2011年5月13日16時48分
独立行政法人国立病院機構九州医療センター(福岡市)で2009年11月に生まれた次女(1)が植物状態になったのは、出産直後、助産師らが観察を怠ったのが原因として、福岡県糸島市の両親らが13日、同センターを相手に約2億3千万円の損害賠償を求める訴えを福岡地裁に起こした。両親らは出産直後から赤ちゃんを母親に抱かせる「カンガルーケア」が、機械を用いたモニタリングなどの観察もないまま、不適切に行われたと主張している。
訴状などによると、次女は、帝王切開で生まれた後の6〜12時間に2度、計2時間20分、母親の胸の上などに置かれた。しかし、母親は当時、鎮痛剤などで意識がもうろうとしており、経過観察もされないまま。この間、次女は母乳も飲まずにだんだん呼吸が弱まり、母親がナースコールをして助産師が駆けつけたときには次女は青白くなっていたという。新生児集中治療室(NICU)に運ばれたが呼吸が止まり、意識が戻らなくなったという。
カンガルーケアは、母子関係を深めるのに効果があるとして広まる一方、ケア中に新生児の呼吸が止まるなどの事例が一部で報告され、専門医らが09年9月、▽家族に対する十分な事前説明▽機械を用いたモニタリングなどのガイドラインをつくった。
両親らによると、次女の出産後、病院側は「(次女は)乳幼児突然死症候群という病気で、不可抗力だった」と説明。カンガルーケアだったとの説明は、事前にも事後にもなく、別の病院でアドバイスを求めたところ、今回の処置はカンガルーケアに該当すると言われたという。
■病院側「カンガルーケア実施せず」
病院側は取材に「当院ではカンガルーケアを実施しているが、当該患者にはカンガルーケアを実施していない。提訴の有無は確認出来ていないが、当該事案は、何度も交渉し、こちらの過失はないと繰り返し述べている」とコメントした。