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[27393] {習作} 悪魔との契約(なのはオリ主)
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/24 22:05
チリチリと音が聞こえる
ガラガラと崩れる音が聞こえる
バチャと液体がぶちまけられる音が聞こえる
一体何の音なのかさっぱり(さっぱり?)解らない
そうやって自分に嘘をつくが勿論現状は変わらない
意識は理解を拒むのに頭は意識を拒む
チリチリという音
それは炎が燃え上がる音
ガラガラという音
それは建物が崩れる音
バチャという音
明瞭だ
人の中に流れる赤い紅い朱いアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイアカイ

血だ


この数時間、いや数分
それとも数秒だろうか
よく解らない
とにかくもう見慣れてしまったものだ
いい加減飽き飽きする
しかし俺自身はもう動かない

動けない

動く気が起きない
別に今日は特別なことなんてなかった
ただ家族と買い物しにこの地獄
このデパートに来た
ただそれだけである
そしたらご覧の有様
デパートは一瞬で地獄に早変わり
地獄の大安売りである
ああそういえば俺の家族はどこに行ったのだろうか
今、俺は体を仰向けにして寝ている
この地獄に変わる前までは一緒にいたはずだ
そう思って力の入らない体というか首を無理やり動かして左右を見る
すると案の定
そこには物も言わなければ音も作らない見覚えのありすぎるガラクタが

一つは天井から崩れてきたコンクリートの破片に色々刺されたガラクタ
破片と言っても数メートルぐらいの大きさだが
それが男の体中に刺さっていた
そのせいか体から黒と赤が混じった内臓を吐き出していた
俺がついさっきまで父と呼んでいたものだった

もう一つは爆発をもろに受けたのか黒焦げのものだった
ジュー、ジューと肉が焼ける音がまだ聞こえる
これでは判別がつかないが距離的に見れば多分ついさっきまで母と呼んでいたものだったのだろう

何だかおかしい
何故自分はこんなにも冷めた思考をしているのだろう
ついさっきまで自分はどこにでもいる子供であった
くだらないことで笑い、泣き、怒り、悲しみ、喜び、悔しがり、楽しむ
そんな平凡な、そいでいて幸せな自分だった
何が自分を変えたのか
この状況で些か考えるのはおかしいかもしれないがかまいやしない
どうせもうすぐ散りゆく定めだろう
ならば自分がしたいことをするまで
そう思って数秒思考する
答えは簡単であった
目の前の地獄
それが俺を変えたのだろう
この地獄が俺から喜怒哀楽を奪ったのだろう
流石、地獄
地の底には相応しい
ああ
だから地獄に相応しいように俺を変えたのか
納得
では俺は既に人ではないものに変わったのだろうか
まぁ、別にどうでもいいことだ
さっきも考えたようにどうせもうすぐ消える運命(さだめ)だ
消えるものが人であろうがあるまいがそんなものは大した違いはないだろう
どうせ堕ちるところは一緒だろう
ならば足掻くだけ無駄、無駄、無駄
そう思い目を瞑る


だが世界とは皮肉なものでそう思うと全然終わる気配がない
面倒だがもう一度目を開ける
そこはやっぱり変わり映えのない世界
飽きるのを通り越してうざくなってきた
そう思うと苛立ちが募る
体が動かないのがこれでは最悪だ
ああ
むかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつくむかつく

ああ
こんなもの全て
■■してやりたい

「その願い叶えてやろうか」
その瞬間
目の前に立っていた
さっきまでそこには何もいなかったのにそこに立っていた
そこに立っているのは女性だった
年は14ぐらいの少女であった
髪は白で長く背中まで届くぐらいのロングヘア
身長は150~155の間くらい
顔は可愛らしさと綺麗さを合わせた美を三個ぐらいつけてもいい造形だった
服装は何だか中世のお姫様が着てそうなドレスを真っ黒にしたものであった
そして何よりも印象的だったものは
その瞳のアカさせあった
炎よりも紅く血よりも朱いアカ
この地獄の中でも尚アカく輝いていた
何故だろうか
どこからどう見ても人間の美少女
しかし俺はこの少女を人間と定義するのは間違いだと本能的に思った
何故だと思っていたら気付いた
この場所
この地獄にあまりにも似合いすぎている
まるで地獄を住処にしているようなものだ
この美もそう異界の美
魔とも呼んでいいくらいだ
美しすぎるものには魔が宿る
まさにその権化だ
そして願いを叶える
となるとあほらしいがこの少女は

「そう賢しいわね。私、悪魔なの」
心を読んだのか
俺が考えていたことを言う
それにしても悪魔ときたか
まぁ、地獄があるくらいだ
悪魔がいてもおかしくはないだろう
その悪魔が一体何の用だろうか

「だから言ったでしょう。貴方の願いを叶えてあげるって」

そう言ってそいつは唇を三日月の形に歪めて笑う
その笑みを見て確信する
さっきまでは半信半疑だった
死に際に幻を見たのだと思っていたが違う
こいつは

真性の■■■■だ

「話が早くて助かるわ。ねぇ、だからその願い叶えてあげましょうか」
ケタケタ笑いながらそう囁く
まさしく悪魔の囁きだ
俺の願い
俺の願いとは一体なんだろうか

「あら、忘れたフリをしてるの。それとも目を背けたの。さっき貴方願ったじゃない。全てを■■したいって」

耳がおかしくなったのか
言葉の途中でノイズが走る
肝心なところが聞こえなかった

「ああ、最高の匂いがしたわ。何せ私が惹きつけられるくらい傲慢で、醜く、おぞましくて、最低に最高だった!ああ、きっと食べたらそれだけでイってしまいそうだったもの!グッと来た!最高の逸材よ貴方!」

いきなり悪魔が嗤いだす
言ったいる意味がよく解らない
さっきまで人の意志を無視して理解しようとしていたくせにこういう時に邪魔をする
まぁ、そもそも悪魔が語っていることを俺が理解できるはずがない
悪魔の嘲いはまだ続く

「きっと貴方は私と契約したら最強最悪の存在になれるわ!人を辞め悪魔を超え神を殺す!とんでもなく異常で、とんでもなく埒外で、とんでもなく常識外!そういった存在になれるわ!」

一体この悪魔は何が言いたいのだろうか
ぼうっとしてきた意識でそれを考える
まるで願いを叶えたら俺はナニカに変わるみたいに言っている
悪魔は魂を奪うだけじゃなかったのだろうか
悪魔は答えない
ただ嗤う
黒い狂気は地獄の中で更に黒々と輝く
そして悪魔は同じことを繰り返す
その言葉こそが悪魔の定義なのだから
唇を三日月に歪めた悪魔はただ要求する
契約のサインを

「その願い叶えてあげましょうか」

そして俺の意識は消える
視界は黒色に染まる
悪魔色に



あとがき
すいません
もう趣味に走った内容です
ストーリーは滅茶苦茶変わると思います
魔法以外にも新しい力や設定も加えます
こういうのが嫌いな方は読まない方がいいです






[27393] 第一話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/25 19:22

「いい加減に起きなさい!風雷慧!」

その声で無理矢理起きてしまった
一瞬の自分の喪失
そのあやふやさを心地よく思う
数秒でようやく自分を取り戻す
しかし今度は今の状況の理解が遅れている
頭の理解の遅さを五感が自動的に補正する。便利な頭だ
視覚は風景を
嗅覚は人がいる証を嗅ぎ取り
聴覚は人のざわめきを
触覚は堅い木の感触を
味覚は別に何も
それらの情報を頭の中で整理してようやく今の状況を理解する
ここは聖祥小学校一年の教室
時間は外を見る限り放課後だろう
じゃあ周りのざわめきはクラスメイトが帰ろうとしているからでであろう
昨今の若いやつらは落ち着きが足りないなぁと自分も昨今の若者だということはとりあえず棚に上げる
そしてようやく本題?
俺を睡眠という名の安楽地獄から目を覚まさせた諸悪の根源の方を見る
目の前にいるのは平均身長ぐらいのロングヘアな少女である
しかしこの少女。他の子供と違って違う所がある
それは金髪でつり目なところだ
もう一度言う
金髪でつり目なのだ
サーヴィスにもう一度
金髪でつり目なのだ
自分のサーヴィス精神の大きさに自分でもびっくりだね
後五回ぐらい続けたいが話が進まないので仕方なく断念しようではないか
世界の修正に感謝するがいい
アリサ・
「バーニング」
「そうそう、燃え上がる魂、熱き鼓動、進は紅蓮の道。その名はアリサ・バーニング!!ってアホか!」
素晴らしい。ここまで自爆してくれるといじめ甲斐があるというものだ
では続けようか。悪魔の加護の下で
「すまない、故意だ」
「そう、それなら仕方ないわね。じゃあ私は寛容な心で貴方を滅殺するのが人として正しい判断かな」
おおっと、意外とアグレッシブな
「すまない、恋だ」
「「そう、それなら仕方ないわね。恋とはまさしく燃え上がるような想いだものね。それならバーニングと間違えてもってんなわけあるかい!」
しかし二度ネタは減点だな
まだまだツッコミの経験が足りんな
「で、何の用だ。用がないなら帰らさせてもらうぞ」
「あんたのその一瞬の切り替えには私もついていけんわ。はぁ、一応の義務だから聞くけど一緒にかー」
「だが断る」
「なんで一瞬で断るの!」
「あ、アハハ」
いきなり声が増えた
まさか
「バニングス!ついに影分身の術を覚えたかっ。流石人外!」
「あんたの中での私は一体何に分類されてんのよ!しばき倒すわよ!」
「ははは、何に分類されているかなんて鏡を見給え。一瞬で理解できぐわっ」
「アリサちゃん!ダメだよ、ただでさえおかしい風雷君の頭を叩いたら更におかしくなっちゃうよ!」
「なのはちゃん、本音が漏れているよ」
仕方がないのでそちらを見る
そこにはまぁ、バニングスと並ぶ美少女と呼んでいいだろう少女が二人立っていた
一人は高町なのは
身長は三人の中で一番小さく髪の毛は栗色でツインテールで束ねている。語尾になのをつける可哀想な人類だ
もう一人は月村すずか
身長はアリサと同じくらいの身長で髪の毛はカラスの濡れ羽色でストレートに下している。清純というのがよく似合っている女の子だ
そして個人的だが俺は高町が苦手だ
何故かというと
「さぁっ、今日こそ名前で呼んで!」と強制してくるのだ
もはやストーカーと呼んでもいいレベルだ
なるほど
「高町は変態だったのか……。まぁ、特別驚くような事ではないか」
「いきなり自己完結しないでなの!ていうかどうしてそんな結論に!」
「ああ、確かになのはのそれはもう呪いレベルだものねぇ……」
「ごめんね、なのはちゃん。フォローできないよ」
「いじめだよ!」
「「「Yes,correct!」」」
「ふぇーん!」

これが俺
風雷慧の日常
あの地獄から戻ってきた日常だ
大切なものは地獄(あそこ)で失くしたが



[27393] 第二話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/26 22:02

結局今日も高町ストーカーから難なく逃げて街を彷徨っている
いつも通り
俺らしく
断っておくが別に俺は高町自身を特別嫌っているとかではない
……苦手にはしているが
バニングスも月村もそうだ
むしろ今の若者の事(自分も含めて)を考えると今時珍しすぎるタイプだろう。多分だがあいつらは他人のために命を張れる素晴らしい馬鹿だろう。人間としては最高クラスの人間だろう
よくあんな希少種になれたもんだと度々感心する
よほどご両親の教育が良かったのだろう
ん?
じゃあ高町の家族も高町みたいな性格をしているのだろうか?
………一家総出でストーカーか。いやらしい家族だ
なるほど。確かに希少種だと改めて実感をする
個性が薄い俺から見たら憧れはしないが感嘆はしてしまいそうだ
心の中で自嘲する
実際の顔の筋肉はまったく動かないが
すると今日見た二年前の夢を何となく思い出す
あの火災
あの地獄
そう
あの時
あの場所は地獄であった
生きる希望は光の速さよりも速くなくなり
絶望は絶望しすぎて感じられなくなる
否、絶望こそが当たり前だと認識してしまうが故に絶望を感じれなくなってしまう
そんな地獄
それが地獄
その中から何を間違ってか生還してしまった
本当に、本当に運よく助けが間に合ったらしい
奇跡だとよく言われたものだ
だがしかし、しかししかし
生還した少年は地獄を体験する前の少年ではなくなった、いや亡くなったと言った方が適格かもしれない
あの地獄を経験した後、もう既に俺は今までの俺ではなくなったからだ
喜ぶことができなくなった
怒ることができなくなった
哀しむことができなくなった
楽しむことができなくなった
笑うことができなくなった
つまり感情を表すことができなくなった
医者が言うには自己のショックで感情を出しづらくなったのだろうという一般論を言ってきた
別にそんな一般論は興味がない
重要なのは治療法がないということだ
当たり前だろう
別に病気や怪我ではないのだ
治す方法なんてない
そして何より俺が治す気がない
治そうとする気力がそもそも欠落しているのだ
治るはずがない
そう
だから俺は理解できない

何故高町はあんなに必死になって友達になろうとするのか

まったく理解できない
何で友達が必要なのだ
何で他人を信用しなきゃいけないのだろうか
まったくもって理解できない
あれなら殺人鬼の方が理解できる
結局はそういう事だろう
地獄から無事救出されたと思われた少年は実質命を救われた代わりに救われない生き物になったのだろう
まぁ、こんな思考はただの被害妄想だろう
考えるだけで馬鹿らしい。そう考えると自己嫌悪がふつふつと湧き上がる
その自己嫌悪で思わず
■■してしまいそー



一瞬の空白
ついさっきまで何を考えていたのか思い出せなくなる
自分の迂闊さに自分で呆れる
そう、確か夢の話だっただろうか
あの夢も別に久しぶりというわけではない
というか一週間に4、5回のペースで見ている
いい加減何度も同じ映画の同じシーンを見ているみたいで飽き飽きしている
だが唯一気になるところがある
あの少女
人の形をした悪魔
あの唇を三日月に歪めて笑うあの不気味すぎる笑み、あの嗤い方
今でもはっきり覚えている
しかしあら不思議なことにあの少女はあれ以降一度も会っていない
やはりあの火災の中で現実逃避をするために自分が生み出したただの妄想の産物なのか。
だがそれにしても

あの悪魔の嘲笑は
嫌でも゛本物´だと実感させる

自分でも馬鹿らしいと思うが思うことは止められない
あれは悪魔なのだと
人の魂を契約で貪り食らう化け物だと
それ故に疑問がもう一つ残る
俺は
俺はあの悪魔に対して何を願ったのだろうか
その答えもあの地獄に置いてきてしまった
知ろうにも覚えていない
聞こうにもその対象がいない
あの地獄の中、俺は一体何を願ったのだろうか
それが唯一の自分の目的かもしれない
それを知ったら俺は
変われるだろうか………
答えは誰も知るはずがない
それこそ悪魔の知恵がなければ
……………………………
いらないことを考えすぎたようだ
目の前には図書館がある
丁度いい
暇つぶしに本を読もう
そう思い目の前の建物に入ってく
いつも通り
適当に



[27393] 第三話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/27 22:47

よいしょ、よいしょと車いすを足場にして私、八神はやては目当ての本を取ろうとするがこれがなかなか取れない
まぁ、足場にするいうても足は動いてないから足場じゃないんやけどな
と自分にツッコミを入れながら頑張って目当ての本を取ろうとする
さっきも言った通り私の名前は八神はやて
普通なら小学校に通っているはずの子供や
そう普通なら
実は私は両親が既に他界しており、しかも両足が動かないというマイナスのステータスを持っているんや
簡単に言うなら不幸の美少女ていうやつやな
…………はい、そこ
自分で美少女言うんやないとかツッコまない
そう一人寂しくボケながら本を取ろうとする
寂しく
そう、私はこの孤独の状況を寂しく思っている
でも、私は学校に行くのには少し気後れする
別にお金がないとかいう世知辛い理由ではない
足のせいで他人に迷惑になる…………とも思っているけどそれは多分言い訳、いや綺麗事やと思っている
多分私は見たくないのだろう
家族がいて、元気に走り回っている自分と同い年の幸福満点の子供を
私も人間
他人を好ましいとも思うし、嫉妬もする
世の中にはそれでも我慢するような人がいるのかもしれないけど、私はそこまで人間ができてないいんや
だから黒い感情が生まれても我慢することはできないんちゃうかと思う
だからあんまり学校に行きたくない
……まぁ、こんなのはただの引きこもりの言い訳かいなぁと思いながら再び本に手を伸ばす
……………むぅ、取れへん
あとほんの数センチ
あとほんの数センチが取れへん
仕方ないから周りの人に助けを求めるか、もしくは諦めようかの二択を考える。別に誰かの手を借りてまでして見たいというわけでもないので諦めようかな~と思っていると
いきなり目当ての本が後ろから抜き取られた
一瞬、思考と動きが止まる
しかし直ぐに両方の動きを再起動する
きっと親切な人が本を取ろうとして取れない自分を見て手伝ってくれたのだろうと思いながら、ゆっくり振り返ろうとする
そういえば、後ろから伸びてきた腕はそこまで高い位置にない
もしかしたら自分と同じくらいの子供かもしれない
そう思いながら振り返る
本を取ってくれた礼と本を受け取るために
そして後ろに立っている人を見た瞬間

今までの自分の価値観が木端微塵に壊れた

目の前に立ったいたのは少年だった
年は予想通り自分と同い年くらいで
背はこの年頃の子供の平均身長くらいで、体格は結構がっしりしてるような気がする
髪の毛はやや長く、しかし伸ばしているというよりもほったらかしにしている感がでている
しかし問題はそこではない
他の特徴はどうでもいいんだ
そこらへんはどこにでもいる少年だ
問題は顔、詳しく言えば表情

