日本からアメリカへの送金方法

作成 June/13th/2002
最終更新 August/09/2003
 

ここでは日本からアメリカへ中程度のお金を送金する場合のHOW-TOについて考察します. 中程度のお金とは10万円以上300万円程度までです. これ以下の少額送金については, 海外通販・海外オークションに関するページが星の数ほどありますので, そちらを参照してください. これ以上の金額を送金する場合は, 家屋の購入など事業性が絡んでくると思います. 専門家に相談しましょう.

以下考察が長く続きます. 結論を早く知りたい人へ.

結論

送金方法をいくら工夫しても, 為替相場がちょっと動けば, 節約した手数料は吹っ飛びます.

「アメリカでの両替」の項目で述べたように, ドル<>円間の両替に関してはアメリカより日本国内が有利です. よって日本国内で両替するとして両替した米ドルをどうやってアメリカに送るかという話になります. 話をわかりやすくするため, 次の三段階に分け考察します.

1. 両替にかかる費用 (為替手数料)

2. 送金にかかる費用 (送金手数料)

3. 受け取りにかかる費用 (受取手数料)

1. 為替手数料

日本国内で両替するときには, 為替手数料は表面上はとられません. しかし, 見えないところでしっかりとられています. このあたりの仕組みの説明が必要です.

日米間の為替相場は変動相場制をとっているため, 常に動いています. また, 東京市場がお休みの時間帯もロンドン・ニューヨーク市場と場所を変えながら為替相場は動いています. あの2001年9月11日のあともニューヨーク株式市場は閉鎖されましたが, 世界の為替相場は休むことなく動いていました. しかし, 休みなく動く為替相場にあわせるのはたいへんなので, 通常金融機関は一日一回, (または数回)為替レートを決め, そのレートでお客に対し為替業務を行います.

ある日のある銀行の為替レート

$1=
現金買い \127.00
TTB \129.00
中値 \130.00
TTS \131.00
現金売り \133.00

用語の説明

TTB        対顧客電信買い相場    銀行が外貨を買うときのレート

TTS        対顧客電信売り相場     銀行が外貨を売るときのレート

TTSは外貨預金に預け入れをしたりトラベラーズチェックを購入するときに適用されるレートです. また, 海外送金や海外送金小切手を作成してもらうときに適用されるレートでもあります. ただし金融機関によっては海外送金用の為替レートを別途定めているところもあります.

現金売りは現金のドル紙幣を銀行から入手する際に適用されるレートです. TTSに比較してかなりレートが悪いことがわかります. また, 近年はやりの海外でも引き出せるキャッシュカードで現金を引き出す際にもこのレートが適用されます. 銀行によってはこれよりさらに悪いレートを適用している場合があります. (ATMを管理する海外の金融機関が定めるレートとしている銀行です)

試算してみましょう. 50万円をドルにする場合, TTSが適用されると$3816.79, 現金売りレートが適用されると$3759.39, 差額は$57.40=約\7450, かなりの違いがでます.

このTTSと中値との差額, または現金売りレートと中値との差額が金融機関の為替手数料になるわけです.

昔, 東京銀行在りし頃はTTS-中値は\1.00とほぼ確定していました. また, その日の中値も東京銀行に横並びだったのですが, 今は違います. しかし, 中値と実際の為替相場の関係は金融機関のその時の相場の読みで変わってくるために, どの金融機関が有利か一概には言えません.

では, TTS-中値はどうでしょうか? ほとんどの都市銀行・地方銀行は\1.00です. 郵便局は\1.13と銀行よりはややレートが悪いことになります. 銀行によってはキャンペーンなどでさらにお得なレートを提示している場合もあります. たとえば新生銀行は現在TTS-中値=\0.50, 一部の証券会社はTTS-中値=\0.25と頑張っています, でもこのレートは外貨預金への預け入れや米$MMF購入が前提になっている場合が多く, また, 証券会社からは海外へ送金できないため, 注意が必要です.

近年では米ドルのままでの国内送金も可能になったので, 証券会社から銀行へ米ドルのまま振り込んで, その後海外へ送金するという手段もあります. ただし, この振り込みの手数料は\1000-\2000と通常の国内振込にくらべて割高です. 興味のある人は自分で調べてみてください.

