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14

 投稿者:出尾 龍児  投稿日:2000年 3月24日(金)23時49分45秒
  「ずいぶん、儲けたな~。客にチップをもらったら、隠さずに言うのだぞ」
鼻筋の通った切れ長の目をした宿主は、ナナの頭を細く白い指で優しく撫で、部屋を出て行く。
キッチェが入れ違いで入ってきた。
ナナは恐ろしくて、一言も言い返せもせずに立ち尽くしている。
宿主の指が美しいのは、自ら荒れ仕事をせずに裕福な暮らしをしているからだ。
それだけ多く、少女達から搾取している証でもある。
以前、2人の酔っ払った戦士達が店で暴れた時、体格では明らかに劣っているキャシャな宿主は
腰に装備しているプラチナソードで2人の首をはね、武具を換金した。腕も立つ。
少女達を抱くことはないが、事あるごとに平手打ちをし、ひと度我を見失うと手が付けられなかった。
宿には監禁役の男達が3人いるが、誰一人逆らう者など居はしないのだった。

銀貨を袋に入れている宿主を見ていたキッチェには、何があったのか察しがついていた。
ベットに新しいシーツを引いて、静かに出て行く。
ナナはキッチェの交換してくれたパリパリのシーツに、うつ伏せに倒れ込んだ。
毎度の事だ。涙ひとしずく出やしない。
「・・・・。」
もう一つの誰もいないベットを見つめている。
合い部屋の娘は、エイズという病にかかり宿から開放された。正確には追い出されたと言うべきか。
エイズは今だ治療法がなく、確実に死ぬ伝染病。
ピクシーナを出るには、エイズになるか、少女とは言えなくなる20歳まで搾取されるか、
300万Gの借金を返済するかの、いずれかしかない。
しかし20歳までエイズにかからないで済ます事など、実際には不可能だし
300万Gの返済は、余程の金持ちに魅入られなければ無理な金額だ。
当時、理力の杖2500G、吹雪の剣21000G、ドラゴンキラー15000G
旅に不可欠な強力な武器でさえも、その100分の1程度の金額で手に入る。
「(・・行こう。今夜。
船賃が足りなかったら、体を売りながらでも工面してやるわ
こんな所で死なないッ絶対抜けてやる。)」

キッチェは一日の仕事を終わらせ、やっと重い体を横にする事を許された。
眠りにつくのに5分とかからない。
≪ドタドタドタドタ≫「火事だ――っ」「風呂水だっ急げっ」
≪バンッ≫扉が乱暴に開き
「小僧っナナの部屋で火が出たっっおまえも水汲めっもたもたすんじゃネェぞ!」足早に出て行く。
「(ナナ・・)」ベットの壁に飾ってあるドライフラワーを見つめる。

「ハイ。出来た。
どう?いい臭いでしょ」ナナは客からもらった花束を、乾燥させてキッチェの寝床に飾り付けてくれた。
何とも言えない爽やかな香りにつつまれている。
「(ナナさんって可愛くて優しい。こんな女の子と結婚したいな・・)」
キッチェは、まだ10歳。でも、そんなささやかな願いさえも見果てぬ夢でしかない。
普通なら「勇者になるんだ」とか「大きな船を持って世界を回るんだ」とか理想が先走っている年頃なのに。
「すごいやっナナさん。ねぇ、ねぇなんて花なの?」
「ウフフフフっ」ナナはキッチェの反応に大満足だ。
「これ高いのよ。
ルラムーン草の仲間の、月呼び菜。付き(運)を呼ぶとも言われる縁起のいい花なんだから。
花言葉は――ウフフ、ないしょ!」
「なんだよォっ教えてよ」
「知りたい? どうしても?」
「うん。うんっ知りたいっ」
「ね、キッチェは大人になったら何になりたい?」
「? 大人に?」
毎日をやり過ごすのが精一杯で、そんな先の事まで夢みている余裕などなかった。
水汲みや買出しに行く時に見かける旅人を見ながら、その姿を自分に当てはめて
空想にほくそえんだりする程度だった。
「ボクはね・・ボクは素敵なお嫁さんと一緒に世界を旅する商人になりたい。」
自分でも意外な答えが突いて出た。
「え~っ素敵なお嫁さん~っ
あたしじゃないんだぁ。フ~ン
いいもんねェ~」
「あぁ、あのねっナナがお嫁さんがいいよっホントだよっ」
「ま、調子いいんだから。考えといたげる」
「ね、ね、ナナさんは何になりたいの?」
「あたしはネ、調香師か、お花屋さんっ」
「チョコシ?」
「チョウ、コウ、シ。お花とか、いろいろな臭いのある物を使って、臭いを嗅ぐひとを幸せにする仕事よ」
領主には、必ずお抱えの調香師がいる。調香は医薬作用はもちろん、戦闘術にいたるまでの奥深い技能。
 

