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[27671] 【黒歴史現代ファンタジー】悪魔の箱庭、少女の剣【習作・オリジナル】タイトル何度か変更しています。
Name: 薩摩半紙◆103677cc ID:1c9b971c
Date: 2011/05/14 21:53
注意
・ド素人の初投稿です。中学時代の妄想を再構成して作られたモノです。
・この作品には、TS、憑依、能力バトル、厨二病、ややグロイ表現etc...が含まれる予定です。苦手な方は戻るを押して、他の作者様の素晴らしい作品をお楽しみください。
・内容がスカスカです。頭を空っぽにしてご覧ください。よろしければ、ここはこうしろとか、ここもっと詳しくとか、適切な文量とか感想で教えていただけると幸いです。とくに内容の無い感想や一言感想、批評も大歓迎です。
・タイトルが結構コロコロとかわっています。初回は、【ネタ】地雷要素の闇鍋どうぞ【習作?】その次が、剣の少女と閉ざされた町、というタイトルでした。今までタイトルでさがしていた方がおられたのなら、すいませんでした。
・以上に納得いただけたら、スクロールしてプロローグへどうぞ。










――――――――どうして、こんなことになってるんだろう。

疑問が心の中から溢れてきては、消える。

例えば、自分が死んだこと。治療法のない病に罹るのは、偶然だったのか?死に至るまでの恐怖と絶望は、忘れることができない。

例えば、二度目の人生。気づけば三歳の女児だったのは、偶然だったのか?今に至るまでの12年間は、苦痛と退屈に満ちていた。


――――疑問は尽きない。


例えば、崩壊した町。まるで、滲み出るかの様に出現した、町を覆う虹色の壁と化け物達。

例えば、己の握る大剣。己の身長ほどあるソレは、化け物の前で二度目の死に怯えていた時に突如として現れた。

例えば――――


疑問は、尽きない。しかし、答えを求める気は無かった。ソレを知っても、何も出来る気がしないから。


異端視されることを恐れ、個性を殺し続けたこの12年が、僕からすっかりと自信というモノを奪い去ってしまっていた。


――――それでも。自信が無くたって、やらなきゃいけないこともあるのだ。






「やあああああああああああっ!!!!」


気合の声と共に振るわれた横薙ぎの一閃は、正確に化け物の胴を捉えて食い千切った。鋸状の刃が臓腑に食い込み、血飛沫を撒き散らす。その勢いのまま、振り子の様に剣の遠心力を使い、返り血を避けるために右に跳躍する。

――――斬ッ!!

跳んだ先にいた化け物も、反撃の隙を与えずに唐竹割りの一撃で真っ二つに。切れ味と腕力に頼った力任せの剣閃は、しかして素人には成しえない鮮やかさで敵を屠って見せた。剣を握ると力が湧きあがり、体が軽くなる。余計なものを体の外へ出してるから、軽いんじゃないか。僕は益体のない思考をそこで打ち切る。


戦うことへの恐怖は無い。何せ今、文字通り己の内には恐怖が存在しないからだ。そいつは刃の形をとって、僕の手に握られているから。着地を決めた後、一つため息を吐いて己の手元を見た。


その血塗れの禍々しい形状の刃には少し反りが入っており、鍔と同化したナックルガードが手元に付いている。長大だが羽のように軽いこの剣は、恐怖の感情が実体化したもの、らしい。なぜそんなことがわかるのか。それは、初めてこの剣を握った時から聞こえてくる、ガイダンスのようなものの産物である。それは突然聞こえて突然消える、掴みどころのない亡霊のようなものだ。気味が悪いが、今までに与えられた情報に偽りは無かった。これからもそうだとは限らないが。


剣を振るって血糊を払うと、僕は再び歩みを進める。


いわく、剣は最も強い感情の結晶。その種類によって、形状が決まる。大剣は、恐怖の結晶。傷つけられる前に傷つけると言う、攻撃性の発露。精神の力を込めて振るえば、刃は閃光となりて汝の敵を屠らん。


それを聞いたときはなるほど、と関心したものだ。たしかに僕にはそう言ったところがある。それは人に打ち明けられぬ秘密に由来するものであり、それがばれてしまったらどうしようと言う、強迫観念を精製している僕の心が剣ならば、なるほどこのようにギザギザと歪んでいるのだろう。


いわく、剣はその性質により心に直結しており、もし折れることあらば、それは汝の心折れる時であろう。また、その心を満たしている精神の力が尽きれば、汝は二度と日の目を見ることはない。


つまり精神的に死ぬってことだろう。しかし、この場合、逆も考えられる。つまり、心が折れなければ、諦めなければ剣も折れないということだ。無茶な扱いをしても平気で答えてくれる半身。そう考えると、歪な刀身にも愛着が湧くというものだ。


