんも今、ミルクをやっている方も、これやっぱり汚染されたものを高度の場合、それがミルクに出て、それが赤ちゃんに行ってしまう。そういう意味でいったら、今言ったような3つのことをできれば、防いでいただきたいなと。それに代わるものを食べたりすればいいわけですから。で、最後に一般の大人の方はあまり気にしないで持って、大丈夫なものは、口からとってもいいのではないかと思っております。

 

 

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【中村医師】
お母さんの質問を聞いていたんですけれども、(タルカチョアさんが言うには)当時の25年前のときには、何も正確な情報が住民には伝わっていなくて、ただ1つだけ、その汚染された地域からの野菜と水とミルクは、食べてはいけませんという情報だけが住民にされて、先ほど先生がおっしゃったような、マスクをするとかそういうことは何も情報として与えられなかった。

 

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【出席者の女性】
今まで、年間1ミリシーベルトと年間の基準を定めていたところを20(ミリシーバルト/年)まで上げて、それもすべて乳幼児にまで適用されているということが、不安を覚えていて、その基準が本当に安全なのかっていうところがまず1点と、今チェルノブイリの方で今、安全の基準内で過ごされていたという方がいるということだったんですけど、チェルノブイリの安全基準と福島の安全基準と何か違いというか、年間何ミリシーベルトとかいうわかっているところがあれば。

【菅谷医師】
皆さんも色んな情報で、お読みになっていますけれども、年間で大人の人が許されるのが、1ミリシーベルトということになっていますよね。パーイヤー、1年間に。で、そのときに、今回のような原発の事故が起こったようなときには、もう少し基準を上げていいよというのが、この国際の放射線防護委員会の規程があるICRP。今回の場合には、今、福島の場合には、そういう緊急事態ですから、1ミリではとても無理ですから、20ミリまで上げているんです。ただ、私は先ほど言いましたように放射線の専門家ではありませんから、それがいいかどうかはいえませんけど、ただ、これは学者間でもってご承知のとおりそれはやっぱりちょっと高すぎるのではないかと、今おっしゃったように、子供、大人なのにそれを子供に当てはめていいのかなっていうことで、ご承知のとおりこういう放射線というのは、子供は非常に影響を受けやすいですから、そういうわけで学者によってかなり(考え方が)違うわけですね。

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20ミリにしてあるわけですけれども、そういう専門家の中でもって、やっぱり考え方が違うとなると、これはやっぱり、よくわかっていないんだってことなんです。10ミリでよくて、20ミリじゃいけない、10ミリでよくて、これ安全かといわれると、誰も答えを持っていないんですね。だけど、今まで経験的に言うと、10ミリだったらまあいいんじゃないかとだから、そういう意味で行きますと、今回の場合に20ミリというよりは、子供に対しては、もう少し下げておいた方がいいのかなと思うのはありますよね。これはもう、誰も知っているように、子供のほうがより、小さいから、小さいから小さいほど放射線の影響を受けやすいから、20ミリからということに関していえば、学者の中には、参与を辞めた先生は、やっぱりこれは自分の子供だったらこの値は私は...って言われたように、それは国は今回そういう風に決めていますけれど、できれば、だから何をするかというと、できるだけ子供さんにはそうなれば、20ミリでいいとはいうものの、内部被ばくを防ぐようなことをお父さん、お母さんがやって欲しいということしかいえないと思うんです。

彼女(タルカチョアさん)もそうですけど、今もそこで生活していますから、その意味では私は、理想を言えばきりがないわけです。これだけ皆さんにもう1つ、ご理解願いたいのは、今までは僕は日本に帰ってきてからは、全国でチェルノブイリの話をさせてもらいました。で、そのときに僕が話をしても、正直言って、日本の皆さんは、誰も自分のことしか考えてくれなかったです。どこかの対岸の火事のように私全然、関係ないわっていうように聞いていた。これは今回起こったときに、急に私にいろんなことを言ってくるときに、あれだけ言ったじゃないのという風に私言っているんです。これは日本国民が、ある意味では、これを逃げるんじゃなくて、正面から、まさに日本は、海外から見ますと汚染国になってしまったので、この事実だけは、しっかり捉えてください。逃げられません。いいですね、ですからそういう中で、そういう事実を知った上で今後、我々がまたどうやって生活を立て直していくか、っていうことを考えて欲しいんです。

ただし大人の場合は、これあまり気にしてもいけないと私は思っております。これだけは、これもご理解お願いしたいと思っております。

 