15

 投稿者:出尾 龍児  投稿日:2000年 3月24日(金)23時47分53秒
  「あたしキッチェのお嫁さんになったら、世界中の花を使う世界一の調香師になりたいっ」
こんなに眩しいナナの笑顔を見るのは初めてだ。
瞳はキラキラと輝いていて、キッチェは吸い込まれそうだ。

夜空には”輝石”のまたたきが――
キッチェは窓枠から飛び下り納屋に向けて駆け出した。
納屋に飛び込み、”飼い牛鳥”のたずなをほどいて外に出そうと引っ張るが、びくともしない。
2頭全てのたずなをほどき、置いてある農具で飼い牛鳥の尻を思いっきり刺す。
≪ギャモ――ッ≫≪ギャモモォ――≫驚いた飼い牛鳥達は出口に殺到した。
追い駆けてもう一度、ダメ押しに尻を突き刺すと
飼い牛鳥達は一目散に山へと逃げて行った。
「(ナナ。逃げ延びて。夢を叶えて。)」
虫達が演奏する中、夜空を見上げた。ナナの部屋の窓が赤く輝いている。

火が鎮火して2時間後。ピクシーナ地下の仕置き部屋。
≪ビシッ≫≪ビシィィッ≫見張り役の大人と宿主は吊るされたキッチェに鞭を振るう。
キッチェは必死に歯を食い縛って、叫びをこらえている。
叫びを上げると宿主を高揚させて、残虐さが増してしまうからだ。
「(死ぬのかな・・)」もうろうとする意識の中で、早く楽になりたいと願う。
「(ボク、なんで生まれたんだろう・・なんで生きてるんだろう・・
ナナ・・教えて・・なんの意味があるの?・・逢いたい
もう一度。逢いたいよ・・)」
男「このクソガキャぁっ、てめぇのせいで稼ぎ頭のナナを逃がしちまったじゃねえかっ
≪ビシィィ≫俺の仕事増やすんじゃねえっ」
宿主「い~か、おまえら使用人や庶民どもはナ、私ら支配層に黙って貢げばよいのだよ」
≪バシッ≫男「人の成りしてっからって、一丁前に夢や野心を持つんじゃねえックソガキっ」
「(宿主は、鞭の柄先でキッチェのこめかみをグリグリ小突きつつ)
庶民はぁ、おとなしく卵(税金)を産み続けるべきなのだ
その為に生かされているのだからナ。
飼われている飛べない養鶏。それが、オマエ。だ。
オマエのような卵の産めない鶏は、どうするか?
≪シュリン≫(剣を抜く)とっとと、殺処分がふさわしい。
ま、しょせん資産家に生まれた私と、平民生まれのオマエとの差が埋められる事は無いのだよ。」
プラチナソードをキッチェの首に当てる。
「(あぁ、ボク、死ぬん・・ダ・・
高そうな剣・・いくらかな・・)」
男「ナナは、どうせバハラタ辺りで捕まるに決まってんだよ。お・ま・え、は無駄死にっグヒャヒャヒャヒャ」
≪ヒュオ――≫≪バタン≫換気用の取り込み窓の木蓋が、風で落ちて閉じ、ともし火が消えた。
宿主「おい、明かりっ」
・・返事がない。
「チッ」宿主がマッチをともすと、男が照らし出される。
≪ドサッ≫地に倒れ込む。
宿主は男の首筋に指を当て「(脈が無い・・死んでるっ)」
マッチを継ぎ足してともし火をともし、油皿を手に持って物置場を照らす。
もの音一つ無い。
剣を中段に近く構えて、荷の中に入って行く。
宿主「誰だっ、出て来いっ」
≪ガタッ≫奥の荷が傾き、ハッと見つめる宿主。
≪ザシュッ≫真横の戸棚から銅の剣が宿主を突く。
≪キンッ≫プラチナソードが受ける。
「ハァァッ」≪ガコッ≫戸棚ごと斬り捨てる。
相手はフワリとジャンプして、戸棚の上を高飛びの様に越えていた。
≪ガラガラン、ガラン≫戸棚が崩れ落ちた。そこに敵の姿は無い。