つらつらと考え事をしている内に、目的地についていた。私立、桜見坂高校。今となっては、だったもの、と末尾につくが。少し古びた校舎の壁は、今や雲を突くほどの威容を誇り聳え建っている。


少し、友人のことを思い出した。今思えばあまり親しくはなかったのだろうが、それでもその他の有象無象にくらべれば、格段に親しかったと言える。速水、速水と呼んでくれた声を思い出し、ほんのちょっと元気がでた。飾見と、君嶋。今まではさん付けで苗字を呼んだことしかなかった相手。もし救えたのなら、名前で呼んでもらって、こっちも名前で呼ぶことにしよう。淡い希望を胸に、僕は校門を潜る。


絶対的に脱出を拒む魔の砦は、あっさりと僕を通し、あまつさえ歓迎の宴まで用意してくれていたらしい。校舎へ続く道には、名ももてぬ下級悪魔がいるわいるわ、ほぼ隙間なく立ち尽くし、こちらに眼の無い顔を向けている。好都合だ。宣戦布告はどうせなら――――


「派手に、行きましょう!!」


こんな時にまで、敬語みたいな口調になる。癖って簡単にぬけるもんじゃないな、なんて思いつつ、振りかぶって横一閃。風を巻き込み嵐と化した剣閃はあっさりと前列の四体を巻き込んで両断、肉塊へ変える。そのままくるりと回転し、袈裟斬り、横薙ぎ、跳躍、そして――――


「やああああああああ!!!!!!」


常人では到達しえぬ高さからの、打ち降ろしの一撃。景気よく空振るはずだったそれは、振るわれた刃から迸った閃光によって最高の一撃となった。吹き飛び、ただの血糊とかした悪魔どもの死体の上へ着地。精神力を消費したため荒い息を整えると、再び歩き出す。


「待っててください、今助けますから!!」


――――本当に出来るのか?心の中で鎌首をもたげる疑問を振り払い、僕は進む。その先にある、一筋の光を求めて。あの日のような平凡な日々を、取り戻すために。











あとがき

仮修正完了。よりファンタジーっぽく、中二成分を増加。魔法的エネルギーの要素を追加。それによる話の内容の変化はあまりなし。これから違いが出てくるものと思われます。



[27671] 第一話「恐怖、日常の崩壊」
Name: 薩摩半紙◆103677cc ID:1c9b971c
Date: 2011/05/13 20:11

速水清良は、幼少の頃から『普通』を絵に描いたような子供だった。少々荒っぽい言動をすることがあったが、それも年を重ねるにつれ無くなっていった。


彼女はとても普通だった。成績はいつも平均か少し上くらい。誰に対しても愛想がよく、しかし特定の友人とつるむことはない。スポーツも並程度。趣味は読書で物静かな性格、容姿は人よりよかったが、それでも十人並程度だ。周囲の人々は、彼女を没個性な人だと評価する。


――――それが、彼女の狙いであると知らずに。


そんな彼女だが、高校に入って一年もすると少し変化があった。とある2人の同級生と一緒にいるようになったのだ。と言っても別段、特別な理由があったわけではない。単に馬があったというだけの理由だった。






春も終わりかけ、もうすぐ夏が来るかもというところか。二階の窓から見下ろせば、校庭と校門と、青葉の茂る桜並木が見える。公立桜見坂高校は、自由な校風とそこそこな進学率が売りの歴史ある高校だ。ただ古いだけだ、と口さがない生徒もいるが、概ね在校生には人気のある学校である。


「では、今日のホームルームは終わりだ!もう一度言うが、最近は物騒だから早く帰るようにな!!君嶋、お前は特に注意するように!」


担任である鶴見先生の声が聞こえ、清良はふと目を開けた。うっかり寝ていたようで、周囲はすでに帰り支度をはじめていた。


「速水ぃ、また寝てたの?また読書で夜更かし?やめたほうがいいよ、ってあたしも人のこと言えないけどさ~」


またおもしろい本見っけてさ~、という声に顔を上げると、そこには飾見が立っていた。飾見美鳥。ポニーテールの茶髪に挑戦的な釣り目、いわゆる美少女である。性格は明るく運動が得意、勉学もそこそこ。趣味が同じで気があったのが交友の始まりだったか。


「おーい、聞いてる?てか、また君嶋が注意されてたね、あいつも懲りないよね~まったく」


やれやれ、なんて言いつつ首を竦めて見せる。が、その背後に――――


「誰が、なんだって?そこの風見鶏」


「いえっ、姉御、これはっ、ってか、風見鶏って呼ばないでって!!・・・あ、その、いっ、痛たたたたたたたたたたた・・・・・・!!!!」


風見鶏というのは、彼女の愛称だ。本人は否定しているが。その飾見は、首根っこを掴まれて猫のように持ち上げられている。内心またかと思いつつも、僕は制止の声を上げた。


「君嶋さん、その辺で許してあげたらどうです?」


彼女は少し間をおいてから、飾見を降ろした。飾見は降りたとたんに元気になって、君嶋を警戒していた。シャーだの、フシャーだの言っている。それを見下ろすスタイルのいい美女。