そこには何の感情も浮かんでいなかった

思わず息をのむ
こんな顔をする人間。大人、子供を含めて見たことがない
普通に言えば無表情と言えばいいのかもしれないが、普通の無表情はここまで『無』に近づけない。無表情といえどもそこには少しは感情を含んでいるはずなのだから
しかし彼の表情はまさしく『無』表情だ。
何の感情も無いのだ
どうしたらこんな人間になるのだろうか
そんな風に思っていると目の前の少年は可愛らしく首を傾げて
「あれ?これが目当ての本だったのではないのかね」
と問いかけてきた
意外にも声には希薄だが感情を読み取ることが出来た
そのギャップに戸惑いながらも
「ええと、あ、ありがとう……」
とどもりながらも本を受け取った
そしたら彼はうなずぎそして直ぐ近くの空いてる席に座りながら本を読みだす
しばらく放心状態になりながら彼をじーと見てしまう
すると案の定
「何か用」
と質問されてしまう
こちらはただぼーとしていただけなので何も思いつかず少し焦ったがとりあえず目の前の本をネタにした
「ええと、な、何を読んでいるんや?」
「ん、今はやりの謎探偵ゴナン。持ち前の暴走と子供らしい安易な発想で犯人を突き止め周りのおっさんに睡眠薬をぶちこんで特技の声帯模写をして謎を解き明かす漫画。ただ子供なので時々犯人を冤罪で捕まえたり、睡眠薬の多量接種をさせてしまい、周りのおっさんが死んでしまうけど、その時は「ミスっちゃった!犯人さん、おじさん。許してピョン」という独創的な漫画」
「………………かなり前衛的な漫画やなぁ」
「言葉を選ばなくてもいいぞ」
思わず半目になってしまうのは許して欲しいと思う
そこではたと気づく
普通に会話が出来ていることを
自分は多分だが人見知りが超激しいと思っていたのに
この不思議すぎる少年には何も思わなかった
それを不思議に思いながら、口は意志に逆らって言葉を紡ぐ
「あ、あの。私、八神はやて言うんやけど君は?」
「風に雷。そして慧眼の慧で、風雷慧」
即答だった
私は何をしたいんやろうと思いながら言葉を紡ぐ
何も考えてないということは本心を勝手に語ろうとしているのだろう
口は動く
己の無意識を表すために
「ま、また会えへん!」
己の願望を
この不可思議少年との再会の約束を
まだ会って三分ぐらいしか経ってないのに
多分だがこの少年に惹かれたのかもしれない
この少年の非人間性に
答えは簡潔だった



[27393] 第四話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/28 22:34
図書館に行った翌日。八神とは約束はできないが会えたらまぁ、会ってやろうという約束をした
というわけで再び聖祥学校の教室
既に時間帯は放課後
つまり帰宅時間
ああ、何て素晴らしい時間
学校が終わったと自覚した時本当に幸福だと思ってしまうのは学校に行っている人で理解できない人はいるだろうか、いやいない!
その幸福に浸りさぁ、帰ろう♪と思っていたら
「待ったなの!」
と叫ぶ声
最上級の幸福の時間は一瞬で壊れた
小さいけど、しかし確かに幸福だった俺の時間はたやすく、呆気なく壊れてしまった
だから高町に角度45度からの鋭いチョップを入れたことを悪いと思う人間がいるだろうか
いたら征伐してやる
「いたっ!お、女の子に手をあげるのはいけないことだと思うよ!」
「やかましい。そして俺からの有難い言葉を一つ言ってやろう。耳の穴を増やしてよーく聞け。この世は男女平等だ」
「立派なことを言ってるけど、それを言い訳に叩いてるようにしか思えないの!というか耳の穴は増やせないの!」
「なに?高町、俺の言う事を聞けないなんていつからそんなに偉くなったんだ。後で掃除ロッカーに突っ込んでやる。入り口をガムテープで止めて」
「いじめだよね!いじめだよね!大切なことだから二度いうよ!」
「で、何の用だ」
「今までの会話は一体何だったの!」
見ればいつの間にか残りの二人がやってきた
こいつら他に友達がいなのかと自分を棚に上げてこの三人の交友関係の心配をした
「と、とにかく、今日こそやってもらうからね!」
高町はいきなり目的語を抜かしていきなり戯言をほざきやがった
今日こそやってもらう?
そんなに何か高町から要求されていたことがあったか、自分の記憶を点検するがまったく身に覚えがない
だが高町は必死に頼んでいる
ならばこちらもちゃんと考えねばと思考する
いや、待て
もしかしたら高町が言っていることの漢字変換を間違えたのかもしれない
頭の辞書を使ってレッツ漢字変換
やってもらう→殺ってもらう
まさか高町にそんな自殺願望があったとは人間とは見かけや性格からは解らないもんだと理解する
いや、しかしまだ他にもあるかもしれない
もう一度よく考えてみよう
やってもらう→ヤッテもらう
なるほど、これが最近の問題の性の乱れという事か
政治家の人たちが慌てるのは無理もないと現場の苦労の一端を思わぬところで得てしまった
だがしかしまだどちらが真実か決定していない
どちらを取るかによって高町の人間性が変わる
これは心してかからなければと誓い真剣に考える
「あ、あの~、何でそんな今まで見たことはないくらい真剣に考えてるの」
「何を言う。今まさにこれからの俺が高町への態度を決定的に変わるかもしれないという瞬間なんだ。真剣に考えなければ失礼だろう」
「!?あ、ありがとう慧君!」
感謝された
ここまでされたなら答えを出さなければ、誠意にならない
ならば後は今までの高町の知識で答えを出すしかない………
考える
高町と言えば……
そうだ、そうだったではないか
まさか忘れていたとは、我ながら忘れっぽいと思う
今度メモ帳を買おうと心のメモ帳に書いとく
そう
高町は
いやらし子だったではないか……
だから答えは後者だ
なるほど
欲求不満なのか
まだ子供なのにと思うが人それぞれだろう
ならば答えなければいけない。自分の意志を
「すまないな、高町。俺はお前と違って健全なんだ」
「私のお願いをどう解釈したらそうなるの!!」
ドンガラガッシャー!と何やら机や椅子が倒れる音
見ればバニングスと月村が勢いよく倒れている
スカートの中身がよく見える
白と青か……
若いなと思う
だが高町の反応を見るとどうやら不正解のようだった
ではまさか答えは前者だったのだろうか
解らない
もうここまで来たら本人に聞いてみよう
「では、何なんだ」
「ただ名前で呼んで!って言いたかっただけなの」
ああ、なるほど。こっちとしてはケリがついたこととしていたのでその発想はまったくなかった
だから言おう
「断る」と
「むぅー!いい加減素直に言って欲しいの!」
「素直に断ったはずだが……」
この少女の頭の中では俺が本当は名前で言いたいんだがみたいな変換を勝手にしているのだろうか。幸せな頭だな
「むぅ、じゃあ今回は諦めさせてもらうけど……」
おや、諦めがいい
それに不安を覚えてしまうのは気のせいだろうか
その不安を現実にするかのように高町の言葉が続く
「そのかわりお願いがあるの」
「お願い?」
不安が徐々に大きくなる
嫌な予感は嫌な現実を引き寄せるという俺の経験が痛いくらい主張している
「つまりね」
ようやく体制を整えたのか月村とバニングスも会話に入ってくる
不味いと心の警戒音が響きまくっている
そして締めは月村が言った
「これからなのはちゃんのお家で遊ばない?」
その瞬間
俺は窓から逃げた
ここは二階だが、これぐらいの位置からなら無傷で着地できる技術ぐらいはある
今までの経験に感謝
自分の状況判断と条件反射に感謝した
だが、着地予想地点の場所に何やら見知らぬお姉さんが立っている
髪の毛は三つ編みで野暮ったい眼鏡をかけていて、年齢は高校生くらいで帰りなのか制服を着ている
身長はその年齢の女性の平均身長くらいで小柄だがしかし引き締まっているという感じがしており、その野暮ったい眼鏡の下は美少女と言ってもおかしくないぐらい整っていた
その唇はすこし驚きに歪んでいた
しかしそれは人が落ちてきたことに驚いたという感じではなくむしろ
本当に落ちてきたという表情だ…………!
しまったと後悔するが遅い
空中では身動きができない
その女性の手が伸びてくる
こちらを捕まえるために
こいつらグルかと捕まる一瞬で思った
まさか高町達に出し抜かれるとは抜かった
勿論奇跡など起こらずあえなく捕まってしまった
とりあえず明日高町を掃除ロッカーに一時間ほどぶち込んでやろうと決心する


あとがき
すいません、物語の進行が遅くて
あと、感想掲示板で色々言われていますが、駄作であるのは自分でも解っていますし、厨二臭いのは百も承知です
だからこんなものは見たくないと思っている方は見なくて結構です



[27393] 第五話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/04/30 18:24

いつもの我が喫茶翠屋
しかし今日は少し店じまい
久しぶりの休暇なのだ
最近家族での団欒をしていなにので丁度いいだろうと思って桃子と一緒に提案したのだ
それに前の仕事での事故のおかげで家族みんなに迷惑をかけてしまった
特になのはにはつらい思いをさせてしまった
不幸中の幸いか
なのはにも友達ができて毎日の学校を楽しく過ごせているようだ
それが何よりも嬉しかった
今日はその友達も連れてくるらしい
良いことだ
アリサちゃんとすずかちゃん
二人ともいい子だ
しかも不思議なことにすずかちゃんのお姉さんの月村忍ちゃん
彼女は何と我が弟子にして頼れる長男の恭也の彼女なのである
縁とは面白いものだ
二人の関係は良好そうだ
時々なかなかの甘々空間を作成している
思わず美由希が泣いて「痛い!私の青春が痛い!」と意味が解らない叫びをあげながら逃げたぐらいだ
ふふふ、しかしまだ桃子と俺のいちゃいちゃ固有結界にはには勝てんなぁ
俺たちの固有結界に勝ちたければこの三倍をがっ
「も、桃子。どうして皿を俺に向けて投げるのかなぁ?」
「あらあら、私も解らないの士郎さん。ただ何か士郎さんが変なことを考えているように感じたかしら?つい」
鋭い
不破家にもこれほど鋭い人間はいなかったかもしれない
流石俺の桃子
そういえばとふと美由希で思い出す
今日はアリサちゃんとすずかsちゃん以外のなんとなのは初の男友達を連れてくるらしい(強制)
本当はアリサちゃん達と仲良くなった時と同じくらいから知り合っていたはずなのだが如何せん、何だか付き合いが悪いらしい
例えば、名前で呼んでと頼んでも名前で呼んでくれないとか
例えば、一緒にお昼を食べようと誘おうとしたら逃げるとか
例えば、一緒に帰ろうと誘おうとしたら逃げるとか
例えば、なのはをいやらしい子扱いするとか
例えば、なのはを罠にかけて男子トイレに侵入させたとか
…………あれー?
何だか殺意が湧いてきたぞー
ははっはっはっはははははははははははは!
まずは軽い『挨拶』からしおうかなー
お父さん頑張るぞー
「父さん。考えていることは大体わかるが殺気は抑えてくれ」
「ははは、今日は士郎さん」
「ん?やぁ、忍ちゃんに恭也」
噂をすれば影とやらか
二人とも高校から帰ってきたか
美由希はなのは達への迎え兼なのはの男友達を捕まえる為に聖祥学校へ
どうやらその子逃げるとなれば手段を選ばず、二階から飛び降りたりするらしい
一度それをした時誤って空手黒帯の体育教師の上に着地してしまい壮絶な殴り合いが起きたらしい。やんちゃで元気な子供だ
「今日は二人とも早かったなぁ。どうしたんだい?」
「いや、忍が………」
「だってぇ、なのはちゃんもそうかもしれないけど、うちのすずかにとっても初の男友達だよ~。気になるじゃない恭也。それにいつもすずかからご飯の時やら色んなときに聞かされるのよ~。風雷君、風雷君て。」
一瞬誰かと思ったがすぐに思い出す
そう確かその男の子の名前が風雷慧という名前だった
珍しい姓だなぁと思っていたのだ
だが、そんなことよりも
「ほう、それは驚きだね。すずかちゃん、そんなに彼の事を話しているのかい?」
意外だった
すずかちゃんはもう何回か会ったが、そんなに他人をそれも男の子について話題にするというようなタイプではないと思っていた
そこらへんは最初らへんの忍ちゃんに似ている
この娘も周りの何故だか知らないが壁を作っていた
きっと理由ありだろうと思う
だが、今は少なくとも恭也に対しては心を開いている
壁を作っていた理由を忍ちゃんから聞いてそれでも一緒にいると誓ったからだろう
今はそれだけでいい
いずれ俺達にも話してほしい
それが親というものだろう
話が逸れてしまった
しかし忍ちゃんの話を聞いているとなのはが言わなかった風雷君について知ることが出来た
曰く
喜怒哀楽がない子だとか
非人間的魅力があるとか
いたずら好きとか
一度も笑わない子だとか
喧嘩慣れしているとか
等々何だかそこまで褒められたような事ではなかった
というか、その

人間だろうか

そんな思考をしていた自分に愕然とする
頭を振ってその思考を消そうとするが消えない
大体一度も笑わない人間などいるはずがないだろう
感情は隠すことはできても消すことはできないが俺の持論である
そんなことが出来るとしたら植物人間か死人くらいだろう
生きているのならその束縛からは逃れられない
そう思う
「はは、やっぱり士郎さんもそう思いますか」
見ると忍ちゃんも苦笑している
困ったという感じで
「でもですね。すずかは同じことを言うんですよ。「きっと彼はどんなことも受け入れられる。能動じゃなくて多分受動的だと思うけどって」。すずかがここまでずけずけ人の事を評価するの初めて聞きましたよ」
苦笑しながらも何だか嬉しそうだ
きっと嬉しいんだろう
妹が他人の事を話題にあげてくれるのが
それを聞いて自分もハッと気づく
そう、例え本当にそんな子だとしてもなのはの友達でいてくれているんだ
なら、悪い子ではないだろう
我ながらみっともない
まさか自分よりも遥かに年下の女の子に教わるとは。俺も修行が足りないな
その後暫く三人で途中で桃子も入り談笑していると

「……ほ…いいか……かんね……!」
「諦め……がいいな……!」
「………風雷君………いこ………?」
「あ………わかって……もう遺言………した」
「…………まに、そんな…………のかなぁ?」
そしたらようやく子供グループの到着のようだ
意外と長いことかかった
きっと例の彼が嫌がって抵抗したのかもしれない
若いなぁと思う
「さぁ、迎えに行こうか」
「ええ」
「ああ」
「はい」
三人とも息をそろえて返事するのに苦笑して四人で立ち上がり玄関の方に行く
もう玄関の方に立っているのを気配で感じ取っている
どうやら美由希がドアを開けようとしているようだ
「今開けるぞー」
とこちらから声をかけあっちの動きが少し止まる
だが直ぐに返事が返ってきた
「うん、わかったお父さん。あ、あと、驚かないでね」
いきなり意味が解らないことを言う娘だ
一体何に驚くというのだろうか
四人で首を傾げる
もしかして風雷君が来ることはサプライズということにしているのだろうか
娘ながらボケているなぁと思う
みんなその話はなのはから聞いたのになぜ忘れるのだろうか
苦笑しながらとりあえず話に乗ってあげることにした
「はいはい、わかったから開けるぞー」
そして遠慮なくドアを開ける
瞬間
美由希の言っていた意味を理解した
彼の姿を見た瞬間