≪ズキュッ≫宿主のこめかみに敵の武器が打ち込まれた。
「あ、あ、あ・・」宿主の両目は別々な方向を向いてグリグリ動いている。
敵「おまえに追われた、病の娘からの依頼だ・・魔界が呼んでいるよ・・」耳元で静かにつぶやく。
「グッハァッ」≪ドサッ≫宿主は息絶えた。
敵は明かりを消し、地下室は再び暗闇に包まれた。
≪フッ≫キッチェのそばの空気が乱れ
両手の縄がほどける。「(助けてくれるんだ・・)誰なんですか?」
その人はキッチェを抱き起こし「闇人(やみびと)・・」一言つぶやいた。
!!
キッチェは気付いた。朝、水汲みでぶつかって来た銀貨の人だ。
受け渡しの時と同じ、人差し指のデキモノ(筆タコ)が在る。
男は出て行こうとする。その背に
「待って下さいっボクを!ボクを弟子にして下さいっ
お願いします。何でもします。弱音は吐きません。あなたの様に強くなりたいッ」
「君が弱音を吐かないのは見させてもらったよ・・
北に誰も居ない教会がある、明日の深夜にそこまで来れたら考えよう。」
≪ス・・≫音も無く消える。
闇人(やみびと)。スイーパー。
職業分類は“殺し屋”。キラーやジェノサイダーと違うのは、依頼受否にこだわりがあると言う点だ。
軍に属せばアサシン(暗殺部隊の兵士。パラディンとは対極にある)。
キッチェは立ち尽くしている。ついさっき、明らかに死にかけたのだ。
そして、今は大きな運命のうねりを感じていた。
2つの死体から取れるものを装備する。倉庫を念入りに調べると、守りの種、力の種、薬草が見つかった。
 

16

 投稿者:出尾 龍児  投稿日:2000年 3月24日(金)23時44分53秒
  闇人に弟子入りして4年が過ぎ
キッチェは独立し、流れの闇人として闇ギルドの仕事を受けながら世界を渡り歩いている。
ナナの手掛かりを探して、港街ポートセルミへと上陸した。
「(まずは、元締めに挨拶だ。)」
闇人やキラーは直接連絡を取り合う事は無い。
互いの素性・武器・技など、無闇に詮索しない暗黙の掟がある。
前の町の“繋ぎ(情報屋)”から聞いていた男を探して、港の灯台へと足を向けた。
「(使い古した風の帽子”をかぶった、40過ぎの男・・)」
男は、何を釣るでもなく海に釣り糸を垂らして”古びたパイプ”をふかしている。
「おやじさん。釣れますか?」
「まあまあ、かな。」
「あの、これ預かり物なんですけど、どうぞ」前の町の繋ぎから、身元の証に預かったワインのビンを手渡す。
ロザリーヒルの北。エルヘブン産の地酒”旅の妖精”。”夢見のしずく”と”毒草”が主原料の高級酒である。
繋ぎの男「・・。
・・若いな。」
「ええ。」
「そこの灯台は眺めがいいぞ。」
「どうも。」キッチェは灯台へと向かい、登って行く。
白壁のらせん階段を上がって行き、望遠鏡のある最上階に出る。
そこには、何処にでも見かける老人が一人居るだけだ。
「若いと聞いてはいたが。いやいや、恐れ入ったわい」
「レコと言います」(闇人としての通り名)
「うん。うん。(望遠鏡をのぞきつつ)
今夜、西の穀物畑の小屋。」
それ以上の話は不要であった。
下におりようと階段に向かうと、一人の男が目に入った。
冷たい眼光。闇人だ。
元締めの安否を気づかっての行為だろう。
事実、法王庁の闇人狩りはあなどれない。潜入捜査においては、過去に闇人であった者達があたる。
依頼主を庶民から、国へと乗り換えただけだ。金になびいた者。捕らえられ、強要される者など。
元締め自体も闇人なのだから、それなりの腕は立つはずだが、念を入れての守りだろう。
金になる仕事でもないのに進んで付いたのなら、それは元締めの人望を表している。

