第3回目調査チーム

記事 - 2011-04-11
第3回目放射線調査チームは、福島第一原子力発電所から放出されている放射性物質の海洋生態系への影響調査を目的とした海水、底質、海棲生物のサンプリングをし、放射能濃度の測定と核種分析を行う予定です。

第3回目調査チーム
(2011年4月27日~2011年5月31日予定)

調査の背景

虹の戦士号
©Markel Redondo/Greenpeace

福島第一原発からは、大量の放射性物質が、大気だけでなく海洋にも流出しています。
放射性物質のうち海水に溶け込んだものは海流で広く拡散し、微粒子の形で海中にとどまる物質は海底に沈み、長期間汚染が続く可能性があります。
中でもセシウム137は約30年にわたって海中にとどまるとして、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)も「沈殿が疑われる日本の海岸地域では、長期にわたる調査が必要だ」と指摘しています。
実際に三陸沖で、魚から国の暫定基準値を上回る放射性セシウムが検出されています。

日本政府への海洋調査許可申請について

2011年4月28日、「虹の戦士号」を使用した福島第一原子力発電所周辺における海洋調査について、日本政府から許可が下りましたが、許可内容が調査海域を領海外(沖合約22キロより外)に限定するなど不十分であることから、「虹の戦士号」を東京湾沖に停泊させ許可の再考を求めていました。
当ウェブサイトでも、みなさんの許可申請支持を表明するクリック署名をお願いし、8,937筆のご賛同を頂いた結果、政府の海洋調査にも変化がありました。 詳しくはこちらでご覧ください >>

5/1 記者会見 「海洋調査の申請に関連する日本政府の対応について」ビデオと配布資料>>

領海外での調査


© Jeremy Sutton-Hibbert / Greenpeace

2011年5月3日~5月6日の間、「がんばれ日本、まもろう海と漁業」と書かれた巨大なサインを船体に掲げた虹の戦士号が、日本政府から許可が下りた領海外(沖合約22キロより外)での調査を実施しました。
グリーンピースは、引き続き日本政府に対し領海内での海洋調査許可の再考を求めていく方針です。

調査内容

海水、底質、海棲生物(魚、海藻、貝類を含む)のサンプリングを行い、放射能汚染の測定と核種分析

使用する放射線測定機材

  • ベクレルモニター:Berthold
  • 汚染モ二ター: H13422 Rados MicroCont, UMO 110
  • ガンマ線スペクトロメーター:ICX Identifinder
  • 放射線量測定器:Thermo EPD MK2
  • 放射能吸収量測定装置:Dosebadge
  • 放射線検出器:RADEX RD1706
  • 汚染モニター:H13422 Rados MicroCont

目的

船上で
© Jeremy Sutton-Hibbert / Greenpeace

福島第一原子力発電所から放出されている放射性物質の海洋生態系への影響調査を目的とした海水、底質、海棲生物のサンプリングをし、放射能濃度の測定と核種分析を行います。
また、第三者の立場で、水産業が放射能汚染により受ける影響を把握し、被害を受けた方々が正当な補償を受けられるように情報を公開します。

グリーンピースは、19日付で日本政府に対して福島原発周辺の海域で放射線調査を行うための承認申請を提出しています。
内閣総理大臣宛に提出した要請書(PDF)

作業日程

  • 「がんばれ日本、まもろう海と漁業」のバナーを掲げた虹の戦士号
    © Jeremy Sutton-Hibbert / Greenpeace
    第1部: 2011年4月27日~2011年5月15日
    使用船舶: 「虹の戦士号」(オランダ船籍)、他ゴムボート数隻(オランダ船籍)、 チャーター船(日本船籍)
    虹の戦士号について詳しくはこちら >>
  • 第2部: 2011年4月27日~2011年5月31日
    使用船舶: チャーター船(日本船籍)

調査範囲

日本政府から許可が下りた領海外(沖合約22キロより外)において、福島第一原子力発電所周辺海域を中心に、宮城県石巻港から千葉県銚子港までの沿岸から沖60kmまでの範囲。(警戒区域地域を除く)

