被災者とハグする元横綱
大相撲の元横綱・朝青龍関のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏(30)が14日、東日本大震災で多大な被害が出た宮城県南三陸町の避難所を慰問したので、取材して来ました。
母国モンゴルを拠点としているため、訪問が震災発生から2か月後とやや遅くなってしまいましたが、かつてのやんちゃ横綱が振る舞う焼きそばやたこ焼きに集結した約1000人の被災者は感激。こういうときの彼は非常にサービス精神が旺盛です。被災者の方々とハグをして手荒く? 激励していました。
元大横綱が、避難所のベイサイドアリーナに出来た長蛇の列の前で、せっせと焼きそばをパックに盛って、たこ焼きに青のりとカツオ節をまぶして配っています。一人ひとりに「頑張って」と声をかけ、小さな子には「元気出せよ!」と。作業しながらサインにも応じました。スピード出世で横綱に上り詰めた男がお客さんに配膳するのは、新弟子だった1999年以来12年ぶりでしょう。被災者の喜ぶ顔を見ると「皆さんに早く会いたいと思っていたのでやっと実現して良かった」と本人も喜んでいました。
大震災は当日、首都ウランバートルで知ったそうです。一流のスポーツ選手など著名人が次々と被災地で慰問活動をしているのを知り「早く自分も」という気持ちがありましたが、本国で展開しているビジネスなどからなかなか手が離せず、スケジュールを調整して、やっと実現できたとのことです。「ボランティアをするなら一番被害が大きかったところでやりたい」と考え、約500人の死者を出し、町が壊滅状態になった南三陸町を選びました。
この日早朝、東京を出発して昼前には南三陸町に到着。車の窓から見えるとは行けども行けどもガレキの山。「これが本当に日本なのか」と息を呑みました。現役時代には毎年必ず巡業で訪れた東北の惨状を目の当たりにして「人間の力ではどうにもならない地球(自然)の力のすごさを感じた。でも負けずに夢と希望をもって生きていかないと」と話しました。
たこ焼きを振る舞った後は「頑張れ! 南三陸町」とプリントしたTシャツ450枚と朝青龍バスタオル120枚を配布。行列に一番乗りだったのは、朝青龍関の大ファンだという佐藤虎勝さん(73)。海岸から約50メートルにあった生家は津波で根こそぎ流されたそうです。元横綱から励ましの抱擁を受けると涙があふれ出しました。「感無量でした。津波であの世に行っていてもおかしくなかった身だけど、生きる力をもらいました」。破天荒だった元横綱が、今なお先が見えぬ避難所生活を続ける人々を勇気づけていました。
先日、来年6月のモンゴル国会議員選挙に出馬することを表明したばかりですが「今日はボランティアだからさ」と、あまり選挙のことは話したがりませんでした。
やはり、技量審査場所は少し気になっているようで「今、相撲はどうなってるの?」と逆に質問されました。何と答えていいか分かりませんでしたが、「横綱・朝青龍」がいるときも騒動の日々でしたが、去った後もやはり騒動の日々は続いている。そんな趣旨の答え方しかできませんでした。
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