張り詰めた空気の出口を出ると、目の前には蒼く美しく果てしなく広がる海。
白い入道雲が元気よく張り出している。
繋ぎは、相変わらずのんびりと糸を垂らしている。
キッチェは1回大きく深呼吸した。
「(さあ、時間まで観光でもするかナ
の、前に腹ごしらえ。飯し飯し)」
大きな酒場に入って行く。

きれいな床板の広い店だ。なかなかの賑わい。ランチをとる者。昼から酒に酔う者。いろいろ。
「るぅへ~い。オラぁこいが飯なん~どぅわ――文句あっかぁ~?」
「いつまで油売ってんだいっ。この宿六めっ」≪ペシッペシッ≫妻らしき、かっぷくのいい女性が
ホウキで尻をはたいており
「ギャハハハハ」周りが笑い立てている。
奥には立派なステージが見える。
「へぇ。
ねえ、ねえ。ショーは何時から?」ウェイトレスに尋ねる。
「ウフフ。ませてるのネ。7時からよ。素敵なショーよっ是非来てねっ」
「ありがと。(ショーを見て、軽く食べても間に合うな)
シーフードグラタンとシャキシャキミックス(サラダ)。テラスで食べるネ」
「はい。シーフードグラタン1。シャキシャキミックスサラダ1でよろしいですね。
ありがとうございます」
赤道寄りの港街。ポートセルミの日差しは強い。
キッチェは、面しているメインストリートの人々を見ている。
大方の人々は白っぽい衣服をまとっている。その中に一人オレンジ色の衣服の娘が混ざっていた。
「”バハラタ染め”かぁ。懐かしいなぁ。(・・ナナ)」
「お待ちどおさまでしたっ」
≪ゴトッ≫≪ゴト≫2人分はありそうな大皿に、アツアツのグラタン。パスタの乗った新鮮なサラダ。
「(やった!この店は、当りだね♪)
アチチチッ」ガッ付いている。
アサシンやキラーなら、今の10倍の暮らしが出来る。グラタンの盛り加減で一喜一憂する必要もない。
義理を通せばしがらみに縛られる。なんと、世のせちがらいこと―――。

「ふ~っ。食ったァ~っ」すっかり平らげ、グ~ンと伸びをする。
「(何か眠くなってきた。観光は明日でいいや。宿とって昼寝でもすっかナ)」席を立ち
「お姉さん、お勘定。おいとくよっ」38G置く。
「は~いっ。ありがとうございました~」さっきのウェイトレスが遠くから応えた。
メインストリートを行くと”バハラタ染め”の娘がカゴを手に何か売り歩いているのが見える。
売り込んだ男に払われて、地に倒れ込んだ。
キッチェは駆け寄って手を貸す
「大丈夫?(なんて細い腕だろう。食べて無いな。)」支えて起こす。
「す、すみません」しゃがれた声だ。
キッチェは彼女を娘だとばかり思っていたので、声のギャップに思わず女性の顔をのぞき込んだ。
!!
 

17

 投稿者:出尾 龍児  投稿日:2000年 3月24日(金)07時43分51秒
  「・・な、ナナ。ナナさんじゃないのかっっ」
女性はフードを深くかぶり直し「いいえ。人違いです。」
ナナは逃亡の身。かつての客と出会う可能性もあった。
「待ってっボクだよ。キッチェだよ」
「!! キッチェ!?」
女性はキッチェの顔をマジマジと見詰め、
その瞳から溢れるように涙をこぼした。
2人はしばらくの間、互いの肩をつかんだまま、むせび泣いていた。それは
修羅場で生きてきた者同士、言葉のいらない、
思いの全てであった。

