―しかし、その東海地震に関する想定被害の試算が甘いのではないでしょうか。今回の震災では人口密度の少ない東北でも、死者、行方不明者が2万人を超えています。
「いや、今回は想定外の津波がありましたから。これまで考えられなかった10~20mの津波が襲ったので」
―なぜ東海地震で被害が及ぶとされる「浜岡原子力発電所」の原発事故は試算に入っていないのか?(中央防災会議は東海、東南海、南海地震が連動した場合、浜岡原発周辺は震度6強の揺れに襲われると想定している)
「原発の件は、中電さん(中部電力)で、ちょっと別途で・・・。今回の大地震を元に、実態調査、分析を行い、(想定被害を)厳密に検証し、訂正しなければならないところは訂正しなければなりません」
常に最悪に備えるのが政治の鉄則だが、この国の政治家には、そんなセオリーすら欠落しているのだ。
では、「今起きても不思議ではない」東海地震が発生した時、浜岡原発はどうなってしまうのか。
首都大学東京の都市環境学部教授・中林一樹氏は次のように指摘する。
「3連動地震が来ても、浜岡原発は揺れに耐える耐震性は有しているでしょう。しかし、5~10mの大津波が来た時、どうなるかは分からない。予備のディーゼル電源を従来より高い位置に取りつけるなど、早急に手を打つべきです」
ある科学ジャーナリストは、 '99 年に起きた「東海村JCO臨界事故」(茨城県那珂郡)の時、現場を訪れた欧米の研究者が吐いた言葉が忘れられないと語る。
「IAEAの関係者が、『こんなプレートと活断層だらけの小さな国に、一体幾つの原発があるんだ。それもトーキョーのすぐそばに作るなんて、日本人はクレージーなのか!』と嘆息していました」
195万人が死ぬ可能性
京都大学原子炉実験所の小出裕章助教のシミュレーションは終末的だ。
「浜岡原発が津波で破局的な事故を起こした場合、御前崎市の住民はほぼ90%が死亡し、首都圏に流れ込む風向きなどで結果は異なりますが、長期にわたるがん死を含めると、最大で195万人に上る人が亡くなる可能性があります。
福島原発と同レベルとされている『スリーマイル島の原発事故』で、彼の島は無人島になり、チェルノブイリはその一帯が廃墟と化し、『石棺』という代名詞で呼ばれています。東海地震による浜岡原発事故で、日本が壊滅的な被害を受ける可能性は十分にあるのです」
繰り返しになるが、東海地震が今後30年以内に起きる可能性は87%だ。そして東海地震、東南海地震、南海地震が3連動する危険性は拭えない---。
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