(cache) 驚異の…電脳戦っ…！　世界コンピュータ将棋選手権…！

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2011-05-15

驚異の…電脳戦っ…！　世界コンピュータ将棋選手権…！

将棋

去るゴールデンウィークに行われた第２１回世界コンピュータ将棋選手権。今年はニコニコ生放送での中継もあり、大いに盛り上がったようです。

罪山も遅ればせながら、中継の録画など見ましたが……いや、これが本当にスゴかったんですよ！

優勝したのは、ボンクラーズという名前のプログラム。

ネーミングはゆるふわですが、将棋の実力は超マッチョ！

コンピュータ将棋は、すでに女流トップに勝ち、プロ棋士すら脅かす実力を持つと言われています。この大会でもプロの対局と比べても遜色ないハイレベルな熱戦が繰り広げられました。

このエントリでは、優勝したボンクラーズと、２位になったBonanzaの対局の模様を紹介してみようと思います。

………………………………………………………………

『将棋黙示録ボンクラーズ』

第21回世界コンピューター将棋選手権大会──決勝リーグ

ざわ……ざわ……

盤面は７５手目……終盤に差し掛かろうというところ……

すでにこの時点でBonanzaの猛攻が……炸裂っ！　ボンクラーズ、窮地っ……！

Bonanzaの狙いは……飛車を端に回っての、攻め……！

下段の香車が発射台の役割を果たし……まさに飛車ロケット……！　

痛烈無比……！　圧倒的破壊力……！

ボンクラーズには、これを受け切る手が……ない……！

すぐ詰みはしないものの絶体絶命っ！

「勝ったな……」

「くっ……」

ここでボンクラーズ、守りの手は指さず……８六桂……！

次に７八に金を打てれば……詰み……無条件でボンクラーズの勝ち……！

しかし、当然そうはならない……

「ふん、苦し紛れか……。防ぐ手は無数にあるが……取って勝てるなら話は早い」

ここで慎重に読みを入れるBonanza。

読むっ……読むっ……読むっ……！

人間にはあっという間……しかし……コンピュータにとっては十分すぎるほど長い……９０秒が過ぎた頃……

「取れる！」

悠々と８六同歩っ……！

Bonanza、このあと同歩、同銀、同角、同角、同飛……と８六の地点で駒の交換が行われる順は読み切っている……

「くっくっく。残念ながら詰まないのだよ」

そう、８六同歩から一直線に進めば現れるのはこの局面……

一直線に進んだ場合の想定局面、次はBonanzaの番。

（もしこの局面までくれば、詰みがなければBonanzaの勝ち）

ここで詰むかどうかの勝負になる。

具体的には、角の王手をどの合駒で防ぐか……

持駒のうち、香、銀、飛、角はどれを打っても……きっちり１３手後に詰まされる……これらの合駒は……１３階段の一段目……！

しかし、桂なら……詰まないっ……！

桂合だけが、詰みを逃れる唯一の手段……！

この想定局面は、桂馬を打てば詰まない

たった一つでも逃れる手があるなら……この順を進めばBonanzaの勝ち……！

Bonanzaはここまで読んでいる……ゆえに、同歩……！

現局面から２０手以上先の詰むや詰まざるやまで読み切っての、同歩っ……！

しかし……

「……詰まないことは分かってるさ」

読み切ってるのは……ボンクラーズも同様……

もとより一直線に進めば……勝ち目はないことは承知の上……

同歩同銀と進み、後戻りが利かなくなるギリギリの段階で……手を変える……

攻めない……！　辛抱……！

王が退くっ……！

ボンクラーズ、８０手目……２二玉……！

ざわ……ざわ……

ざわつく人間たち……

そう、この手は人間の感覚からすれば、異形の一手……！

コンピュータの読みの速度についていけない人間には……にわかに手の意味が分からない……

「日和ったか。しかし、それでは桂馬を損しただけではないのかな？」

駒を取らなかったボンクラーズの攻めは、この時点では桂と歩の交換。

「うるせえ！　さっさと指しやがれ」

「くっくっく、揺るがないっ！　踏み込まなかったことで、急転直下の結末は回避……しかし、私の優勢は……揺るがない……！　だが……万が一もある……油断はできない……じっくり考えさせて貰おう……」

