シャッターテスター


シャッターテスター

ジャンクで手に入れたり自分で分解してしまったカメラは、多くの場合そのままでは使えません。しかし、ちゃんと調整して魂を吹き込んでやれば立派に現役復帰してくれます。そのために、シャッターの速度を測定する簡単な装置を作りました。

回路図

回路図

動作原理

シャッターが開いているとき、フォトトランジスタ(ST23G)に入射光に比例した電流が流れます。 この電流が抵抗(1kΩ)に生じさせる電圧降下をシュミットトリガー(74HCU04と抵抗R4,R5)で整形し 、光が入っているときにHになる信号をつくります。

光が入っている時間を測定するために基準発振器から10kHzの矩形波をカウンタモジュール(Trumeter 7000)に入力します。カウンタの数字1に対して0.1msの時間に対応した出力が表示されます。

基準信号はセラロック640kHzの発振出力をカウンタ(74HC393)で1/64にすることで得られます。カウンタの動作を光センサーの出力によって制御して、光が入っているときだけ信号がカウンタモジュールに流れるようになっています。

U3のモノテーブルマルチバイブレータは、光がON→OFFになるエッジに反応して数秒のパルスを作ります。この出力をカウンタのリセットに入れることで多重露光を禁止し、カウンタの表示がホールドされます。このとき、ホールドされていることをLEDの点灯で知らせます。その後、50ms程度のパルスを作ってカウンタをリセットしています。


部品表

部品番号仕様備考
U174HCU04APUなしは不可
U274HC393AP
U374HC123AP
U4Trumeter 7000/RSRSコンポーネンツで取り扱い(品番343-442)
X1セラロック 640kHz
R11kΩ1/8Wカーボン茶黒赤金
R21MΩ1/8Wカーボン茶黒緑金
R31kΩ1/8Wカーボン茶黒赤金
R46.8kΩ1/8Wカーボン青灰赤金
R5100kΩ1/8Wカーボン茶黒黄金
R6100kΩ1/8Wカーボン茶黒黄金
R7100kΩ1/8Wカーボン茶黒黄金
R8330Ω1/8Wカーボン橙橙茶金
C1150pF25Vセラミック表示は151
C2150pF25Vセラミック表示は151
C347μF16Vアルミ電解高さ5mm品がのぞましい
C41μF50Vアルミ電解高さ5mm品がのぞましい
C50.1μF50V積層セラミックス表示は104
Q1ST23G(Kodenshi)可視光用フォトトランジスタならなんでもよい
D1LED 赤色

基板作成

プリントパターン

図を参考にして基板を作成します。感光基板を使うのが便利です。 インクジェットプリンタでフォトマスクを作成することができるフィルムが市販されています。

マスクができたら紫外線で露光し、感光基板の説明書にしたがって現像します。 つぎにエッチング液(塩化第二鉄)で銅箔の不要部分を溶かします。 すべてのパターンが浮かび上がったら十分に水洗いをして乾燥させます。

電子部品の入る穴は0.8mmをあけます。ただし、セラロックの入る穴は1.0mmにします。基盤取り付け用の穴は3.2mmをあけます。 穴があいたら、全体にフラックスを塗っておきます。


部品の取り付け

部品配置

基板に部品を差込み、半田付けします。まずICからとりつけ、次に抵抗、コンデンサ、と背の低いものからとりつけるのが基本ですが部品が込み合っている箇所は適宜工夫してください。 極性のある部品には基板に向きを表す印をつけてあります。電解コンデンサ、LED、フォトトランジスタのとりつけの際には注意してください。

余っているリード線をつかって、ジャンパー(図の青線)を半田付けします。

電池ボックスの線をBATと印のあるところに半田付けします。マイナス側だけに印があります。


配線の確認

基板

部品のとりつけが終われば、一度休憩して(一晩おくとなおよい)配線の確認を行います。

時間をかけてゆっくり確認してください。

試運転

間違いがなければ、電池ボックスに電池を入れてください。正常であれば、カウンタが0を表示し、LEDが点灯します。数秒後にLEDが消灯すると測定準備完了です。懐中電灯などでセンサを照らすと、光が当たっている間は猛烈な勢いで数字が変化します。光が消えると数字が止まり、同時にLEDが点灯して測定終了を知らせます。LEDが点灯している間は次の測定ができないようになっています。

数字は0.1msごとに1増えます。光を当てながら1秒につき10000ずつ数字が増加していけば正常です。

動作したら、お気に入りのケースに入れて完成です。私はタカチLM-100Cという電池ボックスつきのプラスチックケースに入れました。基板の取り付け穴は、このケースにあわせて配置されています。ただし、このケースは背が低いので、部品の頭がつかえることがあります。実際、セラロックが大きすぎたので、一度取り外して基板の裏につけかえました。

受光部には直径1.5mmの穴をあけ、フォトトランジスタをゴム系の接着剤で固定します。 トランジスタの足と基板との間は適当な導線で配線を伸ばします。

基板と電池ボックスの間にスライド型の電源スイッチを入れました。ケースにほとんど空き場所がなかった のですが、側面に納めることができました。


使用法

まず、光源とシャッターテスターの位置を決めます。光源としては懐中電灯を使うのが簡便です。シャッターテスターから光源を遠ざけていき、反応する範囲でできるだけ遠いところにおきます。 次に、カメラをシャッターテスターにできるだけ近いところにおきます。シャッターを切って光がシャッターテスターに入っている間だけ数字が増加し、シャッターが閉じたらLEDが点灯することを確かめます。

それぞれのシャッター速度に対する標準数字を表にまとめました。測定値がこの標準値から±10%におさまっていれば優秀です。

シャッター速度標準値±10%
1秒 100009000-11000
1/2秒 50004500-5500
1/4秒 25002250-2750
1/8秒 12501125-1375
1/15秒 625563-687
1/30秒 312281-343
1/60秒 156141-171
1/125秒 7871-85
1/250秒 3935-43
1/500秒 2018-22
1/1000秒 109-11
1/2000秒 54-6

組み立てキット

このたび(有)イケハラ・カメラ修理センター・パラダイスのご協力を得て頒布することが決まりました。

(2006.12.16記。2006.12.31, 2007.1.8, 2007.3.1, 2007.3.24 更新) 戻る