チーム内の放射線専門家

  • イケ・トゥーリング
    (グリーンピース・オランダ 放射線安全アドバイザー)
    オランダ、デルフト工科大学で化学を専攻し、自然エネルギーの修士号を取得。フランスのラ・アーグ再処理工場などで放射能汚染の環境調査に参加した経験を持つ放射線のエキスパート。
  • ヤコブ・ナミンガ
    (グリーンピース・オランダ 放射線安全アドバイザー)
    オランダ、デルフト工科大学を卒業し、ウクライナ、スペイン、フランスで放射能汚染の環境調査に参加した経験を持つ放射線の専門家。

作業方法

  • 船上イメージ
    ©Jeremy Sutton-Hibbert / Greenpeace
    海水:作業船より海水サンプラーを用いて調査対象海域内で海水をサンプリングします。
    また海岸からもサンプリングを行います。
    サンプルは、ベクレルモニターを用いて放射線量を計測し、ガンマ線スペクトルメーターを用いて核種分析を行います。
    また調査期間中、自律系潜水型ガンマ線スペクトロメーターを定点設置し、放射性核種の濃度をモニターします。
  • 底質:作業船よりコアサンプラーを用いて調査対象海域内で底質をサンプリングします。
    また海岸からもサンプリングを行います。
    サンプルは、ベクレルモニターを用いて放射線量を計測し、ガンマスペクトルメーターを用いて核種分析を行います。
  • 海棲生物:作業船より調査対象海域内で海棲生物をサンプリングします。
    また海岸からもサンプリングを行います。
    サンプルは、ベクレルモニターを用いて放射線量を計測し、ガンマスペクトルメーターを用いて核種分析を行います。

地方自治体との関係


© Christian Åslund / Greenpeace

グリーンピースは3月26日より、2度にわたり福島県に放射線調査チームを派遣し、福島県南相馬市の理解を得て、周辺の放射能汚染の実態をモニタリング調査いたしました。
このたびの海洋調査も、南相馬市の理解を得て実施するものです。
詳しくは、海洋生態系問題担当の花岡和佳男のブログをご覧ください >>

調査結果

(2011年5月12日発表)
複数の海藻から高濃度の放射性物質を検知し、日本政府に対し福島第一原発周辺での海 藻類の緊急調査ならびに、それに伴う漁業関係者への損害補償を早急に行うよう要請しました(注1)。

今回グリーンピースが採取した海藻類の調査結果は、同時に採取した海水、魚貝類などとともに詳細な調査を行った後、今週にも結果を発表する予定でしたが、優先的に放射性物質の計測をはじめた海藻類について高い数値が検出されたこと から、政府に緊急措置を求めるために本日発表したものです。

福島第一原発から50キロ離れた沖合で採取した海藻アカモク(ホンダワラ科)などから1キログラムあたり最高で13,000 ベクレル以上の放射性物質を検知(注2)

また、沿岸海域においても独自サンプリング調査を行った結果(注3)、福島第一原子力発電所の南約30㎞から65kmの場所に位置する久ノ浜(ひさのはま)、四倉(よつくら)、江名(えな)、勿来(なこそ)などの漁港で譲り受けたアカモ ク、コンブ、フクロノリなどの海藻サンプルからも、1キログラムあたり最高で23,000ベクレル以上の放射性物質が検出されています。

グリーンピース・ジャパンの海洋生態系問題担当の花岡和佳男は、「近接県には、国内ワカメ生産量の約7割を占める一大産地があり、また、海藻類の収穫が来週にも始まろうとしている地域があります。
しかし、政府や都道府県による海藻類の調査はほとんど行われていません。
早急な調査と対策が必要です」と語りました。

さらに「漁業関係者は、放射能被害における損害補償の話の進展もなく、漁業再開の見当もつかないままの不安な日々を過ごしています。収入源である漁業を奪われ、漁協から借金をして食いつないでいる人もいます。
政府や東京電力は、未 調査海藻類収穫の一時中止と早急な調査、さらには漁業関係者が被る被害の全額 補償をセットで実行すべきです。」と訴えました。

グリーンピースは、今回暫定結果を発表した海藻以外にも、海水、魚類、貝類などを沖合、沿岸域でサンプリングしています。
これらについても、今回発表した海藻類とともに海外の研究所に依頼するなどして調査結果を確認した上で、来週に記者会見を開いて発表する予定です。

トピックス