2011年5月12日5時0分
菅政権は11日、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴う損害賠償を、政府管理で支援する枠組みを固めた。菅直人首相が12日の関係閣僚会議に出席し、決定する予定。支援が固まったことを受け、東電は2011年3月期連結決算を20日に発表する方針を決めた。原発事故の処理費用などがかさみ、約1兆円の特別損失が出る見通しだ。
賠償の枠組みは、東電を含む電力各社が資金を出して「機構」を新設。機構は東電が発行する優先株を引き受けるなどして、東電に資金支援する。電力の安定供給に支障がないように、機構から受けた資金の返済は、毎年の事業収益の範囲内でまかなう。
機構には、政府が必要な時だけ現金化できる「交付国債」の形で公的資金を投入し、数兆円にのぼるともみられる賠償金の支払いを迅速に進める。公的資金は機構を通じて電力各社が返済し続けるので、最終的に国の財政負担は生じない。
東電の賠償負担に上限は設けない。政権は、賠償総額が5兆円になった場合、東電が年2千億円、他の電力各社が計年2千億円を約13年かけて機構に返済していくと想定している。
菅政権は、東電から10日に賠償支援の要請を受けた後、支援のための条件を東電側に示していた。東電は政府の資金支援が続く間、政府管理下での経営になるが、11日に条件の受け入れを臨時取締役会で決めた。
政権は、5月下旬にも機構設立のための法案の閣議決定を目指す。ただ、この枠組みは東電の存続が前提で、金融機関や社債権者の負担がなく、最終的に電気料金の値上げにつながるため、国会審議が難航する可能性もある。
政府は枠組み決定の後、法律や会計の専門家、経営者らでつくる第三者委員会を設置。資産を厳しく評価し、経費を徹底的に見直して賠償に充てさせる。