彼女は君嶋光。さる財閥のお嬢様で、見た目もド派手な美人。絹のように滑らかで白い肌。切れ長で物憂げな目線で周囲を眺め、緩い巻き毛の金髪を揺らして歩く様は、トップモデルの様だ。しかし――――


「ったく、だりーんだよ、あのクソ熱血教師・・・」


そう言いつつ、僕の机にどかっと座る彼女はまごうことなきヤンキーだった。あぐらをかきつつ懐にあったポッキリーを齧り、担任への文句を言っている。それに相槌を打つ僕と笑う飾見。奇妙な三人組だが、かれこれ一年の付き合いになる。それぞれがお互いに踏み込まず、踏み込ませない立ち位置が気に入り、出会って以来ずっとつるんでいる。


「にしても、鶴ちゃんの言ってた物騒って、何のこと?桜見町の近くで事件ってあった?」


飾見は不思議そうにしている。僕もそのことは気になっていた。近辺で何かあったとは思えない。桜見町は田舎町で、とても長閑なところだ。都市に近いところは住宅地になっていて、あとは田んぼか道路くらい。すると、君嶋が口を開いた。


「なんでも最近、深夜の道路で人の死体が見つかったらしいよ。その死体、奇妙な死に方をしてたんだってさ。」


君嶋は、まるで今日の夕飯の話題でもするかのごとく、さらっと嫌なことをいった。彼女はいつもローテンションだ。半開きの目はボーっとしていて妙な色香を漂わせている。


「奇妙な死に方って、なんですか?」


「まって!あたしが当ててあげるっ!!う~ん・・・わかった!被害者は両手が左手だった!!!!」


それはない。絶対ない。ありえない。


「なにバカいってんの・・・それ死に方じゃねーし。ガイシャはね、剣で斬られたような傷があったんだよ。このご時世に辻斬りとは、ずいぶんアナログなヤツもいたもんだ。」


なんと、人斬り以蔵かッ!!とか一人でやりはじめた飾見をよそに、僕は考える。


「なんで君嶋さんは、そのことを知ってるんです?」


かんたんなことさ、と彼女は前置きして


「ポリ公にパクられてた。署内で聞いたのさ。」


・・・・・・・・・・・・・・。物憂げな目の正体は、ただの寝不足だったようだ。あなた、前も補導されてませんでした?なんて聞ける勇気も無いので、黙ってることにした。そんなこんなで雑談を交わし、夕日が射し始める頃に帰るのだった。平凡で、しかし幸せな日常。深くない仲とはいえ、友人という存在は大切なものだ。機をみて、名前で呼んでくれるように頼んでみようか?そんなことを考えつつ、家路に着くのだった。


その日の帰り、僕は暗い夜道を急いでいた。帰り道で本を忘れたのを思いだしたのだ。結局本は見つかったモノの、時計をみれば午後8時を大きく過ぎていた。田舎の夜は早く、道にはあまり照明が無い。僕は君嶋の話を思い出して、背筋がぞっとした。すると、


――――――――ザッ・・・・・――――――――


妙な音が聞こえた。ドクリ、と心臓が波打つ。背後に気配。そして、一拍の間の後、


「ッ!!!!」


――――走る。



――――――走る。



――――――――走る!


息を荒げて必死に走るが、振り切れない。背後に足音。・・・足音!!


「ッ、クソッ!!」


とうとう運が尽きたのか、逃げ込んだ先は袋小路になっていた。意を決して、振り向く。すると、奇怪なモノがそこにいた。


身の丈は人間ほど、ヒト型で顔はつるりとまるく、口だけがある。全身が暗い緑で、手からは剣の刃の様な爪が出ている。・・・剣の、様な?


――――剣で斬られたような傷が・・・――――


理解した。そして、絶望した。化け物はジリジリと距離を詰めてきている。死ぬのか、また!!!!圧倒的な絶望と恐怖を、また味わうというのか!!!!!!!!


躰に恐怖が満ち、顔が引き攣る。化け物の振り上げた手が迫り・・・


「があああああああああああ!!!!!!!」


化け物の声かと思いきや、それは自分の喉から出たものであった。奇妙な、確信にも似た勘に従い両手を握ったまま突出して突進、視界の端にオーロラ、耳に地響き、頭上には巨大な満月。そして――――


――――救うのだ。抑止力となり、彼の者の野望を打ち砕くのだ!!




