15日早朝、原子炉を納めた格納容器の一部で爆発音が確認された東京電力福島第1原発2号機。その後の4号機のトラブルによって、周辺の放射線量が急激に上昇し、ただでさえ手間取っていた炉内への注水作業は一層困難になった。注水が止まれば、核燃料の崩壊熱によって温度が上昇し、再び危険な「空だき」状態になる恐れもある。
東電によると、2号機で爆発音がしたのは、原子炉格納容器につながる圧力抑制プール。その後、プール内の圧力が、それまでの3気圧から外気と同じ1気圧に下がったため、経済産業省原子力安全・保安院は「プールの一部に穴が開いた可能性がある」という。
もし格納容器が損壊していれば、炉心を守るのは原子炉圧力容器しかなくなる。東電によると、炉内を冷やす水の量は回復しつつあるが、それでも午後4時10分現在、燃料棒の上部1.8メートルが水面上に露出し、危険な状態には変わりない。
元原子炉設計者で科学ライターの田中三彦さんは「海水で水浸しにするしか対策はないが、入れようとした水が(内圧の影響で)入らなければ燃料棒が溶け落ちるメルトダウンが進行する」と危惧する。
周辺の放射線量が高いため、東電は約70人の作業員を短時間ずつ交代で注水作業に当たらせている。
住田健二・大阪大名誉教授(原子炉工学)は「とにかく水を入れ続けなければならない。あと1~2日も注水すれば、燃料棒からの発熱も減って、今よりも条件が改善される。これ以上の燃料の溶解を防ぎ高い放射線レベルの核分裂生成物も出なくなる。事業者が責任を持って取り組むべき問題だ」と話す。
一方、吉川栄和・京都大名誉教授(原子炉工学)は「原子炉圧力容器に海水を注入する作業は近づいてしなければならない分、(遠隔操作で対応した)米スリーマイル島原発の事故より状況は悪い。作業員の被ばくを防ぐためにも、圧力容器内の水を自動的に循環させるなどの経路を人為的に構築すべきではないか」と話している。【酒造唯、藤野基文、高野聡、河内敏康】
毎日新聞 2011年3月15日 20時41分(最終更新 3月16日 7時19分)