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【出席者の女性】
3歳の男の子の母親なんですけれども、今福島市、安全と聞いて少し安心したのですけれども、でもやっぱりあの、こちらの保育園でもまだ外遊びをさせていませんし、私も自分の子供を外遊びさせていません。で、いくら政府が安全といっても、させたくない気持ちで、なのでこちらの保育園では、それは安心しています。ただ、今後、少しでも外で遊ばせたいという気持ちはありますし、どのくらいの基準を目安にしたらいいのかなっていうことと、それと、週末、自分が休みのときには、子供を外に、少しでもマイクロ(シーベルト)が少ないところにいって遊ばせているんですけれども、そういう風にすると、何か(土を)浄化させるというのを聞いたことがあるのですけれども、そういったのは本当なんでしょうか。

 

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この質問、多分、今日お見えのお母さん方、お父さんも心配されていると思いますけれども、基本的に先ほど言いましたように、内部被ばくを基本的にブロックして欲しいということなんです。で、内部被ばくというのは、今、お話にあったように幼稚園で遊び、あるいはまた、散歩でもしてほこりが舞い上がると今問題になるのは、放射性ヨードはもう半減期からいきますと、だいぶ薄らいできていますから、セシウム、また僕政府の報告で、今回ストロンチウムがどれだけ出ているかはわかりませんし、そういうようなことがあるものですから、今の状況では、県は土壌の状況はもう出していると思いますから、そこを皆さん方、是非ともきちっと把握していただきたいと思います。

けれど、ただご承知のとおり、昨日の話でいきますと、第一号機がメルトダウンといいまして、炉心の問題が出てきたとか、政府が言ったまだまだ予断を許さない状況にありますから、そういう意味では日常生活の中でもって、政府や福島県とか、福島市が出す、そういう値、レベルは注意していただきたいと思います。で、そういう中で、じゃあ、遊ばしてもいいかというときには、福島県、あるいは福島市の中でも、場所によって結構違います。ですから高いようなレベルのところでは、申し訳ないけど、できるだけ遠くへいって、で遊ばしてくる、これしょうがないんです。大変ですけど、お母さんお父さん方、やってください。お子さんを遊ばせたいんだと、そのときには、ここのエリアが大丈夫だったらそこへ連れて行って遊ばしてやってあげたいと思います。ただ、期間はいったいどれくらいになるんですかと、それは僕も聞きたいくらいですよね。実は。これも政府は困っているんです。

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だからまさに今、福島はある意味で皆さん方が、さあどういいましょうかね、ある意味で初めて経験する、日本はもちろんですけれども、世界でもチェルノブイリをのぞけば初めての経験ですから、もうそれをやっぱり注意して、放射線の被ばくに関しては、自分で注意して見ていくしかないのかなと、私見て思っています。

セシウムだと半減期が30年という状況ですから、かなり長いです。ですから、こういう状況を長期にわたってやっていくしかないんです。ここだけはお願いしたいんです。これ短期で見ないでください。短期というのは、気が短いという意味ではなくて、期間が短いという意味ですけど。だから少し長期的になりますよって、そういう心構えをしたうえでもって対応していくことが僕は大事だと思うんですよ。海外から見ますと今、彼女(タルカチョア)もいっていますけれども、この間も、他の外国の方が日本人はとても落ち着いて、状況を把握しながら、パニックにならないですばらしい国民であるってことは海外から高い評価を得ているんです。

 

【中村医師】
(タルカチョアさんは)18歳までゴメリというところに住んでいたんですね、で、今聞きましたら、福島と同じ、今の福島と同じような環境というか、場所というか。で、(チェルノブイリ事故)当時彼女3歳で(★正しくは2歳)、18歳までそこで過ごして、で大学はミンスクというところで、大学を卒業してから、またゴメリに戻って、今、そこにずっと住んでいらっしゃる。で、3歳のころからずっと外で遊んでいたそうです。で、このように何もなく、立派な医師になっています。

 

【参加者の女性】
もし、松本市長さんが、福島市長さんだったら、原発事故後から、現在までの間、どんな風な対応をとっていたと思いますか。それから、今後、どのように福島市内を除染なりしていくとか、考えをお持ちだったりとか、伺いたいです。

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【菅谷医師】
大変、答えづらいご質問でございますが、きっと、佐藤知事、それから福島市の市長さん、うんとご苦労されたと思うんです、私は。私自身が先ほどから言いましたように、僕がこう皆様の前に出るときには、市長として出た方が、楽なんですけど、僕自身が医者として、しかもチェルノブイリで仕事をしてきたということでもって、とても心が揺れているんですよね。で、理想だけ言っていられないものですから、福島市では、福島市長さんがもし私だったらどうしますかっていうけれど、私自身、特別なことはしない、とにかく経過を見て、一番思ったのがですね、やはり内部被ばくだけはさせない方がいいってことを一番言っています。だから、私、長野県松本市にいたとき、というか時は、かなり早い段階でもって、もう内部被ばくですよって言って、外部被ばくでないですよってずっと言ったんですけれども、で、ようやく内部被ばくというのが上がってきていますが、それが僕が、チェルノブイリで経験してやはり、(放射性物質を)取り込んだことによって、それが長い年月にわたって、いろいろな問題がしばらく出てくる可能性があるんです。で、実際にチェルノブイリの場合でも、かなりこちらは濃度が高いですけれどもそれが内部被ばくによって、結構いろんなことが出始めつつあって、チェルノブイリはまだ終わっていないんです、実は。今、進行形なんです。ですから、そういうのを現時点でもって、チェルノブイリを見れば、福島の皆さんには、できれば、さっきも言いましたようにくどいようですけども、内部被ばくの経路だけは、できるだけ注意してください。マスクされてますけど。