その場に満ちた爆発的な光の渦の中、声を聞いた気がした。











微修正完了。少々の加筆だけで、特に変更無し。



[27671] 第二話「顕現、非日常の開幕」
Name: 薩摩半紙◆103677cc ID:1c9b971c
Date: 2011/05/13 20:24

眩い紫電の閃光が、視界を染める。それは、咆哮と共に突き出された両手より現れた。化け物は突然の光に慄き怯んでいる。光の中に見える棒状の突起。確信に近い勘でそいつを握り、引き抜く!!


「ああああああああああ!!!!!!」


間髪いれずにそれを振りかぶり、縦一閃。まるで何も無い空間に打ち掛かったかのような手応え。一瞬の静寂。そして――――


どさり、と。真っ二つの化け物だったモノが地面に転がった時には、僕は荒い息を吐きながら座り込んでしまった。その場はまるで絵具をぶちまけたようなありさまだ。赤。紅。あか。気持ちが悪い。意識が遠のき、視界が狭くなる。そして――――



――――ブラックアウト。









――――ふと目を開ければ、そこは一面が真っ白だった。まるで、空想の中の死後の世界のよう。しかし、無機質なそれが病室の天井であることを、次第にピントが合ってきた目で感じ取る。まず、恐怖。ついで、驚愕。己を苛んでいた痛みが消え去り、はっきりと思考することができる。彼にしてみれば、それは驚嘆に値することだった。何せ彼は、不治の病で死ぬはずだったのだから。いや、死んでしまったのだから、と言う方が正しい。音が消え、視界が消え、甘い永遠の眠りに引き込まれる、命尽きるその時を確かに感じたのだ、彼は。




それからいくつかの時が過ぎた。彼は彼女になり、見知らぬ男女の娘として生活していた。両親と呼ぶべき人達、速水夫妻は娘が無事だったことをしきりに喜び、涙さえ流していた。なんでも、交通事故で意識不明の重体だったそうなのだ、彼等の娘、速水清良は。彼等の喜ぶ様を見て、中身が別人であるとは言いだせなかった。
そうして彼は彼女になり、『速水清良』となった。




さらにいくつかの時が過ぎる。小学校に入学した頃、彼女は苛立ちと孤独感に常に苛まれていた。それでも耐えた。対外的な一人称を私にし、言葉遣いの粗を悟らせないために敬語を使うようになった。勉学は平均をキープし、運動もあまり鍛えない。わざと要領が悪い選択をする、など。本人の必死の努力のおかげか、その奇怪な経歴による子供らしくない行動は薄れ、周囲に溶け込んでいった。




そうして、高校入学まで時は過ぎる。その頃には彼はすっかり彼女になり、演技力はなかなかのモノに成長していた。それを成長と言って良いのかは微妙なところだが。しかしそれらの表、つまり『はやみ きよら』という一個体が完成していく度に、裏面に位置する『彼』は薄れていく。孤独感はいよいよ増していった。両親をお母さん、お父さん、と素直に呼べるようになったのは最近のことだ。まだまだぎこちない親子の関係。友人はいない。深く付き合うようになって、疑心を抱かれるかもしれないから。女でもなく、子供でも無いと言う自覚。それが呼ぶ世間への怯え。だからこそ、飾見と君嶋と言う初めての友人は、たとえその関係が薄い氷の上にあるものだとしても、彼女にとって大切と言えるのだった。








目が、覚める。頭上には満月が輝き、オーロラの如く揺らめく虹色の、ドーム状の壁が空を覆っている。どうにも己の人生は数奇な運命に満ちているらしい。俯いて少し笑ってから、握りっぱなしの剣を支えに立ち上がり再び空を見る。


「制服、汚れちゃった・・・。」


呟きは風に掻き消され、意味を成さない。天蓋は変わらず奇妙な虹色を湛えており、強く非日常を感じる。もう一度呟く。


「どうしよう、クリーニングに出したら暫く着れないし・・・。」


そこでふと思考が、今の状況で学校がある訳が無いことに行き付いた。どうやらまだ頭が混乱しているらしい。翻っているスカートの裾を直し、剣を右手に持ち歩き出す。そこに、携帯の着信音が響いた。番号を見ると非通知だった。少し躊躇ってから、通話ボタンを押す。


「どうもォ、初めましてェ!?コンバンワぁ!!ごきげんようゥ!!!!」


うざい。耳障りな喋り方と合成音声に通話を切りたくなったが、その前に相手が気になることを言った。


「この町は今日からボクちんの町になりましたァ!!ミナサン、ソラヲミタカイぃ!?あの天蓋はボクちんの作品でねェ、この桜見町だけを覆いィ、世界から切り離しているのだァ!!!!!!イワユル、イセカイッテヤツサぁ!!!!」


