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原発 緊急情報(24) どうすれば良いか その3




どうすれば良いのかの“その1”で、現在、法律で決まっている被曝の限度を書き、“その2”ですでに被曝した量と今後、被曝すると考えられる量について整理をしました。

すでに2つの表からご判断をされている人も多いと思いますが、問題なのは今後の福島原発が沈静化するのか、今よりひどくなるのかについて考えておかなければなりません。

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福島第1原発には、1号炉から4号炉まであり、それぞれ破壊の程度が違います。1号炉と2号炉の問題は「原子炉の中の燃料棒がどのくらい破損しているか」ということです。

ある程度、燃料棒が破損していることはすでに東京電力からも報告され、1号炉の燃料棒は70%程度破壊されていると報告されています。

燃料棒が破壊されていると言っても、棒がひび割れを起こしている程度なのか、高温になって燃料棒全体が溶けてかたまりとなっているのかによって違います。

核爆発中(原子炉運転中)だったのですから、大量の放射性物質があったので、その崩壊熱で燃料棒が融けていくと温度が非常に高くなります。

最初の段階は燃料の3分の1ぐらいが露出すると、燃料棒を作っているジルコニウムが水と反応して水素を生じ、福島原発で起こったような水素爆発が起こります.

さらに温度が上がり、燃料棒が融けるとその塊は2500℃ぐらいになります。ところで、鉄が溶ける温度というのは、おおよそ1500℃ですがぐらいですから、燃料棒が高温で融けると、塊になって原子炉の下を突き破り(原子炉を作っている鉄が溶けるから)、さらに下にいって、ドスンとコンクリートの床に落ちます。

これを「メルトダウン」と言います。

コンクリートの床に落ちると、余りに熱いのでさらにコンクリートを融かしますが、融けたコンクリートの成分が燃料棒と混じり、それで温度が下がり、そこで止まるということです。

これは理論的にも、スリーマイルの事故の時の経験でもそうでした。

「メルトダウン」をメディアは恐ろしいことのように言いますが、現在の福島原発はそれより酷い状態なのでメルトダウンは怖くありません。

ただ、燃料棒を取り出せないので、かなり手こずるでしょう。つまりメルトダウンというのは、「手こずるか手こずらないか」の問題であり、「大きな事が起こるか、起こらないか」ではないのがスリーマイルの教訓でした。

3号機はプルトニウムを燃料に使っていますから、ウラン燃料の1号機、2号機とは違います。21日にでた黒い煙の原因が心配ですが、普通に考えると爆発的にプルトニウムが飛散するようなことは起こらないでしょう.

4号機は、定期検査中ですから原子炉は空で「使用中の核燃料」がプールに入っています。メディアでは「使用済み核燃料」と言っていますが、4号機の燃料は使用中ですから、まだ核爆発(小さい)をする可能性もあるし、崩壊熱も高い状態です。

この核燃料のプールに穴が開いているというのがアメリカの見解で、日本は穴は開いていないと言っています。どちらかによって今後の状態が変わりますが、それはこれから漏れる放射性物質の量が2倍になるか3倍かという問題です。

爆発的するかどうかではありません。

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以上のことから、福島原発の事故は322日の午後になってようやく将来の見通しがわかり、簡単にいうと、「福島原発の事故は、原発自身については終わりつつある」と言って良いでしょう。

今後、放射線物質が飛散することもあるし、いろいろな事後処理がありますが、これまでのような緊張した状態からは脱したと思います。

その点で、今までわたくしが示していた被曝の計算から言えば、

・・・「現在」の2倍で終わる・・・

ということです。前の表の「現在」とその2倍の間に絞られてきたと思います. 

「現在」より少し大きめな数値も考えておくのは、これまでは空気中の放射性物質から被曝していたのですが、今後は野菜、水、海、魚などから少しずつ被曝しますからその分を考慮しておいたほうが良いということです。

さらに、福島原発はまだ安定していないのですから今後も大きな爆発も考えられますが、それは可能性が少ないので「頭の隅に入れておく」程度です。

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今後は福島原発を忘れて、身の回りに関心を寄せ、「野菜はどうするか」、「飲み水は」、「風呂は」、「海水浴は」などを考えて行きたいと思います.

(平成23323日 午前8時 執筆)


武田邦彦



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