安くてボリュームたっぷり―まさしく学生のためにあるようなメニューで、40年にわたり愛媛大生、松山大生らの胃袋を満たしてきた松山市道後一万の名物食堂「太養軒」が15日、店主の井上正一さん(55)の病気で、閉店することになった。常連客からは惜しむ声が相次ぎ、正一さんの家族も「学生に長く親しまれてきた店の名前を残したい」と後継者が現れれば店を譲りたいとしている。
同店は、正一さんの父で初代店主の尊夫さん(80)が1965年ごろ三番町で開業。約7年後に現在地に移転し、大きな豚カツに生卵や野菜を添えた「じゃんぼカツカレー」や、野菜と卵の炒めものに豚肉を乗せた「ガッツ定食」(ともに現行価格550円)などが人気を博してきた
約20年前に正一さんが跡を継いだが、昨年12月に急病で入院。昼だけの営業にし、約30品目あったというメニューも10品目程度に減らした。尊夫さんらも復帰し、家族で協力して店を続けてきたが、高齢もありやむなく閉店することになった。
「自分も同じように、道具も鍋もお皿もすべて貸し、一生懸命に店をやりたい人を応援したい。希望があれば店の味も伝授したい」と後継者の誕生を切望している。