追加情報
ホームページの読者の方からの情報です. ありがたや, ありがたや...
証券会社によっては, 出金時の振込手数料(証券会社の口座から銀行口座へ資金移動の際の手数料)は証券会社が払うというところもあります. 証券会社によっては太っ腹にも, 米ドルのままの国内送金手数料も払ってくれる(顧客にとってはタダ)というところもあります. キャンペーン等にて変わってくると思いますが, 探してみてください. 有利な為替レートで米ドルに両替できます.

 

2. 送金手数料

送金手数料を考察するには, 送金方法をまず分類する必要があります. いろいろな方法がありますがここでは次の分類で検討します.

1. 旅行小切手                トラベラーズチェックです. 1%の発行手数料と日米間の輸送費が必要です.

2. 為替証書による送金    郵便局では住所あて送金, 為替送金, 銀行では送金小切手, 英語でいうとinternational money orderとかmoney orderと呼ばれています.

3. 海外送金                    郵便局では口座あて送金, 銀行で通常に行う振込を海外にまで拡張したものです.

4. 国際ATMカード            銀行のキャッシュカードの拡張版で海外のATMでも使用可能になったものです. CITIBANKをはじめ大手都市銀行が発行しています.

話を簡単にするため, 安い方から考えてみましょう.

一番安いのは条件付きで旅行小切手, \0です. 条件というのは, 発行手数料がかからない銀行で発行してもらうということ. 大手銀行の中には口座を持っている顧客に対してサービスとして発行手数料なしでトラベラーズチェックを発行しています. もう一つ条件があって, トラベラーズチェックを購入した人がアメリカに来てくれるということです. 当然ながらその人の旅費は考えていません.

同じく一番で安いのが「3. 海外送金」の分類に入るCITIBANKです. CITIBANKの海外送金手数料は\0です. 安い. しかしよく見てみると条件がついています. CITIGOLDに該当する顧客, CITIGOLDとは口座残高2,000万円以上のお客様です. 次へ行きましょう.

次に安いのが郵便局で, 分類では「3. 海外送金」に入ります. 一般(一般的ではないが)振替口座を開設(開設方法はここ) したばあい, 送金手数料は送金金額に関係なく\400です. 安い, 親方日の丸. 電信扱いにしても\1,400, 電信扱いだと翌日には引き出し可能となります. 一般振替口座を開くのは誰でもできます. ただし口座に入れているお金に利子はつきません. また, ぱるるとは違い, 開設した郵便局以外では出入金できないという制限があります.条件ではありませんが問題があります. 郵便局員なかでこの制度をよく理解しているひとは少ないことです.  一般振替口座というのが一般的ではなく, さらにこの口座から海外送金する人はきわめてまれで, 通常の郵便局員は 一般振替口座から海外送金できること自体を知らない場合があります.
利用するためには, 面倒でなければ, 海外送金の経験の豊富な本局で一般振替口座を開設することです. しかし, 本局が遠方の場合は, 上記の郵便局のホームページのプリントアウトを持参して, 近所の郵便局の局員を教育することが必要です. この制度を利用したいと強気で主張しましょう. 一度教育してしまえばあとは楽です.

その次にくるのが郵便局の口座あて送金, 分類では「3. 海外送金」に入ります. こちらの場合送金する金額により違いがあり, 次の表のようになっています. ホームページはここ.

送金金額 10-20万円 20-50万円 50-100万円
手数料 \1,000 \1,500 \2,000

電信扱いといって急ぎの扱いにすると上記の金額に加えて\1,000が必要になります. 電信扱いの場合翌日には引き出し可能となります.

