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【私説・論説室から】

電力不足は大いに結構

2011年5月16日

 ベランダのプランターでアサガオが芽を出した。つるが伸びたらネットを張り、緑のカーテンに仕立てたい。節電の夏へ、ささやかな備え。エアコンなしの生活にどこまで耐えられるか、ひとつ試してみよう。

 原発事故が起き、わが家も節電を心掛けるようになった。部屋の明かりを小まめに消す。パソコンやテレビをつけっ放しにしない。冷え性なのに便座の保温をやめた妻には頭が下がる。

 すると、四月分の電気料金が普段の六割ほどにまで減り、びっくりした。ほぼ一週間分の昼食代が浮いた形だ。電気の無駄遣いを反省している。地方に原発を押しつけて電気を浪費してきた不明も恥じている。

 列島各地の原発の安全性に疑問符がつき、夏の電力供給が危ぶまれているみたいだが、大いに結構だ。いっそすべての原発を止めて、国を挙げて計画停電や節電をやったらいい。

 放射能にさいなまれ、故郷を追われた福島県民が大勢いる。その苦難を共有しつつ、問題意識を欠いたまま恩恵にあずかってきた原発のことを考えたい。

 経済成長は頭打ち。人口は減る。省エネ技術は最先端を誇る。それなのに電力需要は増え続けている。脱原発へ、そして地球温暖化防止へ、まず“電気依存症”を治す努力が要る。

 アサガオ、スズムシ、風鈴、簾(すだれ)…。電気文明が追いやった風物を引き戻し、扇風機の手を借りて納涼を工夫しよう。 (大西隆)

 

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