2011年5月15日5時0分
東日本大震災をきっかけに、生涯のパートナーを得ようとする人が増えている。都市部の女性を中心に結婚相談所への照会が相次ぎ、会員同士で成婚して退会するケースが急増。婚約指輪の売れ行きも伸びた。未曽有の災害に直面して孤独感にさいなまれ、人との絆を持ちたいとの思いが広がった、との見方もある。
結婚情報紹介サービス大手のオーネット(本社・東京)では、今年4月の資料請求件数が前年同月比で約12%増。関東の女性でみると24%増えた。会員同士の結婚による退会も続き、3月は423人で前年同月比19.5%の増。4月も333人と18.1%伸びた。同社大阪北支社の古沢広美・支社長代理は「地震直後から問い合わせが増え、入会者も例年の2〜3割増」と話す。サンマリエ(同)でも関東甲信越地方で入会者の伸びが目立つ。
東北6県で約3千人の会員を抱える結婚情報紹介業「あんしん友の会」(本部・盛岡市)では、震災後に女性からの問い合わせが震災前より3割ほど増加。「地震が一歩踏み出す契機になった」と打ち明ける人もいた。「ノッツェ」で知られる結婚情報センター(本社・東京)の郡山支店(福島県郡山市)は、震災前と比べて入会者が1.5倍以上増えたとしている。
東京都内に住む一人暮らしの会社員女性(30)は、大型連休中に結婚相談所に登録した。震災当日に帰宅困難となり、6時間歩いてマンションにたどり着いた。その後も余震に敏感になり、寝つけない夜も増えた。「将来への不安が膨らみ、家族を作ることの大切さを痛感した。人と絆を結ぶ努力をしたい」
新宿高島屋(東京都渋谷区)のアクセサリー売り場では、4月1〜19日の婚約指輪の売り上げが前年同期比で約4割増加。「婚約指輪を買うつもりはなかったが、自分たちの出会いや気持ちを形にして残したい」と訪れるカップルもいた。(沼田千賀子、山内深紗子)