郵便局が続いた後, ここでふたたび銀行の登場です. 銀行の海外送金はすべて電信扱いなので, 郵便局よりは割高ですが翌日には引き出し可能となります.  上記分類では「3. 海外送金」に該当します. CITIBANKでは金額にかかわらず海外送金手数料\2,000です. ただしこれにも条件があって預金残高100万円以上の顧客にのみ適応されます.
また, インターネットバンキングを用いて送金する場合にのみ\2,000の手数料で送金できます. 送金先は事前に郵送で登録が必要です. ちなみに窓口で送金すると, CITIBANKに口座がある場合\4,000, 口座がない場合\5,200の送金手数料となります. 顧客の差別化が著しいですね. この制度は考えようによっては使い勝手は良好です. 日本のCITIBANKの口座にある資金を誰の手を煩わせることなく海外へ送金可能です. 自分が最適と考えるタイミングで米ドルに替えて送金することが可能です. 郵便局を利用すると誰かに郵便局に行ってもらわなければなりませんね. インターネットバンキングで海外送金可能なのはCITIBANKと東京三菱銀行のみです(いまのところ).

同じく\2,000の手数料で送金できるのが新生銀行です. 上記分類では「3. 海外送金」に該当します. 条件があってPowerFlexという総合口座を開設しなければなりません. CITIBANKと異なり, こちらは窓口での対応のみとなります. 新生銀行は昔の日本長期信用銀行なので, 支店の数はきわめて少なく不便です.
しかし, 新生銀行には不便さを補ってあまりある利点があります. 為替手数料のところで触れましたが, 新生銀行では為替レートが他の銀行にくらべると有利です. 現在TTS-中値=\0.50. 試算してみましょう. $10,000を送金すると仮定すると為替手数料のみで, 他の銀行(TTS-中値=\1.00)にくらべて\5,000, 郵便局(TTS-中値=\1.13)にくらべて\6,300お得になります.

この次に多くの人がもっとも安いと思いこんでいるinternational money orderがきます. ここまで信じ込んでいる人が多い現状を見ると信仰と呼んでいいかもしれません. 郵便局に行って為替証書(別名:送金小切手・money order)を発行してもらって, これをアメリカに送るという方法です. 説明はここ. 郵便局での正式名称は住所あて送金となります. 上記の分類では「2. 為替証書による送金」です. 今でもこの方法でしかお金を送れない国が多数ありますが, アメリカにおいては次の理由によりお勧めできない送金方法です.

1. 為替証書の到着まで時間がかかる.

2. 郵送途中に紛失すると手間と時間がかかる. (最終的には補償してくれますが)

3. アメリカの銀行によっては取り扱ってくれないところがある. (詳しくは受取手数料のところで)

送金金額 10-20万円 20-50万円 50-100万円
手数料(送料込み) \1,500 \2,000 \2,500
手数料(自分で送る) \1,000 \1,500 \2,000

これにも電信扱いというのがあって, 電信扱いにすると\1,000かかります.

この次に続くのが銀行による送金小切手, 上記の「2. 為替証書による送金」に該当します. そのさらに次が銀行による海外送金, 上記の「3. 海外送金」に該当します. 手数料は銀行により異なるので窓口に問い合わせるしか方法はないのですが, 上記の方法より安くはないことは確かです. 一例を挙げておきます.

    海外送金 送金小切手
東京三菱銀行 口座あり \4,000 \3,500
口座なし \4,500
香川銀行   \3,500 - \4,500
CITIBANK 口座あり \4,000 \2,800
口座なし \5,200 \3,500

いままで, 「4. 国際ATMカード」がでてきませんでした. なぜかというと扱いが難しいためです. 送金手数料にあたる引き出し手数料は, CITIBANKは\0, 都市銀行もたいていが\100-\200です. しかし, 為替手数料の項目で検討したように適応される為替レートは比較しようがないほど最悪です. 数万円の送金なら為替手数料で損をしても送金手数料が安いので結果的には得ということになりますが, このホームページで扱う金額の送金では大損します.

3. 受取手数料

「お客様の口座にやまだ様から\10,000振込がありました. つきましては手数料\1,000をいただきました.」 このようなことを銀行からいわれたことはありますか? 日本国内ではないはずです. 日本の常識は, 「振込を受けとる方は手数料をとられない」. しかしアメリカは違います. 振込を受けとる人は振込受取手数料を支払わなければならないのです.

上記の分類に沿って受けとる際の手数料と手順を見ていきましょう.