理解させられた




無理矢理拉致られて高町の家にお邪魔して数分
今、俺たちは

大乱〇で白熱していた

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!!」
「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!」
「せいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「なのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!?」
「……………………ダメ、私、ついていけない……………」
上から俺、バニングス、月村姉、高町、月村妹の順番のコメントだ
ちなみに今の俺たちのバトルの様子は
「くっ、何でそこまで見事にカウンターを決められるの!?動体視力良すぎだよ風雷君!」
「月村姉も何でそこまでファ○コンパンチを上手いこと決めれる!こっちからしたら痛恨の一撃だ」
「ちょ、なのは!さっきから卑怯よ!ステージ端で飛ばされてようやく戻ってきたのにその度に吸い込んでまた吐き出して場外に飛ばすなんて!女なら真正面から堂々と戦いなさい!人気にでるわよ!」
「止めてよ!そんなリアルな事を言うの!だ、大体アリサちゃんだって、場外に少しでも出たら空中下攻撃をかまして直ぐKOするじゃない!人が弱っている隙にえげつないことしてるよ!」
「…………あれ?私、影薄い?」
とこんな感じで盛り上がっていた
本当ならこの○ームキューブは四人対戦なんだが月村姉が改造して6人までいけるようにしたらしい。大丈夫なのだろうか?具体的に言えば法律関係」
結局勝者は月村姉だった。いや何であんなに上手いことファル○ンパンチを決められるんだろうね
そうやって上手いこと区切りがついた所に狙ったようなタイミングで高町母がお茶などを持ってきてくれた
多分高町はこの人から大量の遺伝子を貰ったのだろう。髪の色や顔がそっくりだ
「ありがとうございます。高町母」
「うふふ、別にいいのよ。何せなのはの初めての男友達だもの。でも、とりあえず高町母じゃなくて桃子さんと呼んでほしいんだけど」
「ははは、いやいや、そんな私などにそんなことは出来ません」
高町の性格は親譲りか
病名高町症候群と認定
これにかかると相手のことを名前で言わないと気が済まなくなる。重度になると相手に強制する。救いがたい病気だ
気を付けなければと肝に銘じる
そうやって油断したのがいけないのか。何を思ったのか知らないが急に高町母が急に頬を掴んできた。考え事をしていたので反応できなかった
「にゃにひょしゅりゅんでゃすか」
掴まれたまま喋ったので変な言葉になってしまう
見れば他のみんなもいきなりの行動に驚いたり首を傾げたりしている
しばらく頬で遊んでいた桃子さんからようやく返事が返ってくる
「いやね、その、笑わないなと桃子さん思ってしまって」
「……………………………」
ああ、なるほど
見れば気にしている大人連中や高町達も耳を傾けている
そういえば言ってなかったか
別に隠すようなことじゃないから言ってもいいけど。何だか不幸自慢みたいになってしまうからあんまり言いたくないのだ
「いえ、別に。特別なことがあってこうなったんじゃないですよ。ただ、デパートの火災に巻き込まれたらこうなっただけです」
「…………………十分大事だと思うけど」
「もう一度言います。別に。そんなの国で見たらよくあることですし。世界の視点で見たら大量にある事故の内の一つです。特別なことじゃないですよ」
そうどこにでもあるような事だ
あんな地獄、世界のどこにでもある
俺はただその内の一つに触れただけ
黙った高町母の代わりに高町父が代わりに話す
「まるで…………他人事のように話すね、君は」
そうだったかなと首を傾げてみる
別にどうでもいいことだろう
「…………一つ聞きたいんだが」
今度は高町兄か
「何でしょう?」
「…………君のご両親は」
今度はそっちねと思い素直に答える
「ええ、目の前でその火災で死にましたよ」
その一言で空気が凍る
はて、何か変な事を言っただろうか
解らず悩んでいると
「………変だよ」
と高町がボソッと呟く
言葉は続く
「おかしいよ。どうしてそんな風に自分の大切な人が死んだのにそんな無感動で入れるの?どうしてそんな酷い目にあったのにそんな無感動でいれるの?どうして、どうしてなの!」
最初は探るようだったが最後のほうは言葉を矢の用に飛ばすぐらい感情が込められていた
何か高町を揺るがすような事を言ったのかもしれない
だが
「じゃあ、何だ。悲劇的に言えばいいのか」
「っつ」
「悲劇的に言ってみんなからのお涙頂戴。素晴らしく泣ける話だね。高町が言いたいことはそういうことかな?」
「わ、私が言いたいのはそういうことじゃ…………」
「同じさ。しかしこれだけは言わせて貰おう
同情なんかいらない
憐みなんかいらない
そんなものはうっとおしいだけだ。反吐が出る。
同情していいのは人を助ける時だけだ
それ以外のはただの憐みという名の見下しだ」
「ふ、風雷君。言い過ぎだよ…………」
「そうか。とは言っても俺の持論を話しただけだ。別に理解しなくてもいい」
そう言ってあっさり話題を断ち切る
雰囲気はさっきまでの賑やかさから考えられないぐらい最悪になってしまった
確かに言い過ぎた
何か言ったほうがいいのかもしれないが生憎そこまで口は達者な方ではない
どうしたものかと思っていると
パン!と手を叩く音が聞こえる
見れば高町姉が手を合わせている
これはまさか………!
「高町姉、まさか………人体錬成を……!」
「駄目よ美由希ちゃん!持ってかれるわよ!」
「ふむ、でもこのシーンは恭也が立場的にしなければいけないのではないか?」
「そして美由希は鎧になるか……」
「な、何でそうなるのー!」
俺、月村姉、高町父、高町兄のコラボレーション突っ込み
うーん。座布団一枚だ
では要件は一体なんだろうか?
「えーと、今日はお泊り会でしょう?だから、そろそろ用意とかをした方がいいんじゃないのかなーと思って」
「ほう、美由紀希の言うとおりだな。部屋の用意とかしないといけないからな」
ほうほう、今日はお泊り会だったのか
では、邪魔にならないうちに
「とこに行こうとしているの、風雷」
「………ちっ、トイレさ」
「………今露骨に舌打ちをしたよね。というかトイレに何故荷物が必要なのかしら。私聞きたいなぁ」
何故かってそんなの決まってる
「実はこの中には俺専用のトイレットペーパーが…」
「何でカバンの中にそんなのをいれているのよ!」
馬鹿な、いざという時に便利だぞ
「ふぅ、でも古典的な失敗をしてるようだから言うけどーートイレそっちじゃないわよ。そっちは出入り口だけ」
なん、だと
「バニングス、一体誰がそんなことを決めた」
「いや、誰が決めたとかじゃなくて」
「馬鹿者!答えがただ一つだけと決めつけるんじゃない!」
「え?何。私叱られてるの?」
「いいかバニングス。答えが一つなんて誰が決めた。誰も決めてないだろう。なのに答えがただ一つしかないと決めつけるその思考はただの諦めだ」
「!?」
「だが、俺は諦めない。地べたを這いずり回ろうが、泥水を啜ることになっても俺は諦めないぞ」
「風雷……」
「さぁ、行くぞ!!」
「待てやこら」
「ちい」
騙されなかったか
高町辺りなら誤魔化せていたはずなんだがな」。ふん、なら理論で片付けさせてもらう
「大体な、いきなりすぎて何も用意などしておらんよ。例えば服とか」
「確か恭也の子供の頃の服がまだあったわね」
「ああ、まだ押し入れにあったはずだ。サイズは見たところそこまで変わらないみたいだ」
高町兄、高町母、余計な真似を
「た、例えばよくあるお泊りセットとか」
「父さん、確か余りの歯ブラシとかあったよね」
「ああ、確かここに……あったあった」
ブルータスよ、お前もか
「ほ、ほら、飛び入り参加だから部屋が空いてな……」
「じゃあ、慧君の布団は恭也の方にしいとくわね」
「ああ、構わない」
に、逃げ道が
「ほ、ほら、高町家に金銭的な負担が」
「あらあら、子供が三人増えたぐらいなら大丈夫よ」
お、己!
「う、家の冷蔵庫に今日中にやらなければいけないものが」
「後でこっちで弁償してあげるわ」
止めて!俺のライフポイントはとっくにゼロだぞ
「じ、実は枕が変わると眠れないんだ!!」
「ダウト!あんた机の上で毎時間グースカグースカ寝てんじゃない!!」
ちぃ!退路は断たれたか
ならば手段はただ一つ
「こうなったら無理やりいかせてもらう!!」
「ほう、小太刀二刀御神不破流を前によくぞ吠えた少年!」
数分後あえなく負けてしまった
みんなからは筋がいいと言われたがそれは嫌がらせでしょうか



ぎぃぃぃぃぃ、ばたん
十年くらい慣れ親しんだドアが開く音で俺は目を覚ました
目を開けるとそこには慣れ親しんだ俺の部屋の天井
今日はなのは達の友達のお泊り会で部屋の中にはその友達の一人の少なくとも俺の知り合いの中で一番複雑怪奇な子供と一緒に寝ていたはずだ
目を彼が寝ていた方に向けるとそこは空っぽ
やはり、彼が出て行った音らしい
それにしてもドアが開くまで気づかないとは
彼は驚くほど気配を断つのが上手い
それに何故だか大体が我流だが体術の心得があるらしい
でなきゃいくら父さんが手を抜いたからといって数分ももたないだろう
誰に教わったのかと聞いてみると
「超野蛮な山猿から教わりました。何と無礼なことに人間であるとか言っていますが」
とか言っていた
何でも散歩していたら急にその顔気に食わん!ほわちゃーとか叫んできてバトルになってそれ以降出会ったら訓練という名の殴り合いを
しているらしい(それを警察に見られて危うく捕まりそうになったが山猿をフレアにして逃げたとか言っている)
お互い名前も知らないとか。それなのによく出会うらしい
それにしても何処に行くのだろうか
眠れないのだろうか
心配になって起き上がった
気配を探ってみると彼が行こうとしている方向は

「屋上か………」
直ぐに向かった。
念のため足音を消して


屋上
そこに彼は座っていた
今日は快晴だったからか、いつもよりも美しい星空が広がっている
まるで人々の命のきらめきだ
それを彼は見上げて座っている
「起こしてしまいましたか」
いきなり声をかけられた
気配と足音は消していたはずなのに
「凄いな、もう気づくなんて」
「流石に真後ろに立たれたら気づきます」
そう言いながら彼はこちらにその背中を向けたままである
この夜空を見ている方が大切だと背中が語っているように見える
彼の隣に座り、俺も星空を見る
「どうしたいんだい、眠れないのかい」
「惜しいですね。正確には眠りたくないが真実です」
その答えに思わず眉を歪める
何故眠りたくないのだろうか
不眠症かと思ったが彼の顔は表情こそないが不健康には見えない
隈一つもない
では何が彼をそうさせるのか
答えは直ぐに聞けた
「昔の、昔の話をするとよく夢にでるんですよ」
何の夢とは聞かない
そんなものは聞く前から答えは解っていなくては人間としてお終いだ
言葉は続く
「それもね、厄介なことにですね。両親が死んだ瞬間を見せられるのですよ」
困ったもんだと言いたげな仕草をする
俺は何も言わない
「それ以降の光景ならいいんですけど、何故だか知らないが過去を話すといつもこうなる」
彼は表情を無表情のままにしたまま話す
今更だが理解した
彼はこの星の海を見ていない
焦点が合っていない
彼が見ているのは今ではなく過去だ
そう、彼の瞳には過去に経験した地獄を見ている
見ている
いや、見続けている
現在進行形で彼は過去を見ているのだ
彼にとっては今も地獄の中にいるようなもんだ

ああ、俺は何て勘違いをしたのだろう

俺は彼には感情なんてものはない少年と思っていた
周りのみんなもそう思っているかもしれない
酷い勘違いだ
彼は亡くなった両親に対して罪悪感を覚えている
自分だけ生き残ってごめんなさいと
いや、もしかしたら両親だけではないのかもしれない
その場にいて死んだ人達にもそう思っているのかもしれない
彼は何でもなさそうに話すが逆だ
彼は何でもあるようなことを何でもなさそうに話すのだ
勿論これは勝手な決めつけかもしれない
実は本当に何にも思っていないのかもしれない
しかし彼は見たくもない光景なのにその嫌なことを俺たちに話してくれた
それだけは

勘違いではない

そう思い彼の頭を撫でた
すると彼は不機嫌そうな声で
「子ども扱いしないでください」
等言ってくる
思わず笑う
小学一年生なのだから子供なのに
弟がいたらこんな風なのかもしれないと思う
俺はそのまま頭を撫でる
彼は不機嫌そうに喋る
「いい加減止めてください恭也さん」
その時初めて名前で呼んでくれた
他者のことを名で呼ばぬ彼が俺の名を
何故と問うと
「………愚痴を聞いてくれたのは貴方が初めてだからです」
つまり認めてくれたのか
成程、彼は誰かにこの話を聞いて欲しかったのかもしれない
それがたまたま俺だった
それがたまらなく嬉しい
剣士である俺が
剣以外でも誰かに認めてもらった
ただそれだけが嬉しかった
俺たちはそのまま朝まで星を見ていた
お互いを何も言わずただ星を




[27393] 第六話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/05/04 22:26
風雷君の辛い過去の話から翌日
普通ならこう空気が嫌な風にギスギスする日
そうなると誰もがそう思っていた
結果は半分正解で半分はずれ
そう、何故だか知らないが

恭也さんと風雷君が物凄く仲良くなっているのだ

見た目とかそういうのが変わったとかではない
証拠の会話はこれだ

「慧君、そこの醤油を取ってくれないか」
「どうぞ、『恭也さん』」

そう恭也さんだ、あの風雷君がだ。もう一度言わせて欲しい

あの風雷君がだ

今まで一度も誰かの名前を言わなかった風雷君がだ
今までなのはちゃんの要求を一度も飲まなかった風雷君がだ
恭也さんはどんな奇跡を使ったのだろうか
どんな魔法を使ったというのだろうか
あ、なのはちゃんのお箸が折れた
今の内にお皿を退避
退避した直後
「どういうことなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉx!!」
と机をバン!と両手で叩いた
その時にはみんなも予想していたのかお皿とかを退避させていた
なのはちゃんの行動って読み易いよね
そんな中恭也さんと風雷君はいつも通りだった
「なのは、ご飯中にそんなに叫ぶのははしたないぞ」
「というか近所迷惑だ」
「そんな些細なことは今の大事と比べたら大したことではないなの!!」
あはは、なのはちゃんがいい感じにおかしくなってる
「お兄ちゃん!一体どうやって慧君から名前で呼んで貰えるようになったの!!説明を要求するなの!」
まぁ、私達も気になっていることなので誰もなのはちゃんを止める人はいない
むしろ、そうだそうだ、ブー、ブー等みんな言っている
このメンバーでは私は自然と影が薄くなってしまいそうだ。グスン
ごほん、そしてその質問に件の二人はお互いアイコンタクトをして一言

「「気が合ったから」」

ユニゾンした一言であった
一瞬
なのはちゃんから全ての動きが消えたような気がした
即座にみんなは理解した

いかん、嵐の前の静けさ状態だと

予感道り直ぐに爆発した
大声という名の嵐を

「納得いかないのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

鼓膜が潰れたかと思った
事前に耳を塞いでいなければやばかったかも
運動神経はなのはちゃん低いのに肺活量はあるのかもしれない
ちなみに一番近くで聞いていた士郎さんは床に倒れて桃子さんと漫才をしていた
内容は

「桃子………俺はもう……」
「そんな!しっかりして下さい!士郎さん!!」
「ああ………俺は……桃子みたいな…………素敵で素晴らしく美しい人と………結婚できて…………幸せだ………ガクリ」
「しろ、う、さん?士郎さんぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

息が合ったプレイだ
そこを空気を読んだお姉ちゃんがスポットライトを二人に当てていた
それ以外のみんなは華麗に無視していた
それのせいで更に士郎さんの瞳には涙が………
見なかったことにしよう
「高町うざ………煩いぞ」
「今さらりとうざいって言おうとしたよね!どっちにしろ悪意が隠せてないなの!」
「え?悪意って隠すものなのか?」
「はい決定!有罪決定なの!なのは法典では死刑って決まったけど遺言はある!」
「言いたいことならあるーーーー俺を殺すには高町じゃあ役不足だ」
「OKなの。つまり戦争なの!」
「戦争?一方的な虐殺の間違いだろう」
「なのーーーーーーーーー!」
なのはちゃんが風雷君に突撃するが風雷君に頭を押さえられてそこから一歩も前に進まず、手も届かない
まるで漫画のギャグシーンだね
そう思っていると何だか風切り音が
余裕の状態だった風雷君が珍しく顔色を変えて咄嗟に頭を伏せる
すると彼の背後の壁に何か生えていた
見るとそれはえーと飛針だっけ、一度恭也さん達の修業を見せてもらった時に見たことがある
何でそれが生えてるんだろうと思ったが直ぐに気づいた
ああ、さっきの風切り音はこれを投げたから
では、誰が
みんなその思考に至ったのか飛針が飛んできたと思われる方向と思わしき方を見ると
そこには構えていた士郎さんが
冷や汗をかきながらそれでも表情を変えない風雷君
この状況では滑稽に見えるのは私の気のせいでしょうか
「あ、あの~高町父。今のーーー当たってたら死んでると思うんですが」
「安心しろ風雷君。----確信犯だ」
ちゃきと何か音が聞こえた
士郎さんが刀を構えた音だった
「----模擬刀ですよね」
「いや、そんな失礼なことはしないとも。お客様用ミラクル真剣だ。これに斬られると、あら、不思議。一つの物が二つになるんだよ」
「…………峰打ちですよね」
「HAHAHAHA,面白いジョークだね。だが俺は仕事には真面目でね。業務に従って刃の方を向けないといけないんだよ」
「ははは、聞きたくないんですけど聞かなければ俺の命が斬られそうだから聞きますけど。その仕事とは?」
「よくぞ聞いてくれた。その仕事とはな………」
「仕事とは?」
「なのはをいじめた男を抹消………いや、抹殺することだ!!」
「いかん!ただの親馬鹿か!!」
「親馬鹿結構!なのはの為ならそこらの野郎共なんぞ滅殺してやろう!」
「高町父!控えめに言いますけどあんたおかしいぞ!!」
「問答無用!!御首頂戴!!」
刀を振り上げバーサーカーの如き狂気を抱きながら風雷君に向かう
みんなマジとわかって士郎さんを止めようとするが流石は一流の剣士
スピードが段違いに速い
恭也さんも美由希さんも止めようとするが一歩遅い
風雷君も逃げようと体を動かすが、動かそうとした直後彼は気づいたようだ
逃げ場所がないのだ
横はテーブルと壁
前後は襲い掛かってくる士郎さんと驚きで棒立ちしているなのはちゃん
これでは逃げようがない
しかも士郎さんのスピードを見ると動けて一歩分
それではどう足掻いても逃げられない
風雷君、絶体絶命だと思った
だが、彼はそこでは終わらなかった
彼はその一歩を自分を動かす為に使うのではなかった
彼は足を動かし、周りにあるものを士郎さんに向けて蹴るために一歩を使った

つまり、さっきまで座っていた椅子を

当然、士郎さんはそれに対処しなければいけない
何故ならば条件が風雷君と同じなのだ
横はテーブルと壁
前後は迫りくる椅子と後ろには桃子さんが
となると迎撃するしかない
飛来物を刀で迎撃
しかし言うほど簡単ではないだろう
そもそも刀は人を斬るものだ。断じて木材などを斬るものではない
しかも高速で動いている物だ
並みの剣士では無理だ
逆に刀が勢いに負けて折られるだろう
されど、高町士郎は並みの剣士ではない
超超一流の剣士
御神不破流の師範なのだ
高速で飛んでくる椅子など

