2011年5月17日3時2分
野菜が成長段階で土中の放射性物質を吸い上げる比率を、農林水産省が近く公表する。トマトやキュウリなど東日本で本格化する夏野菜の作付けを前に、収穫時にどれぐらい汚染されるかの目安を示す。土壌の汚染結果と重ね合わせれば、作付け可能な品種や地域が判別できる。
農水省によると、野菜が放射性物質を吸い上げる比率(移行係数)に関する国内のデータはほとんどない。チェルノブイリ事故時やこれまでの海外の原爆実験でのデータから、国内でも目安にできると判断した品種の移行係数を示す。葉物野菜のほか、トマトなどの果菜類、イモなどの根菜など、幅広い品種になる見込みだ。
出荷までに一定の時間がかかるため、調査の対象は半減期が短い放射性ヨウ素ではなく、30年と長い放射性セシウムだ。これまでの調査では、ホウレンソウなど一部の葉物野菜は吸収しやすく、ジャガイモなど根菜の地下茎などの部分に集まる傾向もみられるという。
移行係数と、畑の土壌汚染の調査をあわせると、どこで何が作付けできるのか判明する。生産者は、汚染されにくい野菜に切り替えるといった対応がとれる。農水省なども、出荷時に優先的に汚染度合いを検査する品種を絞り込める。首都圏に供給される夏野菜の主産地は北関東や東北だ。
福島県内では、4月末以降に収穫されたタケノコから基準を超える放射性セシウムが検出された。タケノコは大半が土中に埋まっている。農水省は、福島第一原発の爆発事故で上空から降った放射性物質が付着したのではなく、土中から吸い上げてため込んだとみている。11日には原発から250キロ離れた神奈川県の足柄茶も基準を超えたが、農水省は茶も吸い上げたとみている。農水省は今後、汚染の主原因が上空からの付着ではなく土中からの吸収になるとみて、移行係数の公表を決めた。