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■特命調査班 〜マル調〜「原発“安全神話“の陰に…」 2011/05/11 放送

 福島第1原発では、日本の原発史上最悪の放射能漏れ事故の対応に現場はおわれています。

 これまで「重大な事故は絶対に起きない」としてきた日本の原発でなぜ事故がおきたのか。

 「マル調」が検証を進めていくと、安全性のチェックをめぐる官と民の癒着ともいえる実態が浮かび上がってきました。




 <菅首相の会見・今月6日>
 「浜岡原子力発電所のすべての原子炉の運転停止を中部電力に対して、要請をいたしました」

 政府の要請を受け入れ、浜岡原発が運転中止へ。

 しかし今、全国各地の原発の地元では動揺が広がっている。

 新潟県・刈羽村。

 のどかな田園風景が広がる人口5,000人足らずの村でひときわ目に付くのがある。

 巨大な鉄塔と長く伸びる送電線。

 そう、ここは東京電力「柏崎刈羽原発」の地元。

 1号機から7号機まである原子炉は821万キロワットの発電能力を持ち、1か所としては世界最大だ。

 しかし4年前の中越沖地震では、激しい揺れに襲われ火災が発生。

 2号機から4号機は運転を停止したままだ。

 だが村では、今なお、これらの原子炉の運転再開を求める声が根強いという。

 原発を受け入れる引き替えに、多くの恩恵もまた受けてきたからだ。

 <記者リポート>
 「刈羽村には、原子力発電所の地元に対して交付される交付金による生涯学習センターや体育館も整備されています」

 1999年に建設された「ラピカ」。

 図書館やフィットネスジムも備える村の自慢の施設だ。

 <記者>
 「こちらは体育館ですね」

 総事業費は84億円。

 このうち70億円は「電源立地促進対策交付金」でまかなわれた。

 発電所の地元自治体に対し、国からおりてくるお金だ。

 また、村では交付金で全世帯に高速光ファイバー網を整備。

 村民同士の電話料金をタダにするなど、手厚い住民サービスを行っている。

 村の収入の半分は原発関連のお金で占められ、もはや原発なしでは村がなりたたないのが実情だ。

 <刈羽村民の男性>
 「電話の無料化もあるからね。そういうのを見ても非常に(村が)良くなっているというのはありがたい」
 <刈羽村民の女性>
 「もうそれ(原発)にどっぷり浸かってるんだよね。原発の恩恵を受けてるんだよね。それがなかったらどうなってたんだろうと思う」


 その一方で、村民には原発への不安感も根強い。

 これまで様々な事故やトラブルに見舞われてきたからだ。

 元村議会議員の武本和幸さんは、地元で40年以上、原発に反対する運動を続けてきた。

 <元刈羽村議 武本和幸さん>
 「今動いているものさえ問題があるんだから『止めれ』っていうのが、私たちの考えです。福島のようなことを繰り返すわけにいかないんですから」

 武本さんらは特に原発の安全性についての国のチェック体制に、大きな不安を感じるという。

 <武本さん>
 「“あの組織”は国民のための組織じゃありませんから。電力会社を擁護するための組織と見てますから…。規制とか監督なんかできるわけがないですよ」

 大きな不安を感じる「あの組織」とは…

 原子力安全・保安院のことだ。

 <原子力安全・保安院 西山英彦審議官の会見・3月14日>
 「福島第1原子力発電所の1号機の水素爆発が確認されたことから、20キロ圏内の屋内退避をお願いいたしました」

