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「鯰絵」に見る庶民の心意気/周南

2011年05月12日

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庶民の心意気を感じさせる鯰絵を紹介した小冊子

◆歴史研究家の小冊子 周南・マツノ書店販売

  東日本大震災を機に、歴史研究家の大山格さん(51)=東京都渋谷区=が自費出版した小冊子「鯰(なまず)絵に見る世直し願望」を、明治維新の資料の復刻で知られる周南市のマツノ書店が販売する。江戸末期の1855年に起きた安政の大地震後の庶民の心意気を描いている。

◆安政の大地震後 2カ月で発行禁止

  大山さんは、明治時代を扱う歴史書を、外資系の出版社から出す準備を進めていた。本の一部に鯰絵を取り上げる予定だったが、震災後、「地震に便乗しているとか、不謹慎とかいわれかねない」という理由で鯰絵の掲載を断られた。大手を含む出版社数社に鯰絵の部分について出版を打診したが、同様の理由で断られたという。

  大山さんは「震災の約1週間後、ネット上に悲観的な書き込みも目立ち、これ以上意気消沈していては立ち上がれなくなる」と自費出版することを決め、自費出版としては異例の1500部を刷った。

◆無事喜ぶ歌/世直しの神…

  古来、地震を起こすとされたナマズをモチーフに描かれた鯰絵は、安政の大地震後2カ月で発行禁止になるまでのわずかな間に市中に出回った。小冊子では13枚の鯰絵を解説。捕らえられたナマズをみんなで退治する絵や、無事だったことを喜ぶ歌、世直しの神としてのナマズを描いた絵などを収めている。

  大山さんは曽祖父が旧陸軍軍人大山巌元帥。マツノ書店は大山の伝記の復刻を計画しており、松村久店主が格さんと旧知だった縁で小冊子を500部買い取り、大部分を顧客に無料で送付。さらに来店者には1冊100円で、郵送なら切手300円分で販売することにした。

  大山さんは「震災下でも江戸っ子がしたたかに生きたことを知ってほしい」と話す。A5判12ページ。問い合わせはマツノ書店(0834・21・2195)へ。
(福家司)

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