どうやら犯人から不特定多数に向けての通話のようだ。この様子だと話しかけても無駄だろう。感情とは裏腹に冷静な思考を余所に、僕は耳を澄ませる。


「ボクちん天才!!カッコイイ!!最高!!エクセレント!!でもォ、このままじゃ困るって人もいるよねェ?ソンナヒトノタメニ、ビッグチャ~ンッスぅ!!ボクちんはァ、桜見坂高校を改造した、バベルの塔にいま~すゥ!!!!ココカラデタイナラぁ、サイジョウカイマデキテネぇ!!!ちなみにィ、桜見坂の生徒を閉じ込めてるのでェ、父兄の皆様および知り合いが桜見坂な人はァ、早く助けてあげてねェん!?バイバイ!!!!!!」


あっけない人質宣言。背筋がぞっとすると共に、疑問が浮かぶ。僕も桜見坂の生徒なのに、別段奇妙な所にいるわけでもない。もしかして電話のヤツは嘘をついたのだろうか。いや、話し方を見る限り、ヤツは自分のやったことを自慢げに喋るタイプだ。なら、本当かもしれない。しかし――――いったん思考を中断し、空を見る。馬鹿馬鹿しいほど大きな満月とオーロラ。それらは、夜を夜足らしめる暗闇をすっかり明るくしてしまっていた。


――――しかし。こんな現象を人知れず起こしてしまえるヤツがあっさりと犯行を自分の仕業と話し、自分の居場所を吐くだろうか?今の話は罠で、いや、しかし・・


思考は止まらず、しかし建設的な意見も出てこない。家に帰って様子を見ようか、と考えたが、人質のことを思い出し、足を止める。一瞬の躊躇い。そして、


「助けに、行かないと・・・!!」


駆け出した。しかし、その回答は決して友情からくるものでは無く。その回答は、依存と孤独から来ていた。手中の剣はいつのまにか消え、彼女の表情は未知への怯えと恐怖、繋がりを失うことへの恐怖に満ちていた。そんな彼女に、今度は電話を介さずに姿なき声が聞こえた。そいつは冷めた口調の合成音声で、人の気も知らずに剣の説明をはじめた。それを聞きつつ清良は走る。何よりもまず、己の孤独を埋めるために。異常の中に救いを求めて、少女は駆ける。










微修正完了。ガイダンスの存在を一文追加。あまり変化なし。



[27671] 第三話「激怒、反抗の刃」
Name: 薩摩半紙◆103677cc ID:1c9b971c
Date: 2011/05/13 21:12

目を覚ましたらそこは学校の教室で、ベッドで寝ていたはずの自分は制服のまま棒立ち。周囲には混乱した様子のクラスメートがいて、不安そうに騒ぎ立てている。奇妙だ。夢と言うにはリアル過ぎるし、現実と言うには突拍子が無い。君嶋光は不機嫌そうに周囲を睨み、それだけで光を中心にさっと円状の空間ができた。誰も好き好んで怒れる虎の前にでようとは思わない。しかし、無謀にもその場に踊り出る影一つ。


「あ、君嶋!!ねえ、これっていったいどーなってんの!?てか、速水は?」


あの娘、どこ探してもいないんだよねー。なんて言いつつ、飾見が寄ってくる。こいつは変わらないな、なんて思いつつこの状況も速水も知らん。と言っておいた。


――――速水。口中で声に出さず呟く。常に愛想笑いの臆病な友人を思い出し、ため息を一つ。どうやらあいつはいないらしい。逃げおおせたのか、それとも。


――――ポーン。


教室に備えつけてあるスピーカーから、音が響く。皆が静まりかえるなか、不愉快な合成音声はベラベラと一方的に自分の悪事を語り、一方的に放送を終えた。どうやら自分達は閉じ込められたらしい。周囲が阿鼻叫喚の様相を成しているなか、光の思考は冷静だった。しかし、その思考に音という形でノイズが入る。顔を上げ、ガラリと音を起てた教室の扉を見ると、一人の男子生徒が駆け出していた。


「こんなことあってたまるか!!!!俺は付き合ってられん、先に帰らせてもらう!!!!!」


そんなことをのたまいつつ走り去る背中。数十秒の後、彼の悲鳴が響き渡り、奇妙な静けさが教室に満ちた。目線を横に移すと、不安そうな飾見がこちらを見ていた。いつもは人間台風のようなこいつもさすがに不安らしい。光は口の端を吊り上げ目を細めると、飾見の頭を撫でた。驚いた顔の飾見を視界の隅に映しつつ、悠然と開きっぱなしの扉に歩みよる。それを見た、怯えた様子のクラスメイトが思わず声を掛けた。