1. 旅行小切手  

銀行の窓口へ行って口座に入金してもらいましょう. 入金に際し手数料はかかりません. 高額でなければその場で現金で受けとることも可能です. カウンターサインは銀行の窓口で行った方がbetterでしょう. 事前にカウンターサインをしていても問題なく入金してもらえましたが, 高額だと拾得した旅行小切手ではないかと怪しまれるおそれがあります.

2. 為替証書による送金

為替証書・送金小切手・international money orderはアメリカでは小切手と同じ扱いです. 銀行に行けば口座に入金してもらえます. もちろん無料です. あまり高額でなければその場で現金にすることも可能です. 郵便局で発行してもらった為替証書は郵便局に持っていきがちですが, アメリカの郵便局は貯金業務は行っていないため現金をほとんど置いていません. 高額の為替証書だと「現金がないから」(実際にない)といって断られます.

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上記の通り, アメリカの郵便局では貯金業務は行っていません. では, どこで現金化できるのでしょう. 日本の郵便局に問い合わせてみました.

アメリカの郵便局で現金化する場合は, 上記の理由で多額の現金を郵便局では取り扱ってないため, 小出しに現金化するということになるようです. 例えば, $10,000の額面の郵便為替証書を郵便局に持ち込んだ場合, 郵便局に$1,000しか現金がないとすると, $1,000の現金+$9,000の為替証書をもらい, また後日$9,000の為替証書を持って郵便局へ行くのだそうです. 私は実際にはこのような手続きを踏んだことはないので, このような小出しの現金化がどの郵便局でも可能なのか, 手数料等はかからないのかについては不明です.

アメリカの銀行で現金化する場合は, 「連邦準備加盟銀行(the Federal Reserve Banking System)」であれば郵便為替証書を扱ってくれるようです. ただし, 多額の証書であればいったん口座に入金して数日後に引き出し可能となるのでしょうね, たぶん.
連邦準備加盟銀行というのはほとんどのアメリカの銀行が当てはまるようですが, 実際にその銀行で郵便為替証書を扱ってくれるかどうかは, その銀行の裁量にゆだねられているようです. 要するに疑わしきは扱わないということになります.
では銀行発行の送金小切手は安心かというと, 「海外銀行発行の送金小切手はダメ」と断ってくる銀行も実際にあるようです. 窓口担当者が変わると, または, 支店が変わるとOKとなる場合もあるようなので, 問題なく扱ってくれる担当者に巡り会えるように祈るしかないかも.

3. 海外送金 

この場合, 通常は受取手数料がかかります. 一部の日本の銀行では受取手数料を日本で支払ってしまうという手段をとることもできますが, やはり受取手数料がかかることは確かです. 下に受取手数料の例を挙げておきます.

  Bank of America Washington Mutual E*Trade Bank
受取手数料 $10 $12程度 $0

銀行との契約内容, 受取金額により多少は変動があるようです(詳細は不明). アメリカでは銀行間の競争が激しく手数料の引き下げが進んでいますが, 国内・海外を問わず振込・送金(アメリカではwire transfer)は滅多に行われないため, 振込を受けとる際の手数料は概して高めです. このことを考えると, 「2. 為替証書による送金」が安いということになります.

しかし, 一部ではありますが, 受取手数料を無料にしている銀行もあります. 上記ではE*Trade Bankです. 日本から送金を頻回に行う人は受取手数料無料の銀行にお金を送り, その後小切手等で近所の銀行に資金を移動するというのがかしこい銀行の利用方法でしょう. なにせ小切手による資金移動は無料ですから.

4. まとめ

アメリカへの送金は送金金額により最適な方法を選ばないと, 手数料で大損することにもなりかねません. 生活費を国際ATMカードで送ってもらっている人も一部にはいるようですが, 銀行の経営安定に多大な貢献をしているといえるでしょう.

私は個人的には為替証書による送金はきらいです. 資金が引き出せるようになるまで時間がかかり, 為替証書が無事に届くまで不安で不安で眠れないからです. 送金の受取手数料が無料の銀行を選択しておけば, 「2. 為替証書による送金」よりも「3. 海外送金」の方が安いので, こちらをもっぱら使っています.

そしてなにより, ちょっとぐらい手数料をケチっても, 為替レートがちょっと動くとケチった手数料は吹っ飛んでしまうということをくれぐれもお忘れなく.