 

【出席者の女性】
年間20ミリシーベルトとか話がありますが・・。

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【菅谷医師】
私、放射線の専門医ではないものですから、今のような形というのは、私は正確にお答えできませんが、例えば累積といって毎年10だったら、2年目は20で、3年目は30という考えですよね。そうではないはずです。これがあったらえらいことだと思います。だから1年間でもって、20なら20までは大丈夫だというときに、一方で、今度は体の影響というのは取れていくのは取れていくのですね。だから新しいとしにはまた、20ミリ受けても良いよと考えていいと思います。累積は1年間の累積は、いいですけども、それが年にわたって来年が20でどうするのって、そういう話ではないと思います。もしそうだったらえらいことになってしまいますから。

α線、β線、γ線、X線というのがあります。それから、中性子線とか、色々な種類がある。で、α線っていうのは、影響を及ぼすのが数十ミクロンというから、1ミリの千分の1が1ミクロンですから非常に短い。β線っていうのが数ミリなんですね、出すのが。でγ線っていうのが数十センチなんです。そうしますとセシウムっていうのは、β線とγ線を出しますから、セシウムの場合ってのは、こう地面からみなさんが言われるように地面にある。こういうところやっぱりγ線がでているから、そういう被ばくはあります。これは外部被ばくです。今問題なのは内部被ばくなのですよね。皆さん方、今心配されているのは、もしがんが出たらって言う、これは、外から浴びるのがものすごい大量でしたら、これは問題ですけど、今ここで空間線量を見たらそれでは起こりませんよ。むしろ将来を考えたら、これは放射性物質を取り込んで、細胞の中でもってその放射性物質がα線とかβ線を出して、そうするとそれはずーっと(放射線を)出しているわけですね。そうすると細胞のレベルにそういう放射線がぶつかるから、細胞の中に細胞の核がありまして、その核の中に、いわゆる遺伝子、DNAというのがあって、そこに影響を及ぼすから、がん遺伝子が元気になって、そこでもってがんが発生する。ですから内部被ばくをできるだけやらないように、そういう注意で、あとの普通の生活は基本的にはいいと今考えている。

定期的な、多分国はやると思いますけれども、健康診断のシステムをつくるとかですね、ベラルーシも先ほど彼女(タルカチョアさんが)、言いましたが、チェルノブイリの事故の後、非常にたくさんの健康、調査プログラムができたそうです。それから毎年、子供さんは、例えば当初、甲状腺の超音波の検査とか、あるいはまた血液の検査とか、免疫機能の検査とか、色々な検査をしているそうですから、それだけは今後、もし心配であれば、皆さん方は定期的な検査を多分僕は、福島県や国から出てきて、出てくると、国でやっぱりそういう機関を設立して、そしてそういう方々は、子供さんを定期的に検査、あるいはまた、若いお父さんお母さん方もそうですね。これだけは日本の場合は、非常に(医療技術が)きちっとしていますから、ありがたいと思ってください。

 

【出席者の女性】
内部被ばくの検査についてなのですが、あまり期間がたってしまうと、検査してもあまりどれだけ被ばくしているとか、わからないっていうのをきいたことがあるのですが、一部避難区域にあたっている地域については、内部被ばくの検査を国や県は考えるかも知れないのですけど、避難地域以外っていと安全って言うことで国がいっているので、その個人で内部被ばくの検査を受けた方が、いいのかどうかをお聞きしたい。

【菅谷医師】
チェックできますかっていうけど、実はみなさん、こういう携帯のサーベイメータお持ちだと思いますけど、あの機械を含めて簡易的なのは、基本的にガンマ線を見ているわけですね。γ線、いいですね。ですからγ線っていうのは距離が数十センチですからいいのですけど、先に言いましたように、α線、β線っていうのは、非常に距離が短いから、体の中に入ったとき、それチェックできないのです。ですから、内部被ばくの場合には、その程度は、実は普通の測定ではわかりません。ですから、やるのであれば、ホールボディーカウンターって、非常に精度の高いものをですね、これは先ほど福島県立医大に行きましたら、あるそうですから、当然、県の最後の砦ですから、福島の場合はあるし、広島、長崎にもあります。