カボチ村。
ポートセルミの南、小規模酪農で自給自足をしている保守的な村。
その片隅にナナの住まいは、たたずんでいる。
小さな建物の中は、調香の素材が整頓されていた。
「調香師になれたんだね。よかった。
おめでとう、ナナ」
「え、ええ・・。」
「(アレ?あんまり、嬉しそうじゃないな。
? 上手くいってないのかなぁ)」
「待ってて。今、とっておきの紅茶いれたげる。」
一瞬、ドライフラワーを飾ってくれた時のナナと重なって見えた。
「(ナナに逢えたんだ。あの時のナナと変らないや)」ナナの後ろ姿を、優しい眼差しで見つめている。
「ナナ。お茶の後は僕に任せてよ。さっき倒れたばかりなんだから。」
再開を祝おうと、ポートセルミで豪華な食材を仕入れてきた。それで少しでも、ナナに体力を付けて欲しい。
幸いにも村の中央に清らかな小川が流れており、水汲みに難はないようだった。
食事をしながら、笑い声が小屋から漏れてくる。
「ナナ。料理は明日も食べれるから、今日はもう横になりなよ。
僕はお風呂沸かす。
な~んか僕って昔と進歩ないなぁ。アハハ」
「ウフフ、本~当ぉ。」クスクスと可愛く笑っている。

風呂を沸かしてから、キメラの翼でポートセルミへと戻り、尾行に気配りながら集合場所に向かう。

小屋の中に入ると、灯かり一つ無い暗がりの中、元締めと、灯台ですれ違った男が待っていた。
元締め「早かったな。集まるのに、もう少しかかる。」一言。
しばらくして3人ほどが加わった。
3人とも武器らしい物は装備しておらず、ごく普通の街人にしか見えない。
元締めが仕事内容を話す。
「殺るのは、ポートセルミの領主コーベックと取り巻き4人。
依頼はコーベック一人だったが、取り巻きが側から離れない以上、一緒に始末する。
依頼主は―――
コーベックによって一家心中に追い込まれた、よろず屋だ。ギギ、話せ」
灯台ですれ違ったギギと呼ばれた男が話し出す。
「よろず屋は、この街で売られている盾の中では最強の、マジックシールドを扱っている。
知っての通り特殊効果のある武具やアイテムは“錬金士・魔法使いギルド”に管理されていて
扱いを許されるのは“認められた者”または、その推薦“紹介状”を書いてもらった者のみだ。
 コーベックは街の武器屋・防具屋を束ねているが、よろず屋が商売の邪魔だった。
手下を使い、マジックシールドの利権を渡すか街を出るか、よろず屋にせまった。
 その後は、よろず屋主人の謎の死。おかみさんは、過労がたたって病に、
子供たちは店を守ろうと働いたがコーベックの手下の妨害にあい、店は先月潰れた。
子供達が闇人を探し俺が、おかみさんから死に際に依頼を受けた。」
「コーベックめ、あれだけ儲けてまだ儲け足り無いのかっ」一人が吐き捨てる。
元締め「依頼料は、母親の忘れ形見となってしまった宝石だ。しめて1万G、一人2000だ。
コーベックの屋敷はでかい。手下も腕利きだ。降りたい奴は無理するなよ。
やばいと感じた仕事は命取りになりやすい・・。」
元締めの前に分けられている金貨を、一人一人掴んで行く。

「全員か。」
しかし、戦力としてはギリギリなのだった。
「ほな、段取り説明しまっせー。」彼は潜入に長けている闇人。

天に輝石のまたたく夜更け。
コーベックの屋敷周辺に、人影が見え隠れし、互いが目で合図しながらうなずき合う。

二人の門番の前を、老人がヨタヨタと千鳥足で歩いている。
やがて老人は門番の目の前でへたり込み、大きなイビキをかいて眠りこけてしまった。
「おい、じいさん。そんなとこで寝られちゃ困るんだよ。寝るなら家帰ってからにしてくれよ。」
「じいさん?おいったら。ったく、世話やかすなぁ。」
二人が武器を置いて抱き起こす。
≪ホワ~ン≫辺り一面を“甘い香り”が包み込み門番達は眠ってしまった。
元締めが小瓶をしまって合図すると、足音一つ立てずに5人が集まる。
潜入に長けた小男の闇人は、鍵穴に見慣れぬアイテムを差し込んで、あっという間に鍵を開けた。
「(盗賊も真っ青の腕だ。闇稼業の他に盗みもやってそうだぞ。)」キッチェは横目で見ている。
小男は小声で言う
「ええでっか。ほんまはキメラの翼で一気にコーベックの間に行く事も出来ま。
せやけど、着地音だけは消せまへん。無事出て来たかったら横着はあきまへんでぇ」
ルーラの上位魔法には、音と光を出さないイガルーラというのがあるらしい。
 

