現在位置は
です

本文です

原発から初の蒸気放出、「最悪」回避へ綱渡り

 東日本巨大地震に伴う原子力発電所の危機は、放射性物質を含む水蒸気を環境中に放出するという非常事態に発展した。

 原子炉を冷やす電力を断たれた東京電力福島第一発電所1号機で12日朝始まった原子炉の格納容器内の圧力を逃がす国内初の緊急措置。

 最悪の事態は回避できるのか、綱渡りの運用が続く。

 日本の原発は、核反応を起こす燃料棒を、内部を水で満たした分厚いステンレス製の圧力容器に収容。放射性物質を外部に逃がさないよう、これを鋼鉄製の格納容器に入れ、さらに鉄筋コンクリートの建屋で覆った多重構造だ。

 ところが1号機は緊急停止の後、非常ディーゼル電源が起動せず、核反応の余熱を除去するため、炉心に水を循環させるシステムが機能しなくなった。この結果、圧力容器から水蒸気が格納容器に漏れ出し、格納容器の破損が懸念されるほどの圧力上昇を招いたとみられる。

 12日朝、格納容器内部の圧力は設計値の約2倍に、福島第一原発の正門前で計測した放射線量は通常時の70倍、さらに1号機の中央制御室の放射線量は、約1000倍に達していることが分かった。線量は毎時150マイクロ・シーベルト。そこに1時間いた場合の線量は、胃のレントゲン検診の約4分の1程度に当たる。

 炉内の水位が下がったのに伴い、不安定な状態が継続。炉心にトラブルが発生している可能性も出てきた。

 放射性物質を多重構造の中に閉じこめるには、建屋の内部気圧を外部より低く保つ必要がある。建屋内の格納容器内の圧力を下げるには、建屋の弁を開け、外に水蒸気を逃がすしか手がなかった。電源が回復しない中、手動で弁を開ける危険な作業だ。放射性物質の環境放出が不可避となったことを受け、政府は午前5時44分、周辺住民の避難指示範囲を半径3キロから10キロに拡大した。

 一方、福島第二原発でも、1、2、4号機の格納容器で、圧力抑制室の水温が100度を超え、冷却機能が喪失したとして、国が緊急事態を宣言する事態となっている。

2011年3月12日13時35分  読売新聞)

 ピックアップ

トップ
現在位置は
です