 福島の事故を受け、連日会見をする保安院。

 経済産業省の中にあって、原発の安全性を監督する役割を持つ。

 ところが保安院はこれまで、原発トラブルでずさんな対応を重ねてきたという。

 <東京電力 南直哉社長(当時)・2002年9月>
 「こういう風土・体質ならあとまったく(不正が)ありませんよ、と断言しきれない」

 2002年、柏崎刈羽原発などで発覚した東電の「トラブル隠し」。

 定期点検で原子炉部品に多くのひび割れが見つかったにも関わらず、データを改ざんして隠蔽していたというものだ。

 発覚の端緒は、原子炉メーカーの技術者からの内部告発だった。

 だが当時、保安院はこれを2年間にわたり公表しなかったばかりか、告発した技術者の氏名などを東京電力側に通報していたのだ。

 内部告発者を危険にさらす、あってはならない対応だ。

 当時、柏崎市議会で真相の解明を求めた矢部忠夫市議は、保安院のやり方をこう批判する。

 <柏崎市 矢部忠夫市議>
 「内部告発をされた。それを自分たちが主体的に調査すればそれなりのことが分かったはずなのに、(保安院は)ほったらかしていた」
 (Q、はなから調査とか指導監督する気持ちがないですか?)
 「ない、ない」

 ではなぜ保安院はこうも電力会社に対し弱腰だったのか。

 「マル調」がさらに取材を進めると、驚くべき事実が分かってきた!

 <矢部さん>
 「主席統括安全審議官・中村進…」
 <マル調>
 「彼は今四国電力の取締役をしてますよ」

 電力会社への天下りだ。

 (Q.原子力安全・保安院から電力会社への再就職はおかしくないですか?)
 <保安員元幹部>
 「・・・・」


 国民のために原発の安全性をチェックするはずの原子力安全・保安院がなぜ十分に機能していなかったのか。

 「マル調」が取材を進めると、ある事実が浮かんできた。

 <東京電力 南直哉社長(当時)・2002年9月>
 「私は残念ながら現場の経験ないもんですから、事務屋でありますし」

 内部告発を受けながら、保安院がそれを東京電力に漏らしていた「トラブル隠し」問題。

 当時、保安院の幹部として調査にあたっていたのが、中村進首席統括安全審査官。

 ところが中村氏はこのあと、ある企業に再就職していた。

 その企業とは…

 <記者リポート>
 「原子力安全・保安院で原発の安全性についての指導・監督を行ってきたキャリア官僚は、現在四国電力に再就職して取締役を務めています」

 再就職先は「四国電力」。

 つまり、原発の安全性をチェックする立場から、される側の企業に天下っていたというわけだ。

 天下りは、何もこれだけではない。

 <枝野官房長官・3月18日>
 「国民の疑念を招かぬよう経済産業省幹部の電力会社への再就職については、自粛措置を講じることといたしました」

 東京電力の顧問になっていた石田徹元資源エネルギー庁長官を始め、保安院や経済産業省からは50年間で、幹部68人が電力会社に天下っていた。

 原子力工学の専門家、安斎教授はこうした天下りが原発の安全性のチェックをゆがめてきたと指摘する。

 <立命館大・原子力工学 安斎育郎特命教授>
 「今まで規制の側にあった人が電力会社に行けば、どうやったら規制を通りやすいかとか、自分たちが持っていたノウハウを伝えることになるので、(天下りは)電力会社にとってはありがたいが、それは(保安院が)規制力を失う危険性が極めて高いですよね」

 天下り先の電力会社に対し、チェックが甘くなってはいなかったか。

 四国電力の広報を通して中村氏にインタビュー取材を申し込んだが、断られた。

 そこで「マル調」は四国電力本店前で、出勤途中の中村氏に直接話をきくことにした。

 (Q.安全性をチェックする側からされる側に再就職。問題はないのか?>
 <四国電力 中村進取締役(元保安院)>
 「広報のほうで一元的にアレしてますので」
 (Q.チェックが甘くなる可能性はないでしょうか?)
 「取材は広報を通していただくということで…」

 結局、中村氏は問いかけに答えなかった。

 四国電力は再就職を受け入れた理由として、「外部で経験を積み、違った視点で当社の事業にあたっていただける方を採用した」と回答した。

 国民のため、原発の安全性を厳しくチェックする立場の機関と電力会社との蜜月。

 政府は保安院の廃止を含め、抜本的な見直しをするとしている。




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