客員研究員の尾上です。
儀式サービス、いわゆるお葬式をテーマにして、サービス創新をご一緒に考えてゆきましょう。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、いきなりお葬式にサービスという表現を用いる事で、違和感を感じて首をかしげる方がいらっしゃるかもしれませんが、葬祭業社がお客様との需給関係において提供しているものを儀式サービスと表現しております。この儀式サービスについてとご理解ください。
特に近年はその儀式サービスの内容よりも、お葬式全体の価格ばかりに囚われがちな傾向が伺えます。しかしながら必ずしも金額だけかというと実際にお葬式を体験したご遺族からアンケートをいただくと、選んだ祭壇のお話や金額などよりも、よりもよい担当者に巡り会えてよかったねと満足の言葉を聞く事のほうが多いと言えるでしょう。
お葬式という一連の儀礼の中には、祭壇や施設などのハードばかりではなく遺族に対する癒しやアドバイス、サポートといったような、サービスマンが関わることで提供しているソフトが沢山あり、むしろこうしたサービス及びサービスマンの資質こそが儀式サービスの真の売り物と言っても過言では有りません
担当者の「経験と感」これはある面では非常に重要な事でありますが、家族葬、直葬といったような新しい葬儀の考え方が一般に理解され、お葬式の多様化が進んで行く背景の中で、「経験と感」だけでは解決しないことに行き詰まったり、消費者の求めるサービスがもっと多様化して、新たなる対応が必要とされる事も考えられます。さらに一方では消費者(ご遺族=お客様)が、自らの要望すら表現が出来ないばかりか、内面での整理すらできないといったこともあります。
こういった担当者一人の「感や経験」だけでは解決できない事が発生したとき、同じ葬儀社においても提供するサービスに大きなばらつきが生じてしまうばかりか、遺族が癒しを得る事の出来ないお葬式にもなりかねません。
まず基本的として葬儀サービス提供者は、ヒアリング能力、提案能力、具現化能力が非常に重要な資質で、その技術を備え磨く事が必要で有ります。さらに一方でサービスを求める消費者(ご遺族=お客様)にも、ほんのわずかな知識をつけることで、要望が伝えやすくなりよりよい儀式サービスとして完結できる可能性は飛躍的に高まります。
まさに、第1回の小林さんのコラムに有りました。「無形であり、サービス提供者とサービス受給者の相互作用を必要とするあらゆる活動」こそが、儀式サービスであるといえるでしょう。
このコラムでは、事前には取り組みにくいと言われるお葬式に関する勉強を、サービスと言う視点から捉えながら、お葬式をわかりやすくしてゆくようなものにしたいと思います。お読みいただく皆様には、用語の解説を交えながら展開してまいります。「事前に考える」これも私の考える葬儀サービス創新です。ご意見など頂けますと大変嬉しく思います。
尾上正幸 (明治大学サービス創新研究会 客員研究員)