憂楽帳

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憂楽帳:母の介護

 母の体調が悪くなり、介護を受けることになった。大型連休中に久しぶりに大阪の実家に行くと、居間を占拠する介護ベッドの上で母は小さくなって座っていた。「こんなことになって、すまんなあ」。忙しさにかまけて放ったらかしにし、病院の付き添いなどは妻に任せていた。だから、その言葉を聞くと自分はひどいどら息子なのだと痛感した。

 大阪市内の65歳以上で介護を受けている人は約17%(今年2月)。母もその一人になってしまった。高齢になるほど介護を受ける人の割合は高くなるのだろうが、実際に肉親が介護を受けるとなると、そんな数字は意味がなくなる。介護が眼前の問題になるからだ。

 東日本大震災では、被害を受けた高齢者施設や、自宅を津波で流された要介護者が多い。避難所を転々としているうちに亡くなった人もいる。被災地の苦悩が、母の介護をきっかけにほんの少し身近になった気がするが、こんなことで身近に感じてしまう自分がまた情けない。幸い母の体調は元に戻る可能性がある。何とか戻して、どら息子の自覚を打ち消したい。【山本泰久】

毎日新聞 2011年5月13日 西部夕刊

 

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