たやすく斬れる

疾っという風切り音は
斬という風切り音に変わった

余りの鋭さと速さに椅子は少し遅れて真っ二つに分裂した
一つの物は二つの物になり、それらは士郎さんを避けて飛んだ
私にはその斬った瞬間が全く見えなかった
そしてもう一つ見えなくなったものがあった
士郎さんも遅れて気づいたのか、少し目を開く
だが、次の瞬間。士郎さんは後ろを見た
そこにはさっきまで士郎さんの前にいたはずの風雷君が中腰で立っていた
一体どうやって………!!
瞬間移動でもやったのか
答えは士郎さんの口から聞けた
「上手い状況判断だ。椅子を蹴り飛ばした直後、君も走り抜けそのまま私の股の下を潜り抜けるか。確かに視界は飛んでくる椅子のせいで狭まるし、君は小学一年生だ。小柄だから十分に出来る作戦だ。しかし、それが御神流以外ならのはずだが………気配を隠すのが上手いね」
「ええ、いつも喧嘩を挑んでくる山猿に逆に奇襲を仕掛ける時に身に着けた技です。しかし流石に猿ですから、野生の勘が凄くてなかなか成功できませんが人間が相手なら不可能ではないでしょう。現に恭也さんにも通じたわけですし」
「成程、だからこんな無茶な作戦をしようと思ったのか。大した胆力だ。美由希に習わせたいものだ」
うんうんと一人頷いている士郎さん
凄いと正直に思う
あんな一瞬でそこまで頭が回るなんて私には不可能だ
例えそれを可能にする身体能力があったとしても咄嗟にしろと言われたら私には無理だろう
多分私ならあの状態でただボーと立って、為す術もなくただ剣撃を受けるだけだろう
凄いなともう一度思う
しかし、それだけの事を成し遂げた彼の顔からは緊張は取れていなかった
答えは簡単
士郎さんが説明する
「でも、その後が続かない」
「……………………………」
「確かにその年頃でそれなら素晴らし過ぎる動きだ。一種の天才かもしれないかもね。しかしだ。それでも俺にはまだまだ届かない。その気になれば。攻撃はおろか防御もさせずに俺は君を倒すことができる」
「……………………………」
事実だろう
風雷君は色々なものが士郎さんに負けている
例えば体格差
例えば経験
例えば身体能力
等々色々なものが負けている
仕方がないことだろう
そもそも風雷君は腕が立つとはいえども少し喧嘩慣れしているといっただけだ
対する士郎さんは実戦式の剣術を習得した超一流剣士だ
むしろ今の攻撃を躱せたことだけでも奇跡の領域だ
多分、武術に関して詳しい人がいたらこういうだろう
この少年は称賛に値する、と
しかし限界だ
これが彼の限界だろう
それを彼もわかっているだろう
元より聡い少年だ
彼我の実力は理解しているはずだ
「さぁ、君の負けだ!」
士郎さんは勝利を確信したのか叫び大胆にも彼に大股で近づこうとする
しかし、急に彼がおかしな行動に出た
緊張を解いたのだ
士郎さんもおかしいと思ったのだろう、歩みを止める
そして問う
「どうしたんだい?こんな場面で緊張を解くとはーーーー自殺行為だよ」
「いえ、もう終わりましたから」
へっ?と思わず間抜けな声を出してしまう
だってどう見ても風雷君の不利……………あ~ようやく理解したよ
確かにこれで終わりだね
どうやら士郎さんは気づいてないようだ
ええと、こういう時は十字を切るんだっけ?
「どういうことだ……………ひぃ!」
がしっと士郎さんは後頭部を思い切り後ろから鷲掴みにされました
ぎぎぎと無理矢理死刑囚、いや士郎さんは後ろに振り向かせられる
そこには

満面の笑みの桃子さんが

みんな悟った
士郎さんの命はここまでだと
だからそれぞれ士郎さんの旅路のために手を合わせたり、十字を切ったり、遺影を撮ったり、線香に火を点けたりしている(つまり、誰も士郎さんを助ける気がないんだね♪)
士郎さんは命乞いをする
「も、桃子、待ってくれ。こ、こここここここここれれれれはだだだだななななな」
「はいはい、何ですか、士郎さん?」
「そそそそそそそののののだだなな。スーハー(深呼吸)。な、なのはを虐める不届きものに成敗をしようとだなぁ」
「あらあら、私には二人は微笑ましい行為をしていただけのようにしか見えませんでしたが」
「い、いやいやいやいや、そんなことはないぞ!彼はあのなのはの頭を押さえつけるという悪行をしていたんだ!!」
「ふふふ、そうなの?-----じゃあ、お話はそれで終わりですね」
「!!!!???」
うわぁ、士郎さん、凄い顔している
でも誰も助けようとはしない
このメンバーな中には命知らずの空気を読まない人間はいないようだ
あ、風雷君。写メで士郎さんの写真をモノクロにしているぅ。しかも何故か賞金首にしている。わぁ、二千円だ。
「じゃあ、行きましょうか拷問…………私たちの愛の巣に」
「あっはっはっはっはっはっはっは、今、間にモノスゴイコトバガハサンデイタヨウナキガシタノハキノセイデショウカ」
「うふふ、大丈夫よ士郎さん。-----子供達を思って言葉を変えたの」
「嫌だ!止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、こきゅりゅ!」
あ、短い悲鳴が
急に力が抜けた士郎さんはそのまま首根っこを掴まれたままずるずると引きずられ違う部屋に入ろうとする
「あ、そうそう」
すると何を思ってか。急にその満面の笑みをこちらに向けてくる
みんなピクリと一瞬で背筋を伸ばす
本能って凄いと知りたくもないことを私は知ってしまった
ついでに笑顔ってこんなにプレッシャーがあるものなんだと知ってしまった
その笑顔で一言

「絶対に見に来ちゃーーー駄目よ」

ひゅーーーーーーー、ばたん
答えも聞かずに桃子さんはドアを閉じた
誰も動くことができなかった




それから一時間
私たちは片づけをした後、それぞれの時間を過ごしている
風雷君はさっきの動きを見て恭也さんと美由希さんに修業に誘われ引きずられていった(そこらへんは親子そっくりだ。ちなみにまだ士郎さんと桃子さんは帰ってきていない)
彼は彼でノォォォォォォォォォォォォォォォォォォォと言って連れて行かれていた
味のある悲鳴だった
表情は無表情のままだったが
「それにしても士郎さんのあれは大変だったねぇ」
「本当ですよ」
お姉ちゃんとなのはちゃんの話が耳に入る
士郎さんには悪いが仕方ないだろう
あれじゃあ、なのはちゃんに何時までたっても恋人が出来ないんのではないだろうか
そう思いながらお茶をズズズーと飲む
ああ、美味しい。適度に温かいお茶が美味しい
「困るわねー。もし、すずかの想い人に何かあったら大変な事よー」

「ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「目が!!目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「あ、アリサちゃん!!落ち着いてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

飲んでいたお茶をはしたなくも、思い切り噴出した
アリサちゃんは適度に温かいお茶を目に浴びて大ダメージ
なのはちゃんはそんなアリサちゃんを見て大慌て
結論はカオスになった
の前に
「お、おおおおおおおおおお姉ちゃん!!いききききっきなあななななりりりりいりりり何をぴゅうの!!頭大丈夫!!?」
「うんうん、いい感じの壊れ方ねぇ~。でも最後の方だけがまともに話せていたことにすずかが日々お姉ちゃんに対して何を考えていたかお姉ちゃん、理解しちゃったなぁ」
今はそんな些細なことはどうでもいい
問題は
「え?そうなの?すずかちゃん、慧君の事が好きなの?」
「へー、すずかも変わった趣味してるわね~。まぁ、気づいていたけど」
この二人、というよりなのはちゃんだ
「な、なのはちゃん!」
「うん、な…………っていたたたたたたたたた!!食い込んでる!すずかちゃん!すずかちゃんの一見繊細そうな指が私の脆い肌を呆気なく貫通してるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
無視した
今はそんなことは問題ではないはずだ
なのはちゃんの肩よりも重要なことだ
それは
「いい!なのはちゃん!」
「うん!なに!できゃりゃば私にょーー!!肩がクライマックスを超えらーー!前に!!」
なのはちゃんのキャラが壊れている感じがするが気にしない
「絶対、絶対、絶ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー対!!!」
「ねぇ!それ、わざ!!っとなの!わたしょ!のkつう!をのっばっすだめの、じがーーん稼ぎなの!うにゃ!!」
「ねぇ!なのはちゃん!真面目に聞いて!!」
「聞いた!!いったぁ!舌噛んだなの!」
「嘘つき!!遊んでるよ!!」
「じゃあ、その握力を弱めにゃ!にゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁぁぁっぁぁ!!推定70キロオーバー!!?私もう死んでてる!!?」
「すずか!落ち着きなさい!!なのはの内面と肩と言語が既に原形を留めていないわ!!ついでにアンタの内面も!」
はっ!私としたことが!
えーと、こういう時は
「ほ、骨だけは拾うからね!!?」
「駄目よすずか!それ、なのはの死亡フラグ!!」
ポキッ

「「あっ」」

何だか枝を折ったかのような音
それは何故か知らないが私の手の中、つまりなのはちゃんの体内から聞こえたような気がした
…………………………………………
沈黙が漂う
私とアリサちゃんは冷や汗を一筋流す
どういう行動をすればこの場でベストなのか、それだけを考える
ゴクリと二人で息をのむ
そして息を吸う
そしてついに一言

「「おお、なのは(ちゃん)よ。しんでしまうとはなさけない」」
「死んでないよ!!」
あっ、生きてた
良かったぁー。この年で前科持ちはやだよ~


時間をかけてようやく落ち着いて話せるようになった
「も~、すずかちゃん~。痛かったよ~」
「ご、ごめんねなのはちゃん。つ、つい」
「ごめんねだけじゃあ鎖骨の痛みは帳消しにならないの」
「………………(何でなのはは明らか鎖骨が折れたはずなのにもうダメージから立ち直ってるのかしら。高町家の不思議?」
「アハハ、すずかも可愛くなったね~」
「お、お姉ちゃんっ」
「(そしてこの人はあれだけの惨状を前に顔色も変えてない。あれ?常識人は私だけ?)」
「それにしてもすずか。彼のどこに惚れたの?」
「うっ」
「あ、それ私も聞きたーい」
「私もー」
「あ、アリサちゃんやなのはちゃんも…………?」
「当然よ!友人のコイバナ程面白そうな…………応援し甲斐なものはないわ!!」
「右に同じくなの!」
「アリサちゃん。出来れば本音の方を隠してくれていたら少し感動していたんだけど……」
「で、どうなの?」
「う、の、ノーコメントでお願いします…………」
「あら?私達にそんな可愛らしい行為が通じると思っているなんて。可愛らしい子ーーーーーなのはちゃん、アリサちゃん。すずかを羽交い絞めしてちょうだい」
「了解なの!」
「任せて下さい!」
「ひゃ!ふ、二人とも止めて!お、お姉ちゃん。な、何をする気…………」
「ふっ、決まってるでしょう」
そう言ってまるで聖母のような微笑みを浮かべるお姉ちゃん
私この笑顔をどういうのか知っている
それは

「すずかが素直になるまで揉むのよ」
悪巧みと

「も、もみゅ!?や、やっぱりお姉ちゃん!そっちのけが!!?」
「やっぱりっていうのはどういうことかな!?ふふふ、でも今はその称号甘んじて受けましょう!妹の乳を揉むために!」
「駄目だよお姉ちゃん!!そのキャラ何だか知らないけど誰かに被ってる気がするの!!頭に浮かんだビジョンだと狸っぽい子に!!」
「そんなの今の私には関係ない!!」
「ひゃん!!」
揉まれた
それも鷲掴み
「ふふふ、ここがいいのでしょう、すずか?」
「や、やぁ、やめてぇ。あっ」
「ふふふ、口ではそう言っても体は正直ねー」
「「わ、わぁー」」
お願いだから止めてー!!
と変な雰囲気になっていたら

「し、死ねる………あの鍛錬死ね……………」
がちゃり
風雷君がドアを開けた

「「「「「…………………………………………………………………………」」」」」

言葉なんていらなかった
私達にはそんなものはいらなかった
悲しいことに
ばたんとドアを閉じられる
その動きでみんなの動きが再開される
「ふ、風雷君!誤解だよ!!」
「ああ、大丈夫、月村。俺は空気を読めるいい子。だから遠慮なく続きをヤッテくれ。俺はそれを遠くから侮蔑の目で見るから…………」
「お願い!!その気持ちはわかるけど、今回だけは空気を読まないで!!あと、全然フォローにもなってないし、逆に追い打ちをかけているよ!お願いだから信じて!!同性愛の趣味を持っているのはお姉ちゃんとなのはちゃんとアリサちゃんだけなの」
「え!!ここでまさかのカーブをするの!!すずか止めなさい!!変な趣向を持っているのはなのはだけよ!!私はどノーマルよ!!」
「ええ!アリサちゃん!?私を売るの!!」
「いや、わかってるんだ…………………………高町症候群にかかっていて変態なわけはないって。解っていたさーーーーーー救いようがないって」
「駄目だ!こいつ話を聞いているようでまったく聞いてないわ!!」
「ふふふふふふふふふ」
彼は不吉な笑いをしながらドアから遠ざかっていき、最終的に走りながら

「月村も変態だったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
と叫んで行った
その後私達は彼を追いかけた
誤解を解くために
私は変態じゃないよ!!!

風雷慧  脱走


あとがき
質問に答えますけど、彼は声には感情が少し篭っているのに、顔に感情が宿っていないというアンバランスな人間です
だから設定は壊していない…………はずです
あと、一つ聞きたいんですが一部だけ文字を大きくしたり、ルビをするにはどうやったらいいのでしょうか
出来れば教えていただきたいです



[27393] 第七話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/05/07 19:02
魔窟の世界から逃げ、今俺は図書館にいる
別に他意はない
単純に適当に逃げてきたら、ここの近くに来ていたのでここに逃げ込んできたのである
それに月村ならともかくあの二人が本を読むとは思えないと思ったのだ
完璧な作戦
思わず自分の頭を撫でてしまうくらい完璧だ
さらに思わず独り言を呟く

「まったくーーーー傑作だな」と俺は笑わず
「戯言やろ」と狸は笑った

「ていうかキャラ的に言うセリフが逆やろ!!更に私は狸ちゃう!!」

「な、何を言う!お前が狸じゃなかったら何を狸と言うんだ!いい加減にしろ!」

「え!?何でや!私何で逆切れされてんの!?この場合私がキレるシーンやろ!」

「そんな空気、俺が殺して解体して並べて揃えてーーー晒してやるさ」

「やめぃ!色々迷惑や!!」

「鏡を見て言え」

「辛辣なツッコミ!」

ああ、癒される
まさか狸相手に癒されるなんてーーーー高町家よりは百億倍ぐらいマシだからな
この気持ちを一言で表したら何と言うだろうか
獣に癒し
ぴーん

「ケヤし…………」

「すいませーん。誰かこの人を病院に連れて行ってくださーい」

「病院?お前が今から行くのは動物園だろう?」

「はははは、残念ながら私には二度ネタは通じひ…………」

「----餌として」

「まさかの見世物ではなく、消費物!!?」

「こんなゲテモノを見世物になんてーーーー俺にそんな酷いことが出来るはずがないだろう」

「はい、ダウト!!現在進行形で私に酷いことをしてるくせに、どの口が言うねん!!」

「この溢れんばかりの善意と悪意を溜めているこの口が」

「確信犯か!!」

お互い挨拶という名のコントをする
しかし、そんな僕たちは実は会うのは二度目だという
はっはっはっはっは、遠慮ないなぁ、お互い

「そやねぇ、私達会うのが二回目とは思えへん程コントしてるで」

「何だろうなぁ。この連帯感」

「こ、これはまさかーーーーー恋?」

「ごめん、俺自殺するわ」

「私の心がじさつしちゃいそうや~」

がしっと握手する
呼吸を合わせて一言

「「おお、心の友よ!!」」

この会話
そう!こういうことが出来る相手を求めていたのだ
ああ、至福の時間
でも至福の時間は長くは続かない
そう、それは機能理解してしまったことであった

「「「見つけたよ(わよ)!慧君(風雷、風雷君)!!」

「な、何や!」

「下がれ八神!いや、こいつらに近づくな、話すな、触るな、同じ空気を吸うな!!もしこれらを守らなかったら高町症候群にかかってしまうぞ!!」

「た、高町症候群?」

「そう、病名高町症候群。症状はレズになったり、ストーカーになったち、親馬鹿になったりと様々な症状が出るが結果はかかったらーーーーー変態になる」

「そ、そんな恐ろしい病気が!?」

「駄目だよ!彼の言うことを真に受けたら!風雷君は屁理屈を並べることなら世界を狙えるもの!」

「屁理屈で世界を狙えるということはつまり俺の屁理屈は世界を支配できるということか………………大したものだ」

「駄目だよアリサちゃん!もう慧君には言葉は通じないと思うよ!!」

「さらりと酷いわねなのは……………」

「わ、私はどっちを信じればいいんや……………?」

「「「「無論、こっち(だ、よ、なの)!!!」」」」

「あかん!あかんでぇ!!私がボケることも、ツッコむ事も出来ないなんて!私はどうすればいいんや!!」

わいわい騒ぐ俺達
互いに譲らず、互いに主張するので話は平行線
決め手がない状態で更に騒ぐ
だが、俺たちは忘れていた
そう、ここが図書館(公共の場)だということを

「あいた!」

「きゃっ!」

「いたっ!」

「にゃっ!」

「あがっ!」

同時に悲鳴があがる
何故悲鳴がというと答えは至って単純
何かをぶつけられたからである
何かというのは

「ぼ、ボールペン?」

「シャーペン?」

「練消し……………」

「じ、Gぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!何で私だけこんなんやねん!」

「…………………明らか殺意が籠った六法全書」

みんなが一体誰がこんなことをと思い投げられてきたと思われる方向に振り向いた
そこには

こめかみに立派な青筋を立てていたお姉さんが

その視線がこう言っている

図書館で暴れんなよ糞ガキがと

その場の判断で全員逃げだした

運動神経の悪い高町と車いすの八神を残して
うらぎりものーと声が聞こえたような気がしたがそんな些細な事では俺達の逃走本能には勝てなかったのである




「まったく、ひどいよ!」

「ほんまや!」

「だからごめんって何度も言ってるでしょう」

「そうだぞ、こんだけバニングスが謝ってるんだ。そろそろ許してやれ」

「……………まるで自分は何も悪くないっていう言い方だねぇ」

「え?俺悪いことなんて一度もしたことがないよ」

「「「「はい、嘘!!」」」」

「人の言っていることを疑うなんて……………悪い子だな」

「そのセリフ、慧君には言われとうないわ!!」

「同意見だよ!」

「右に同じ」

「左に同じ」

失礼な奴らだ
今は図書館から逃げてきて公園に来ている
流石にあのままあそこに居残るほどみんな精神力は強くなかったのである
あの後は八神をみんなに紹介した
その後、高町恒例の秘技「名前で呼んで」を使い見事八神を洗脳した
恐ろしい能力だ
そういえば八神。お前は人見知りが激しいんじゃないのかと尋ねてみたら
「いやいや、あんなボケて、ツッコんでたら、そんなん乗り越えてしもうた」
ということらしい
別にどうでもいいけど