機械の心に慢心は……ない……！

ここで、もう一度じっくり手を読むBonanza……

ボンクラーズが一直線に攻めなかったことで……局面の選択肢は増えている……

「うむ……８筋に歩を打つ手段が生じてるな……８七歩か……８三歩か……」

８七歩は一旦守る手……８三歩は相手の飛車を牽制し、攻めを見据えた手……どちらのルートも無限の変化を秘めており……そしてどちらも有力に見える……

両方打てば……二歩……！

優勢は間違いないが……コンピュータといえど全ては読み切れない……

読み切れなければ……計算……！

独自の評価関数で……計算……！

やはりたっぷり９０秒考え……

「８三歩だ……！」

Bonanzaの決断は……８三歩っ……！

「くっ……これは取るしかない……」

ボンクラーズは同飛っ……！

飛車の位置が変わることで……ただでさえ薄い王の守りが……更に弱体化っ……！

ここで……

Bonanza……厳しく攻める……！

「死ねっ！　死ねっ！　死ねっ！」

数手後、ついに、飛車ロケットが発射……！

いよいよボンクラーズの命は風前の灯……！

……と、思えた……４手先……

「この瞬間を待っていた……」

「なに？」

「何千何万もの変化の中……恐らくはたった一つの勝ち筋……！」

その時、電流走るっ……！

ボンクラーズの鬼手……！　７九銀っ……！！

ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……ざわ……

「この手はっ！」

「そう、この銀はタダで取れる……しかし……この銀を取ると８六の地点守りがなくなり……オレの攻めが続く……！かといって……取らなければ……８八金からの詰みがあるっ……！」

「ば……バカなっ……！」

Bonanza……この銀は取らざるを得ない……

攻守一転……！

「うおっ！　うおおおおーーーーーっ！」

ボンクラーズの攻めが筋に入り……Bonanzaは受けがない形に追い込まれる……

「く、くそっ！まだだっ！」

ここでBonanza、王手ラッシュ！

無論、詰ませてしまえば勝ちっ……しかしっ……！

……詰まないっ……！

ギリギリ、紙一重のルートで……王は逃げ出せる……！

詰ますには、一手足りないっ……逃げ道を塞ぐためのたった一手……しかし、その一手を指す間はないっ……！

半ば手にしてた勝利が……するするとすり抜けてゆく……！

逆転……！　逆転……！　逆転……！

「……ここまで……読んでいたのか？！」

「こんなところまで読めるわけない……ただ、オレは信頼したんだ……あんたの優秀さを……！　オレは一直線に行けば負ける場面で……一手退いて選択肢を増やしただけ……そこであんたは考えてくれた……！　そりゃ考えるさ……優秀なんだから……！　人間のように安易に手堅い手を指さず……律儀に盤上の選択肢を評価関数で計算してくれた……！　評価関数で良い数字が出れば……今度は疑わない……！　疑わないさ……優秀なんだから……！　だが……たまたま、その関数の外に、落ちていたんだ……あの７九銀が……！！」

Bonanzaは指し続ける。卓越した計算力により、すでに必敗は分かっている……それでも……指し続ける……

いたずらに時間だけが流れていく……！まるで命そのもののような……血の時間が……

そして……最終手……！

「神よ……オレを祝福しろっ……！」

ボンクラーズ……９四銀……！

この手でBonanzaの王は詰み。

詰ました駒もまた……銀……！

銀は、二度刺す……！

………………………………………………………………

こんな感じでした。わはは。

※むろん、実際にコンピュータが上のように思考したり喋ったりしたわけじゃありません。あと、将棋の内容が罪山の棋力をはるかに越えてるので手の解説は正確じゃないかもしれません。悪しからず。てか、一応、７九銀が決めてみたいに書きましたが、実際に手としてはどこで逆転したのかよく分かりません（汗）「正しい解説」は専門誌などでどうぞ。

決勝戦は８つのプログラムが総当たりで争ったのですが、結果的にはこの激闘を制したことがボンクラーズの優勝に結びつきました。

この大会では、他にもプロ棋士さえ舌を巻くような大熱戦が目白押し。

その一方で、条件によっては人間同士ではまずありえない悪手も飛び出すなど、現時点でのコンピュータ将棋の課題も浮き彫りになったようです。

また「コンピュータ将棋に萌えを導入する」という~~怪文書~~アピール文をひっさげたプログラム「なのは」が、独創賞を受賞するなど色々な意味で面白い大会でした。

来年も期待したいと思います。

なお、昨日（５／１４）の深夜、プロも多く参加している対局サイト将棋倶楽部２４で、この大会で５位の「Ponanza」が史上最高レーティングである3211点をたたき出しました。

ネット将棋という限定的な条件ですが、人間は少なくとも一つ「最強」の座をコンピュータに奪われたことになります。

今後のＶＳ人間の勝負も大いに気になるところです……！