「お、おい、君嶋、どこいくんだよ!今の悲鳴聞いたろ!?だったら――――


そこまで言って彼は言葉が出なくなった。振り返った光の目は、ただ一つの事実を語っていた。それすなわち――――


「トイレ行くんだよ、野暮なこと聞くもんじゃないよ。」


――――すなわち、邪魔したらお前もぶっ飛ばす。クルリと扉に向き直ると、あたしもついてく!などと言っている飾見を従えて教室を後にした。その顔に、危険な笑みを湛えたまま。君嶋光の嫌いなものは、他人に行動を制限されることと、安眠を妨害されることである。








「ねえ姉御、トイレ行くんじゃなかったの?」


飾見が不思議そうな顔で問いかけてきた。戦意を削がれ、おもわず半目になりながらうしろを向く。


「全部承知でついてきたんじゃなかったのかい?いいか、あたし達はこれから最上階へカチコミに行くんだよ。理解したか?」


えぇ~!!などと抗議の声が上がるが、どこ吹く風といった感じで階段を登る。2階から3階、3階から4階、4階から屋上へ――――


「何・・・?」


思わず声が漏れた。そこには、あるはずの無い5階が存在したのだ。しかも、よく見ると妙に広い。飾見の方もしきりに辺りを見渡しては不思議がっている。そこへ、物音が聞こえた。トーン、トーン、と足音の様な音。不審に思った二人は頷きあうと、階段近くの廊下の角に身を隠し、そっと覗きこんだ。そこに歩いていたのは、一見したところ人だった。両手からなにか長いものが出ていて、その先にはなにか大きなものが引きずられている。ふと、その正体に気づいた二人は息を呑んだ。


――――ズル、ズル、ズル。廊下に長い赤黒の線を引きながら、安蛍光灯の明かりに照らされているそれは、化け物とそれに殺されたであろう、さっき走り出て行った男子生徒だったものだ。自然と荒くなる息を堪えながらジリジリと階段の方へ下がる。飾見とアイコンタクトを交わし、一拍の後に駆け出した。足元のリノリウムがゴムの靴底に叩かれて大きな音を起てる。走る。走る。走る。いつのまにか1階まで降りてきており、飾見が玄関へ近づくのが見えた。背後には化け物が二匹。いつのまにか増えたらしい。舌打ちが漏れた。


「ダメ、開かない!!なんで、なんでよぉ!!!!この、このっ!!!!!」


飾見がでたらめに扉を叩き、はては体当たりまでかましているが、ガラスの扉には罅さえ入らない。振り向けばすぐそこまで化け物共が来ていた。理不尽な状況。迫る死の影。光の中には、とある一つの感情が渦巻いていた。それは純粋な、それでいて苛烈で暴力的な怒りの念。光は感情に身を委ね、拳を握ると眼前の敵めがけて一足跳びに踏み込んだ。そして――――


――――――――閃光。鮮烈な紅に照らされ、光は咆哮をあげた。


「おらあああああああ!!!!!!」


突き出された拳は刃となり、敵の顔面に突き刺さった。そのまま突進の勢いを殺さずに逆の手を横に一閃。鮮やかな斬撃は化け物を胴から真っ二つにした。そう、斬撃だ。光の両手には朱金に彩られた篭手が填められており、篭手に覆われた拳の先からは3、40cm程度の刃が飛び出ていた。パタとか、ジャマダハルとか言われる代物である。それに対して光は嫌に冷静だった。まるで先まで感じていた怒りが抜け落ちたかのようだ。美しいその顔には、薄っすらと酷薄な笑みが浮かんでいる。


「ジャアッ!!!」


残ったもう一匹の化け物が右の爪を袈裟に振るってくる。それに対して光は一歩踏み込んだ。喧嘩は基本ビビったら負けだ。勝つためには殴られる前に一回でも多く、


「だあっ!!!」


殴る!殴る!!殴る!!!


振るわれた拳は計三回、その全てが疾風の如く首、心臓、顔面と急所を捉えていた。崩れ落ちる化け物が死んだのを確認してから、光はその場にへたり込んだ。やけに疲労が溜まっている。わけのわからないことが多すぎる。腕についていた篭手が消えて、なぜか怒りが込み上げてきた。しかし、それより今は――――


「ちょ、ちょっと!君嶋、大丈夫?てかさっきのアレなに!?ぶわーって光ったと思ったら突然ブルース・リーみたいな動きしちゃってさ、てか死体グロッ!!ちょっと、笑ってないで答えてよ、君嶋ぁ!!」


――――今は、助かったことを素直に喜ぼう。


その後、試行錯誤の末に再び篭手を出すことに成功した二人は、あれだけ頑なに閉ざされていた扉をなんなく破り、脱出したのであった。外はまだ夜の帳に包まれていたが、妙に明るい。そんな校門までの道を二人で歩く。急に、飾見が口を開いた。


