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きょうのコラム「時鐘」 2011年5月16日
3年前、岩手県の中尊寺は世界遺産になるはずだった。地元ではポスターを作り、駅や繁華街に祝福ムードが漂っていた。それが一転、選考漏れとなった
宮城北部と岩手県南部を襲った大地震の直後だった。たまたまその平泉を訪れた。「世界遺産はだめ、地震は起きる。踏んだりけったり」と、地元の人はぼやいた。そして再びこの大震災だ。踏んだりけったりどころではない が、一筋の光が差し込んだ。平泉の世界遺産登録が確実になったのだ。震災被害の大きさに比べれば何とも小さな光だが、千年近い輝きを保っている金色堂の存在は大きい。気の遠くなるような歳月と幾多の災害に耐えた遺産を多くの人に見てもらいたい その訪問時、中尊寺の参道脇に「能登」の二文字を見た。輪島に「アテの元祖」とされる巨木がある。能登アテの元祖は平泉から運ばれたとの伝説がある。1991(平成3)年、そのアテの苗木が里帰りして中尊寺境内に植樹され成長していたのだった アテはアスナロの一種で「あすはなろう」という希望のこもった木だ。世界遺産とともに東北復興が大木に育つ日を信じている。 |