「ああ、私これからどういう顔してあそこに行けばいいんやろうか…………」

「大変だな、八神」

「だ・れ・の・せ・い・や!!」

「そこの三人娘」

「風雷?責任転嫁っていう言葉知ってる?」

「勿論知っているとも。それがどうした?」

「あははは、時々むかついてその澄ました顔を思いっきし殴りたくなるんだけど私、間違ってないよね?」

「月村、言われてるぞ」

「…………へぇ、風雷君からしたら私澄ました顔してるんだ」

おおっと藪を突いてしまったか
触らぬ月村に祟りなし
そう思いその殺意から逃れる為の方法を考えていると
「おっ」
目の前にアイスクリームの屋台が
丁度いい。これでご機嫌を取ろう

「見目麗しいお嬢様。どうかこの甘いものでご機嫌を直してください(棒読み)」

「うん……………出来ればそのセリフに感情が籠っていたら完璧だったのに」

「まっ、風雷に期待するだけ無駄でしょう。あ、あたしバニラね」

「私もバニラ!」

「私もや!」

「……………何故お前らも注文する」

「「「え?まさかすずかちゃんだけ特別扱いするの?ふーーーん」」」

何だその含みがある言い方は
まぁ、別にそれぐらいのことで財布は傷まないけど

「月村は?」

「………………………………え?あ、ああ!わ、私はチョコで!!」

「……………………何で焦っているんだ?」

よくわからんやつだ
そう思いながら屋台に近づいて注文をする
すると後ろから話し声が聞こえる

「それにしても普段は薄情者に見えるけど優しいやんか」

「そうだよね~。あ、こういうのをツンデレっていうんだよね~」

あら、とても不快な会話が

「すいません、チョコ二つに、バニラ一つ、あとそこの抹茶わさびサイダーを一つと、いちごカレー辛口を一つで」

「なんやぁーーーーーー!!その奇怪なアイスは!!?」

「何でそんなものがあるの!?ていうか止めてそんなものを注文するのは!?」

やかましい
誤解しかない事を話しているからいけないんだ

「それにしてもすずか。良かったじゃない。好み似通っているみたいよ」

「え、えへへ。そうかなぁ~」

何か聞こえたが気にしない
というか聞いてない



しばらくアイスを食べて雑談していた
余談だが八神と高町はアイスを意地で食べていい笑顔で気絶した
余りにもいい笑顔だったので写メを撮っといた
これは高町父にでも怒ったとき用のフレアにしておこう
そう思っていたら

「ぬっ」
さっきまで公園になかったものを発見した
というか余りにもくだらなさ過ぎて見る気が一瞬で失せた
見つけたものはざるを棒で立てた幼稚園どころか赤ん坊ですらしないトラップというのも馬鹿らしいものだ
よくその下には食べ物とかで釣るために何かを置いておくんだがそれが

「ね、ねぇ、あ、あのと、トラップ?らしきものの下に。い、いやらしい本が置いてあるように見えるんだけど。わ、私の気のせい?」

高町も気づいたのか律儀にみんなに伝える
他の奴らもそれには気づいていたのかみんな目をそらしたり、顔を赤らめたり、興味津々だったり、興味なしだったり、色々な反応を返してきた
はぁ、こういう馬鹿らしい物があるということは十中八九あの山猿の仕業だろう
とっとと山猿退治をするか
そう思い立ち上がり、くだらないもののそばに歩いていく

「え?慧君?ど、どうするの?」

俺は何も言わずカバンからシャベルを取り出す

「「「「えええ?ちょっと待って!明らかそのカバンには入らないサイズ(やん、じゃない)だよね!!」」」」

無視して穴を掘る
ざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっくざっく
よしこれぐらいで成長した万年発情猿を落とせるくらいの深さにしたか
あとは餌か
今度はカバンから何の変哲もないペットボトルを取り出す

「「「「????」」」」

後ろから今度は何だろうみたいな反応をしているのが気配でわかるが、これも無視してとぽとぽと中身の水をそのエロ本にかける
よしよしこれくらいかけといたら景気良くなるだろう
今度はごそごそとポケットからマッチを取り出して火を点け遠慮なくエロ本につけた
一瞬でエロ本が業火に包まれる
次の瞬間

「ほわちゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

などど奇声を発した山猿が藪から出てきて燃え盛っているエロ本に飛び込んだ
よくもまぁ、絶賛火事中のエロ本を抱き抱えれるもんだ
だがまだ甘い
山猿は本の方に集中していて足元を疎かにしている
そして一歩足を引いた瞬間
山猿は俺がついさっき作った落とし穴に嵌った
ぐわぁぁぁぁぁぁぁとかいう山猿の奇声が聞こえたがそんなものは気にせずにすぐさま穴に近づき上から魔法の水(灯油)を落とし、ついでにマッチを落とす
そうするとあら不思議
下に落ちた動物が燃えだすではないか
こうなるとこう言いたくなるよなぁ

「はっはっはっはっはっはっはっはっは!!!猿がゴミのようだ!」

「…………………………はっ。ちょ、ちょっとあんた!!それ殺人よ!」

「あ、ほ、ホントや!余りの状況の移り変わりについていけなかったからリアクション取れなかったけど慧君!!そんなんしたらその人死んじゃうで!!?」

「そ、そうだよ!は、早く火を消さなきゃ!!」

「み、水!!」

おやおや、皆様何を勘違いしているんだろう
これは優しい俺が答えて上げなければ

「みんな。騙されてはいけない!こいつは人の皮を被った山猿だ!!」

「「「「こいつ、もう駄目だ!!」」」」

おお、珍しく八神が関西弁を放棄して、月村が汚い言葉を吐いた
それにしても何を言うのだろうか
この山猿がもう駄目なのは見た瞬間わかっているのに改めて口に出すとは……………非合理的だね

「あんたって無表情な癖して何で喋る内容はコミカルなの!!?」

無視した
いちいち相手にするのがめんどくさくなったというのが本音だが
何やらバニングスが錯乱して俺を殺してやるとか言って月村達に止められている
最近の若者は脳が異常だね
そう呑気に思っていると

「こ、小僧!貴様ぁ!よくの儂の先祖代々伝わる法典を焼きやがったな!」

と言って穴から這い出る山猿
速攻で穴に戻すために蹴ろうとしたが流石に間に合わなかった
ちっ、流石山猿
登るのが得意なもんだ

「大体何だ。エロ本を法典にしている家系は。そのまま去勢されればいいのに」

「己、年上に対して礼儀というのが分かっておらん小僧が……………!」

「はて、この場に年上の人間がいただろうか?俺の目の前には山猿じじぃしか見えないが」

「わかった。儂が悪かった。小僧に礼儀という概念は難し過ぎじゃったな。だからこっちに来い。躾をしてやろう。何、痛くはせん」

「この前それを信じて近づいたら延髄チョップをかまして俺を気絶させてそのまま山のど真ん中に捨てていったよな。あの後餓えた野獣とかと遭遇したりして帰るのに一週間かかったんだが」

「それを言うなら小僧。お前は儂が寝ている間にどこかからか調達してきたコンクリに儂を埋め込んでそのまま海に捨てたような気がするんじゃが。コンクリから抜け出すのに二日。帰ってくるのに三日かかったんじゃが。しかもその間に鮫やら何やらに襲われたんじゃが」

「「………………………殺す!!」」

「お、落ち着いてなのーーー!!でいうか何であの炎から無傷でいられるのーー!」

「…………………………その前にさっきの過去話が本当なら何でこの二人が生きているのかを知りたいんだけど」

「……………あれ?でもそういえば、この前。風雷君が何故だか知らないけど一週間休んでいて連絡もないっていう事があったような」

「……………………………………………………きっと偶然やって」

外野が何かほざいているがそんなのは無視
今はこの万年発情期の山猿を抹殺しなければ…………!
そう思っていると山猿は何をとち狂ったのか、四人娘の方を見ていた
チャンスと思ったが、ちゃっかり片目はこちらの方をちゃんと監視していた
ええい、無駄に隙がない
そうしてチャンスを狙っていたら

「ほう、これは傑作じゃな。小僧の友達かな」

とにやにやした気持ち悪い笑顔でそう尋ねてきた
だから俺は反対の気持ちいい返事をした

「いや、残念ながら。一人はストーカーで、一人はレズで、一人は狸で、一人は変人だ。こんな個性的な友達は願い下げだ」

「「「「余りにも酷い評価(なの、よ、や)!!!」」」」

そんなことはない
俺はちゃんと見て評価している

「待ちなさい風雷!確かになのはとはやてとすずかの評価はそれでいいわ!でも私の評価はおかしいわ!!私は変人何て言われるほど高町症候群にやられてないわ!」

「ちょっと待って!その病名、既に受け入れられているの!?そしてアリサちゃんは友達をいとも簡単に捨てるの!!?」

「同感だよアリサちゃん!少なくともその意見はなのはちゃんとはやてちゃんにしか通じないよ!私は普通だもん!」

「ちょい待ちぃ、すずかちゃん!出会ってまだ一時間ぐらいしか経っていないのにその言い方は酷いんちゃうか!!それに私、人間やもん!!狸ちゃうもん!!」

「八神。それについては後でゆっくり『お話』をしよう。ついでに鏡を見せよう」

「ひど!!このメンバー、手加減ていう概念が存在しない!」

「「「「手加減なんてそんなもん、ドブに捨てたわ(よ)!!」」」」

「人間として終わってる!?」

「はっはっはっは、仲がいいのう」

うるせぇ、糞山猿
とっとと山に帰れ

「よし、儂はそこの御嬢さんたちと話したくなったぞ。というわけで小僧、あそこで売っているたい焼きを買ってこい」

などど明らか喧嘩を売っているとしか思えないセリフを言ってきやがる

「山猿………………ついに幼女まで……………」

「残念ながら儂の守備範囲はお前さんほど広くわないなぁ」

「おいこら山猿。いきなり事実を捏造するな。後ろからの冷たい目がストレスを増やす」

『年上で優しくて包容力があって家庭的でロングヘア巨乳』

「……………………………………………」

おかしい
何で俺の声が返事として返ってくるのだろうか
しかも何をふざけたことを言っているんだろう
一発この声の主をとっちめなければ

「自分で自分を殴るとは…………………マゾの所業じゃな」

「二つ聞きたいことがある。答えさせてやるから答えろ」

「何じゃ?クソ生意気な小僧。お前さんと違って寛大な儂が答えてやろう」

「一つ、その機械は何だろうか」

「何じゃ小僧。ボイスレコーダも知らんのか」

知っているけど理解したくなかっただけだ

「二つ目ーーーーーーその戯けた言葉は一体なんだ!」

「ふっ、お前さんをこの前鳩尾を四連打しておとした時に上手いこと寝言を言いそうだったから、少し『お前さんの好みは?』と聞いてみたら素直に答えてくれたぞ」

「馬鹿な!?俺の深層心理がそんなものを望んでいるなどとは!!」

「ふはははは。何ならもう一度流そうか。しかも今度はラジオをハッキングして全国に流れるようにして最後に小僧の住所をつけようではないか。あははははははははははははははははははははははははははははは!!!!」

「この山猿!拷問だけじゃ収まらないぞ!!」

「なにぃ?そんな口を聞いてもよいのか」

「くっ」

「わかったなら、とっとと買ってこい変態小僧」

「ちっくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

「はっはっは、行ってこーーい」

ちくしょう!!
この場合何を言っても負け犬の遠吠えだがそれでも言わなければ気が済まない

「山猿!!月のない夜は気をつけろ!!きっと釘バットを持って気絶させた後、リアルアリジゴクに手足を縛った後、放置してやる!!」

「それは負け犬の遠吠えというより殺人宣言じゃぞ」

山猿が人を自称するか!





「やれやれ、やっと行きおったの」

そうしてお爺さんはよっこらせと言ってベンチに座った
あの風雷をあんな風にパシらせることが出来るなんて………………凄いお爺さん

「はい!お爺ちゃん、質問!!」

そう思っているとはやてが元気に手を挙げながらお爺さんに話しかけた
…………………度胸あるわね
人見知りだったんじゃなかったの
首をやれやれと振ってその話を聞いていると

「さっきの好みーーーーーーマジですか!!」

「たわべ!!」

こきょ
余りのあほらしさに首が嫌な音を……………
そんな私の事情を知らずに話は続く

「ああ、そんなものはーーーーー嘘じゃ」

「え!?でもさっきの声は………………」

「合成じゃ」

「無駄にハイテク技術!お爺さん器用ですね!」

「かっかっか、あの小僧をいじめるにはこのぐらいをやらないと駄目じゃぞ?昔は可愛かったんじゃがなぁ」

「へっ!そうだったんですか!?」

「そうじゃとも。-----出会い頭に思い切り後頭部を殴ったらそれきり動かなくなってのぅ。もしかしてヤッチャッタと思い急ぎ森に隠してたのぅ。サツが来ないかブルブルして布団に入っておったわ」

「ああ、つまり風雷の性格の歪みの原因はお爺さんにもあったのね………………」

「かっかっか、何を言う。あの小僧は出会った時からあんな風に歪んでおったぞ」

まぁ、少しはマシになりおったがとお爺さんは言ってたがそえよりも重要な事がある
この人は私達が知る前の風雷を知っている
なら、少しは話を聞くことが出来るかもしれない
思い立ったが吉日

「あの、その、出会った時の風雷ってどんなやつだったんですか?」

うんうんと周りも同意する
私の知り合いで一番複雑怪奇な知り合い
さっきまでのギャグシーンでも彼は結局一度も表情を変えなかった
そこまで行くともはや彼には感情というものが無いのではないかと思う

「ん?ああ、今よりも酷かったぞ。まるでこの世全てをどうでもいいと思っておったからのぅ。まぁ、それは今でもじゃが」

「そ、それは、やっぱりあの事件で……………」

事件?とはやてが首を傾げるがそんなことに構っている場合ではない

「ああ、何の事件があったが知んないがそれのせいなんじゃろうなぁ。あの小僧はこう言っておったな『地獄を味わって生きようとしたらその地獄に適応しただけだ』と」

何だそれは
つまり生きようと思っての行動が今でも続く呪いになっているという事だろうか
それじゃあんまりにも

「可哀想か」

考えていたことをお爺さんに言い当てられてつい肩を竦める

「それ、本人に言っちゃ駄目じゃぞ。あいつ同情されるのもするのも嫌らしいからのぅ」

それはまぁ、態度を見たらわかる
というか実例を見たことがある
一度あいつが生徒に家族の事でからかわれているのを見たことがある(本人は完璧に無視していたが)
すわ、止めてやろうと三人で止めようとしたら
先生が出てきて命知らずにもこう言ったのだ
「風雷君は家族を事故で失ってしまった可哀想な子供だからそんな風に言っちゃ駄目」と
その瞬間まったく反応していなかった風雷が反応した
表情は相変わらずの無表情
しかし瞳には隠す気もない怒気が
その後先生が一人減ったと言っとこう
何をしたのか知らないが
手加減を知らないやつなのだ

「そうじゃなぁ。あの小僧この前は儂が散歩で眠くなって眠っておったら儂を縛って森に放置よった。しかも周りには熊を呼ぶ餌を置いて」

「………………………………これってツッコむとこかなぁ」

「ええ。こう言うべきだと思うよーーーーー洒落になってないって」

「すずかちゃん………………遠慮がなくなってきたね」

「成程。類は友を呼ぶという事かの」

確かに

「わ、私は風雷君みたいにおかしくないよ!!」

「「「「…………………………うん、そうじゃな(そうね、そうやな、そうだね)」」」」

すずかがいじけた

「まぁ、それでも昔よりかはマシになったの。昔は声にも感情が籠ってなかったからのぁ」

まるで人形じゃった
そう呟くお爺さんには気のせいか悲しみが含まれていた

「あの、お爺さん」

なのはが何だか聞きた気な様子だ

「何だい、栗色のお嬢ちゃん」

栗色のお嬢ちゃん…………………凄い名前
なのはは無視したようだ
この子も逞しくなっちゃって

「その、何で慧君と仲良くしようと思ったんですか?」

「ん?本人から聞いておらんのか?」

「ええと。何だか『その顔気に入らん』とか言って、えと。----コミュニケーションをしたとか」

「言葉を選ばんでもいいぞ」

なのはも口が達者になったわね
誰の影響かしら
………………………………………………………………………………

「あ、アリサちゃん?どうしてそんなに拳を熱く握りしめてんの?」

「ふふふ、どうしたのはやて?そんな赤ずきんみたいな質問をして。ただ私はこんなにもみんなを汚した風雷を原形がなくなるぐらい殴ろうと決心しただけよ」

「ああ!アリサちゃんは暴力的な意味で高町症候群にかかってんのやな!」

失礼ね
私はなのは達と違ってどノーマルよ
でも確かに何でだろう
みんなも疑問に思う
まさか本当に顔が気に入らないでけでここまでするとは思えないからである
ところが

「しかし儂の理由はそれだけじゃぞ?」

「へ?じゃ、じゃあ本当に顔が気に入らないだけで?」

「応とも。あやつが余りにも無表情過ぎるからのーーーーーだからからかってやろうとしただけじゃ」

「-----あ」

呟いたのはなのはか。それともすずかか、はやてか。もしかしたら私かもしれない
疑問は一瞬で氷解した
簡単な事だ
この人もこの人なりに彼を心配していたのだ
……………方法は明らか間違ってるけど
あの無表情の彼を
感情を意地でも出さない彼を
本人は俺は感情はないとアピールしているつもりのようだけどみんなそんなわけないとちゃんと理解している
大体感情がないなら友達じゃないと嫌がることも出来ないでしょーが
意外と抜けている奴なのである
はぁ、まったく

不器用なやつ

その後、風雷はたい焼き(わさび味)を思い切りお爺さんの顔にぶつけ、そのまま乱闘になった
私の心配を返せと思いを乗せてドロップキックを二人にやったら一撃で気を失ってしまった
みんなの私を見る視線に恐怖があった気がする
気のせいだと思いたい
理不尽よーーーーーーー!!