できるだけ内部被ばくをされないような努力をしてくださいっていっているわけです。

 

【中村医師】
(タルカチョアさんは)ゴメリというところにずっと住んでいらっしゃる、まさに福島と同じようなところに住んでいらっしゃるっていいましたけども、私はラジオアイソトープ、放射線の検査はしたことがないそうです。
チェルノブイリでは、その土地にある放射性セシウムというのは、野菜とか食べ物、ミルクに移って、それを食べることによって、体に取り込まれるということがほとんどなのです。

 

【出席者の女性】
内部被ばくのことで、私たちが気をつけなければいけないこととして、国や県とかで出している暫定基準というものがクリアしたものが市場に出ているということで、私たちはそれを信用して、摂取していくことしかないと思うのですけども、それでよろしいのでしょうか。どうしても暫定基準というあいまいな数字が出ているので、どこまで信用できるのかというのが多分、不安に思っていると思うのですが。基準を超えれば、私たちは地元のものを食べていますし、他から葉物とかを持ってきているわけではないので、そこだけお願いいたします。

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【菅谷医師】
実は私、今回の日本の暫定基準の食品安全委員会の参考委員として呼ばれまして、国に行ってきまして、今回の暫定の基準値をですね、急きょ厚生労働省が決めたんです。この値が本当にいいかどうかを今度は日本の食品安全委員会にかける、そしてOKだったらそれでいきたいということだったんですけども、基本的には日本の場合、大変厳しい値を、まあ暫定ですけどもとったのは、これは実は日本じゃなくてですね、国際放射線防護委員会、あるいはまた、WHOとか、IAEA、国際原子力機関って、これが出している値を参考にして、日本が暫定的につくって、つくったものです。それがいいかどうかってことで、私は委員として申し上げたのは、できるだけ厳しくしてくださいってことを申し上げました。ですからある意味で、今回のこの暫定の基準値って言うのは、厳しい値になっています。ですから、その基準よりも以下であれば、以下であれば一応、食べてもいいと、摂取しても良いと。それから超えた場合はやめてくださいと。ただここで僕が気になることが、これは難しいのですけれども、生産者の立場から言えば、基準値を決めた以下であれば、是非食べて欲しいというのは、当たり前と僕は思うんです。これは。だけれども、例えば、お子さんの水の場合に、100Bq/l、100Bqというのを決めていくときに、110はいけなくて、90はいいかっていうと、これ、皆さんにお聞きしたい。これ、どう思います。これが、僕が今、悩んでいるところなんです。ですから、ちびちゃんというかお子さんとか妊産婦さんだけは、もし汚染されている土壌がはっきりしているならば、できるだけ口にしないのが良いだろうと。ただし、僕らみたいに老人はみんなもう気にしないで食べるように。だから僕が言っているのは、子供だけ守ろうと、それから日本の将来を担っていく、その赤ちゃんたちを産んでくれるそのお母さん方の中でも、妊産婦さんだけは、国民全体で持って守ってあげようと。あとの方はいいだろうというのが私の基本的な考えでございます。ですから、それは基準値がありますから、それ以下であれば、理想を言ったらきりがありません。こういう現実だって言うことは皆さん、これは思ってください。

 

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【タルカチョア】<和訳>
私はアナスタシア・タルカチョア、ベラルーシ人で、出身はゴメリ州。ゴメリ・クリニック医院で働いています。もちろん皆さんが自分やこどもの健康を心配されていることを理解しています。もちろん、ここ日本では事故の状況が進んでいて、とても恐ろしいことです。私だけでなく、すべてのベラルーシ人も状況を心配しています。私は皆さんに心から皆さんにお見舞いを申し上げます。日本は高度に発展した国でありながら、このような深刻な災害を防ぐことは難しい。今、私は日本に来て、今回の事故をチェルノブイリの事故と比較することができます。私もすべてのベラルーシ人も日本での対応がいかに組織だっているかを見て取れます。日本政府の対応は、合理的で適切で、理にかなって組織立っています。日本の人たちは、みんながみんなのことを心配し、自分たちの安全のためにできるあらゆることをしようと努力しています。日本人は、強くパワフルな国民だと、感じます。私もすべてのベラルーシ人も、日本人はこの困難な問題をすべて打開できると信じています。

 

【中村医師】
僕は、小児科医でありまして、もし何か、これから福島のお子さん方のために力になれることがありましたら、これからずっと支援していきたいと思いますので、どうか遠慮なく、声ををかけていただきたいと思います。

 

投稿者:かぶん | 投稿時間:22:01  | カテゴリ:取材エピソード
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