ライカ型の先幕・後幕を使うフォーカルプレーンシャッターは、先幕と後幕の走行開始タイミングをずらして 開口部を作り、これがフィルム面を走査することで高速シャッターを実現しています。 この方式では先幕と後幕の走行装置が独立しているので、両方の幕が走る速度が一致していないと、画面全体で光量が同じ になりません。もちろん、速度が正規の値からずれるとそれにともなって露光時間も変わってしまいます。 そのため、幕の速度を管理することがこのタイプのカメラを長く使う上で重要です。
さて、前回作った幕速測定回路はあまりにもトリッキーな動作をさせていたので 回路を全面的に見直してより原理に忠実なものに作り変えました。
2つのセンサーから入ってくる信号の立ち上がり・立下りを検出して
先幕走行時間=(センサー2の立ち上がり時刻)−(センサー1の立ち上がり時刻) 後幕走行時間=(センサー2の立ち下がり時刻)−(センサー1の立ち下がり時刻)に比例したパルスを生成します。センサー2の立下りを検出したら、フリップフロップを リセットして次の測定が可能になります。
プリント基板を作製するにあたり、既存のケース(タカチSS-90)に入る大きさで設計したのでかなり部品の密度が大きくなりました。
設計にあたり、組立の難易度が上がらないようにピン間の配線通過を避けてあります。その代償として、ジャンパー線を5本も使ってしまいました。
基板の様子。試運転中のためセンサーの負荷抵抗(R1,R3)は外してあります。
最大の改良点は、以前に作製したカウンタ部を改造なしでそのまま接続できるように したことです。フォトトランジスタを取り外し、エミッタ端子にセンサー出力を 接続します。また、電源のプラス・マイナスを並列に接続します。
今回は、スイッチで信号線を切り替えることにより、カウンタ1つで動作させましたが、 できればカウンタを2つ用意して、先幕・後幕の速度を同時に表示できたほうが便利です。 (回路的には対応済みですのでいつでもカウンタをふやせます)
先日パラダイスで買ったオーバーホール済のPENTAX SPIIで計ってみると、 先幕:7.1ms/20mm 後幕:7.3ms/20mm という数値が得られました。 ネットで情報を探してみると幕速の許容値は±2.5%程度でしたので、さすが本職が修理したものはピタリとその範囲に入っています。
一方、ジャンク扱いで買って整備待ちのPENTAX SLでは 先幕:7.5ms/20mm 後幕:10.3ms/20mm と 、後幕走行速度が顕著に遅くなっています。もちろん露光時間も高速側はでたらめです。これでは使い物にならないことが数字から明らかです。 また、測定を数回繰り返すと数値のばらつきが大きく、きちんとしたオーバーホールが必要であることを示しています。
(2007.7.14)