あとがき
勝手にすずかをこんな扱いにしてすずかファンの人申し訳ない
どうか寛大な心でお許しを
次はまさしくそのすずか編にしようと思っています
ついでにすいません
西尾維新のネタをパクッテしまいました
作者のネタ不足故です



[27393] 第八話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/05/09 18:02

ようやく高町家の呪縛から逃れることが出来て幸せをこの上なく満喫することが出きる平日
ああ、俺はいつもこんなに幸せだったのかと適当に感想を抱く
学校があれほど恋しいと思ったことはなかったなぁ
どうやら俺は地獄とはかなり縁があるらしい
皮肉………………というわけではないか
まぁ、別にどうでもいいけど
そういうわけで今回は何とびっくり!

あの高町達から逃げることが出来たのだ!

今回は悪魔が余りにも俺を哀れに思ったのかバニングスと月村は早めに帰っていたのだ
そうなると敵は高町ただ一人
逃げるのはたやすい
ようやく日頃の行いが報われた感じがした
今は今日の食材を買った帰りなのである
しかもタイムセールス
タイムセールスになる度に思う
あのおばちゃんどもは人間の皮を被った鬼神なのではないかと思う
さっきまでの攻防を少し思い出す

「やいやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁい!!そこんガキぃ!!その卵寄越せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「アヘッド、アヘッド!!獲物(食材)を刈り尽くせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「ガンボー!!ガンボー!!ガンボー!!」

「家計の遣り繰りしてる小学生舐めんやないでーーーーーーーーー!!!!」

「邪魔するものはまとめて蹴散らしてやらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「負けてらんないのよーーーーーーーーーーー!!あんた達にぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「待ってろよーーーーーーーーーー!!俺のカワイ子ちゃん(お肉)!!!たっぷり愛し合おうぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

「OKフ○ッキンシープ(文字道り羊の肉)。たっぷり憐れんでやるからよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

んんん?何か変なものが記憶に混じっているなぁ
ちゃんと消去しとかなくてわな

とまぁ、こんな感じの地獄絵図
あれ?
俺の行く先々が全部地獄に見えるのは被害妄想だろうか?

……………………………………………………

思考を一時停止した
こういう時は無心でいるべきだと経験で覚えた
覚えたくもなかったが
いらない経験ばかり覚えていくのは何でだろう?
………………止めよう
これじゃあ無限ループだ
こんなことは気にせず家に帰って飯を作ろう
そう思っていると気が楽になってきた
思い立ったが吉日
少々危険だが裏道を通って帰ろう
そう思い所謂、路地裏というところを歩き回り帰宅を急ぐ
ほんの数分歩く
そしてようやく路地裏の出口が見えてきた
気分のせいか、心なし出口の外は明るく感じる
ここから後3~4分歩けば自宅だ
今日は奮発してキムチ鍋だ
さぁー、とっとと帰るぞーと意気込んで出口から一歩出る
すると次の光景は

幼女誘拐であった
しかも見覚えのある金髪つり目と清楚そうなお嬢様風黒髪ロングヘアーの
俺の人生はいつもこんなんだ




いきなりのことだった
唐突の事だった
前触れとかはなかった
別に今日は何の変哲もない一日だった
普通に朝起きて
普通に朝食を食べて
普通に学校に行き
普通に授業を受け
普通に友達と喋り
普通に稽古を受けに行った
どこにも特別なことはなかった
なのに今起こっていることは特別というより異常な出来事
私とすずかを誘拐しようとしているということ
稽古を終えて私たちは迎えを待っている時だった
いきなり目の前に車が止まり、スーツ姿の人二人がが出てきて私達を捕まえたのだ
余りの出来事に一瞬心臓が止まったかもしれない
しかしそこは素晴らしき神秘な人間の構造
状況を完璧に理解…………………は出来なかったが自分がすることは直ぐに理解した

この人達から逃げないとーーーー不味いということを

「いや……………離しなさいよ!!」

「は、離して!!」

私とすずかは逃げ出そうともがいた
当然だ
このままいけば何があるか
想像出来ないことがここまで恐ろしいとは知らなかった
ただ私達は我武者羅に暴れた
しかし現実は非常だ
如何せん
女の子、しかも子供の私達が成人男性の筋力に勝てるはずがなかった

「おとなしくしろ!このガキ共が……………!」

「きゃっ!」

「すずか!!」

私達が暴れたからか
さっきまでよりも酷い扱いをしてくる
すずかのあの綺麗な黒髪が引っ張られる
それで私の沸点は臨界点を軽く突破した

「ちょっとあんた達!私の友達に何すんのよ!許さないわよ!」

第三者から見たら何を言っているんだろうと言われる発言だろう
何せ私達はこんな風に逆らえないのに許さないなど言っているのだ
しかし私は至って真面目だ
私は髪を見ての通り日本人とアメリカ人のハーフだ
この髪のせいでとは言いたくはないがそれで長い間友達が出来ず、ひねていた
すずかとの出会いもかなり最悪だっただろう
私はすずかにいきなりいたずらをしようとしていたのだ
そこになのはが入り色々あって今では親友といってもいいぐらいの仲になった
二人には言ってないが私は本当に二人には感謝している
今まで友達が出来ず一人で寂しかった
それを二人が救ってくれた
大袈裟ではない
何よりも大切で何よりも誇らしい友達だ
その大切な友達がこんな酷い目にあっているのだ
例え場違いだろうと何だろうと私は吠える

私の友達にその汚らわしい手で触るなと

しかし返ってきた反応は予想とは違った
てっきり怒ってくるかと思った
しかし返ってきたのは

嘲笑だった

こんな状況なのに困惑してしまう
何だろうか、友情を笑われたのかと頭が勝手に思考する
答えがわからないまま彼らが勝手に喋りだした

「はっ、素晴らしい友情ですね。こういう時は私達はその友情に涙するべきなのかな?」

ふざけた言い方だった
敬語を使っているが敬意はまったく込められていない
ただの見下しだ

「うっさいわね!!私達を離しなさい!ただじゃおかないわよ!!」

これは嘘ではない
何せすずかの姉の恋人恭也さんがいるのだから
正式名称は知らないけど確か御神流というのを修めている人だ
少しなのはやすずかと一緒に試しに訓練を見てみたけど凄すぎて何をやってるのかさっぱりわからなかった
そして忍さんがすずかや私の危機に気づいたら当然恭也さんに繋がる
そうなったらこんな奴らはちょちょいのちょいだろう

「アリサちゃん…………その言葉は多分だけど死語じゃない?」

「こんな時に何ツッコんでんのよ!!」

ええい、このシリアスシーンに!
一体誰の影響……………考えるまでもないので考えなかった
というか考えたくなかった

「ということで私達を離しといたほうが賢明よ!!」

「くくく、そうですか。そいつは大変ですね」

どうやらこいつらにはただの冗談を言っていると思われたようだ
嘲笑は耳にこびり付いてうっとおしい

「ははは、それにしてもマンガみたいな友情ですねぇ」

「何ですって!!」

「いえいえ、褒めているのですよ。-----これで彼女が人間だったら素晴らしいのですけどねぇ」

「------は?」

何を言っているのかさっぱりだった
彼女が人間だったら?
すずかのこと?
何を言っているんだろう
何処から見てもすずかは人間ではないか
もしかして二次元と現実を区別できていない可哀想なイタイ大人だろうか

「残念ながら可哀想なでもイタイ大人でもないのですよ」

私が言うよりも早く返事が返ってきた
どうやらこういう反応を予測していたらしい
もう一人の男も車の中に入りながら嗤っているのがわかる

「やはり喋っておりませんでしたか。まぁ、それは当然ですよね。話したら化け物扱いですものね」

「はぁ!?何言ってんのよ!すずかはどう見ても人間じゃない!すずか、言ってやりなさい!この現実と妄想を区別できない馬鹿達に私はあんた達と違って立派な人間だって!!」

そうすずかに一喝した
しかし答えは返ってこなかった
沈黙だった
顔を俯けて表情が読み取れなかった
まるでそう

真実であることを悟られないように

「嘘……でしょう、すずか?」

すずかが人ではない?
そんなはずがない
だってこんなにも私達と一緒なのに
思考が纏まらない
纏めようとするけど空回ってばっかり
いつもの私とは明らか違う
私はこんなにも頭が悪かったかと思ってしまう

「さて、お友達の相互理解も終わったところなので、そろそろ連れて行くとするか」

はっと再び現実を認識する
そういえば誘拐されそうになっていたのであった
再び暴れるがびくともしない
そんなことをしていると車の後部座席のドアが開けられる
本能的に理解した
このままあのドアの中に入って行ったら最悪なことが起こるかもしれないと
すずかもそれを理解したのかさっきよりも暴れる
しかし無駄だった

「ああもう、とっとと縛って向こうに連れて行くぞ」

苛立った口調で車からロープを出してくる
怯えで何も言えない
さっきまでの威勢はどこに消えたのだろうじゃ
それを相手もわかったのか
気持ち悪い笑顔を浮かべ

「残念だったな。恨むならそこのお嬢さんをうらみゃ!!!」

キーーーンという音がしたような気がした
いきなり変な風に声を出したと思ったらさっきまであんなに私達を離さなかった手が簡単に離された
いきなりのことなので着地することが出来ずに尻餅をついてしまった

「「きゃっ!!」」

本当に何が起こったのだろうか
お尻の痛みを気にしつつさっきまで私を捕まえていた男の方にすずかと同じタイミングで振り返った
そこにはさっきまでのスーツ姿の男が立っていた
たださっきまでと違うのは顔が痛みに引き攣っているのと

え~と、股間の間に足が
簡単に言うとえ~と男の急所を思い切り蹴っている足が

暫く男は硬直していた
というか硬直するしか出来なかったのだろう
すると後ろから男の急所を蹴っていた足が下された
と思いきや
再び思い切り蹴った

「たびゃん!!」

憐れな叫びが再び響く
しかし蹴っている奴は容赦なかった
それから何回も蹴った
ドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドスドス
その度に気持ち悪い悲鳴を男はあげていた
20回、いや25回ぐらい蹴られたらようやく倒れた
そしてようやく男の急所を連続で蹴っていたのかが誰だかわかった

「慧君!!?」

「風雷(外道)!!?」

「待てや、バニングス」

ちっ、かっこの中まで読むなんて……………じゃなくて!
こんなところでボケている暇なんてなかった
私の馬鹿!
そうしていると車の中にいたもう一人の男がドアを開けた
それと同時に風雷は何かを投げた
私はこう見えても運動神経は良い方なので何が投げられたかを確認することが出来た
見えたものは赤いもの
ああ、確かあれは食べると辛い味がする不思議な食べ物
その名も

キムチ!!

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!目が目がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「二度ネタよ!!」

「アリサちゃん!落ち着いて!言ってもあの人には通じない!!」

わかってるわよ!
でも言わなければ伝わらないじゃない!

「落ち着けバニングス。とりあえず逃げるぞ」

そう言ってこいつかこんな時でも無表情だった
しかもこいつキムチで目が潰れている奴にも急所蹴りをやっていた
小声で「再起不能決定だな」とか呟やいていた
手加減を知らない男
風雷慧
恐ろしい奴………………
そして私達の手を引いて路地裏に駆け込んだ

「て、ちょ、ちょっと!一人で走れるわよ!」

「そ、そうだよ!」

そうお互い抗議していると風雷は振り返らずに返事してきた

「その震えた足でか?」

「な、何言ってんのよ!べ、別に震えてなんか………………」

震えていた
隠しようがないくらい震えていた
全然気づかなかった
自覚した今でも全然感じれない
それでもしっかり震えていた
その震えの名を私は知っている

恐れだ

仕方がないと事情を知っている人間はみんなそう言うだろう
まだ小学校一年生になったばかりの子供なのだ
精神年齢は他の子供達よりも遥かに高いとはいってもだ
むしろあれだけの啖呵を言ったのだ
褒められはすれ責められはしない
誰も彼女の事を臆病とは言わないだろう
むしろ勇敢と称えるだろう
しかしそんな言葉は今の私には通じないだろう
見ればすずかもそうだった

ああ、私達はこんなにも怖い目にあったんだと自覚した

そう思っているといきなり風雷が止まった
いきなりだったので風雷の背中に当たった

「な、何よ!いきなり…………」

「そ、そうだよ………………」

怒鳴る私達の声に力が籠っていないことがわかる
すると風雷が振り返った

「「???」」

私達はいきなりだがはてな顔になっていただろう
何故かというと珍しくこの無表情男が表情は変えなくても困惑しているというか言うべきかどうか迷っている雰囲気が伝わってきたのだから
それもはっきりと

「あー、バニングスと月村」

風雷は振り返らずに喋りかけてきた
何だか歯切れが悪い
一体何を言うつもりなのだろうか

「いいか。ここには今誰もいないし、誰も見ていない。あいつらも多分撒いた」

「「うん」」

というかいつの間にかそこまで走っていたのか
そういえば結構疲れている
でも本当に何が言いたいのだろうか
遠回り過ぎる

「え~と、だからな」

「あーーー!もうじれったい!何が言いたいのよ!!」

「まぁ、つまりな」

ようやく本題のようだ
こいつのことだ。どうせ下らないことだろうと思った
しかし今日は予想外の事ばかり起きる日のようだ
まさかこいつが

「例えば二人の女の子が泣いたとしても誰も見ないのではないかなー」

こんな人を気遣うようなセリフを言うなんて

「「……………………あ………」」

不意打ちだった
下らないことを言うと思っていたから
こいつが他人を気にするとは思っていなかったから
だから私とすずかは簡単に涙を流した
しかし目の前の背中に見られるのが恥ずかしかったから私達は咄嗟に彼の背中にしがみついた
身長は私達とそこまで変わらないのに何故だか知らないが大きく感じる
そんな背中だった
彼はそのままの状態でいて私達がしがみついても気にしなかった
私は久々にわんわん泣いた
すずかもわんわん泣いた
彼は黙ったままでいてくれた
それが嬉しくて更に泣いた
久しぶりの大泣きだった
結局泣き止むのに15分ぐらいかかってしまった
風雷はそのままずっと黙って背中を貸してくれた

「じゃあ、警察に行った方がいいか」

「そうね。その方がいいわね」

風雷は号泣したことについてはまるで無かったかのようにしてくれる
それが有り難かった
はぁ、パパとママにも電話しなきゃ
そう計画していたら

「待って!!」

すずかが今まで見たことがないくらいの真面目な顔と真面目な口調で叫んだ
思わず風雷と同時に振り向く

「お願い……………このまま私の家に来てくれない?…………」

すずかは何かを決意したような顔で私達を見ていた
私達から目を逸らさずじっと

「理由は?と聞くのは無粋なんだろうな」

風雷はもう悟りきったような顔(とは言っても無表情だが。こいつの隠している表情を見て私がそう判断しているのだ)ですずかを見ている
相も変わらず無表情で

「うん……………話すよ………全部
何でこんな目にあったのかも
私が何を隠しているかも………………全部話すよ」

私達は黙って頷くしかなかった
風雷は知らないけど、私はすずかの覚悟に圧倒されたからだと思う
さっきあの男達が言っていたすずかの秘密の一端
それを知られるのをすずかはかなり嫌がっていた
それを自ら話すと言うのだ
さっきあの男はそれを知ったら普通に暮らせないみたいな言い方を言っていた
つまりだ
すずかはそうなっても構わないと決意したのだ
例え嫌われても、軽蔑されても、拒絶されても
話すと決意してくれたのだ
その覚悟を決めたすずかは心なしかいつもよりも綺麗に見えた
静かで、ひっそりしているがしかし明確に光っている
そう
まるで月のように
何だか悔しいけど負けた気がした
人間としても
女としても
でも、とても清々しい
何でかなんて決まってる
私達に秘密を話してもいいと決意してくれた
つまりそれだけ私達を信頼してくれたという事なのだ
余りの嬉しさにまた泣くかと思った
でも今度は意地でも泣かない
それはそうだ
だってすずかがこんなにも良い少女になったのだ
ならば私も張り合わなきゃ駄目でしょう
それでこそ

友達というものなんだから

今日という日は特別な一日になるようだ
そう私は予感ではなく
完璧に確信した



あとがき
まだ読みにくいということですが今度はどこらへんを改行するべきなんでしょうか
あんまり開けてたら文面が汚くならないでしょうか
あ、あと、まったくルビとかフォトがわかりません
見てもさっぱりです
これが作者の限界か……………
言っていて泣けてきました



