政府は2万人を超す死者行方不明者を出した東北関東大震災の復旧に全力を注ぐなければならない時期なのに、福島原発のことで振り回されていると報道されている。
NHKも多くの時間を使って福島原発の状況を報道しつづけている。
なぜ政府は、福島原発対策に振り回され、NHKはなぜ福島原発の放送を続けているのだろうか。
それは「大事件」だからである。
しかし、政府もNHKも「漏れた放射線は大したことはない」、「放射性物質で汚染された野菜や牛乳も健康に影響がない」、「原発は沈静化に向かっている」と言っている。
「大変なことである」と言いつつ、「何もしなくても安全だ」と言っているのだから、不信感が募るばかりだ。
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ところでわたくしたちは、時として目の前で起こっている事の本質をなかなか見抜くことができない。
今度の場合、もしも福島原発の状態が簡単なもので、しかも住民の被害がないのなら、もともとニュースバリューもなく、政府が懸命になることもない。
反対に、政府が懸命になってNHKが放送を続けけているにもかかわらず、何も起こらないはずはないのである。
「安全だ」と言っているけれど、現在の放射線量は、福島県東部及び福島市では管理区域を設定しなければならず、住民に線量計やフィルムバッチを配り、健康診断を開始する時期である。
またホウレンソウや牛乳等も規制値の20倍程度の値を示しており、これも注意を要する
規制値を超えても健康に関係がないというなら、規制値を作る意味がない。
また、福島原発が徐々に沈静化していくなら、政府はもっと震災復興に力を入れ、NHKは別のことを放送してもらいたい。
しかし、なぜ政府がこれほどまでに対策に懸命になり、NHKが放送続けるかというと、実は、現在の状態が憂慮すべきものだからであり、かつ近い将来、福島原発がさらに危機的な状態に陥る可能性があるからにほかならない。
そこで、このブログでは、
1. 放射線で個人が被爆する量をそれぞれ個人が計算することを目指した。それによって避難するかどうか自分で決められる、
2. 汚染された食品は、規制値以上のものは食べないようにすることを勧めた、
3. 水については現在調査している。まだ飲み水以外は大丈夫のようだ、
4. 原発の今後は、最大で現在の10倍の危険性があると考えて、避難するかどうかを決めるときには、計算値を10倍して欲しいと勧めた、
5. 福島第1原発3号機はプルトニウムのまざった燃料を使っていて、ここが爆発したときに、周辺にどのような影響があるかは極めて難しい。私は、最大で通常のウラン燃料を使用する時の2.5倍程度ではないかと思うので、そうすると将来の推定計算をするときに、現在の10倍ではなく25倍程度で計算するべきだろう。
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これが私の推奨するところである。
私が、「政府が対策に懸命でNHKがあれ程報道しているのだから、事態は良い方向に向かっていない可能性がある」と判断しているからでもある。
福島原発がさらに悪い状態に入った時、福島県、福島県西武、宮城県南部、茨城県北部はかなり距離が近いので、放射線が増大するのに1日程度である。
一方、東京や仙台など地理的に離れたところは(冬で北風が吹く日が多い仙台は少し距離より以下遠いと考えている)、3、4日の余裕があるだろうというのがわたくしの考えである。
10倍、25倍という数値は確実性が足りないが、そういう数字がなければ、住んでいる人が判断することができない。せめて専門家が推定しなければならない。
また、テレビの解説者は、家の中でじっとしていれば被曝の量は少なくて済むとか、ほうれん草を食べ続けなければいいと言ったりしているが、やはり標準的な生活や、やや危険な時間の過ごし方をした時にどのくらいの危険性があるかということを示すのが最も良い指標になるだろうと私は思っている。
このようなことから、読者の方は、
「政府が原発対策に関心を示さず、官房長官が発表を止め、NHKの放送時間が極端に減れば、福島原発は安全になったと彼らが考えている」
と判定することもできる。
(平成23年3月20日 午後10時 執筆)
武田邦彦
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