2011年5月16日 21時47分 更新:5月16日 22時3分
東京電力は16日、福島第1原発の地震直後から数日分の初期データを公表した。東電が「津波で停止した」と説明してきた1号機の非常用冷却装置は、炉内の圧力が急激に低下したため手動で停止していたことが分かった。政府が進める事故調査特別委員会による事故原因の解明や、東電の初期対応の検証に役立つ重要な内容だ。
今回東電が公開したのは、福島第1の各種データの記録紙▽警報発生などの記録▽中央制御室の運転員による引き継ぎ日誌▽電源復旧作業など各種の操作実績の取りまとめ--など。A4サイズで約2900ページに及ぶ。
公開された記録によると、3月11日午後2時46分の地震直後、原子炉圧力容器に制御棒がすべて挿入され、原子炉が緊急停止。非常用ディーゼル発電機も正常に稼働していた。また、1号機の原子炉を冷却する非常用復水器については、地震直後は正常に起動したが、約10分後に急速に炉内の圧力が低下したため、手動で停止していたとみられる。東電は「この作業は運転手順書に基づき、炉内が冷えすぎないよう調整したものではないか」と説明。復水器が地震による損傷を受けたことを示すデータはないことも明らかにした。
一方、1号機の格納容器を破損から守るため、弁を開いて排気する「ベント」については、翌12日午前9時15分から、手動で弁を開ける作業に入ったことも判明した。
失われた外部電源を復旧するため、11日午後5時ごろから、東電の全支店に電源車を確保するよう指示。渋滞などに巻き込まれ、最初の電源車が到着したのは約6時間後だったことも分かった。
福島第1原発の初期データは、保安院が先月25日、東電に対して回収を指示。原子炉圧力容器や格納容器の水位、温度、圧力や、放射性物質を含む水蒸気を格納容器から大気中に放出した「ベント」作業の実績などを対象に、地震発生後の原子炉の状態などの記録を回収し、報告するよう命じていた。【河内敏康、平野光芳、久野華代、関東晋慈】