「ねえ君嶋、助けてくれてありがと。」


「ん?ああ、どーいたしまして。」


「この後どうする?」


「決まってる、速水捕まえてガッコーに戻る。そんでもって、最上階にいるっつー野郎の鼻っ柱をへし折るのさ。」


「あはは、それはいいけど速水は役にたたないと思うよ。あの娘気が弱いしね。」


「いや、あいつなかなか役にたつよ。やられる前にやるタイプのビビりだからね。」


そんな会話をしつつ、雲の代わりにオーロラの架る夜空を見上げる。異様にデカい月がみえたが、すでにそんなことには動じなくなっていた。明るいのなら、それでいい。


「ね、君嶋のこと、光って呼んでいい?そんでさ、速水のことも清良ってよんでやろーよ!!」


「かまわないけど。じゃああんたは美鳥でいい?それとも風見鶏がいい?」


名前の方でいいっつーの!!とか喚いている飾見、いや、美鳥をあしらいつつ、光は空を見る。なぜだか、悪くない気分だった。そしてふたりは、並んで門をくぐり、いままで中にいた奇怪な建物の全貌を暴いてやろうと思い振り返った。すると、そこには――――


「何ィ!?」


いましがたくぐった校門が見えたが、肝心の校舎が見当たらない。周囲を見渡し、振り返る。すると、そこには校舎があった。つまり、


「完璧に閉じ込められたか。やってくれるな・・・!!」


吐き捨てるような呟きはむなしく宙を舞って消える。夜はまだ、明けない。










微修正完了。内容を変更し、脱出を不可に。ssを書くのは難しく、予想以上に苦戦しています。最初からスケベ心をださずに、短編にしとけばよかったと思う今日この頃。少々迷走しつつも、初投稿初完結を成し遂げるためにがんばる所存です。では。



[27671] 第四話「異界、黒幕と過去と」
Name: 薩摩半紙◆103677cc ID:1c9b971c
Date: 2011/05/14 21:50



桜見町に、奇怪な塔と虹の天蓋、巨大な満月が出現してから数時間が経過した。
ライフラインが切断され、町の地形は変化し、人を容易く殺せる化け物が現れてからというものの、住人たちは混乱の中で次々と死んでいった。化け物の餌食になった者。人と人との争いで死んだ者。そして、絶望して自ら命を絶つ者。方法に違いはあれど、皆一様に希望を失い死に絶えた。そんな様子を、遥か上方から見下ろしている者がいた。


「ふむ、この分では剣格者の数はあまり多くなさそうだね。霊脈の通る土地であるからと期待したのだが。まあ、死に絶えた者の魂を回収するだけでも規定値を越えられそうだからよいがな。剣格者の魂なら、直のことよかったのだが・・・。」


暗い殺風景な部屋の中で、低く甘い響きの声が広がる。部屋にある物は、磨き抜かれた黒檀の椅子と、古ぼけた様子の大鏡だけで、それらが部屋の中央に向かい合って設置されている。椅子に腰かけている男以外に人影は無い。すると、再び声が響く。


「霊脈の影響でこの町は精神世界に位相が近いから、異界化するのにたいした労力は裂かなかったし、ここを異界への扉にするのもそう掛からないだろう。君が、協力してくれるのならな。」


声は、椅子の男からではなく、その前にある鏡から発せられていた。鏡は饒舌に喋り続ける。


「確かこの世界のこの国では、蠱毒といったかね?この町は、それに見立ててつくってある。町に渦巻く感情や死者の魂を糧に成長する、負の力の坩堝さ。そうして集めた力によって、精神世界と現実世界の位相を逆転し、私達精神生命体は君達の世界に出るというわけだ。どうだい?面白いだろう、君達人間が想像し、創造した『悪魔』という存在によって創造主たる君達が滅ぼされるのだからねぇ!」


愉快そうな口調で、悪魔は告げる。対して椅子の男は沈黙を保ったまま、微動だにしない。


「ふむ、喋りごたえがないな。これから『町単位から始めよう!!世界征服計画~如何にして私は天下を取るのか~』を聞かせてあげようというのに。・・・ああ、そういえば君は私と扉を封印するために精神を鏡に閉ざしたのだったか。道理で反応がないわけだ。失礼したね。」


鏡はのんきな口調で喋り続ける。どうやら元来独り言を好む性質らしい。


「いやあ、君が私の封印を解いたときは吃驚したよ。自分で封印しておいて自分で解くなんて、人間とはずいぶん奇矯な生き物だとね。あまつさえ、この私に契約を持ちかけるときた。時の流れは残酷だね、君の様な勇敢で強い男をこうも愚かで弱いものにするなんて。と、思ったよそのときは。でも、おかげで私は外に影響することができるようになった。感謝しているよ。だからこそ契約を果たしてあげようと思ったのに、また封印するとはね。しかし、ずいぶん弱くなったものじゃないか。やはり使わないと剣は錆びるものだよ。安穏として戦うことを忘れるからそうなるのさ。」