[27393] 第九話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/05/12 16:27
あの幼女拉致集団を撒いて二時間
ようやく話が始まりそうだ
今は月村が提案したとおりに月村邸
初めてきたが噂通り豪邸だった
別にどうでもいいけど
あ、こんな所に高そうな壺が……………

「風雷君?まさか盗もうっとか思ってないよね」

「いや、一生借りようと………………」

「ねぇ、知ってる?この家には猫がたくさんいること」

「ん?ああ、さっきから鳴き声がうるさいよな。それで?」

「その猫の中に猫の大好物を体に巻きつけて叩き込むよ」

「わぁ、僕、凄い金持ちになった気分(棒読み)」

「…………………プライドはないの?というかシリアスな雰囲気に入るとみんなが予想しているのにその予想を裏切るな!!」

「大丈夫。アリサちゃんも忍ちゃんから見たら十分コミカルよ」

「………………………………………ついていけん」

「…………………………私もです」

「わ、私もです」

今ここに集まっているのは俺、バニングス、月村、月村姉、恭也さん、え~と、さっき紹介してもらった月村メイドと月村ドジッ子メイド

………………………………………………個性豊かなメンバーだ

とてもじゃないが個性が薄い俺は混ざれない

「風雷?私、今あなたが嘘をついた気がするんだけど」

「いや、人間はなかなか現実には勝てんなと改めて実感しただけだ」

「…………………そういう思考に到った経緯がわからない…………」

気にするな
お前はそのままでいい
俺を面白がせる面白キャラで

「…………………ねぇ、本題に入っていい?」

月村姉が何だか泣きそうだ
泣けばいいのに
間違えた
泣いて詫びればいいのに

「……………………ドサド」

呟きは無視した

「えー、ゴホン」

わざとらしい咳払いでようやく本題に入った

「まずは言わせてね。すずかを助けてくれて本当にありがとう」

「俺からも言わせてくれ。ありがとう」

「うん、私も。風雷君、ありがとう」

「そういえば私も。ありがと」

と言って忍さんと恭也さんというかその場にいた全員が頭を下げた
調子が狂う
風雷慧はこんな風に誰かにお礼を言われるような人物ではないのに

「別にいいですよ。たまたま帰り道に二人が拉致られそうになったのを目撃した。つまり偶然です。お礼を言われるようなことはしていません」

「あれ?風雷。照れてる?」

「照れてません」

バニングスが面白いものを見たみたいになっているが今度は意識的に無視する

「で、手早く『本題』というのにいってくれませんか」

その瞬間
少し和んでいた空気は一気に緊張した
月村だけではない
月村姉や恭也さん、バニングスもだ
はぁ、面倒だな
どうやら余程の事情のようだ

「………………それは「待って」すずか?」

月村姉が話している途中に月村が強い意志を感じる声で遮る

「私が話すよ」

「すずか……………でも」

「いいの、お姉ちゃん。-----信じてるから」

「………………………そう。じゃあ、私から言う事はないかな」

「うんーーーーーありがとう」

そこまで月村姉と話し合い改めてこちらに振り返ってきた

「何度も言うようだけど巻き込んでごめんね」

「だーかーら、すずかのせいじゃないって!」

「俺はキムチ鍋の材料を弁償してくれたがはっ」

「風雷。もうギャグシーンはいいから真面目な話をしようね?」

「ごめん、アリサちゃん。それ私のセリフ」

「いいから話を進めなさい!」

「は、はい!(あれ?何で私が怒られてるのだろ?)」

再び真面目な空気を取り戻す
いちいちこんな風に空気を取り戻さないといけないとは難儀だね

「……………………二人とも聞いたよね?私が人間じゃないって」

「…………………ええ、聞いたわ。でも、すずかはーー」

「ごめん。アリサちゃん。最後まで話させて。ね。」

「…………………わかったわ。ーーーーーー続けて」

「うん」

返事をし、そして月村は瞳を閉じ、深呼吸をし出した
気持ちを落ち着けようと
覚悟を決めようと
他者を信じようと
1分くらい時間が経っただろうか
ようやく月村は瞳を開けた

「その通りなの。私はーーーー吸血鬼なんだ。夜の一族っていうね」

「もしもし病院ですか。急患ーー」

がしっ(携帯を奪われた音)
ぐしゃ(携帯を握力だけで潰された音)

「風雷君。-------私は本気だよ」

「ああ、確かにーーーー本気(殺る気)だな」

ちょっとした場を和ますジョークなのに
ん?おやおや、どうして俺をそんな白い目で見るのだろう
俺の素晴らしさに気づいたかね?

「吸血鬼って……………あれは伝説上の生き物じゃあ……………」

覚悟はしていたようだがバニングスも驚きを隠せないようだ
それはそうだろう
吸血鬼は存在しない架空の生き物
それが今の人間の当たり前に思っている常識だ
そんな常識が出来たのは簡単だ
まず、そんな存在を見た人間がいないからだ
昔の伝説っていうのは簡単に言えば昔の人間が証明できなかったことを人間ではない生き物がやったのだとか、呪いのせいだとか、神が怒ったんだとか。そうやって無理矢理こじつけたものだからだ
証拠がなければ存在しないと同義
のはずなのだが

「証拠ならあるよ」

そう言い彼女はこちらを見た
………………ん?
何か違和感がある
ほんの些細な事なのだが、しかし、いつもの月村とは違うところが

「すずか………………目が…………」

バニングスに言われて気づいた
そう目だ
いつもは鴉の濡れ場色をしている月村の瞳が

今は血のようなアカに………………

瞬間

地獄に立つ悪魔を想像する

月村の瞳よりも禍々しく、しかし美しいあの血のようではなく、血塗られた魔の瞳を………………

バチィ!!と頭の中で派手なスパーク(痛み)が炸裂する
しかし意識的に無理矢理表には出さない
いつものことだ
自身の体の制御には長けている
そうでなくてはいけない

「…………………これでわかったかな?私が人間じゃないっていう事が。一応言っておくけどカラーコンタクトとかじゃないから」

「ちっ」

先回りされた

「だからね。あの人が言っていたことは間違ってないの。ううん、事実なの。だって私」

化け物だから

そう言い悲しそうに笑う彼女

だから俺は即座に行った

「へぇ、で、それで?」

「「「「「「え?」」」」」」

「いや、だから吸血鬼でした。で、そんだけ?」

「そ、そんだけって、充分だと思うんだけど」

「何だ。そんなどうでもいいことだったのかよ。拍子抜けだなぁ」

「だ、だから、充分に驚くことだと思うんだけど。だ、だってクラスメイトが化け物だったんだよ?」

はぁ、まずはそこからか

「もしかして月村。お前ーーーー肉体が人とは違うから私は化け物だとか思ってないだろうな?」

「え?」

違うの?って感じで首を傾げられた
見れば周りもそうだ
なんだなんだ
どの人も認識不足だなぁ

「じゃあ問題。ここにただ思いのまま殺人を繰り返す人と何もかもを潰せるけど何も潰したくないという人ではない鬼がいました。さて、この場合どちらが化け物扱いされるでしょう?人ではあるがまるで鬼のように人を殺す殺人鬼か。人ではないけど何も壊したくないと主張する人らしい鬼か」

「そ、そんなの………………」

そこで口が止まる
当然だろう
わざとそういう問題にしたのだ
自分を投影させるように
まぁ、誰でもわかると思うけど

「で、でも、もしかして鬼はいきなり心変わりして人を壊すかもしれないでしょう!!だったらどっちでも同じだよ!」

確かにその通り
どんなものだって絶対に変わらないとは言えない
例えば優しかった人間がある日を境に残酷な人間になるなんてよくあることだ

例えばそう俺とか……………

「………………お前はそれが一番怖いのか?」

「……………そうだよ。私はそれが怖い。いつも仲良くしてくれているみんな、大好きなみんな。感謝なんて言葉じゃ飽き足りないくらい感謝しているよ。でもね、もしかしたら私は急にみんなの血を吸いたくなるかもしれないんだよ?血を吸うことに快楽を覚えるかもしれないんだよ?もしかしたらその結果」

殺してしまうかもしれないんだよ

「!!そ、そんなことーー」

「あるんだよ!アリサちゃん!勿論、お姉ちゃんみたいに上手くいく可能性もあるよ…………………でも、もし最悪の可能性になったらどうするの?そんなことになったら私耐えられない。ううん、耐えたくない。それならいっそ壊れたい。でも私はみんなと一緒にいたい。………………ねぇ、私」

どうすればいいの?

そう言いついに顔を伏せた
誰にも顔を見られたくないというように
誰も何も言えなかった
バニングスは勿論、家族である月村姉も
当たり前だ
月村が言っていることが正しいなら月村姉は月村にとって眩しいくらいのハッピーエンドをした人だ
どんなことがあったかは知らない
奇跡みたいなことがあったのだろう
そういうのが積み重なって今の月村姉がいるんだろう
月村の羨望の対象として
その本人がここで生半可な励ましなんかしてもそんなのただの嫌味にしかならない
だから彼女は黙るしかない
手の平の皮膚が破れるくらい手を握りしめながら
ふぅ
別に月村がどうなろうとぶっちゃけたところどうでもいいと思うがそれでは

俺の『契約』が果たせない

ならば動こう
俺の『名』にかけて

「つまり、お前はみんなと一緒にいたい。だがもしかしたら自分がいつか心無い化け物になるかもしれないのが怖い。そういうことだな」

「…………………そうだよ」

「ならば話は簡単だ。お前が化け物になったらーーーーー俺が殺す。それで問題はない」

またもや沈黙が下りた
今度はさっきのポカーンとした沈黙ではない
もっと重苦しい空気
そうーーーー怒りだ

「それはどういうこと?風雷君」

さっきまでの態度はまるで幻だったかのように溢れんばかりの怒気を俺にぶつけてくる
否、ここまで来ればもはや殺意だ
それほどまでにも月村姉は怒っていた
俺がたやすく月村を殺すと言ったからか
それとも妹が殺されるかもしれないと思ったからか
しかしここで引くわけにはいかない
ここで引いたらそれこそさっき言った言葉が嘘になってしまう

「どういうことって、言葉通りですが」

ぷちんと理性が千切れるような音が聞こえた気がした
勿論、幻聴だ
本当はガタン!と椅子を倒した音なのだから

「ふざけないで!私の大切な妹を…………」

「お姉ちゃん!待って!お願い、聞かせて!」

「!?すずか!何言ってるの!?この子は今ーーー」

唐突に月村姉の声が途切れる
見てしまったからだ
自分のたった一人の家族が

とても嬉しそうに笑っているのを

まやかしでも何でもない
現実だ
月村は笑っている
そうまるで
魔女に騙されて呪いをかけられたお姫様が呪いを解いてもらうかのようにだ
その笑顔のまま月村はこちらを見る

「いくつか聞いてもいい?」

「答えられるものなら」

「いつまで、それをやってくれるの?」

「お前が死ぬまでやってやろう。サーヴィスだ」

「じゃあもしも暴走しそうになってもまだ救える手があるかもしれない。でも、もしかしたら無理かもしれないという微妙な場合なら」

「その場合はお前が完璧な化け物になるまでは殺さないが、もし無理ならヤル」

「はっきり言って」

「……………お望みどおり、でははっきり言おう。どんな手段を使ってでもお前を殺そう。手加減なく、遠慮なく、容赦なく、無慈悲に、無意味に残酷なぐらいに残虐にお前を殺そう。だが安心しろ。俺はお前を殺した感触は忘れない。化け物になったお前を殺した感触ではない。人間である月村すずかを殺した感触を俺は覚えよう。だからーーーーお前は安心して友達と仲良くすればいい」

「…………………………」

そこで一端言葉が止まる
周りの雰囲気も張りつめた調子で止まる
それはそうだろう
自分の家族が、主人が、友達が
ただの少年から殺人宣言を受けているのだから
これで張りつめなければおかしいだろう
だがその雰囲気は破られた
月村の苦笑によって

「風雷君って前から思ってたけど本当にーーーーー素敵なほど残酷だね」

「それはどうもって言いたいが訂正してもらおうか。俺は無意味なくらい残酷なんだ」

偽悪趣味なんだね返されるがそこは無視する

くすくす笑いながら彼女は言葉を続ける

「うん、本当に残酷だねーーーーーそんな提案をされたら欲しくなるに決まってるよ。悪魔の契約よりも達が悪いよ」

悪魔
地獄で出会ったあの悪魔
それよりも達が悪いねぇ
それは洒落が聞いてる

「そうかい。でも、月村ーーーー決めるのはお前だぜ」

「そうだね。じゃあ言わせてもらおうかなーーーー答えは決まってるって」

それは契約の言葉だ
悪魔との契約の為の宣言だ
彼女はこちらに手を差し出した
まるで契約書に署名をするかのように
それに気づいたのか月村が面白そうに話す

「契約書が必要かな?残酷な悪魔さん」

「不要だね。悪魔との契約は魂に署名っていうのが相場だろう吸血鬼さん」

アハハハと月村は笑う
それは覚悟が決まった女の顔だ
このほんのちょっとの時間で月村は素敵な女になった
女の子とは強いな
俺が『敬意』を表するぐらい
悪書をし、そして契約の言葉は終了する

「改めてよろしく風雷君」

「そうだな。『すずか』」

まともや時が止まる
咲○さんでもいるのかしら
見れば月村が顔を赤くしながら慌ててる

「え!ちょ、ちょっと待って!?ままままま、さかの不意打ち!?私こういう時何をすればいいの!?」

「すずか。笑えばいいと思うよ」

「あ、ありがとう!お姉ちゃん!アドバイスをくれて…………………駄目!こんな時に相手の顔なんて見れないよ!」

「初々しくていいわね~。そしてすずか、さっきまでのシリアスムードを返しなさい」

「バニングスよ。後半の方だけマジトーンで話すな。メイドさんが怖がってるぞ」

「………………………………………………」

ガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガスガス

「な、何だぁ!バニングスがいきなり壁に向かって物凄いパンチを連続で放ってる……………!」

「……………………(慧よ。それはすずかちゃんは名前で呼ばれたのに自分が言われてないのが悔しいからだ)」

「………………はぁ、怒るべきか、悲しむべきか、喜ぶべきか。困る展開だよ」

「そうよ、その話よ」

いきなり会話を戻される

「まぁ、一応言っとくけど私はすずかが吸血鬼だろうが蚊だろうが気にしないからね」

「アリサちゃん、それは侮辱してるの?それとも遠まわしに喧嘩を売ってるの?」

「茶々を入れずに黙って聞きなさい!だからすずかはいつものメンバーの中では一番影が薄いのよ!」

「最近のアリサちゃんは理不尽だよ!あと、人が気にしていることを簡単に指摘しないで!」

「失礼ね!私の体の半分は寛大で出来てるわ!そしてそう思うなら改善しなさい!私を見習って」

「残り半分は容赦無用だな。そしてすずか、バニングスを見習うのは危険だ。見習うんなら俺にしとけ」

「どっちも見習いたくないよ!!」

「「その言葉、遺言ととってもいいな(わね)」」

「くっ、い、いいよ!いつまでも二人になんか負けてらんないんだから!これでも吸血鬼なんだから!」

「「よくぞ言った!では存分にごうも……………いじめてやる!」」

「どっちにしろ本心を隠せてない!?」

そう言って軽い乱闘になる
それを見ていた周りの大人グループ(高校生が入っているが)は苦笑しながらその光景を見ている
張りつめた雰囲気は終わった
ようやくただの日常になった
そう思っていた時に

「「「「「「「!!!」」」」」」」

いきなり電気が消えた
唐突な事なのでみんな反応が出来なかったが俺と恭也さんは反応した
二人で同時に別々の窓のカーテンを開けた
よく見たらもう外は真っ暗だ
しかし、いくら真っ暗でも相手が隠れていなければ意味がない
その闇に紛れて動いている者がいた
その姿はどこかの暗殺者ですかといいたくなるような服装をした明らか物騒な集団であった
この場面でこのタイミング
間違いないだろう
夕方の奴らと同業だろう
強硬策に出たという感じか
どうやらまだまだ帰れないらしい
やっかいな契約をしてしまったかなと少し後悔という程ではないがまぁ、自分でやったのだからこの後悔はただの八つ当たりだな
まぁ、いい
夜はまだ始まったばかりだからな
それにさっかくの悪魔と吸血鬼が契約した晩なんだ
これだけでは味気ない
彩りに赤色が絶対的に足りない
それに、圧倒的なーーー
そこまで考えて自分の物騒な思考に気づいた
あれ、俺ってこんなに好戦的だったっけ?
何だか今日の俺のテンションはおかしい
いつもはこう
はぁ、また面倒なことがっていうキャラではなかったか
まぁ、それこそ今はどうでもいいことだが
まぁ、とりあえず後ろで呆けている人たちに一言言って目を覚まさせるか

「どうやら、大量の招かれざる客が厚かましい事に最高級のもてなしを要求してるようですよ」

その時
その場にいる誰もが気が付かなかったことがある
今のに即座に反応した風雷慧や高町恭也でさえ気づかなかったことが
声が発せられたのだ
だがおかしいことにその声は誰にも届かなかった
否、誰も聞けていなかった
それは確かに声だったが音ではなかったのだ
では、それでは声ではないではないかと言われそうだが、そういうものであると無理矢理納得するしかないのだろう
それはもし聞けていたらみんなは女の人の声だと判断しただろう
『人』かどうかは別として
『それ』は誰にも聞かれない言葉でこう呟いていた

足りない、まだ足りない

ただそれだけを繰り返し呟いてた


あとがき
申し訳ない
完璧にすずか嬢の性格が………………!
と、とりあえずこういったシリアス以外は出来るだけ原作に近づける気です
……………………多分
とはいえようやく次はバトルに行けそうです(魔法じゃないですけど)
初めての事なのでどうかご容赦を
今回はほんのちょっと今のところ出番がないキャラを出しました
というか何度も言いますが本当にタグが使えない!
作者は馬鹿の子です
はっ、ということはタグを使える人は天才か!
新しい事実と心理を発見した気分です






[27393] 第十話
Name: 悪役◆8e496d6a ID:2d3d82d8
Date: 2011/05/14 13:21
「一体どういうこと……………!」

「わかりません。しかし忍お嬢様、今はそんなことを考えている場合ではーーー」

「くっ、ええ、そうねノエル。今は何とかして逃げなきゃ………………」

この会話からわかるように今は非常事態
そう今日の夕方に襲ってきた人達が集団で襲ってきたのだ
まだ生き残っている監視カメラの映像からすると20人くらいいるらしい
そう頭の中の冷静な部分がそう思考しながら、私は別の事を考える

……………………そんな、どうして?
今までこんなことなかったのに?