エピソード(挿話)「ミスリル銀の髪飾り」(1)

 投稿者:出尾 龍児  投稿日:2000年 3月24日(金)07時37分11秒
  ロダ王子の父は、かつて邪神官ハーゴンを倒した勇者。今は質実剛健が信条の”賢王”として慕われている。
父は常々言っていた「国を束ねる者が、ロトの血筋である必要はない。
呪文が得意な者、魔法は苦手だが剣技に秀でた者。一人では小さな力でも、互いが不得手を補い合い
全体の力を2倍にも3倍にも出来る。信頼と自己犠牲からなる団結が邪悪な力を打ち破った。
それこそが人の持つ最大の武器なのだ。決してロトの血がまさっていたわけではなかった。」
邪教神官ハーゴンや邪神シドー(DQ2の敵)との戦いを振り返り、父は戒め、続ける。
「文武両道とは言われるが、算術・武術に優れている事が人の価値を決めるのではない。
力を私利私欲にのみ用いる者がいかに強かろうとも王の資格はない。
もし、そのような小ものが王位につけば、人の心を失った、”弱者を喰い物にする卑しい政治”となる」
まだ幼年のロトは、すかさずたずねた「でも父さん。強い者はそれなりの努力や研究をしています。
努力した者が報われる事は、公平な事ではないのですか?」
「・・。」父はロダ王子を真っ直ぐ見つめてうなずき
「そのとうりだ。そうあらねばならん。
ロト一族よりも王としての資格を備えたふさわしい者が現れたなら、その者が王になるのが道理という
ものだ。ではロダよ、その”王の資格”とは、なんなのだろう?わかるか?」
ロダに答えられないことは分かりきっている。彼自身、今も自問しているテーマなのだ。
ロダは「よく・・わからない。でも強くなければ大切なものを守れないと思います。」
「強くなるのはいい。だが、上には上がいるぞ。たとえ、一時最高にあったとしても、必ず老いる。
力は絶対ではない。その時、おまえの大切なものは如何にして守るのだ。」
父はロダの髪をクシャッと撫でて「いいか、”王の資格”などワシにもわからんのだ。
ワシが死ぬまでにその答えを、おまえなりに見つけて教えてくれ。いいか?」
「はい。」ロダは、はにかみながら笑った。
ふだんは無口なのに、めずらしく難しい話が続いて頭がパンク寸前だったので
とりあえず、うなずいて終わらせたかったというのが本当のところだった。
青年となったロダ王子は”親の心、子知らず”で己の剣技に天狗になって放蕩の限りを尽くしていた。
それを見かねた父は、ロダ王子を勘当する。

―――造船産業の港町・ルプガナ自治領。
 もう3年近く城に戻っていない。王子という身分を隠して、誰にもたよらず一人で食って行くことは甘く
なかった。雇い主に賃金未払いで逃げられたり、酒場の娘に貢いだり、世間知らずの反動は度重なるトラブル
を招いてきた。だが悪友?もできて、こんな感じも悪くないと馴染みはじめてもいる。一人暮らしなので
食事は、もっぱら外食だ。
 ロダの行き付けは親子でやっているこじんまりとした食堂。どこにでもある、ありきたりの家庭料理なの
だがロダには特別なのだった。幼少より両親とすごせる時間が限られていたロダにとって、女将さんと旦那
さんの飾らない応対には他に換えられない魅力があった。それになによりもロダは、店娘の長女に恋心を
抱いていた。
 ロダはここに悪友達を連れ込まない。自分のイメージを良く見せたかったし、恋がたきなどになられては
やっかいだ。そんなロダの想いを知ってか知らずか彼女”ローラ”の態度はそっけない。
 その名前は、ローラ王女(ラダトーム国の姫”ローラ・ラダイ”150年前に竜王2世を倒して、ローレシアを
建国したロト分家王の妻=ローレシア国王女。ロダ王子の祖母)にあやかって、食堂の両親が長女に付けた
名前だとロダは思う。
 当時、ルプガナ自警隊の教官を務めていたロダは、身なりも在り来たりのどこにでもいる青年という風貌
だった。さらに安月給と、借金の返済があいまって日替わりセットのお得意様だ。
 

以上は、新着順21番目から30番目までの記事です。
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