浅田真央、昔の感覚を蘇らせる挑戦
2010/08/25 19:09更新
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バンクーバー五輪フィギュアスケート女子で銀メダル、続く3月の世界選手権では女王になった浅田真央(中京大)が今季、ジャンプを基礎から作り直している。
きっかけは「自分のジャンプが乱れていると感じた」違和感。6月からは、トリノ五輪金メダルの荒川静香さんらを育て、幼少時から浅田を知る長久保裕氏に師事。1回転の練習からやり直した。すべては2014年ソチ五輪で金メダルに輝くため。浅田は時間がかかる道を選び、乗り越えようとしている。(榊輝朗)
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記事本文の続き ■1回転から
「1回転からもう一度始めましたから」。長久保コーチは意外なことをつぶやいた。五輪史上初となるショートプログラム(SP)、フリーで計3度のトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)を決めた浅田は今季、本当に基礎の基礎から氷上練習をスタートした。
6月からの指導は1回転、2回転と段階を踏んで3回転へ。「力を入れず、まっすぐ跳ぼう」と長久保コーチが繰り返す言葉は浅田の体に少しずつ染みこんでいる。「いい日も悪い日もあって安定はしないけど、よくなっていると思う」。
武器の3回転半はわずか3カ月で「ずいぶんよくなった」と長久保コーチはいう。踏みきり違反が続いて、昨季は回避したルッツも挑戦中で、浅田は「まだ自分のものになっていない」と苦笑いするものの、長久保コーチは「昨季は練習してないんだから下手になって当たり前」と見守る。
■昔の感覚を
小学時代の浅田が軽やかに舞う姿を、長久保コーチははっきり覚えている。「昔の彼女は、もっと素早く滑っていた」。小6で出場した全日本選手権では3連続3回転ジャンプを跳び、「天才」と呼ばれた少女は鮮烈な印象を残した。
ところが、指導を始めたときの第一印象は「これでよく世界女王になれたな…。回転は遅いし滑りにもスピードがない」だった。「乱れていっている」という浅田の直感を、ジャンプ指導の第一人者も感じ取った。2005年のシニアデビュー以来、勝負にこだわり続けた浅田は、少女時代の長所を失っていた。
師弟が目指すのは軽やかで素早かった少女時代のジャンプ。浅田は「若いころできた感覚を蘇らせるようにしたい」と前を向く。長久保コーチも「ルールのため、(思い切りのいいジャンプではなく)失敗しないように跳ぶ形を、昔に戻す手助けをしたい」と、浅田を支える覚悟だ。
■ソチへの布石
ジャンプ修正の目的はあくまで2014年ソチ五輪の金メダルにある。浅田は「基礎をきっちり固めたい。焦りはあるけど、いまは一番難しい時期。来年、再来年と成果が出てくれたらいい」と自身に言い聞かせるように未来を見つめる。
実際、相当な時間がかかるだろう。修正を始めて3カ月足らず。浅田は「まだ悪い癖が出てしまうことがある」という。シニア転向して5シーズン、体に刻んできた感覚は簡単に抜けない。
今季、長久保コーチはとびきり高難度の構成を思い描く。リストの「愛の夢」に乗るフリーは、昨季同様に2回の3回転半を跳び、さらに今季習得を目指す2種類の連続3回転に挑む。SPにも3回転半と連続3回転を組み込むという。
メーンコーチが決まらず、ジャンプの修正に時間を割いたため、プログラムを通しての滑り込みもできていない。ただ、これまでの浅田はコーチ不在や難しいプログラムを何度も克服してきた。ジャンプ修正、今季の滑りと、“二兎”を追うのも浅田らしい。
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