そう今までこんなことは一度もなかったのだ
そういう事が起きそうだとか
ちょっとした脅迫だとか
嫌がらせとかなら今まで散々受けていた(私は直接は見ていないが)
なのに今日に限ってこんなことが起きた
どれだけ思考してもわからない
契機がわからない
私が馬鹿だからだろうか?
それとも私が子供だからか
思考が駄目な方向に無限ループしそうになる
その時現実に呼び戻す彼の声を聴く

「とりあえず、まず深呼吸してください。焦っていたら最悪なタイミングでミスを起こすかもしれませんよ」

こんな状態でも相変わらずの無表情の彼
言葉も冷静そのものだ
何と言うか修羅場慣れしているという感じがしてしまう
勿論、そんなことはないのだろうが
ただ単に物凄く冷静に見えるからだろう
だがそれでも、こんな場面で冷静になれるという事が凄い事だろう
見たらいつも気丈なアリサちゃんが震えているのがわかる
かく言う私もそうだ
さっきの覚悟は友達を手にかけるぐらいなら死ぬというそういう覚悟はした
が、これとそれは別だ
ただ殺される覚悟なんてしていない
というかしたくもない
その覚悟をするという事はいつどんな時でも死を受け入れるという事ではないか
そんなの耐えられない
耐えられるわけがない

「くっ、駄目です!裏口にも侵入者が………………!」

「そんな……………………」

「ご都合主義に頼ってみますが、何か秘密の隠し通路というのはないのですか?」

「残念ながらないわ。予算があったなら考えていたけどね」

「…………………………予算があったらしていたのか忍」

「そうだ!あれは…………………………くっ、駄目だわ。対恭也用に作ったトラップは電力がなくなっているから作動しなくなってるか……………………」

「忍!お前は一応恋人に対して何故そんなものを用意する!?」

「…………………………俺たちはそんな危ない道を通ってきていたのか」

あれ?
今は危険な状態なんだよね?

「さて、漫才は一端切り上げましょうか」

「そうだな」

「同感ですね」

「「余裕あるね(わね)!!」」

思わずアリサちゃんとユニゾンする
このとてもシリアスな時にこんな漫才をするなんて
この三人は何という大物なのだろうか
しかし、返ってきた返事は全然予想と違っていた
お姉ちゃんはいきなり疲労と諦めを含んだ笑みを見せ

「余裕?そんなもんなんてないわよ。強いて言うなら空元気ね」
と言った

「「え?」」

思わず二人で呆ける
だって何だか凄い余裕ていう感じが出てたし、それにだって
それって、逃げられないっていう事を認めるっていう事ではないのか

「え?う、嘘だよね、お姉ちゃん………………?」

「…………………………ここまで来て嘘は言わないわ」

「だ、だって……………そ、そうだ!恭也さんがいるじゃない!だから大丈夫ですよね?恭也さん?」

「…………………………………………」

何でこんな時に沈黙するのだろうか
ここは「ああ、任せてくれ」ていう場面だろう
ああ、きっと緊張で喉が枯れたのかもしれない
それはそうだ
あんな大人数を相手に戦うんだ
いくら恭也さんでも緊張するに決まっている
でも大丈夫
恭也さんは強いからきっと

「……………………勝てる、自身はある。だが…………………全員を守れる自信がない……………………!」

勝手な思い込みなのはわかっている
八つ当たりなのもわかっている
それでも思うことは止めれなかった

裏切られた、と

「どうして………………どうしてなの?やっとこれからだという時に、やっと私として生きられると思ったところなんだよ。なのに何で……………………何でこんなことになるの?友達と一緒にいたいということは悪い事なの?普通に生きたいっていうのは悪い事なの?願っちゃいけない事なの?」

「そんなわけーーー」

「じゃあ、どうしてこうなるの!!」

感情が制御できない
制御できない感情は瞳からも零れる
余りにも熱く、冷たいそれ
でも、今はうっとおしいだけだった
ついに両膝がかくんと折れて床につく
もう立ち上がる力もなかった

「結局…………………………そういうことなんだね」

私達(吸血鬼)には希望も未来もなく
ただ絶望だけ
それしかないのだ
ああ、やっと自分が望んだものが得れると思っていたのに
みんなも苦痛を我慢しているような顔になっている
でも駄目なのだろう
例え生き残れても

全員が生き残れないのなら意味がない

それは私が望んだ未来ではないのだ

そう思っていたら

「茶番は終わりましたか?」

聞きなれた声
さっき私に希望を見せてくれた無表情の彼
でも、いくら彼でももう希望は見せられないだろう
そう思うと彼の毒舌も愉快な気分で聞けた
だから次の言葉には驚いた
心底

「どうやら皆さんは頭の回転が止まっているようなので、俺が作戦を考えてもいいですか?」

は?とみんなが同じ言葉を同時に放つ
作戦?
何の事だ
もしかしてこの状態を打破する何かを考えたという事なのだろうか
そんなの無理だろう
だってたかがこの人数
しかも戦えるのは恭也さんとノエルさんとファリンだけ(二人の事はまだ説明してないけど)
いくら三人が人間離れしていてもあれだけの人数にみんなを守れるとは思えない
お姉ちゃんもそう思ったのか

「あのね、風雷君?状況はわかっている?」

「状況はわかっていますが、状態がわかっていませんね。出来れば情報が欲しいですね」

「っ!だからその状況が不味いって言ってんの!」

「確かに不味いですねーーーーで?」

「でって、だからーーー」

「悪いですけどもう諦めているならとっとと死んでくれませんか?邪魔ですし」

「なっ!?」

余りの物言い
流石のお姉ちゃんも声を荒げている
だが風雷君は相変わらずの無表情
つまりだ
彼はこの状況にまったく動じていない
不利とは思っているかもしれないが不安には思ってないのかもしれない
でも、もしかしたら状況を完璧に理解してないだけかもしれない
ただ希望を見たいだけかもしれない
でも、そうだとしても
彼はこう言ってるのだ

俺は諦めないぞ、と

「何ですか?俺はこう言っているんでーーー生き残る覚悟がないのなら邪魔だから消えて下さい。足手まといですと。わかりますか?今のところ最低すずかとバニングスは俺が出来る限り何とかしないといけないんですよ。二人は生きたいと思っているようですから。だから足手纏いがいたら邪魔なんですよ」

突然出た私達の名前に驚く

こんな状況で
こんな私を

それでも助けてくれるのか

何故という思いがある
今まで彼は私達に友達になった覚えはないと散々言ってきた
おそらく嘘ではない
気にしてないのはなのはちゃんぐらいだろう
いや、気にしていないのではなく気づいてないのかもしれない
孤独を望む彼
救いを拒絶する彼
馴れ合いなど御免
それが彼だと私は認識していた
ならば何故こんなことを
そう問いかけると

「ああ、確かにその通りだ。でもな、俺は約束は簡単に破るけどーーーー契約を破るわけにはいかない」

契約
さっき誓ったあれのことか
でも、その契約内容に私を守ってというのはなかったはずだが

「何言ってんだ。契約しただろう。もしお前を殺すというのならそれは俺だと」

「あーーー」

余りにも遠まわしな言い方
口八丁の彼らしい言い方
何て不器用さ
こんな時でも彼らしい
不謹慎だけど嬉しい
みんなにはばれているけど私は彼が好きなのだ
少しませているかもしれないけど
別に特別な出来事はなかった
というかさっきまでは好意ではなかったと思う
だって前まではこういう打算があったのだ

彼ならば私が吸血鬼とかそういうのを『まったく』気にしないのではないかと
否、無視するのではないかと思っていたのだ

何でかはわからない
ただ言うならば女の勘というものだろうか
彼の無表情を超えた無表情を見ていたらそう思えてきたのである
だから好意ではなかったのだと思う
……………………さっきまでは
今まで色んな慰めを聞いてきた
気にするなとか
いつかわかってくれる人が現れるとか
そんな慰め
しかし、ぶっちゃけて言うと少しうんざりする慰めだった
しかし彼は違った
そもそも彼は慰める以前に同情すらしていなかったと思う
そういえばあのお爺さんも言っていた

『あいつ同情されるのもするのも嫌いらしいからのぅ』

本当にそうだ
でも嬉しかった
同情しなかった
つまりそれはーーーーー私と対等に接してくれたという事だ
それが私にとってどれだけ嬉しい事かーーーー
だからこの問いに答える言葉は一言で十分だった

「うん………………そうだねーーーー生きよう」

今はただそれだけを

「……………………あーーーーーもう!これじゃあ私がただの弱虫になっているだけじゃない!!」

バン!と勢いよく机を叩き、立ち上がる
そこにはさっきまでの弱気はない
そこにはただ生きてやろうじゃないかという意気込みだけがある
さっきまでの絶望しかない空間が跡形もなく消え去った
今はその絶望に抗ってやろうじゃないかという意思がみんなからありありと感じられる
凄い………………
ほんの少し彼が話しただけで場の雰囲気が変わった
さっきまでこの世の終わりみたいな雰囲気だったのに、今は運命に抗う戦場みたいな雰囲気だ
これは一種の奇跡ではないのだろうか
生きようと思う
錯覚かもしれない
現実を認識しきれてないのかもしれない
やけになっただけなのかもしれない
それでも生きよう
現実は非常かもしれない
ハッピーエンドはないかもしれない
でも、足掻くのはやめない
最後まで生き汚く、地べたを這いずり回って、泥水を啜ってでも生きよう
彼流にいえばそれが私自身への『契約』だ
決戦はもうすぐ
それまでに色々と作戦を決めないといけないらしい
緊張感が極限にまで高まる
そんな雰囲気に

「あっ、月村姉。これが終わったらあいつらから俺が失ったキムチ鍋の材料代。奪ってもいいですか?」
「あんた!空気を読みなさい!!」

この時ばかりは誰も止めなかった
逆にみんなでお皿を彼に投げつけた




「----というわけよ」

「なるほど」

とりあえず今は作戦会議
不幸中の幸いにもまだ相手が攻めてくるには時間がかかるらしい
何故かと聞けば

「聞きたい?」

と満面の笑みで返されたので丁重に辞退した
……………………絶対トラップだな
電気を使ったトラップだけではなかったのか
よく俺達は無事にここまで辿り着けたものだ
まぁ、そんな事を言っても精々足止めくらいだろう
数を少しでも減らしてくれてればいいが高望みはしない
今はただこちらの戦力と相手の戦力とこちらが使えるものと相手に使えるものを聞いていたのだ
まともに戦える人は恭也さん、月村メイド、月村ドジッ子メイド(何でも自動人形とかいうものらしいが、別にどうでもいい)
相手は案の定武装しているらしい
具体的なものはわからないが銃器と無線がを使っているのは確認されているらしい
使えるものは正直ほとんどないらしい
電気が止められたせいで結構なトラップ類が使えなくなり(それでもまだあるらしい)、武器などは恭也さんの剣術に使う得物とメイド二人が使う得物と強いて言うなら包丁とかそういう一般家庭にあるものらしい
逆に相手に使えるものーーーー相手の弱みとかはないのか
つまり政治的(少しおかしいが、まぁ、いいだろう)に何とかするものはないのかというとこの案件で生き残って、相手を生け捕りにして証拠とすれば出来ると
つまり現時点ではないということだ
ついでに何故狙われているのかと聞くと多分私、もしくはすずかの吸血鬼としての価値を欲しているのだという
詳しいことは教えてくれなかったが深入りする気はない
狙われているのが誰かがわかったのだから十分に価値がある情報だ

「…………………………難しいな」

「そうですね………………逃げようにも全ての出口はどうやら見張りがたってります。突破は時間があれば可能ですが、直ぐに応援が来るでしょう。そうなるとみなさんを守るのが…………………」

確かに
状況は絶望的だ
武器もあちらの方が断然有利
それに何より数が違う
人海戦術が最高の策とは言わないがそれでも有効な策であることは事実
事実ここまで追い込まれている
ここにいる三人は最高クラスの実力者らしいが、しかしだ
足手纏いが多すぎる
月村姉にすずか、バニングス
そして認めたくはないが俺だ
この三人だけなら辛勝になるだろうけども勝利ぐらいは出来るかもしれないらしい

無様な足枷になるとは………………最悪だな

今は自己嫌悪をしても意味がない
今はただ敵に打ち勝つ事だけを考えよう
勝利条件の為の障害をまず考える
一つはさっきも言ったように数
これに関しては言うまでもない
二つ目は武器
ナイフとかだけならまだしも銃器が相手ならお手上げだ
それも相手は多数
常人が立ち向かおうとしたらまず1秒で挽肉だ
そして三つ目
これが一番のネックかもしれない
それは
無線機
かなり邪魔だ
こちらの勝利条件を考えれば俺達は別に無理して相手をしなくてもいいのだ
全員が逃げられば完全勝利だ
こちらの戦力を一点集中して包囲網を突破してそのまま逃走
自分達はその間近くに隠れていればいい
それで勝利なのだ
だがそれで障害になるのが無線機なのだ
それで応援を呼ばれたらそれでおじゃんだ
最悪、隠れている俺達が見つかったらもう立て直しは効かない
そのままバッドエンドだ
そして残念な事に現実にはリセットボタンはないのだ
やり直しは効かない
一度失敗したらそこで終了

さて……………どうする

あれだけ啖呵を吐いてそれはないだろうとか思う人がいると思うが、はっきり言って勝利条件の達成は難しい
他のみんなもいろいろ考えているようだが、表情を見たら芳しくはないようだ
どうするかと思い何気なく天井を見る
そしてそこにあるものを見た

…………………………使えるな





「みなさん。策を一つ思いつきました」

いきなり慧君がそんなことをのたまった

「え………………って本当!?」

忍が驚き焦った声で慧君に答えを求める

「ええ、本当です。ただしいくつか必要なものと必要な準備が入ります」

「それは?」

「ええまずーーーーー」

彼は必要なものを忍に淡々と説明する
彼は未だに無表情
一体どれだけの胆力があればこんなことが出来るのか
精神でいえば彼は人類最強ではないのだろうか
少なくとも俺よりは強い
弱音を吐いた俺よりは

「ーーーーええ、一応それだけの道具も技術は突貫工事になるわね。」

「十分です。それだけ出来ればお釣りが返ってきます。後は具体的な作戦ですがーーー」

そこまで言うと彼は何故か俺の方を見た

何だ……………?

彼は一度年齢には似合わないため息をつき

「さっき恭也さん、貴方は弱音を吐きましたね」

こちらの痛いところを突いてきた

「…………………………ああ」

否定はできない
肯定するしかない
俺は弱音を吐いた
御神の剣士が
守ることを信条とした御神の剣士が
守れないかもしれないと言ったのだ
これを弱音と言わずに何という
今の俺はただの……………弱者だ

「しかし、今からの戦いにそんな弱音を吐くような心のまま着いてきてもらうわけには行けません。ということで貴方のプライドを刺激しましょう」

「………………なに?」

俺の……………プライド?

「今回の作戦で貴方はこういう立場になります。貴方が俺達すべての命を守る立場に」

「は?」

間抜けな声が出た
今この少年は何と言った
俺がここにいるみんなの命を守る立場になると言ったのか
こんな俺に
一度は無理だと弱音を吐いた俺に
それでも

守らせてくれるというのか!

「勿論、貴方が失敗したら全員の命が危うくなりますね。ようは一番大事な役割です。失敗は許されません。だからーー」

その信念を貫けますか

ああ、なるほど
すずかちゃんが彼を悪魔と言うわけだ
まるで彼の言葉は悪魔の誘惑だ
自身が望んでいる物を示され、そして叶えることが出来ると掲示する
これを悪魔と言わず何という

見事に俺が望んだものを見せつける……………!

恭也は自覚はしていないが顔の表情が変わる
それは獰猛な笑顔だ
ただの獰猛な笑顔ではない
己の命を懸けたものを貫くことが出来るという戦士の貌だ
そこまで風雷慧は見届け頷いた

「OK。それでいいです。頼みますよ、御神の剣士。貴方の剣で俺達の障害を薙ぎ払ってください」

「ーーー心得た………………!」




剣士は闘志を奮い立たせた
後は準備をするだけだな
そこらへんは月村姉とかに任せよう
今言う事は宣言だ
これからの戦いに向けての

「では、今宵の演劇(戦い)のキャストが決まりましたね。敵役はあの見るからも雑魚そうな馬鹿共と、味方役は月村姉、月村メイド、月村ドジッ子メイドとバニングスとすずか。主役は恭也さんと僭越ながら俺、風雷慧が行こうか」

みんなが一瞬動きを止めるが無視

「では話しましょうかーーーー勝利への脚本を。とその前にすずか」

「え?あ、うん、なに?」

いきなり呼ばれたのが意外だったのか少し慌てたがすぐさま答えを返す
別に簡単な要求をするだけなのに
だから慌てず彼女に頼んだ

「すずか。お前の服が必要だから速攻で脱げ」

「………………………………………」

答えは速攻だった
腰が入ったビンタという


あとがき
申し訳ない
次はバトルと言っていたのに
次こそはバトルなので
本当ですよ!
そしてすいません!
終わりのクロニクルの芸風を勝手に獲ってしまって!!


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