2011年5月13日20時23分
世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」に含まれる和歌山県新宮市新宮の森林が、所有者の熊野速玉(はやたま)大社に無断で1ヘクタールにわたって伐採されていたことがわかった。新宮市森林組合は、「日当たりが悪い」という住民の苦情を受けて伐採したと説明している。
同大社や周辺の森林は文化財保護法で保護され、世界遺産のコアゾーンでもある。伐採や開発をする場合は市教委の許可が必要だが、森林組合は許可を得ていなかった。森林法や自然公園法にも抵触する可能性がある。
無断で伐採されていたのは、同大社本殿の南約300メートル付近の山の広葉樹で、軒並み地面から約40センチの高さで切られていた。
市や森林組合などによると、住民からの要望を受けた市が「枝払い」を森林組合に委託。同大社も同意し、作業は3月下旬に終わった。その後、4月に住民から伐採の要望が森林組合にあり、職員2人が伐採したという。4月下旬になって別の住民から「木が切られているが大丈夫か」と県に通報があった。
同大社の上野顕(あきら)宮司は「伐採するなら絶対に同意しなかった。できれば元通りにしてほしい」と話し、警察に被害届を出すことも検討している。
森林組合の前田章博組合長は取材に対し「住民からは大社の許可を得ていると聞いていた。文化財保護法の規制があるとは知らなかった」と語った。(上田真美、杉山敏夫)