2011年5月16日15時5分
東日本大震災の被災地で、がれき撤去など復旧工事に伴う事故が相次いでいる。朝日新聞の集計では、災害救助法の適用地域がある8都県の労働局に11日までに届け出があった負傷者は101人、死者は7人。現地では人手が足りず、がれき撤去の経験のない派遣業者やボランティアが入り交じって指揮が混乱しがちなことや、通常とは違う不安定な足場のなか、重機が多数行き交っていることなどが原因とみられる。
休業4日以上のけがや死亡について雇用主が労働基準監督署に提出する労働者死傷病報告書から、「震災復旧・復興工事」に関するものを集計した。都県別の内訳は宮城44、茨城27、福島16、栃木10、千葉4、岩手、青森各3、東京1。厚生労働省労働基準局安全衛生部によると、3分の1は山積したがれきや屋根からの転落。次いで、重機にはさまれたり、巻き込まれたりするケースが多い。
福島県では3月30日、がれき置き場をブルドーザーで造成中、運転席から49歳男性が転落、ブルドーザーにひかれて亡くなった。茨城県では4月4日、木造2階建て住宅の屋根瓦を撤去してブルーシートを張っている最中、70代の男性作業員が足をすべらせ、6メートル下の地面に転落して死亡した。
厚労省によると、報告にはボランティアや自宅の片づけをしていた人は含まれない。担当者は「復旧工事に伴う事故は、報告数を大幅に上回る可能性が高い」としている。
なぜ、これほど事故が多発するのか。今月初め、宮城県で道路側溝の清掃作業をした大阪の男性は、「現地では被害のあまりの大きさに、復旧を急がねばと作業に没頭してしまう。後ろから重機が近づいてきても気付かない」と話す。住民に「こっちも片づけて」と頼まれ、何とかしようと、その場で作業範囲が広がったことも。結果、作業グループ間の役割分担が混乱。「事故につながりかねない要素はたくさんあった」と話す。
30分間。地震が起きてからの行動が、人々の命運を分けた。原発で、自宅で、漁船で――。生き延びた人たちの証言を、記録として残したい。