【社会】隣町危機、国の指示待てない 岩手・住田町が即断で仮設住宅2011年5月16日 17時52分 東日本大震災発生からわずか2週間前後で仮設住宅を造り上げた岩手県住田町に、全国から視察が相次いでいる。町は、壊滅的な被害を受けた同県陸前高田市など「隣町の困っている人を放っておけない」と、国が定めた手続きをあえて無視、独断専行で建設を進めた。その常識破りの対応ぶりは、大災害対応を見直す自治体への教訓となりそうだ。 陸前高田市中心部から20キロほど山道を走った住田町の集落に、平屋の木造住宅が並ぶ。「陸前高田や大船渡の被災者に住んでもらう仮設住宅です。木材は地元のスギ」と同町の住宅建設会社社長、佐々木一彦さん(66)。間取りは定番のプレハブ仮設と同様の2DKだが、木のぬくもりが伝わる外観が特徴的だ。 大震災でも大きな被害のなかった住田町。だが、多田欣一町長(66)は発生3日後に佐々木さんに仮設住宅の建設を依頼した。 2004年のスマトラ沖地震など国内外で頻発する災害を踏まえ、町長は以前から町特産の木材を使った仮設住宅の構想を練っていた。そこに起きた震災。佐々木さんは作製途中の図面を大急ぎで仕上げる。 110棟分約3億円の支出は議会の議決を事前に必要としない専決処分で決定。国や県の指示を待たない独断だった。 仮設住宅は、災害救助法で県が被災市町村の状況を把握し、場所や数を調整して建設を始めることになっている。 町の独自建設が国の補助対象となるかは不明だったが、「それでもスピードを優先した」と町長。被災地全体でも着工すらわずかだった3月下旬、一部の木造仮設住宅を完成させた。震災発生からほぼ2週間という早業だった。これまでに30棟が完成し、既に入居している。今月下旬の全棟完成を目指す。 地元の木材を町内の業者で加工・建設したため、1戸250万円と一般のプレハブより安く、資金も趣旨に賛同するNPOから全額支援を受けられることになったという。 一方、仮設住宅を担当する厚生労働省には「県の調整が遅い」という苦情が被災市町村から殺到。同省はようやく4月15日、仮設住宅建設を県が市町村に委託できると周知する通知を出すことになった。 地方自治に詳しい辻山幸宣・中央大大学院客員教授は「大震災などの非常時には、ルールに縛られず現場で最善の行動をすることが重要。国や県はこうした事例を検証し、規則や役割分担の見直しに生かしてほしい」と指摘している。 (中日新聞・杉藤貴浩) PR情報
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