鏡は止まらずに喋り続ける。男は沈黙している。そんな中、ふいに鏡が喋るのをとめた。


「なあ、飾見青也。妻を失ったのがそんなに悲しかったのかい?悪魔に蘇生を頼むくらいに?君は――――む、穴が一つ閉じたな。下級悪魔を送りこむ穴を知っていて、かつ、穴を閉じることができる人物か・・・。どうも、君の元相棒が君の尻拭いをしてくれているようだよ?」


そういって、鏡に潜む悪魔は愉快そうに笑う。彼にとって、全てはただの遊戯であった。正の精神生命体である神どもは、自分達が世界に影響を与えるのを嫌って出てこない。あの引きこもりどもは、時折ふらふらと彷徨っている魂を異世界に送ったりする以外は、己の担当する世界の管理のために他の世界に干渉しない。それに、この世界の担当の神は大したことができるヤツじゃない。現に、予知の神を名乗っている癖に、今自分が仕出かしていることについて何もしてこなかった。これらを踏まえて、悪魔は驕っていた。神でさえ今の自分を止めることはできないと思っていた。以前の自分がたかが人間ごときに封印されたのは、何かの間違いだったのだとさえ思うくらいに増長していたのだ。しかし、忘れてはならない。いつの世も化け物を殺すのは人間なのだ。この世界で無敵であるが故に、彼はこの世界のモノでない魂を見落としていた。それは、後に大きな災厄となって、彼に降り注ぐことになる。








奇妙なほど広い道路を進み、十字路を通りかかる。右に進んで曲がり角を覗きこむと、また化け物を見つけた。思わずため息が漏れる。清良はこの数時間で、三回化け物と戦っていた。おかげでかなり疲労している。一体だけなら無傷で勝てるのだが、複数いるとそうもいかない。結果、細かい傷が体に残り、体力を奪っていった。スカートには縦に大きく裂け目が入り、上着のブレザーも右の袖が無い。その上全身が土や血で彩られ、凄まじい様子だった。結局、右の路地を行くのは諦めて真っ直ぐ進んだのだが、この選択がまずかった。


「ッ、だあああああああ!!!!」


跳びかかってくる化け物を迎え撃って、カウンター気味の横薙ぎを入れる。胴体が吹き飛んで散らばる死体を無視して、次の敵へ。


「やっ、せい!!・・・くっ、キリがありませんね!!」


先ほどの路地は、曲がったほうがよかったらしい。少し行ったところに、奇妙に大気が歪んでいるように見える場所を見つけたのだ。そこまではよかったのだが、なんだろうと近寄ってみたのが不味かった。そこから大量に化け物が出現したのだ。疲労しているところを囲まれ、逃げることもままならない状況に陥り、戦う破目に。今までに奮戦の結果五体を斬ったが、まだ周囲には十体以上が清良を囲むようにして存在している。そしてそれらの敵は、清良に一斉に跳びかかってきた。


「灼鉄の腕よ!その抱擁で、我らの敵を焼き尽くせぇ!!!!」


覚悟を決めて突っ込むべきか思考したところで、声が聞こえ、刹那の一拍を置いて、周囲が炎に包まれた。その後、化け物どもが灰になったところで唐突に炎が消える。そして、


「そこのお前、無事か!?って、速水じゃねーか!!?」


駆け寄ってきたのは、鶴見先生だった。しかも、剣を持っている。銀の刀身の根本に翡翠色の丸い宝石がはめ込んである見事な長剣。先ほど聞こえた声と現象の主は、どうやら先生だったらしい。ありがとうございます。と言いたかったが、どうやら限界らしい。緊張の糸が切れた瞬間、視界が急に狭くなっていき、


「おい、速水!しっかりしろ!!」


そんな声を聴きつつ、意識は遠くなっていく。そして――――


「おい!!・・・ったく、しかた無い。『穴』を閉じたら、店までつれてくか。」




――――フェードアウト。










あとがき

そんなワケで、最新話です。設定の放出を多めにしつつ大幅改定でなんとかここまできました。全体的に酷いですが、ご容赦を。あと、追加要素として、中二詠唱と魔法的現象を。こうなると能力が剣である必要無いですが、所詮、浅はかなヤツが書いた駄文ですので、生ぬるい目線をしつつお目こぼししていただければ。とは言え、面白いといっていただく努力はしたいと思っていますので、誤字脱字や矛盾の指摘やその他のアドバイス、それらとは関係ない感想や罵詈雑言、お待ちしております。では。


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